降谷夫婦の日常
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朝5時30分、まだ朝日が顔を出しきっていない微妙に明るくなった時間帯に目を覚ますのは前世の名残か、マスターは毎日この時間に目が覚める。1度大きく欠伸をしてから、隣で眠る愛しい存在を確認する。彼女の頭を撫でると、ふふっと擽ったそうに身を捩ってこちらへ体を近づけてくる。マスターは彼女のこの仕草が好きなのだ。
「かわいい」思わず口をついたその言葉と共に彼女の頬を撫でて伏せる瞼に口付けを落とす。今日も体調に問題はなさそうだな。彼女の様子を見てそう判断すると、マスターは身体を起こして洗面所へと向かった。マスターは顔を洗って動き易い服に着替える。冷蔵庫の中を確認してから寝室の様子を今一度確認して、玄関を出た。そしたら毎朝のランニング。これは今世の降谷零のルーティーンの1つだ。
前世と違って日々訓練し、鍛えるような仕事をしているわけではないので、自主的な体力作りと筋肉作りは欠かせない。そうしなければ彼女を守ることができないから。それに、彼女に見せる自分はできる限りかっこよくありたい。そんな想いから今世でもこのハイスペックボディを維持しているマスターである。
約1時間後、ランニングをしながら朝食のメニューを頭の中で組み立てて家に帰る。キッチンの前に立ち、さっそく料理をするための包丁と野菜を手に取った。
朝食を作っている途中、キッチンの扉の向こうで人の動く気配をマスターは感じた。寝室の方向だ。彼女が起きたのだろう。しばらくして静かに扉が開かれる。音を立てずにそっと扉を開いてこちらを覗く彼女はバレないようにしているつもりなのだろうか、そんな可愛らしい彼女の気配を感じながら、マスターはついニヤけてしまう顔に力を入れて彼女に声をかけた。
すると、今度は気配に気づいてもらったことが嬉しいのか、マスターが振り向いて声を出した瞬間、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせて「おはよう」とマスターに抱きつきに行くので、マスターはそんな彼女をしっかりと受け止める。1度ギュッと抱きしめると満足した彼女は、嬉しそうにスキップをしながら洗面所へ向かうのだ。これは降谷家で見られる毎朝の光景である。
今日も俺の妻がかわいい。とマスターは菜箸を片手に天を仰いだ。
「今日の朝ごはんも美味しいね」
それはもう可愛らしく、にぱっと笑ってお箸を口に入れる彼女を緩みきった表情で眺めるマスター。ぴょこんと前髪に寝癖のをつけた自分の妻が可愛くて思わずを写真に収めてしまったのは仕方ないだろう。
買い出し
ポアロの営業時間が少し遅い日は、こうして近所のスーパーへ買い出しに来るのもこの夫婦の日課である。そして、本人達は恐らく気づいていないが、この2人、スーパーではちょっとした有名人となっている。スーパーで働く者達からしたら週に数回訪れる美男美女夫婦。それもスーパーへ買い物に来ているだけのはずなのに、まるでデートのようにめちゃくちゃ甘い雰囲気を漂わせて注目を集める2人は最早このスーパーの名物である。
パート歴数年になる女性店員は、ある冷凍食品の試食コーナーの前で2人を呼び止めた。
「どうぞ!今週から新しく入荷した商品なんですよ!ぜひ試食していってください!」
女性が元気よく差し出した試食品をまずはマスターが受け取り試食する。彼は何かを深く考え込んでから奥さんに同じものを渡した。そして、ぱくりと試食品を口に入れた奥さんは、ぱあっと表情を綻ばせ、試食品コーナーに立つ女性に「美味しいですね!」と笑顔を向けた。よほど試食品が気に入ったのか、にこにこと笑顔を浮かべた奥さんは、機嫌よく冷凍ケースにある商品を1つ取り出す。
そうして買い物カゴへ食品を入れ、試食品コーナーを後にする夫婦。過ぎ去っていく夫婦をぼんやりと眺めるパート店員は2人の姿が見えなくなると同時に、その場で崩れ落ちた。そして、新作の商品が売れたことと、奥さんからのファンサを受け取れたことに一人感動の涙を流すのだ。
試食や値引き、セールなどの呼びかけ等により夫婦に話しかけることが出来るかどうか、店員の間で毎度チャレンジが行われていることなんて2人は知らない。
成功率は五分五分。きちんと声をかける目的がなければ不審に思われる可能性がある。それは店にとっても降谷夫婦ファンという立場をとっても致命傷。また2人の雰囲気に負け、話しかけるのを断念するものも多いようだ。
喫茶ポアロが休みの日
マスターはいつも通り早朝に起床する。ユキとの朝食までいつもと同じようにルーティーンをこなした後、マスターはリビングにある作業用デスクに座り何やら仕事を開始した。
この夫婦が、どうして若くして喫茶店を経営できたのか、それはマスターが小学生の頃から練っていた計画の賜物と言っていいだろう。
当時小学生であったユキの何気ない一言、"将来、零くんと喫茶店を開きたい"という発言から、今世での将来の目標を定めた小学生の降谷零は、その頃から経営とITに力を入れて勉強を始めたのだ。そして大学生になってからフリーランスエンジニアとして活動し、彼は喫茶店の初期資金を貯めていた。
現在も休みの日は副業として在宅ワークをしていることが多いが、前世が前世なだけに今のマスターにとって喫茶店と副業の両立など朝飯前である。
そしてユキの趣味は料理、裁縫などなど。手先が器用なユキは休日にハンドメイドとして色々な物を作っている。マスターの提案から、上手に作れた物はポアロのレジ横の小さな棚に並んでおり、ひっそりと売られているのだが、ユキにとってこれは意外にも良いお小遣い稼ぎとなっている。
休日にお出かけをすることもあるが、基本的に休日の2人は各々家で過ごし、夜はまったり一緒に過ごすのが常である。夕方からはユキが食事を作り、2人で食べる。その後一緒にお風呂に入り、2人で雑談をしたりテレビを見たりして過ごしている。今日も2人仲良くソファに並び、夜9時から始まるロードショウが始まるのを待っている。ふと、テーブルに置かれたグラスの下に敷かれている目新しいコースターにマスターは気が付いた。
「このコースター今日作ってたやつか?」
「うん!よくわかったね、結構可愛く作れたと思うんだけど、どうかな?」
「良くできてると思うよ。特にこの鈴蘭の刺繍なんか完成度がすごいな」
「ふふ、そうでしょ?」
マスターに自分の作品を褒められたユキは非常にご機嫌だ。嬉しそうに頬を緩ませ、ふわふわとした雰囲気を纏っているよう。そんな彼女が可愛くて仕方がないマスターは、隣に座る彼女の肩を抱き寄せて自分の腕の中へ閉じ込めた。
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