『ジジイになってもあだ名で呼び合える友達を作れ』
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「俺が以前から買いだめしていた大量のチョコが姿を消した。食べた奴は正直に手を挙げろ。今なら3分の4殺しで許してやる」
「3分の4ってほとんど死んでるじゃないですか。っていうかアンタいい加減にしないとホント糖尿病になりすよ」
神楽が万事屋の仲間入りをしてから翌日の昼間。リビングのソファでお茶を汲む新八は、たかがチョコごときにいかにも怒ってますといった表情で仁王立ちする銀時に呆れながら言葉を返す。
「またも狙われた大使館、連続爆破テロ凶行続く…物騒な世の中アルな〜私怖いよパピーマミー」
そんな新八の向かいには真剣な顔で鼻血を垂らしながら新聞を読んでいる神楽。神楽の鼻血を見た銀時はすぐさま目を光らせた。そして神楽の持つ新聞を破り捨て、彼女の両頬を思いきり掴んだ。
「怖いのはオメーだよ。幸せそうに鼻血なんか垂らしやがって。美味かったか?俺のチョコは」
「チョコ食べて鼻血なんてそんなベタな〜」
「とぼけんなァァ!!鼻血から糖分の匂いがプンプンすんだよ!!」
「バカ言うなちょっと鼻クソ深追いしただけヨ。それに昨日の夜ユキ姉に許可もらったから問題ないネ」
「年頃の娘がそんな深追いするわけねーだろ、それとユキはオメーのせいで昨日気絶してからずっと寝込んでんだよ。テキトーな嘘ついてんじゃねぇよオメーは!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてよ2人とも」
ガタガタガタとテーブルを揺らしながら揉め合う銀時と神楽を見て、さすがに仲裁せねばと新八が立ち上がろうとしたその時、ドゴッという鈍い音が万事屋に響いた。外から聞こえた音のようだが。
なんなんだいったい…と万事屋を出た3人は、下の階でスクーターを横転させて倒れてる男を目撃した。
「事故か…?」
第3話
『ジジイになってもあだ名で呼び合える友達をつくれ』
『ジジイになってもあだ名で呼び合える友達をつくれ』
道端には店前で起きた事故にブチ切れるお登勢。
ああ、可哀想に。あの飛脚のあんちゃん寄りにもよってあの妖怪ババアの店で事故るなんてやっちまったなあ、と銀時が他人事のようにその光景を眺めているとき、クイッと袖を引かれる感覚に振り向いた。
「…ん、銀ちゃん今すごい音がしたけど」
「アレ!?ユキちゃんいつ起きたの?なに勝手に起き上がってんの?怪我は大丈夫なの?」
「うん…まだ少し頭痛いけど多分へいき。それよりあの飛脚の人大丈夫なのかな」
「え、あのユキちゃん!?心配なのは分かるけどお前はまだ寝室にいてくれ頼むから!!」
* * *
「くらあぁぁあああ!!テメェ人の店に何してくれとんじゃワレェ死ぬ覚悟はできてんだろーな」
「ス、スミマセン昨日からあんま寝てなかったもんで」
「よっしゃあ!!永遠に眠らせてやらァ」
「あ、お登勢さん怪我人相手にそんな」
ユキに続いて下へ降りていった万事屋一同。怪我人の胸倉を掴み本当に殺しそうな勢いで飛脚の男に殴り掛かるお登勢に対して、新八が止めに入った。
そしてそんな新八の横で、銀時は地面に散らかった荷物をひとつ拾い上げる。
「おいアンタ、荷物えらいことになってんぞ…」
そんな銀時の様子を見た飛脚はある小包を取り出し、銀時へ差し出した。「これを…俺の代わりに届けて下さい。届け損なったら俺…クビになっちゃうかも」と言い残して。
* * *
しばらくして4人がたどり着いたのは立派な建物、戌威大使館の前。先程渡された小包に記載された住所はどうやらここらしい。
「銀ちゃんどうして私も一緒に?」
「そりゃあ行き先的に大江戸病院に近そうだし、ついでにお前を病院に連れてこうと思ってな」
「もう、別にそこまでじゃないってば」
「なに言ってんだお前、お前の大丈夫ほど薄っぺらい嘘なんかねぇんだよ」
「ちょっと2人とも、そんなことより早く荷物渡して帰りましょ」
「ああそうだな、いつまでもこんなおっかねー所居られねぇや」
大使館の門の手前、届け物を渡すのに、ここには門番とかいねぇのかよと辺りを観察する銀時と新八。その横でつまらなそうに小包をいじくる神楽にボケっと大使館を見つめるユキ。そんな4人のもとに1人の天人がやって来た。戌威族の天人だ。
「おい、こんなとこで何やってんだテメェら。食われてーのか、ああ?」
「いや僕らただ届け物頼まれただけで、すぐ帰りますんで」
「そうそう、ほら神楽。早くそれを渡せ」
「なんだ?届け物が来るなんて聞いてねーな。最近はただでさえ爆弾テロ警戒して厳戒態勢なんだ」
「まあそう言わずに、ドッグフードかもしれねぇだろ受け取っとけ」
せっかく運んできた荷物を意地でも受け取ろうとしない天人に痺れをきらした銀時は、神楽から小包を取り上げて面倒くさそうに天人へ押し付けた。
しかし、パシンッと振り払われる手。
その勢いで飛んで行った小包は空中に弧を描いて大使館の敷地へ入っていった。そして、
ドッカーーン!!!と激しい音と爆風。先程の天人の話と今爆発した小包、2つの事象を照らし合わせた銀時と新八は思わず顔を引き攣らせた。
「なんかよく分からねぇけど、するべきことはよく分かる。オメーら今すぐ逃げろォォオオオ!!!」
そう大腹から声を出した銀時は、隣でポカンとしているユキを片手で担ぎ、その場からすぐに走り出そうとする。
しかし、戌威族の天人に手を掴まれた新八が銀時の着物の裾を掴んだおかげで進めない。そのため隣を通り越しそうになる神楽の手を銀時は思いきり掴んだ。
「新八ィィィ、テメェどういうつもりだ離しやがれ!」
「嫌だ!一人で捕まるのは絶対に嫌だ!」
「俺のことは構わず行け!的なこと言えねーのかお前はあ!!」
「私に関わらず先に逝って2人とも、銀ちゃんがユキ姉を離してくれたらユキ姉だけは私が連れて逃げてあげるヨ」
「なんだと神楽、俺とユキは一心同体、運命共同体だからそんなことはできませーん」
ミシミシと音を立てる腕、ブチブチとちぎれそうになる服。不毛な言い争いを続ける3人のもとに、とうとう建物から大量の天人が飛び出してきた。
「ぬわぁぁあああ!ワン公来たァァアアア」
* * *
「は、はあ助かったマジで危なかった」
『HOTEL IKEDAYA』のとある一室。戌威星のヤツらからなんとか逃げのびることが出来た万事屋一同はその部屋に潜り込むことでひと息つくことが出来た。膝を抑えながら呼吸を整える新八は、部屋に集まった侍たちを見渡す。
先程捕まりそうになった僕らを助けてくれた桂という侍。銀時とのやり取りから知り合いのような雰囲気だったのだが。
「あの、銀さん。さっきの人、桂さんと知り合いなんですよね?一体どういう人なんですか?」
「んーテロリスト」
「はい!?」
さっきの騒動により目を回して気を失っているユキを横に寝かせながら銀時はそう答えた。体調が万全ではない上に逃げる際、銀時の肩の上でのジェットコースターを体験したユキは耐えられず気絶した。
「おい銀時、そんな言い方は止せ。この国を汚す害虫"天人"を討ち払い、もう一度侍の国を立て直す。我々が行うは国を護るがための攘夷だ。卑劣なテロなどと一緒にするな」
「攘夷浪士だって!?」
「なんじゃそらヨ」
攘夷浪士…攘夷とは二十年前の天人襲来の時に起きた、外来人を排そうとする思想。高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を感じた侍は彼らを江戸から追い払おうと一斉蜂起して戦った。しかし天人の強大な力を見て弱腰になっていた幕府は、侍達を置き去りに勝手に天人と不平等な条約を締結。幕府の中枢を握った天人は侍達から刀を奪い彼等を無力化した。
「その後主だった攘夷志士は大量粛清されたってきいたけど…」
と説明する新八の視線の先にはその攘夷浪士たち。そしてその中に一人、見覚えのある顔がそこにいることに気がついた銀時は、あることを察して顔を顰めた。
「おいヅラ、テメェどういうつもりだよ」
「ヅラじゃない桂だ」
「どうやら俺たちは踊らされてたらしいな…なぁ飛脚のあんちゃんよォ」
「あ!ほんとネ!あのゲジゲジ眉デジャヴ」
「ちょっとどういうことですかゲジゲジさん!」
「全部テメェの仕業か桂。最近世を騒がすテロも、今回のことも」
「たとえ汚い手を使おうとも手に入れたいものがあったのさ」
そう言うと桂は持っていた刀を、銀時たちの前に突き出した。
「…銀時、この腐った国を立て直すため、再び俺と共に剣をとらんか。白夜叉と恐れられたお前達の力、再び貸してくれ」
「銀さん…アンタも攘夷戦争に参加してたんですか」
「戦が終わると同時に姿を消したがな。全くお前の考えてることは今も昔もわからん」
「俺は派手な喧嘩は好きだが、テロだのなんだの陰気クセーのは嫌いなの。俺達の戦いは終わったんだよ。それをいつまでもネチネチネチネチ、京都の女かお前は!」
「バカか貴様は!京女だけでなく女子はみんなネチネチしている。そういう全てを含めて包みこむ度量がないから貴様はモテないんだ」
「バカヤロー俺が天然パーマじゃなかったら今頃モテモテだよ?それに今の俺にはユキがいるからそれ以上は要らねーよ」
「なんでも天然パーマのせいにして自己を保っているのか哀しい男だ」
「哀しくないわ!人はコンプレックスをバネにして高みを…」
「アンタらなんの話をしてんだ!!!」
渾身の新八のツッコミにより、一度会話を止めた桂はゴホンとひとつ咳払いをして銀時に向き直った。
「…俺達の戦いはまだ終わってなどいない。既に我等に加担したお前達に断る道はないぞ。テロリストとして処断されたくなければ俺と来い。元々お前達の居場所はここだったはずだ。」
「居場所ね…」
そう呟いた銀時は面倒くさそうに自分に向けられた刀を振り払い、眠っているユキの横に腰掛けた。今の俺の居場所はコイツの隣なんだよ。だから攘夷に加担するつもりはない。そしてなんとしてでも早くここを脱出してユキを病院へ連れて行かなければならない。
とりあえず桂を説得しねぇとなと、思考を巡らせていたとき――
バンッと蹴られた部屋の襖。そして次々に入ってくるのは黒い服の男たち。
⋆つづく⋆