わたしの考える最強のコイビト
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2.
齢27、警察官を辞めて隠居し始めて約1ヶ月。今まで忙しなく、それでいてものすごくデンジャラスな職場で働いていたせいか、私は毎日をのんびりと過ごす日々に少し飽きを感じていた。何か予定を詰め込んでいないと落ちつかないのだ。
一応、潜入捜査の一環で始めた作家の活動を続けているためニート、という訳ではないのだが、なぜか過去に書いた小説がいい感じでバズったため収入は警察官としてら働いていた頃と大差ない。今は新しいシリーズ小説を執筆しているものの、その作業時間はまあ半日程度。フリーで仕事を行っているため特に締切などで追われることもない。今日も、午前中に集中して仕事をしたので午後からは特に予定がなかった。
とりあえず、外食でもしようかとブラブラと街を歩いているとコンビニの窓に貼ってある転職サイトのチラシが目に入った。
そうして、私も何か他の仕事でも探そうかな、なんて思い至ったのである。その場で立ち止まってスマホで副業について調べてみる。しかしなんとなく気乗りしなくて、すぐにスマホをポケットへとしまった。
適当に入ったカフェのカウンター席に腰掛けて、もう一度「副業、テレワーク」と検索欄に入れてみる。
仕事を探す気があるのかないのか、自分でもわからないくらい流れ作業のように雑にスクロールし続ける指がようやく止まった。
「切り抜き師」とはなんだろうか。それは私にとってあまり聞き馴染みのない仕事だった。とある配信者が切り抜き師たるものを募集していたのだ。
なんとなく、「詳細はこちら」とあるURLをタップすれば、某有名なSNSへと飛ばされた。自分でも動画投稿や生配信といった世界にはあまり詳しくない自覚はある。だからだろうか、誘導されたサイトで突然流れ始めたゲームの動画を見て、少し興味が惹かれたのだ。
私はちょっと前まで警察官をしていた。警察の中でも特殊急襲部隊、通称「SAT」と呼ばれる組織に所属していて、自分で言うのもあれだがかなり優秀だったと思う。まあ結局怪我で警察を辞めてしまったのでそれまでだけれど。
動画の内容は某FPSゲームの実況であった。バトルロワイアル形式で参加者それぞれが好きな武器を選んで戦う。実際に存在する拳銃をモデルにしているのか武器デザインの再現度が高くて感動した。それにこの動画投稿者の、障害物を使って上手くクリアリングして敵を欺く手腕は見事なものだった。普通に勉強になる。
一通り動画を見終わって、とりあえず切り抜き動画というものを作成しようと、印象に残った場面をメモする。そして「切り抜き動画」と検索して出てきた動画を端から見て勉強する。どの動画も個性があって面白かった。あまり型のようなものはなさそうである。
というわけで、昼食をさっさと済ませた私はさっそく家に帰り動画編集ソフトをダウンロードした。
そして、約2時間後に完成したのは動画上で使われていた拳銃について細かく解説を乗せた一分程度の動画。すぐにその動画を送って切り抜き師というものの選考に応募した。
文字のフォントとか、解説を乗せるタイミングとか、色々こだわって動画を作ることは想像以上に良い満足感を与えてくれた。
翌日、私のスマホには数件の通知が来ていた。
「それ面白い。採用」だそうで、非常に明確な採用の連絡に続いて打ち合わせの候補日が送られてきていた。
「へぇそれじゃあユキもFPSとか得意なの?」
「いやそれはどうだろう、やったことないし」
「でも銃とか詳しいわけでしょ?」
「ああまあ、リアルの方でちょっと」
「リアル…サバゲーってこと?」
「サバゲー…?うん、まあそんなとこかな」
「分からないなら適当に頷かないでくれる?」
アップルパイにフォークを刺しながら呆れたようにため息をついたのは私の雇い主になろうとしている弧爪研磨という男性。彼は思いのほかダウナーな雰囲気を纏って待ち合わせのカフェにやってきた。
ちなみに待ち合わせ場所は私が指定した。打ち合わせ、どういうのがやりやすい?と彼の方から聞いてきたので三つほど、場所を指定したらアップルパイの有名なこのカフェに決定したのだ。
「あの、切り抜き師として採用って言ったけどさ、ユキってなんかヤバい人とかじゃないよね?」
「え、ヤバい人ってヤバい人に見える私?」
「いやヤバい人って言うよりアホっぽい」
「ええ!?それは失礼では?」
「うん、おれもそう思った。ごめん」
というわけで、私はこの日から研磨くんのもとで新たな仕事をやらせてもらえることになったのである。
それから数年の時を経て交際から同棲までコマを進めたわけだけど、私の彼氏である研磨くんはそれはまあ色んな肩書きを持っている。「プロゲーマー」「配信者」「経営者」「株式トレーダー」「Bouncing Ball(バウシングボール)代表取締役」などなど、もう私は鼻が高くて仕方がない。
ちなみに私が始めて作った切り抜き動画の内容だけど、KODZUKENというアカウントから投稿された直後に「切り抜き師の自我強すぎw」「最弱武器の解説がいちばん詳しくて草」「切り抜きとは…?」みたいなコメントであふれたのでその後はもっと切り抜き動画たるものを勉強して軌道修正した。そして私がかつて相棒として用いていた機関拳銃MP5Fがまあまあバカにされていて地味にショックを受けたのは良い思い出である。
* * *
この小説の主人公は見た目は清楚系の美人だけど喋るとちょっとバカっぽくみえるのが玉に瑕。
齢27、警察官を辞めて隠居し始めて約1ヶ月。今まで忙しなく、それでいてものすごくデンジャラスな職場で働いていたせいか、私は毎日をのんびりと過ごす日々に少し飽きを感じていた。何か予定を詰め込んでいないと落ちつかないのだ。
一応、潜入捜査の一環で始めた作家の活動を続けているためニート、という訳ではないのだが、なぜか過去に書いた小説がいい感じでバズったため収入は警察官としてら働いていた頃と大差ない。今は新しいシリーズ小説を執筆しているものの、その作業時間はまあ半日程度。フリーで仕事を行っているため特に締切などで追われることもない。今日も、午前中に集中して仕事をしたので午後からは特に予定がなかった。
とりあえず、外食でもしようかとブラブラと街を歩いているとコンビニの窓に貼ってある転職サイトのチラシが目に入った。
そうして、私も何か他の仕事でも探そうかな、なんて思い至ったのである。その場で立ち止まってスマホで副業について調べてみる。しかしなんとなく気乗りしなくて、すぐにスマホをポケットへとしまった。
適当に入ったカフェのカウンター席に腰掛けて、もう一度「副業、テレワーク」と検索欄に入れてみる。
仕事を探す気があるのかないのか、自分でもわからないくらい流れ作業のように雑にスクロールし続ける指がようやく止まった。
「切り抜き師」とはなんだろうか。それは私にとってあまり聞き馴染みのない仕事だった。とある配信者が切り抜き師たるものを募集していたのだ。
なんとなく、「詳細はこちら」とあるURLをタップすれば、某有名なSNSへと飛ばされた。自分でも動画投稿や生配信といった世界にはあまり詳しくない自覚はある。だからだろうか、誘導されたサイトで突然流れ始めたゲームの動画を見て、少し興味が惹かれたのだ。
私はちょっと前まで警察官をしていた。警察の中でも特殊急襲部隊、通称「SAT」と呼ばれる組織に所属していて、自分で言うのもあれだがかなり優秀だったと思う。まあ結局怪我で警察を辞めてしまったのでそれまでだけれど。
動画の内容は某FPSゲームの実況であった。バトルロワイアル形式で参加者それぞれが好きな武器を選んで戦う。実際に存在する拳銃をモデルにしているのか武器デザインの再現度が高くて感動した。それにこの動画投稿者の、障害物を使って上手くクリアリングして敵を欺く手腕は見事なものだった。普通に勉強になる。
一通り動画を見終わって、とりあえず切り抜き動画というものを作成しようと、印象に残った場面をメモする。そして「切り抜き動画」と検索して出てきた動画を端から見て勉強する。どの動画も個性があって面白かった。あまり型のようなものはなさそうである。
というわけで、昼食をさっさと済ませた私はさっそく家に帰り動画編集ソフトをダウンロードした。
そして、約2時間後に完成したのは動画上で使われていた拳銃について細かく解説を乗せた一分程度の動画。すぐにその動画を送って切り抜き師というものの選考に応募した。
文字のフォントとか、解説を乗せるタイミングとか、色々こだわって動画を作ることは想像以上に良い満足感を与えてくれた。
翌日、私のスマホには数件の通知が来ていた。
「それ面白い。採用」だそうで、非常に明確な採用の連絡に続いて打ち合わせの候補日が送られてきていた。
「へぇそれじゃあユキもFPSとか得意なの?」
「いやそれはどうだろう、やったことないし」
「でも銃とか詳しいわけでしょ?」
「ああまあ、リアルの方でちょっと」
「リアル…サバゲーってこと?」
「サバゲー…?うん、まあそんなとこかな」
「分からないなら適当に頷かないでくれる?」
アップルパイにフォークを刺しながら呆れたようにため息をついたのは私の雇い主になろうとしている弧爪研磨という男性。彼は思いのほかダウナーな雰囲気を纏って待ち合わせのカフェにやってきた。
ちなみに待ち合わせ場所は私が指定した。打ち合わせ、どういうのがやりやすい?と彼の方から聞いてきたので三つほど、場所を指定したらアップルパイの有名なこのカフェに決定したのだ。
「あの、切り抜き師として採用って言ったけどさ、ユキってなんかヤバい人とかじゃないよね?」
「え、ヤバい人ってヤバい人に見える私?」
「いやヤバい人って言うよりアホっぽい」
「ええ!?それは失礼では?」
「うん、おれもそう思った。ごめん」
というわけで、私はこの日から研磨くんのもとで新たな仕事をやらせてもらえることになったのである。
それから数年の時を経て交際から同棲までコマを進めたわけだけど、私の彼氏である研磨くんはそれはまあ色んな肩書きを持っている。「プロゲーマー」「配信者」「経営者」「株式トレーダー」「Bouncing Ball(バウシングボール)代表取締役」などなど、もう私は鼻が高くて仕方がない。
ちなみに私が始めて作った切り抜き動画の内容だけど、KODZUKENというアカウントから投稿された直後に「切り抜き師の自我強すぎw」「最弱武器の解説がいちばん詳しくて草」「切り抜きとは…?」みたいなコメントであふれたのでその後はもっと切り抜き動画たるものを勉強して軌道修正した。そして私がかつて相棒として用いていた機関拳銃MP5Fがまあまあバカにされていて地味にショックを受けたのは良い思い出である。
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この小説の主人公は見た目は清楚系の美人だけど喋るとちょっとバカっぽくみえるのが玉に瑕。