甘く冷たい宅配便
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12 甘く冷たい宅配便
アニメ第722話より
アニメ第722話より
今、ポアロの中には買い出しに出かけているマスターを除いて、お昼休憩を終えた梓とユキ。そして、ついこの間ポアロの看板猫となった野良猫の大尉。まあこの猫はここ数日ポアロに居座り続けるので、可愛がっている梓が"大尉"と名付けただけなのだが。
ちょうど小学校が終わる時間、遊びに来た少年探偵団たちが大尉と戯れていると、歩美の腕の中にいた大尉が突然飛び上がってポアロの外に出てってしまった。驚いてそのまま大尉を追いかける歩美を追いかける少年探偵団、を追いかけるユキ。
「梓ちゃん、私ちょっと飛び出した子供たちのこと見てくる!」
「は、はい!気をつけて下さいね!」
* * *
飛び出した大尉を追いかけてたどり着いたのは、ある宅配クール便のコンテナだった。おそらくコンテナの中へ入ってしまったのだろう。
「あ、いたいた、みんな大尉は見つかった?」
「あ!ユキお姉さん、それがこの中に入っちゃったみたいで…」
外から呼びかけても中々出てこないらしい。そんな大尉を見兼ねたユキは、私に任せて!とコンテナの中へ入っていく。そしてユキについて行く探偵団たち。思いの外、広いコンテナの中には荷物が大量に積まれており大尉捜索はスムーズにいかなかった。
それから随分と時間がかかってしまっていたようで、ユキがようやく大尉を見つけた!という時、背後でバタンと扉の閉まる音がした。どうやらトラックの持ち主が中に人が居ることに気づかずに扉を閉めてしまったようだ。
ここで探偵団とユキは完全にトラックに閉じ込められてしまう事態となった。
冷蔵コンテナに閉じ込められて数分後、ユキにぎゅううっと抱きしめられている灰原はなんとなく気恥ずかしくて目線を彷徨わせる。
何故こんなことになったのか、灰原の来ていたセーターの解れた紐。それがコンテナに入る前に何処かに絡まっていたのか、トラックが出発した途端スルスルとセーターが解れていき、ついに灰原が下着姿になってしまったからだ。だからユキはとりあえず自分の着ていたカーディガンを貸して灰原をぎゅっと抱きしめることにした。
「それだけじゃあ寒いでしょ?こうした方が暖かいね」
「そ、そうね 」
何か言いたげにユキを見た灰原は、にこりと愛らしい笑顔を返されたことで何も言えなくなった。代わりに自身に掛けられた上着に照れた顔を隠しそっぽを向く。
しばらくその体勢のままこれからどうするか話し合っていると、次は顔面蒼白になっていく光彦にユキは気付いた。なのでユキはすかさず灰原と自分の間に彼を挟み込んだ。突然女性2人に囲まれて真っ赤になった光彦は別の意味で危なそうだ。
宅配クール便に閉じ込められてさらに数分後…。灰原は先程まで頭上から聞こえていた声が聞こえなくなったことに気がついた。ちらりと上を向くとぼんやりとして目を虚ろにするユキ。それを見つた灰原はちょっと!と大声を上げた。
灰原に続いて様子のおかしいユキに気づいた探偵団たち。みんなが声をかけるも、眠そうに瞼をパチパチさせるユキは、戸惑う子どもたちに大丈夫だと笑いかけながら目を閉じた。
「まずい!起きてユキさん!」
この状況で意識を失うのはやばいと子どもたちは必死でユキの体を揺らす。
ユキお姉さん!ユキさん!という子供たちの声がユキにはほとんど届いていなかった。徐々に意識が遠くなっていくユキは、コナンと灰原の必死の形相を見ながら意識をフェードアウトさせた。
* * *
すっかり体の冷えてしまったユキをなんとか温めようとユキの周りにピッタリとくっつく少年探偵団はこれからどうすべきか話し合っていた。
しかし話し合うといってもどう考えてもこの状況は詰んでいると言わざるを得ない。しかも問題はユキだけではないのだ。
今から数分前、なんやかんやあって少年探偵団はコンテナの中から死体を見つけた。そしてコナンがマスターに状況を伝えるため細工したレシートを持たせた大尉を外に放った。さらに阿笠邸に届くはずの荷物に細工して沖矢昴にも助けを求めた。
さて、これ以上の手立ては果たしてあるだろうかと子どもたちが会議を開いているとき…。
助けが来る前に配達業者の2人に見つかってしまった。 死体を運んでるヤツらだ。
これは不味い。子供5人と気を失っている女性1人では何も出来ない。死体をコンテナに入れて運んでる奴らだぞ。何もないわけがない。どうすればいい、と焦るコナンの耳に、ちょうど待っていた人物の声が届いた。
「あの、そこの道譲って貰えませんか?」というマスターの声。それに気づいた子どもたちもマスターに助けを求めて声をあげる。
マスターは買い出しからポアロへ戻る途中だった。いつも使っている近道に車が止まっていたので、道を塞ぐ宅配業者に声をかけただけなのだが、なぜだか聞こえる少年探偵団の声にマスターは首を傾げた。そして、宅配車のコンテナの扉が開き子供たちを見たマスターは、一瞬でその状況を理解する。
騒ぐ子供たちに怒鳴る宅配業者はマスターの拳で一瞬にして地面へ沈んだ。圧倒的なマスターの強さに驚愕するコナンと、まるでヒーローのように登場したマスターに歓喜する子どもたち。
しかし、問題はまだ解決していない。
「ありがとうマスター!」
「大丈夫かい君たち、いったいどうしてこんなとこに」
「マスター!早くこっちに来てくれ!ユキさんが動かないんだ!」
「は、彼女もそこにいるのか?」
コナンの言葉を聞いた途端、急いでコンテナの中に乗り込んだマスター。ユキの様子を見て、彼は血相を変えて彼女の名前を呼ぶ。
ユキ!と名前を何度も呼びながら、マスターは強くユキさんを抱きしめた。すぐにコンテナを降りて車の中へ連れていき、何故か車に積んである大量の毛布を彼女の身体へ巻き付けてから、暖房を入れた。
「コナン君、今日はもう店を閉めて良いとポアロに戻って梓さんに伝えてくれないか?」
「うん、わかった!」
にっこりと笑みを浮かべながら梓への伝言をコナンに伝えたマスターは、笑っているはずなのに纏う雰囲気はちっとも穏やかじゃない。
ああ、あの宅配業者の人達終わったな…とコナンは心の中で悟った。
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