異世界からの旅人(後編)
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13-2 異世界からの旅人(後編)
最近、私には気になることがある。
最近、ポアロの買い出しに行かせてもらえなくなった。そして外へ出かけるときは基本的に零くんが必ず着いてくる。もちろん着いて来れないときだってあるけれど、前まではそんな時、何かあったら直ぐに連絡するように念押ししてからようやく外出を許してもらえたてた。しかし最近は外出の度に、なぜだか零くんの旧友である刑事さんやヒロくんが着いてくるようになったのだ。いや着いてくるというより目的地に彼らがいる。そして一緒に行動することになるのが最近の流れだ。
この不思議な事態に私は首を傾げた。
さらに、コナンくんまでもが道で私を見かける度によく着いてくるようになった。前までは挨拶をするだけのことも多かったのに、だ。
そしてもうひとつ、沖矢昴という男性とここ数日でぐんと親しくなったように感じる。彼は最近ポアロによく来てくれるようになった男性のお客様だが、不思議なことにポアロ以外でもよく遭遇するのだ。ただその度に零くんがちょっと不機嫌になって沖矢さんとの言い合いになり大変なことになる。
そうそう、まだあった不思議なこと。あの、夢野さんっていう女性も不思議だ。最近蘭ちゃんたちと同じ高校に編入して来た子みたいだけれど、私は彼女に嫌われているみたい…。彼女はきっと零くんのことが好きなのだ。だから私のことが気に入らないのだと私は踏んでいた。けれど、零くんは私のことが大好きなのだ。もちろん私も零くんが大好き。
あれ、それじゃあ彼女の謎は解けたじゃないかって、いや違うの。彼女は零くんのことを、たまに安室さんって呼ぶの。安室さんって誰だろうか。
そこでもしかして!と私は閃いた。安室とは、零くんに似た彼女の元恋人かもしれないと。だから零くんをその恋人に重ねているんじゃないかって、きっと今も忘れられないんだと思う。なんて仮説を私は立てていた。
まだまだある私の不思議な体験。それがこの前、コンビニで私と松田さんが一緒に向かっている途中、偶然夢野さんと居合わせとき。夢野さんは私と目が合うなり目を大きくして驚いていたけど、その後すぐに怖い顔をしてこちらに歩いてきた。
そしたら松田さんが、アイツか…なんて呟いて私の前へ出てきた。私の視界は松田さんの背中で埋まった。私の知り合いの男性はみんなガタイが良いみたい。じゃなくて、松田さんと対峙することになった彼女は何か言いたそうにしてたけど、直ぐに怒った顔をして帰ってしまったようだ。
夢野の行動一つひとつが意味不明なユキは終始首を傾げるばかりだった。夢野さんどうしたんたろうね?とユキが松田の方へ顔を向けるも、松田は難しい顔をして何かを考え込んでいる様子。
(さっきの女が降谷の言ってた前世の記憶があるかもしれない奴か、確かに妙な奴だったな)
「お前、さっきの女には気をつけろよ」
「大丈夫!私の方が零くんに愛されているという自信があるので!」
「いや何の話だ?」
ユキは勝手に妙な妄想を膨らませているが、普段からのマスターによる過保護と溺愛の成果かだろうか。マスターとの夫婦関係に絶対的自信を持つユキは、夢野という恋の刺客が現れたことにはそこまで動揺していなかった。
松田の言葉の真意を知ることなく、的外れな回答をするユキ。ひとまず、何も知ることなく呑気に笑っているユキに松田は安堵した。
意味が分からない。この世界に来てからコナン君に出会って沖矢さんに保護されるまでは上手くいってたのに。あの女と会ってから何かがおかしい。まず沖矢さんはバーボンが仲間だと思っていない。そして私の知っている安室透が存在しないのだ。だから安室透がバーボンだと言っても何にも伝わらないし、怪訝な顔をされるだけ。ポアロの降谷零が組織と関わりがある可能性を示したら、それこそ沖矢さんとコナン君から鋭い目線を浴びせられた。
いったいどうなっているんだ。彼は何故か本名でポアロで働いているし、マスターとか呼ばれてるし、奥さんいるし…。
そうだ、この奥さんと呼ばれてる女が全てを狂わせているのだ。
だってこんな女私は知らない。
ということは、つまりアイツも私と同じはずなのだ。そして変に原作に介入して原作を捻じ曲げたに違いない。
こうなったらあの女にどう原作改変したのかを聞き出さなくてはならなくなった。そのために私は先日その女が1人のタイミングを見計らって接触した。だけどあの女との話は全くと言っていいほど噛み合わなかった。いったいあの女はどこまで誤魔化すつもりなのだろうか。
そしてコナン君にも邪魔をされた。買い出しから帰ってきた安室さんもあの女を見た途端、私に向かって敵意を表した。
なんで、私がそんな冷たい目で見られなければならないのだろうか。
そうだ、あの女のせいなのだ、あの女が全て悪い。
その後は、何度接触を試みても何故か上手くいかなかった。基本的にあの女は安室さんと行動してて1人にならないし、ようやく1人になったと思ったら、まさか、あの松田陣平と歩いているのを目撃した。そこで私はようやく警察学校組救済済みの世界線だということを理解した。
なるほど、それなら安室さん、というより降谷零と親密になるのは理解できる。つまり、この世界は既にあの女の思い通りのストーリーというわけだ。
それなら、どうして私がこの世界に来たの?
……ああそうか、私があの子に成り代わればいいんだ。夢小説でもよくあるもの。気がついたらこの世界の人物に成り代わってたって話。だから私はあの子に成り代わるためにここに来た。
なあんだ、どうしてもっと早く気が付かなかったんだろう。そうと決まれば髪をあの子みたいな色にしなくちゃ、そしてシャンプーやトリートメントを真似して、化粧品も聞き出して、趣味とか、好きな食べ物とか色々聞き出してから、アイツを消せば、この世界で私は "降谷ユキ" に成り代わることができる。
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