伊達刑事のプロポーズ大作戦
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ナタリーちゃんにプロポーズ!!」
週末、仕事帰りに相談したいことがある。とマスターのもとに伊達からメールが届いた。できればユキちゃんも一緒に話がしたいと伊達が言うので、マスターとユキは今、とある居酒屋に来ていた。
2人の到着後、数分して仕事を終えた伊達が合流した。さっそく伊達が語り出した相談内容を聞いたユキは思わず、興奮して立ち上がった。心做しかユキの瞳はキラキラと輝いている。
ナタリーとユキは大親友である。もともとはマスターと伊達がお互いに彼女として紹介したことで出会ったのだが、すぐに仲良くなった2人は、今では度々お茶をしたりショッピングモールにお出かけをするほど親密になっていた。そのことを知っていた伊達は、ナタリーと仲の良いユキにも是非アドバイスを貰いたいと思ったのである。
「そろそろ俺らもいいんじゃないかと思うんだが、中々タイミングが掴めなくてな」
「なるほどな…具体的なプランは立てているのか?」
「ああその事なんだが…ぜひともユキちゃんにアドバイスをもらいたくて」
「私に?」
「ユキちゃんはナタリーと仲が良いだろ?だからナタリーがどんな雰囲気が好きだとか、どんなシチュエーションが理想だとかを知ってるんじゃないかと思ってな」
両手を合わせ、頼む!と勢いよく頭を下げた伊達に、ユキは嬉々として頷いた。
「もちろんですよ!えっと、確か…」
理想のプロポーズ…と呟きながら、ユキは先月ナタリーとお茶会をしたときに話した内容を思い出していた。まさに、先月そのような話をした記憶があるのだ。
「何気ない日常の中で不意にサプライズされるのが好きなのよ!」確かにナタリーはそう言っていたのをユキは記憶している。そうして、ユキはあるアイディアを思いついた。
「ポアロでサプライズパーティ?」
「そうです!ポアロは高級店というわけじゃないし、伊達さんもナタリーちゃんも普段来てくれることも多いから、何気ない日常というシチュエーションにはピッタリだと思うんです!」
「なるほど確かに良いかもしれないな。そうなると…」
プロポーズの作戦について熱く語り出すユキの話を真剣に聞いていたマスターは彼女の作戦について同意を示した。そうでしょ?とマスターの賛同に嬉しそうにするユキの頭を慣れた手つきで撫でてから、マスターは彼女の作戦に補足していく。こうして場は、より具体的な話し合いへと進んでいった。
* * *
それから数週間後…。
「ナタリーちゃん!伊達さん!いらっしゃい」
「ユキちゃん!この間はケーキのクーポンありがとうね!」
「ふふ、ナタリーちゃんにはいつも仲良くしてもらってるから」
そう、作戦決行日より数日前、ナタリーとお出かけをしたユキは彼女にケーキのクーポンを渡していた。もちろん、クーポンには日付の指定と"2名以上の来店で使用できます"という条件が書いてある。 現在ポアロでそのようなイベントなどやっていないのだが、そんなことを知る由もないナタリーは嬉しそうに受け取ってくれた。
そして、クーポンを手にしたナタリーはマスターの思惑通り、この日、伊達を誘ってポアロに来てくれたのである。
今日のポアロは貸し切り状態。バレないように蘭、園子、世良の3人と、小五郎とコナン、簡易的に変装したヒロ、松田、萩原も協力者としてこの場で伊達のプロポーズを見守っている。
普段通りに食事を楽しむナタリーと伊達。あとは、伊達が意を決してプロポーズするだけ。そして返事をもらったタイミングでユキとマスター特性の豪華なケーキを持っていく流れになっているはずだ。夕日が差し込む店内、観衆は皆、こぶしを強く握り、息を呑んだ。
頑張れ伊達!伊達刑事!伊達さん!という自分を応援する皆の心の声を胸に、伊達は深呼吸した。
「ナタリー、実は今日プレゼントがあるんだ」
「プレゼント?今日は何かの記念日だったかしら?」
そうだな、これから今日は大切な記念日になる予定だ。そう心の中で呟き、伊達は懐から小さな箱を取り出した。それを見たナタリーは静かに目を見開く。
「ナタリー、俺と結婚してくれ!」
その声とともに開かれた小さな箱にはキラキラと光るプラチナリングが飾られている。
「ほんとうに?」
「ああ、これから先の生涯を俺と共に生きて欲しいんだ」
その言葉を聞いたナタリーは一瞬ぽかんとしたものの、すぐに状況を理解した。そしてぱっと顔を綻ばせてその場に立ち上がる。
「もちろんよ、嬉しいわ!ありがとう航!」
そう言って抱きついたナタリーを、伊達は優しく抱き留めた。そしてタイミングを狙ったようにやって来たのは、大きなフルーツケーキ。チョコレートで「おめでとう!」と大きく書かれたプレートを乗せたフルーツケーキは、ナタリーの座るテーブルの上に置かれた。
「これって…」
「ポアロ特性のフルーツケーキです!ナタリーちゃんがクーポンを持ってきてくれたからね!」
クーポン、ユキから発せられたその単語を聞いて、今日ここに来る前から伊達が今日のプロポーズの作戦を考えていたことを悟ったナタリーはさらに嬉しくなった。
「航も、ユキちゃんも、マスターもありがとう!私今とっても幸せだわ!」
先程まで静かに行く末を見守っていた者たちは一斉に立ち上がり口々におめでとう!と発する。変装したヒロ、松田、萩原に気がついた伊達は、お前らまでいたのかよ…と少し照れくさそうに笑った。彼らを連れて来たのはマスターの独断だ。
特大ケーキを皆で分け、お祝いムードなポアロ内はとても賑わっている。そんな中、伊達のプロポーズ成功にホッとしているマスターを見た園子。そういえば!と彼女はマスターの正面に立ち、にっこりと何かを企んでいるような笑みを見せた。
「ち な み に、マスターはどうやってユキさんにプロポーズしたんですか?」
「え!?いや、僕らのプロポーズは結構普通でしたよ、それこそ家で2人で過ごしているときに…」
半分嘘で半分本当。突然園子に矛先を向けられたマスターは、思わぬ質問に珍しく動揺した様子を見せる。マスターは自分の過去を振り返って少し、いや大分いたたまれない気持ちになった。実はこのマスター、なんでもスマートにこなすことで有名だが、自分のプロポーズに関しては少し思うところがあった。
マスターはその日、以前から念入りにプロポーズの計画を立てていたのにも関わらず、1ミリもその計画に掠ることなくプロポーズを終わらせたのである。それも、酒が入りふわふわとして鈍った自分の思考回路が原因で。
その日は降谷零の誕生日であった。朝に弱いユキが早朝から頑張ってご飯を作ってくれて、昼も夜も彼女の凝った料理が食べられて幸せだった。夜はヒロたち前世記憶持ち組も家に来て、ユキの用意してくれたケーキを食べてお酒を飲み、みんなで俺の誕生日を祝ってくれた。ユキが俺のために色々計画し、みんなを誘ってくれた。それだけでも俺は嬉しかったのだが、その後、ユキからプレゼントを受け取ったとき、まだ中身を見てもないのにも関わらず、嬉しすぎて泣きそうになった。
みんなが帰り2人きりに戻った家で、一緒に風呂に入って、一緒にベッドに入った。布団の中で彼女を抱きしめたとき、俺は心の底から彼女を愛おしいと思ったんだ。
そして、どうしようもない幸福感に包まれたマスターは、ついに口を滑らした。
「ユキ…もう結婚しないか?俺たち夫婦になろう」
「ん!?突然どうしたの?零くん酔っ払ってる?」
「酔っ払ってない!ユキ、俺は君のことが大好きなんだ」
「うん…私も零くんが大好きだよ?」
「ああ知ってる。俺もユキのことが大好きだ」
「私の方がもっと好きだよ?」
「俺の方がもっと好きだ。なあユキ…」
「ふふ、私も知ってるよ。だから、うん、結婚しよう?」
「ああ、結婚しようユキ。今日から君も降谷ユキだな…」
そう幸せそうに破顔したマスターは、そのまま彼女を腕の中に閉じ込めて寝落ちた。
翌日、晴れて夫婦となった2人にプロポーズの状況を聞き出したヒロの心境は「あれ?」であった。以前よりプロポーズの相談をヒロにしていたマスターは、もっと色々、なんかこう場所とか、タイミングとかを念入りに計算していた気がしたのだが…。
ゼロお前、それはちょっとどうなんだよ。
違う、断じて酔った勢いとかではないんだ。ちょっと幸せすぎて我慢できなかっただけで、言い逃げみたいに寝落ちたのは申し訳ないが、俺は本気でユキのことが好きなだけなんだ…。
1/1ページ