異世界からの旅人(前編)
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13-1 異世界からの旅人(前編)
先日、沖矢昴のもとへ夢野と名乗る見知らぬ女性が突如現れた。どういうわけか沖矢昴が赤井秀一であるという事実を知っており、黒の組織についても何かしらの情報を持っている様子の彼女を危険人物と判断した俺たちは、女性を沖矢昴の元で保護するという名目で監視することになった。
正直、俺たちしか知らない情報をペラペラと喋り出す夢野という女性は未だ怪しさしかない。しかし俺たちの警戒を知ってか知らずか、夢野は毅然として俺たちに協力的である。
しかし終始愉快そうなその表情の裏に何があるのか分からない。組織についての情報を聞き出すと、概ね俺たちが知っている情報と一致していたが、途中で出てきたバーボンという組織の人物に関する情報だけは齟齬が生じた。俺たちにとってバーボンとは、先日乗ったミステリートレインで灰原を殺そうとした冷酷非道な組織の人物。味方なわけがない。
しかし夢野曰く、バーボンは味方であり、ポアロで働いている安室透と同一人物であるらしい。他にもバーボンについては支離滅裂な発言をしていた。
てか、安室透って誰だよ。
* * *
「ねぇマスター」
「なんだいコナン君」
「ポアロで安室透って名前の人、働いてたりする?」
「安室?いや、ポアロでは君の知ってる通り、僕とユキ、梓さんとヒロしかスタッフの経験はないよ」
「そう、だよね」
「何か気になることでもあるのかい?」
「ううん、もう大丈夫!」
(やっぱり安室透なんて人物は居ないよな…?)
(安室透って確か前世でそんな名前を偽名として使ったことがあったっけ。懐かしいな)
怪しい女性の発言が気になるコナンはポアロで聞き込み調査をする事にした。しかし結果はこの通り。安室透などという人物はいなかった。
その夜、沖矢昴にこの事を話すと彼の方からもポアロで調査をしてみると返事がきた。しかし結果は同じこと、バーボンに関する調査はこれ以上広がることはなかった。
後日、一応保護という形をとっていたので、怪しまれぬように例の女性を帝丹高校に編入させたのだが、さっそく蘭たちと接触をしたようだった。これであの女性はさらに怪しくなったわけだが…。
蘭から新しい友達とポアロに行くからコナン君もどう?とメッセージが来ていたのをみてコナンは眉を寄せた。とりあえず蘭からの連絡に肯定の返事をして、コナンは学校帰りにポアロへ寄って先回りする。ポアロに着いた際、カウンターで作業をしているユキさんに昨日マスターにしたのと同じ質問をしてみたがやはり同じ答えが返ってきた。まあ、そうだよなあ…。
「そんなに難しい顔して、何か悩みごと?」
「あ、ううん、なんでもないよ」
カランカランと店の扉の音。ポアロに訪れた蘭たちを見て、にぱっと顔を綻ばせて扉の方へパタパタと小走りするユキさんはマスターと同様、相変わらず年齢と見た目が一致しない。
「いらっしゃい!蘭ちゃんたち学校帰り?」
「はい!そうなんです。それで彼女!今日編入して来た子なんですよ!」
蘭の紹介に、ポアロへようこそ!と微笑むユキさん。そんな彼女に一瞬鋭い視線を向ける夢野をコナンは見逃さなかった。しかし夢野はすぐにニコリと笑い園子に話しかける。
「それより!さっき園子ちゃんの言ってたイケメン店長って?」
「そうそうってあれ?そう言えばユキさん、マスターは?」
「あ、零くんなら今裏にいるよ。ちょっと呼んでくるね!」
ユキの姿が見えなくなるなり 零くん…?と小さな声でマスターの名前を反芻し首を傾げる夢野。難しい顔をして何かを深く考え込む夢野を、コナンは警戒しながら見ていた。
しばらくして、バックヤードからマスターが不思議そうな顔をしてやってくる。
「いらっしゃいませ。初めてのご来店ですか?この店の店長の降谷です」
「え?あ、私、夢野って言います…」
「ええ、さっきユキから聞きましたよ。どうぞゆっくりしていって下さい」
初対面の夢野に自己紹介をし、ごゆっくりどうぞ、と空いてる席へ女子高生3人を案内するマスター。マスターの行動はごく自然のように思えるが、どうしてか夢野は動揺している。
なぜこのタイミングで挙動不審なのか、席に着いてからもユキさんやマスターの方をチラチラと見ては何かを思案する様子を見て、やはりこの人は怪しいとコナンの本能が警報を鳴らした。
しかし、コナンには相変わらず夢野の目的が分からない。どうしてユキを睨んでいるのか。まさか彼女が組織に狙われている可能性があるのか。いや、その可能性は低い。そもそもユキと組織の接点なんてないはずだろとコナンはかぶりを振る。
(クソッ何が目的なんだあの人。とりあえず赤井さんに連絡してみるか)
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