マスター、探偵になる
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18 マスター探偵になる
名探偵毛利小五郎のファンが集まって構成された団体がある。彼らは熱心な探偵ファンであり、自分たちも眠りの小声のような探偵になりたいと思っている彼らは日々探偵について談議しているようだ。
"探偵たちの集い"とかいう毛利小五郎のファンが集まる座談会に呼ばれた小五郎は軽井沢の別荘へ招待された。小五郎は自分が褒め称えられている文面と、豪華な食事等が用意されるという旨の手紙を見て気分が良くなった。そのため、"ぜひ知り合いの探偵も呼んで下さい!"という追記を見ずに、小五郎はついOKの返事をしてしまった。後に知り合いの探偵を連れて行かねばならないことを知った小五郎はどうしようかと頭を抱えた。
そんな小五郎を呆れながら見ていたコナンは、ふと、ある人物たちを思い浮かべる。そして「あ!僕いい人たち知ってるよ!」と小五郎に一言残し、探偵事務所を飛び出した。
まずは下階のポアロへ行きマスターとユキを誘う。その後、工藤邸へ向かい沖矢昴を誘い探偵(仮)2人集めたコナンに小五郎は、でかした坊主!と満足気に頷いた。
* * *
「待ってくれコナン君、どうして沖矢昴ここに居るんだ」
「おや、僕がここにいるのは気に入りませんか?いち学生として見識を広めるにはいい機会だと思って参加したのですが」
「あれ?沖矢さんも呼ばれてたんですね、こんにちわっ」
「ええ、こんにちわユキさん」
「…ユキ!早くバスに乗ろう、席は後ろの方がいいだろ。酔い止めの薬は持ってるか? 」
当日、軽井沢へ直行するバスへ集合した一同だが、沖矢を見つけたマスターはあからさまに不愉快そうな顔をしてコナンに苦言を呈した。
機嫌が急降下するマスターを見て慌てふためくユキ。そんな中、なぜか揚々と絡みに行く沖矢。そして沖矢に反発するマスター。この気まずい空気を避けるため、コナンは彼らの目を盗んでそそくさと蘭の後ろに隠れた。どういうわけかこの2人の仲は非常に悪い。
発端は黒の組織の仲間である夢野とかいう女性の調査の際に、沖矢昴がポアロに足を運んだときだ。頭が良く警戒心の強いマスターと話をしてもガードが固く有益な情報を得られないと考えた沖矢は、あろうことかマスターがいない時間をわざわざ狙い、ユキへと何度か接触していた。それを知ったマスターは当然沖矢を警戒した。しかし彼女に何かあったわけでもなく、ただ最近常連になった人だとユキに強く言われ、コナンの説得もあり最終的には沖矢を疑うことはなくなったのだが、上手いこと和解せず、それ以降犬猿の仲となった2人は顔を合わせる度にこうなるのだ。最近の沖矢の行動はもはや愉快犯である。
軽井沢到着後、何故か探偵として紹介されたマスターと沖矢昴は頭に疑問符を浮かべた。どうやらコナンは単純に軽井沢への小旅行という体で2人を誘ったらしい。
毛利さん、なんですかその紹介。僕は探偵として来たつもりはないんですが、とマスターは小五郎に訴えようとした。しかし、隣で手を繋いでいるユキがこっそりと話しかけてきたのでそちらに耳を傾ける。
「零くん、探偵さんだって、いつの間にそんな称号手に入れてたの?」
「僕は手に入れたつもりはないけど……」
理由は分からないがユキが目をキラキラさせて喜んでる。ユキから羨望の眼差しを感じたマスターは敢えて否定する気も起きず、結局探偵として今日一日過ごすことを決意した。
* * *
様々な暗号やトリックを考えてきたというこの会の提案者。毛利小五郎を筆頭に探偵と名乗る人達は探偵談議と称して雑談をしながら、例の暗号読解を試みている。しかし、コナンや沖矢、マスターにかかればそんなもの余裕である。
一方、同じ部屋の別テーブルではこの座談会参加メンバーの家族や恋人たちが雑談をしていた。ほぼほぼ愚痴大会であったがこちらも大いに盛り上がりをみせた。
「はあ、推理オタクってみんなこうなのよね」
「アイツ、普段色んな人を見てブツブツ考えてる癖に私の髪型が変わったことには気づかないのよ!」
「あ!それ私も経験あります!」
「そうよねそうよね?蘭ちゃん分かってるわね、えっとユキさんだっけ?あのイケメンの奥さんみたいだけど、実際どうなのよ」
「え!?わ、私はそこまで気にならないかな 」
「あら随分の理解のある奥さんなのね、私はそろそろ限界きそうだってのに羨ましいわ」
「というか、本当にイケメンよね貴女の旦那さん、それとあの大学院生っていう男性も!」
「ほんとに!うちの彼氏とは大違い。今からでもあの大学院生に乗り換えようかしら。それとも貴女の旦那さんの方が良いかしらね」
「…えっと」
「ふふ、冗談に決まってるじゃない」
冗談、そういってクスリと笑う女性は自身ありげに髪を翻した。この女性は綺麗な人だが、先程からずっと彼氏の愚痴を言っていたように思う。それに、一瞬見せた女性の挑発的な瞳に、ユキはなんだか少し嫌な感じがした。
いつもはこんな挑発をされたところで気にならないのに、今日に限ってはどうしてかユキの心に引っかかる。
* * *
「零くん、推理楽しかった?」
「そうだな、普段あんまりやることじゃないから新鮮だったよ。君の方は?」
「え?ああ、私も色んな人とお話できて楽しかったかな…」
という割にはいつもより声のトーンが暗い。いつもは楽しかったらオーラ前回で楽しかったと伝えてくる彼女が今では言葉と表情がチグハグだ。随分と盛り上がっているように感じたけど、思ったほどではなかったのか?とマスターはユキの様子に頭を捻る。
「何か嫌なことでも言われたか?」
「ぅえ!?いやそんなことは」
そんなことない、と言いながら目線をよろよろと動かした彼女にマスターは今の質問が図星であることを察した。キュッとマスターの袖口を掴み無意識に甘えたような動作をするときは、彼女に何か嫌なことがあった証拠だということをマスターは知っている。
マスターがユキの腕を引いて背中をぽんぽんと優しく叩けば、ユキは緊張していた表情を崩して彼の腕の中へと入り込む。
* * *
「あの蘭さん、先程の雑談でどんな話をしてたんですか?」
「さっきの雑談ですか?えっと、」
「実はユキが少し落ち込んでるみたいで」
「え?あ!もしかして――実はマスターの容姿が話題になってみんながかっこいい!ってなったんです。それで、その、1人の女性がユキさんに対してマスターにアプローチするとかどうとか冗談を言っていて…。きっとそれを聞いて複雑な気持ちになっちゃったんだと思うんです」
「なるほど、ありがとうございます蘭さん」
「いえいえ!ちゃんとユキさんのこと慰めてあげないとですよ!」
「ええ、そうですね」
夕食後、みんなで団欒している中、マスターはあまり喋らないユキが気になった。まだ例の女性のことが気になるのだろうか。ユキ、と声をかけると彼女が顔を上げる。その瞳には涙が滲んでいて、心做しか顔が赤い。その事に気がついたマスターはユキの額に手を当てた。
(熱があるな…。さっきの落ち込み具合からみても、もしかしたら、ここに来てからずっと本調子じゃなかったのかもしれない)
マスターは焦ることなく、常備してある解熱剤をリュックの中から取り出した。ゆっくりと薬を飲むユキを見守っているとき、突如響いた女性の悲鳴。
悲鳴に驚いたユキが、飲んでいた水が変なところに入ったのか噎せてしまったのでマスターは慌てて背中をさする。
そして、リビングで相互に事情聴取、楽しい座談会からギスギスした座談会へ即刻チェンジし最悪の状況になった。殺人事件が起きたのにも関わらずどこか楽しんでいる様子の自称探偵達を見てマスターは顔を顰めた。
「零くん」
「どうした?」
「さ、殺人事件って…」
「大丈夫、ここには探偵がたくさんいるから、すぐに犯人も見つかるさ。君は何も気にしなくていい。あまり色々考えすぎると熱が上がるから」
「うん…」
殺人事件とユキの体調不良がブッキングしたことにマスターは頭を抱えた。零くん零くんと涙目で俺の名前を呼ぶ彼女を正面から抱き締めれば、ぴとっと俺の胸あたりに額をくっつけて体と体の溝を埋めるようにすり寄ってくる。
「零くんは、あっち(事件現場)に行かなくて大丈夫?」
「もともと俺は探偵じゃないからな。それよりも俺が今の君から離れるわけがないだろ」
* * *
殺されたのは一端の探偵を名乗っていた1人の男性。彼は幼馴染と恋人を連れてここに来ていたようだ。そして、この座談会に集まった人たちの話を聞くうちに、被害者の男がこの座談会に来ていたほぼ全員の人たち(先の幼馴染と恋人以外)とも顔見知りであることが発覚した。
この部屋にいた人はもれなく全員容疑者である。自称探偵の1人がそう言い、それぞれに話を聞いていくために1人ひとり別室に呼び出された。つまりユキもマスターも別々に呼び出されることになる。
自称探偵たちに色々聞かれて涙目で戻ってきたユキは、小さくため息をついてその場に座り込んだ。まだマスターが戻ってきていない。そんな中、近くにマスターがいないことに不安になっているユキを沖矢が見つけた。
「ユキさん、随分不安そうにされていますが、大丈夫ですか?」
「あ、沖矢さん。もしかしたら私、すごく疑われてるかもしれないんです…どうしよう」
状況も体調も最悪のユキの思考は最高にネガティブな方向へと加速する。
「落ち着いて下さい、貴女には被害者との接点がないですからね、どちらかと言えば疑われている線は薄いかと思いますよ」
「ほ、ほんとうですか?」
「ええ、1人でいるのが不安ならマスターが戻って来るまで僕が側にいますよ」
「あ、ありがとうございます!」
一方、色んな疑いを持たれるも立派に仮説を立て全て言い負かして帰ってきたマスターは沖矢昴に慰められているユキを見つけて怒りそうになる気持ちをぐっと堪えた。一瞬鋭い目付きで沖矢を睨んだものの気が滅入って完全に落ち込んでいるユキを見て怒りよりも心配が勝った。
「ユキ、こっちにおいで」
「零くん…。あ、沖矢さんありがとうございました」
「いえいえ貴女の不安が少しでも軽減したのなら良かったです」
「…沖矢さん、僕の妻を口説くのを辞めてくれませんかね」
「まさかそんな、マスターが居なくて不安そうにしてたので声をかけたまでです」
「そうですか、それならもう大丈夫ですので」
* * *
その後、犯人の押し付け合い、知人の悪口・暴露大会とギスギスした空間と化したリビング。それを隅で聞いていたユキが先程飲んだ薬の影響か眠そうに目を擦った。
「ユキ、少し寝よう。薬が効いてきてるんだ」
ユキの真横に座っているマスターはユキの頭をそっと自分の方へ抱き寄せて探偵たちの推理ショーを見守ることにした。しかしどういう訳か、真剣に推理をするコナンは度々こちらに来てはマスターに状況を伝えて去っていく。 中々真相にたどり着けないコナンはマスターなら何か分かるかもしれないと必死である。
現場から少し離れたところで状況を俯瞰して見ていたマスターはあることに気がついた。
「コナン君!」
「マスター!何かわかったの?」
「わかったって程じゃないけど、ちょっと気になったことがあって」
こうしてマスターがたまたま見つけたヒントから推理が展開され、コナンの中で犯人があぶり出された。
そうなればもう眠りの小五郎の独壇場である。警察が到着する頃には、既に犯人は慟哭していた。
(もしかしてマスターあの時既に犯人分かってたんじゃねぇか?)
(流石毛利さん、あとコナン君もやっぱり普通の小学生には見えないな?まさか彼にも前世の記憶があるとか?いやいやまさかな)
補足
結局のところ、犯人はずっと恋人(被害者)の愚痴を言っていたあの女性である。何故あの女性がユキに挑発をするような発言をしたのか、実はこの座談会に来た際、最初の自己紹介でユキについて被害者が"可愛い"やら"お前もああいう風にお淑やかになれよ"など比較されたことが気に入らなかったらしい。とんだとばっちりである。
そして沖矢昴もとい赤井秀一はマスターのこと身近にいる数少ない同年代の友達だと勝手に思ってる。いじると案外面白い人だとか思ってて自分なりに仲良くなろうとしているのだが、今のところ全て裏目に出ている。
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