探偵たちの夜想曲
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2 探偵たちの夜想曲
アニメ第671-674話より
アニメ第671-674話より
「毛利さん!サンドイッチのお裾分けです。良かったら貰ってください」
「あれ!ユキさんじゃあないですか!いつもお裾分け貰っちゃって悪いな」
「わあ、美味しそう!ありがとうございますユキさん」
「いえいえ。そう言えば、毛利さんたちは今からお出かけですか?」
ポアロの営業終了後、余った食材を使ってサンドイッチを作り毛利探偵事務所へおすそを分けを持ってきたユキ。もう夕方だというのにピシッとスーツを着る小五郎を見てこの時間からお出かけ?とユキは疑問に思った。
「え?ああいやさっき帰って来て、でも依頼者は来てなくて、ってまた移動すんのかよ俺たち!」
本日、毛利探偵事務所にはある仕事の依頼があった。本来であれば既に依頼を解決し、ゆっくりと夕食を食べているはずだったのに。どうしてか未だクライアントに会うことすら出来ていない小五郎はユキの前でついつい愚痴を吐露した。
今日、前述のとおり依頼人からの呼び出しがあった小五郎は目的の場所へ行くも、依頼者へ会うことが出来なかった。すぐに集合場所を探偵事務所に変更して欲しいと連絡が来たので、夕食を返上までして帰ってきたというのに。帰宅と同時に鳴った通知。そして再び集合場所再変更の連絡がきたことに小五郎は大きなため息をついた。
ちょうど、そのタイミングで訪れたユキ。蘭がユキからサンドイッチを受け取る横で、小五郎のスマホに送られてきたメールの文章を見たコナンがあることに気が付いて口を開いた。
「おじさん、もしかして多分依頼者はもうここに来てるんじゃないかな?だって、」
その瞬間、パァン!!という大きな音が事務所内に鳴り響き、ユキは思わず耳を塞いだ。
ポアロで掃除をしていたマスターは、自分の妻がお裾分けを渡しに行った直後に鳴り響いた銃声を聞いて、慌てて探偵事務所への階段を駆け上がった。
「ユキ!大丈夫か?今銃声が聞こえたけど、何があったんだ?」
「あ、零くん。なんか私もよく分からなくって…」
「君に何かあったわけではないんだよな?」
「うん、私は大丈夫」
探偵事務所の前で身を縮めるようにしてしゃがみ込むユキを見つけたマスターは、直ぐに駆け寄って彼女の肩を引き寄せる。ユキの表情を見て、心配そうに眉をひそめたマスターは安心させるように彼女に声をかけると、銃声音の発信源である探偵事務所へと足を踏み入れた。
「あの蘭さん、いったい何が?」
* * *
「…なるほど」
蘭からことのあらましを聞いたマスターは、顎に手を添えて深く考え込む。現場には拳銃自殺した男と拘束された依頼人の女性。どうにも不可解な事件である。そう、確かに現状や蘭の話から鑑みるに難解そうな事件ではあるのだが…。
しかしそんなことより、マスターにとって最優先はユキのことだ。これ以上ユキを事件現場に留まらせるわけにはいかない。とにかく自分たちが事件とは関係なさそうだと判断したマスターは、ユキを連れて帰ろうと踵を返した。けれども、マスターとユキの行く先を、小さな名探偵が塞いでいた。
「マスター、何か分かったことある?」
「いや僕は探偵じゃないんだが…」
「でもマスターすごく頭が切れるから何か分かるかと思って」
(頼むから巻き込まないでくれるかいコナン君…)
コナンの純粋な瞳がマスターを見つめている。マスターはコナンの背丈に合わせて屈み「僕らはこの事件に関わるつもりはない」とはっきり伝えたはずだった。しかしそれでもマスターという優秀な大人をこの場から逃したくなかったコナンは適当な言い訳を並べて2人を引き留める。
そんなときに警察がやってきてしまったのである。警察と小五郎はこれから被害者の家まで行き調査を始めるという。現場にいたことで事件の関係者であると勘違いされたマスターたちは何を言う間もなく警察に同行をお願いされた。
どうして僕らまで巻き込まれることになったのか。マスターは車の中で考える。パトカーは店員オーバーのため自身の車で被害者宅へ向かうマスターとユキ。このまま自宅へ帰ってしまおうかとマスターは何度思ったことか。しかしこれ以上面倒なことになるのも嫌なので大人しく警察の指示に従うことにしたマスターは、現場に駆けつけた警察官の中に知り合いの顔が見えなかったことを思い出して小さく舌を打った。
(重要参考人として同行するといったって、僕に至っては音を聞いただけだぞ。どうして僕らが依頼者の自宅調査まで同行する必要があるんだ…)
マスターはとにかくユキを事件に関わらせることが嫌だったのだ。ただでさえ銃声を聞いて怯えてるのに。けれどこうなってしまった以上は仕方がない。幸いにもマスターはこういった状況には慣れている。
ゆらゆらと瞳を揺らし、不安そうに車窓を見ているユキの肩をマスターはぎゅっと抱き寄せた。
(ユキを連れて早く家に帰るためには、警察に協力してこの事件を解決させるのが必須条件だな)
いきなりの事件遭遇に思考が追い付かず、困惑することしかできないユキ。駆け付けた警察に言われるがまま、コナンたちと共に被害者の家まで来てしまったが、何もわからないユキにとってはただただ不安が募っていくだけであった。そんなユキの腕を引いて自分の隣へとくっつけたマスターは、「そういえば」と先程の蘭の様子を思い出していた。
被害者の家に到着してすぐ、友人からかかってきた電話を受け取った蘭。しかしどうにも回線の調子が悪く上手く会話ができないようだった。回線の調子が悪い、という状況は何も珍しいことではないが、いささかタイミングが良すぎるのではないかとマスターは感じた。
事件、被害者の家、タイミング良く途切れる回線、可能性があるとすれば…
(この部屋、盗聴されてる可能性があるな)
* * *
「次はこの部屋ですね…」
「うっなんかこの部屋変な臭いが」
マスターが盗聴器の存在を示唆したことにより、ひとまず盗聴器の捜索が始まった。警察が持ってきた盗聴器発見機のおかげでひとつふたつと見つかっていく盗聴器。そしてもう一つ、盗聴器のありそうな部屋の前にたどり着いた一同は、部屋の扉を開けた途端に飛び込んできた強烈な異臭に思わず声をあげた。うっと小さく漏れるユキの声を聞き逃さなかったマスターは、咄嗟にハンカチを取り出してユキの口元を抑える。
明らかにヤバそうな異臭。部屋の前にいる誰もがこの不穏な空気を感じ取った。ことさら、マスターの中では嫌な感覚がよぎった。それはもう、前世の記憶と結びついて警告してくるのだ。
先程からずっと怯えていて、マスターの手を強く握りしめているユキ。ユキには悪いが、今はユキや蘭たちをここから遠ざけるべきだとマスターは判断した。マスターとしてはユキから離れるのは本意ではないが…。本当ならずっと手を繋いでいてあげたいが、優先すべきはこの先にある“遺体”をユキの視界に入れないこと。 一度ぎゅっとユキを抱き締めたマスターは、ずっとつないでいた手を離した。
「…君たち2人はこの部屋から出て違う場所を探してきてくれないか?」
「…わ、わかった!」
突然離された手に、不安の色を浮かべるユキだったが、真剣なマスターの表情を見て、反射的に大きく頷いた。蘭の手を取って部屋を出ていくユキにほっと息をついて、マスターは異臭の元を確認しに行く。
異臭の元、ベッドの下にあったキャリーケースを開けるとそこには案の定、死体が入っていた。
(なんで死体がこんなところに?)
この不可思議な現状にマスターは首を傾げた。小五郎とともにこの事件を解決すべく何か他の手がかりがないかと部屋の中を探していると、今度は別の問題が発生した。
廊下から自分を呼ぶユキの声が聞こえ、彼女のもとへ向かったマスター。ユキと蘭に何があったのか聞いたマスターは頭を抱えた。どうやらコナンがいなくなってしまったらしい。今度はコナンが犯人に誘拐されたようだ。
(本当に勘弁してくれ…)
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