マスターがテニスコーチ⁉
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9 マスターがテニスコーチ!?
アニメ705話より
アニメ705話より
「いいですけど僕にそんな大役が努まるかどうか…」
「平気よ!中学の頃テニスの大会で優勝したことがあるってこの前ユキさんがマスターの自慢してたの知ってるんだから!」
「え、そうなのか?」
「あ!確かにそんな話したかも!」
「それじゃあ、今度この伊豆にあるテニスコートに集合ですよ!」
閉店間際の喫茶ポアロ、園子は両手を合わせマスターに向かってお願いします!!のポーズを取った。
それは何故か。先日、空手のトレーニングのためにテニスを取り入れたという彼氏からテニスの手合わせをしたいとお願いされたからだ。手合わせに向けて張り切っている園子は、前にマスターについて自慢家に語っていたユキを思い出した。だからこうして学校帰りにポアロに立ち寄り、マスターによるテニスレッスンの約束を取り付けたのである。
「けど、君は良かったのかい?あんまり運動出来ないんだ。見てるだけになってしまうだろ」
「それなら大丈夫!私零くんがテニスしてる姿見るのすごく楽しみだから!」
「それは、君の期待に応えないといけないな」
身体の強くないユキは長時間の運動を医者に止められている。園子に誘われたのはいいが、目的のテニスをすることの出来ないユキが楽しめるのかどうかマスターは心配していた。しかし、そんな心配を他所にマスターのテニスしてる姿を見るのが楽しみだと笑顔を見せるユキ。どちらかと言えばマスターよりも彼女の方が乗り気なので、マスターもそれなら良いかと思いクローゼットから大きなバッグを取り出した。
さすが鈴木財閥というべきか、園子がテニス場の近くに別荘持っていると言うので今回の旅行は泊まりがけである。
* * *
零くんの運転で目的の場所に着いた後、テニスウェアに着替えた零くんと一緒に園子ちゃん達と合流する。
テニスウェアもバッチリ似合ってるなあと零くんを見つめていたらパチリと目が合った。
「今日はかなり日差しが強いからなるべく日陰で休んでるんだよ。それと動いてなくてもこまめに水分補給をすること」
「うん、任せて零くん!頑張って!」
「ああ、君にかっこいいところ見せなくちゃいけないからな」
私が座る前にベンチにタオルを敷いて、ぽんぽんと私の頭を撫でてからテニスコートに移動する零くんを見つめる。
園子ちゃんや蘭ちゃんが見守る中、見事なサーブを決める零くんに、いつの間にか私たちのいるコートに集まってきた外野から拍手が湧き上がる。ついでに私の気持ちも盛り上がる。やっぱり、零くんかっこいい!!
その後もベンチの上でぼんやりと零くんの活躍を眺めてたら再び彼と目が合った。小さく拳を作り、頑張ってと合図を送ると何故か物凄く焦った表情の零くんが……
園子たちとテニスをする中、ちょこちょこベンチの方にいるユキを確認していたマスターは、目が合う度にグッと拳を作って応援してくれるユキを見て癒されていた。しかし今、彼女の方に目線を向けたマスターの視界に飛び込んできたのは彼女の方へすごいスピードで飛んでくるテニスラケット。
まずい、と思ったマスターが咄嗟に彼女の名前を叫ぶが、間に合わず飛んできたラケットは彼女の側頭部に直撃する。その瞬間を見てマスターはサッと全身の血の気が引いていくのを感じた。
テニスラケットはそのままユキのこめかみへと直撃した。ゴンッという鈍い音が響くと同時にぐっと痛みに耐えるように顔を顰めたユキ。マスターはベンチから落ちそのまま地面に倒れるユキをすんでのところで受け止める。意識をなくして倒れ込んでくるユキを見て、マスターは慌てて彼女の頭に触れた。
「ユキ!ごめんすぐに気が付かなくて、痛かったよな、早く手当をしないと」
* * *
ユキさんが倒れたことで練習どころではなくなってしまった俺たちはテニスの練習を中断し、ユキさんにラケットを当てた張本人の別荘で1度休憩をすることとなった。テニス場から一番近い別荘だったのと、怪我をさせてしまったことのお詫びがしたいという話だったので少し不服そうにしていたマスターもとりあえずはその提案に頷いてくれた。
医者が来るまでのマスターは珍しく焦っていて少し怖い顔をしていた。ソファに横になるユキさんの怪我した部分を撫でるマスターはじっと彼女の横を動こうとしなかった。途中、スマホで動画に収めとけばネットに衝撃映像をアップできたのにな、とヘラヘラする男を物凄い目力で睨みつけていたけど、ユキさんに触れる手は変わらず優しいまま。
それにしてもこの人、応急処置の仕方も完璧だ。周りの人への指示も的確。包帯の巻き方だって丁寧かつ迅速で慣れてるようにも見える。
駆けつけた医者に軽い脳震盪だと診断され、しばらく休めば大丈夫だろうと言われたときも、本当に大丈夫なんだろうなと医者に向けて物凄い威圧を放っていた。
その後、エアコンの調子が悪いこの部屋ではなくこの別荘の2階に部屋を持つ石栗という男性の部屋を借りることになったが…「彼女を男の部屋で寝かせるのか?」とマスターは複雑な顔をしていた。ユキさんを抱きしめる手には力が入っていたようにも見える。
「マスター、流石に涼しい部屋で休ませてあげた方がいいんじゃないかな」
「それは、そうだが…」
確かに、マスターの気持ちはわかるけど。
背に腹はかえられない…とマスターが渋々部屋のベッドまで彼女を連れていったことで事態は一段落した、ように思えた。
とりあえず、テニスは一旦休止してお昼ご飯をみんなで食べることにした俺たちは別荘にある食卓を囲んで談笑していた。部屋に居座るつもりだったマスターもユキさんために軽食を作ると言って2階から降りてきていた。
「それじゃあ僕は彼女の様子を少し見てきますね」とサンドウィッチを作り終えたマスターがサンドイッチと飲み物を乗せたトレーを持ったとき、バタンッ!!と重い物が落ちたような大きな音が響き渡った。
「今、上から音が聞こえたような」
「石栗くんの部屋の辺りから聞こえた気がするわ」
「早く見に行かないと!」
焦ったみんながバタバタと階段を上がっていき、目的の部屋の前で立ち止まる。マスターが部屋のドアを開けようとするも、ガタガタというだけで開かないドア。どうやら鍵がかかっているようだ。
「は?どうして鍵なんか閉まってるんだ(彼女が寝てるんだぞ、どうして鍵を閉める必要がある?)」
さっきまで閉まってなかったのに、と呟くマスターは1度深呼吸をしてスっと真顔になり、どうやって部屋の様子を確認するかと話し合う石栗さんの友人たちを無視して、どこからかヘアピンを取り出した。そのまますました顔でピッキングを開始したマスターは数秒後、難なく解錠をした。
「鍵、開いたみたいですよ」
「「え?」」
えええ、この人いまピッキングしてたよな?
それって普通にできることじゃねぇよな?
そのまま何事もなかったかの様にマスターが扉を開けるが、数センチ開いた所で何かに引っかかったような音がして、それ以上は開かないようだった。いったい何が引っかかっているのか気になった俺はドアのそばにいたため微妙に開いた隙間から中を覗き込む。そして床に目を向けた瞬間、予想だにしない光景に息を呑んんだ。
「マスター、無理やり開けたらダメだよ」
「コナン君、何か見つけたのか」
「…この扉、人の死体に塞がれてるんだ」
扉の隙間から見える血溜まりと男の人の足、明らかに人の死体だ。俺と同じようにドアの隙間を覗いたマスターはユキさんの眠る部屋で事件が起こったことに表情を強ばらせた。とりあえず直ぐに警察へ連絡しなくては。
* * *
警察により石栗さんが死亡していたこと、部屋が完全な密室になっていたことが明らかになり、ユキさんも警察により窓から外へ連れ出された。彼女が目を覚まさずにずっと眠っていたことが幸いか。マスターは彼女のもとへ駆け寄り、何も知らずに寝入るユキさんを見てほっと胸を撫で下ろしていた。
確かに起きたら目の前で死体が転がってるなんて光景はトラウマものだろう。
「ふわあ、あ、あれ?ここどこだろう」
ユキは目を覚ますと見た事のない家のソファの上にいた。部屋の中をよく見ようと体を起こした途端、ズキリと痛む頭にユキは思わず表情を歪めた。
「いった、(そういえばさっき何かにぶつかったような)」
「ユキ!良かった目が覚めたのか、まだ頭が痛むのか?」
「あ、零くん」
「とりあえず水分は取っておこうか、だけどまだ横になってた方が良い」
「ありがとう。あの、テニスの練習は?」
「それなら外でみんなやってるよ、僕のコーチはもうおしまいだ」
「え?だってみんな零くんに教わるの楽しみにしてたのに…」
「それなら平気だよ、園子さん達は代わりにテニスサークルの人たちに教わってるから」
それに、こんな状態の君を1人で放っておけるわけがないだろ。本当なら今すぐ帰って病院に連れていきたいくらいなんだが。君はここに来るのをかなり楽しみにしていたみたいだし、一応医者にも安静にしていれば大丈夫だと言われていたからな。とマスターはユキが横になっているソファの前に座り彼女の頭に触れる。
「明日、みんなで温泉に行こうって」
「わあ!それは楽しみだね、零くん!」
「ああそうだな」
そう言ってマスターは包帯の巻かれた彼女の頭を優しく撫でて、楽しみだと嬉しそうにする彼女の目元にそっと口付けた。
(せっかく旅行へ来たのに、君だけ怪我して、何も楽しめないだなんて、それでは君が悲しむと思ったんだ)
窓越し、コナンを道連れにテニスの練習そっちのけでマスターとユキの様子を観察していた蘭と園子は、瞬きすら惜しいというほどに目を凝らしていた。
「わーーー!今の!見た?蘭!」
「うん!マスターとユキさん、やっぱり素敵だなあ」
(おいおい、お前らテニスはどうしたよ…)
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