謎解きは喫茶ポアロで
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11 謎解きは喫茶ポアロで
アニメ885話より
アニメ885話より
「へえ、イルミネーション!とっても素敵ね」
「そうなんですよ!昨日大阪の友達から写真が送られてきて、やっぱりお2人もそういうところに行ったりするんですか?」
「ええ?今のところその予定はないけれど」
「じゃあじゃあマスターは?ユキさんとイルミネーション見に行きたいって思いません?」
マスターとユキさんのお気に入りの場所とか、始めてデートした場所とかどんな所に行ったんですか?と興奮しているせいかイルミネーションから徐々に話が逸れて夫婦の思い出話を聞き出そうとする蘭。
女子ってのはこの手の話が大好物だなと苦笑いを浮かべながら、コナンはその様子を眺めていた。
それじゃあ今夜行ってみるか?と奥さんの方を見て微笑むマスターに嬉しそうに顔を綻ばせるユキさん、それを見てきゃー!と頬を桃色に染める蘭。なんだこの疎外感…。
小学生の姿じゃなきゃ俺だって蘭を…と思っていたその時、カランカランとポアロに入ってきたのは、ついさっき話題に上がった大阪の友人2人、服部平次と遠山和葉だ。どうやら和葉が蘭を例のイルミネーションに誘いに来たようで、それに複雑そうな顔をする服部を見てコナンは再び苦笑いを浮かべた。
* * *
出かける前に、蘭が夕食を作る必要があるということで和葉と2人で探偵事務所に戻ってしまった。そのため俺たちはポアロで少しの間、時間を潰すことになった。
その頃、ポアロにはマスクと帽子を身につけた細身の男性と、サークル友達の誕生日会をするという大学生の団体が来ていた。
大学生グループの1人がパソコンを取り出して電気を借りたいとユキさんを呼びつけるので、ユキさんはそれに笑顔で応えて延長コードを渡す。なんでも誕生日メッセージを今から流すのだとか。
大学生が延長コードにパソコンの電源ケーブルを差し込もうとしたその時、バチッと火花が散るのと同時に店の電気が消えた。
その瞬間、聞こえたのは男の呻き声と生々しいな肉音と何が弾け飛ぶ音。
ユキさんの悲鳴を聞いたマスターがすぐに彼女のもとへ駆け寄った。マスターの指示のもと、梓さんがブレーカーを上げたので電気が戻る。視界が明るくなるとマスターは既にユキさんの前に立っていて、血の着いたユキさんの顔を見たマスターは表情を強ばらた。険しい顔をしながら、何も言わずに持っていたタオルでユキさんの顔に着いた血を拭っている。
状況が掴めず目をぱちくりとさせているユキさんを見たマスターは安心させるよう、彼女に優しく笑みを向けてから、ぎゅっと彼女の顔を自身の胸に押し付けた。
「よりによってこのポアロで事件を起こしてくれるとはな、本当に勘弁してくれ」
ユキさんを強く抱きしめたまま片手で顔を覆い、大きくため息を吐いたマスターは、事件現場を一瞥し、ユキさんが現場を見ないように誘導しながら彼女を連れてそのままバックヤードへ移動する。
ユキを現場から離してから数分後、なるべく早くこの事件を解決したいマスターは、コナンたちと共に現場を見て回っていた。その時、刺された男が呻き声をあげて生きているのを確認したので、彼らは警察と救急車を呼び一時待機することにしが、程なくして、男は直に救急車に運ばれ、警察もすぐに到着した。
「おいおい、なんでまたこの坊主がいんだよ…。んで?この店で何があったんだ、ゼロ」
「大学サークルの仲間の誕生日会で殺人未遂が起きた、その時ちょうど店のブレーカーが落ちたせいで詳細は不明、犯人も分からない。店にいたのは俺たち以外にあのサークルグループとそこのマスクとイヤホンをつけた男性だけ」
ポアロに到着した松田が真っ先に向かったのは店の亭主であるマスターのところ。相変わらず現場に思いきり首を突っ込んでいるコナンに松田は怪訝な目線を向けながら、マスターに事情の説明を求める。
するとマスターは的確に状況の説明を始めるのだが、いつも穏やかなマスターが真顔で淡々と話す様子は少し恐ろしい。何を考えてるか分からないが相当怒っているということだけはその場にいる誰もが感じ取ることができた。
「なるほど、そりゃ災難だったな」
「本当に、僕らの店で事件を起こすとはいい度胸だ」
スっと目を鋭くさせ事件を起こしたであろうサークルの人達に目を向けるマスターに松田の視線もそちらへ向かう。ふと、ポアロにいるはずのユキの姿がないことに気が付いた松田は、マスターに問いかけた。まさか事件に直接巻き込まれたなんてことはないだろうな。
「なあゼロ、ユキは大丈夫そうなのか?」
「大丈夫なわけないだろ、かなり落ち込んでるよ。早く犯人を捕まえてくれ」
旧友相手に苛立ちを隠そうとしないマスターを伊達がまあまあ、と落ち着ける。しかし良く考えればマスターがユキと離れて現場にいるということは、彼女自身に何か大きな問題が起きたという可能性はないのだろう。そのことに松田はひとまず安堵した。しかし既に現場には警察が来ていて、状況把握もあらかたできている。そのため松田がマスターに向かってアイツのとこへ行ってやれと促すと、マスターは素直に頷いてユキのいるバックヤードへ向かった。
「ユキ、大丈夫だよ。犯人はわかり易いし事件もすぐに解決するさ」
自分の店で殺人未遂事件が起きたことに消沈しているユキをマスターは抱きしめる。心配そうに大きな瞳を揺らすユキに、君が気に病む必要はないと伝えると彼女は弱々しく頷いた。
とりあえず警察も到着したことだし、捜査の方は任せれば大丈夫そうなのでマスターはユキのそばにいることを選択した。そんなマスターのもとに真剣な顔をしてやって来るのは小さな名探偵。
「マスター、さっき松田刑事と話してたみたいけど、もしかしてマスターも何かに気づいたの?」
だから僕は探偵ではないはずなんだけど??とマスターは思った。わざわざユキのいる場所へ来て、事件の話をしようとするコナンにマスターは内心毒づいた。
まあけど、証拠という証拠はまだないが、ずっとトイレに篭っていたあの男が犯人だと半ば確信していたマスターは、コナンに助け舟を出した。
この子なら、すぐに事件を解決に導いてくれるかもしれないと思ったからだ。マスターの予想を聞いて、自分の推理に確信が持てたのか、コナンはどこか納得したように笑みを浮かべた。
そして再び推理を始めた小さな探偵は何かを考えながら事件現場へ近づき松田につまみ出されていた。
なんでマスターには犯人の予想がついたかって?前世で公安警察として様々な経験を積んできたマスターである。単純に、彼からしたら素人犯行における怪しい奴を見分けるくらいのことは朝飯前であったということだ。
その後は、小さな探偵と大阪の探偵により事件は無事に解決した。刺された彼も無事らしいことをユキに伝えると彼女は良かった、と安心したように微笑んだ。
(それにしても…コナン君も大阪の名探偵も流石だな)
(流石マスターだ、やっぱり犯人の真相にたどり着いてたみてぇだし)
結局その日イルミネーションを見に行くことが叶わなかったが、後日隣町で行われるイルミネーションに訪れた降谷夫妻。お揃いの朱色のマフラーを買って楽しそうにお互いの首へ巻いているところを園子は目撃していた。
「あーー!あれって、もしかしてマスターとユキさん!いいなあ、私も真さんとイルミネーションを見に行きたい!ってそうじゃなくて早く蘭に知らせないと!」
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