3. のどかな昼下がり
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「銀!お前は気にならへんのか!アイツらのあの浮ついた顔!」
「いや、俺は…気になる!」
「せやろ!今日の昼休みアイツらのクラス行くで」
「え?クラスでなんかあるってことなんか?」
「せや!原因は噂の転入生や!」
ここ数日、サムと角名の様子がおかしい。おかしいっていうのは語弊があるが、なんか浮かれてんねん!あの2人!
サムのやつなんて、今まであんな早起きするこなんてなかったのに、なんやねん自分の握ったおにぎりをあげるって。しかも俺でも食べきれんくらいのおにぎり量産しよって。普段やったらありえへんし、気色悪いわ!その後ウハウハで部活来たと思ったら全部もらってくれた言うしその転入生も意味わからへん!
そういや転入生の噂の話したときもめっちゃキレてたしな、俺はただ聞いた話をしただけやっちゅうねん。
そうして昼休み。俺は昼飯を持って、銀を道連れにしてサムのいるクラスに向かう。ガラッと勢いよくドアを開ければ、クラスの奴らの視線が一斉にこちらを向いた。
「サム!俺にも噂の転入生見せろや!」
クラスの中を見回すも目的の奴は見つからない。なんや、教室には居らんのか…と踵を返そうとしたら「侑、教室の後ろにおるで!」という銀の声。
あ?と目を向けると楽しそうにお昼ご飯を食べてるサムと角名と…顔はサムが邪魔であんま見えんがもう1人おるな、てか教室におるなら無視すんなや。
「おいサム!無視すんなや!」
「あ?なんでツムがおんねん!あっち行け!」
「別にええやろ!俺は噂の転入生を見に来たんや!」
「お前なんか目に入れたらバカが移るやろ!」
「そんなわけあるかい!」
「はっ…アカン!!!」
教室の奥へズカズカと入り込んでいつもの如くサムと言い合いを始めると、その横で何故か銀が叫んで胸を抑えだした。急にバカでかい声で叫ぶ銀の方へ顔を向けると、もう1人ちっこい何が視界に入ってきた。
大丈夫?と言ってそいつが銀に手を差し出そうとするのを角名がすかさず阻止する。
「ユキちゃん、これ以上辞めてあげて。銀が心臓発作起こして死んじゃうからさ」
角名から出てきた名前にハッとした。お前か、ユキちゃんっちゅうやつは…と思いそいつの肩をガシッと掴み、顔を合わせると、ユキちゃんは目を丸くしながらこちらを見上げた。
「っは…」
「え、宮くん…?」
俺の顔を見て、そう呟いたソイツは首を傾げてサムをと俺を見比べる。そうして再びこちらを向いたソイツの、くりっとした大きな瞳と俺の目線が重なった。
やばい!なんやこいつ かわいすぎるやろ!
てかめっちゃ白くて肌やわこいな
てかめっちゃ目ぇデカくて綺麗やな
てかめっちゃかわええなあ、と顔を近づけてしばらく見つめてるとユキちゃんは徐々に頬を染めて俯いてしまった。ああなんで下向いてまうんや、と思ったら今度はサムのバカでかい声が耳に入ってきた。
「ツム!お前なにしとんねん!今すぐユキちゃんから離れろ!」
「うっさいねんお前!耳元で叫ぶなや!」
「お前がユキちゃんから離れればええだけの話やろがい!」
「み、みやくん」
ああ、また始まったわという周りの目線。そんな避難の目を浴びていることに気づきながら、サムに言い返してしまった。そしてもはや恒例と化している終わりの見えない言い合いが始まろうとしたとき、今度は小さくて可愛らしい声が耳に届いた。
サムも俺もピタっと言い争いを止めて声の方を向く。
「宮くん声がちょっと大きいよ、周りの人たちがびっくりしてる!」
サムの方ににスっと顔を近づけ、片手を口元に添えて小さな声でユキちゃんが言った。
え、かわええ…じゃなくて狡いわサム!なんでお前の方やねんという気持ちを込めてサムの脇腹をつついてやった。
「お、おおごめんな?ユキちゃん許してや?」
さっきまで俺を睨んでた顔が嘘みたいにゆるゆるになってユキちゃんに向き直るサム。デレデレやないか!と殴りたくなったが確かにユキちゃんのあの顔をみたら誰だってそうなるわな。
俺もうるさくしてごめんな?と謝ると、ユキちゃんはにこっと笑って俺とサムの手をとった。そしてそれぞれの手の平に飴玉を置いて満足気に頷いた。
え、手がちいちゃい、なんかふわふわしとる。サムの方を見ると俺と同じことを考えてるのかユキちゃんの手をガン見しとったわ、お前今の顔めっちゃ気持ち悪いで。
てかなんで飴玉?
「ユキちゃん、俺にも飴玉ちょうだい」
「角名くんも欲しいの?仲直りの飴玉、はいどうぞ」
「ん、ありがと」
なんやねん仲直りの飴玉て、かわいすぎか。
ユキちゃんってちょっと変わりもんなんやろか。
よし、俺も明日から昼飯ここで食うたろ。
「銀、明日から昼飯ユキちゃんのとこな」
「侑!俺、一目惚れしたかもしれん!」
「…せやな」
「ユキちゃん、かわええな」
「ユキちゃんに迷惑かけんなやくそツム」
「ええやん、ユキちゃんから飴玉貰えたんは俺のおかげやで」
部活の帰り、ちょうど長めの赤信号に足止めをくらい、なんとなくサムに話しかけると暴言が返ってきた。お前が今舐めてる飴、俺がおらんかったら貰えなかったはずやのに、なんやねんその態度は。
そういえば、ユキちゃんの噂はなんやったんやろか、サムがキレてたのも納得やわ。普通にめっちゃ可愛くてええ子やったな。
「あ、せや明日から俺も昼飯ユキちゃんと食うから」
「は?来んなや」
「あと、やっぱ思ってんけどユキちゃんにあのおにぎりの量は無理あるやろ」
「...ユキちゃんかわいくてええ子やろ」
「せやな」
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