『コスプレするなら心まで飾れ』
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「それで、私の娘を探して欲しくて。もしかしたら何かに巻き込まれているかもしれなくて」
今日、依頼内容を聞きに来て欲しいということで依頼人の屋敷に招かれた万事屋一同。
遊びに行ったきり帰って来ない娘の捜索して欲しいということで依頼人から渡された写真には、少しぽっちゃり気味のガングロ金髪ギャルの姿が。
「ああ、確かになんかこう、ハムを作る機械に巻き込まれている可能性が」
「いやそうじゃなくて、何かやばい事件とか」
あまりにも適当に返事をする銀時は絶賛二日酔い中だ。依頼人も思わずツッコミを入れた。しかし胃の中が気持ち悪すぎてお茶を飲むことすらままならない銀時は死んだような目で写真を見ている。
「ちょっと銀さんしっかりして下さいよ、ユキさんもボーッと外眺めてないでちゃんと話聞いてください」
「えっとやばい事件…ハム事件とか?」
「ユキさん!?ちょっと2人とも何言ってんですか!せっかくきた仕事パーにするつもりですか!?」
思わず机を叩いて立ち上がった新八は、依頼人に対して不遜な態度をとる上司2人を指さして注意する。しかし、銀時もユキも揃って新八から目を逸すのだ。
「んなこと言ったってよォ。俺ァ今日二日酔いなんだよ」
「わたしも、こういうこと慣れてなくて…」
トン、と風情ある竹の音が響くお屋敷。銀時たちが依頼人との商談をしている間、お庭でししおどしが傾くのを眺めていた神楽は何やら騒がしい大人たちの様子に首を傾げた。
こうして家出娘捜索の依頼を承った万事屋一同はとりあえず娘さんがよく通っていたという、天人が経営しているバーへ訪れることにした。
ユキと神楽は写真を持ち少女の聞き込み調査、その間銀時と新八はバーのボックス席を借り作戦会議をするつもりだったのだが、如何せん二日酔いのため調子の優れない銀時は役に立たない。
はあ、と新八はため息をつき、カウンターの店員に聞きこみ調査をする2人の様子を見る。
「写真なんか見せられたって地球人の顔なんて見分けつかねぇんだよ。それで名前はなんて言ったっけ?」
「あれ、えっとハム子」
「オイ!今付けたろそれ!そんな適当な名前つける親いるかよ!」
「えーいちいち細かい男アルな。ユキ姉なんだっけコイツの名前」
「あ、えーとブタ子…?」
あれ?と小首を傾げながら写真をよく観察した後に出てきた名前がそれか。ユキさんの方が酷いこと言ってるよ、何言ってんだあの人は!と新八は心の中で叫んだ。こっちはこっちで全然仕事が進んでない。
「ちょっと銀さん、想像以上にユキさん役に立たないんですけど」
「だからユキは家に残せっつたろ、なに勝手に連れてきてんの?」
「アンタが二日酔いだからだろ!とりあえず依頼人の家に話を聞きに行くだけだし、ここは一応、万事屋のベテランであるユキさんを連れて行った方が良いと思ったのに」
――あの、今日の銀さん役に立たなそうなんですけど、ユキさんどうしますか?
――え?なにが?
――だから今日は銀さんが行くよりもユキさんが行った方がちゃんと取引できると思うんですよ。
――私が行った方が……新八くん…!!わかった、私も頑張ってみるよ!
確か今朝、依頼人のとこへ行く前にこんな会話をした。何でも屋と称する万事屋に舞い込んでくる依頼は確かに危険なものが多い。脆弱なユキにとってはなおさら。だから今の今まで銀時は家のことをユキに任せ、ユキが依頼に関わることがないようにしていたし、ユキ自身も自分が役に立たないことをわかっているので依頼には積極的に関わらないようにしていた。
しかし今朝、新八に「ユキさんのが役に立つのでは?」と言われ、おだてられたユキは見事に調子に乗ってついてきたのである。
せっかく久々に舞い込んだ仕事だというのに、みんなして仕事に対する姿勢が雑である。そんな中、二日酔いの悪化を感じている銀時は一度トイレに立つ。そのタイミングで新八のもとへやって来た神楽とユキはなんの成果も得られなかったことで既にやる気を無くしているようだ。
こんな調子では何も進まない。そう考えた新八は今日は仕事を切り上げまた明日、出直して来ようと提案した。
「うん、そうしよっか…今日はなんか疲れちゃったし」
「あれ?でも銀ちゃんいないアル」
「ほんとだ、私ちょっと探してくるね」
そう言ってユキがボックス席のソファから立ち上がろうとしたとき、カチャリとユキのこめかみに充てられる拳銃に神楽は目付きを鋭くさせた。
「オイ、テメェらかコソコソ嗅ぎ回ってる奴らってのは」
「な、なんだアンタら!!」
「テメーらユキ姉からその拳銃離せヨ!」
テーブルを飛び越えた神楽の回し蹴り、ユキのこめかみに充てられた銃は神楽の蹴りによって吹っ飛ばされた。しかし相手は一人ではなく、複数人。しかも奴ら、何か手に怪しい薬を持ってる…。
「待って神楽ちゃん!こいつらなんか妙なものを持って…」
何かを言いかけながら、パタンと隣で倒れる新八。それに気を取られ油断したのか、複数の天人に羽織い締めされ妙な薬を嗅がされた神楽も気を失った。その光景を何も出来ずに見ていたユキは、腰を抜かしてその場にへたり込む。
「ふ、2人に何したの…」
「心配すんなよ嬢ちゃん、テメェは蛇絡様曰く特殊な種族らしいからな」
目の前の天人はユキの両頬を掴み物色するような目付きで彼女の顔を観察する。
確かに不思議な瞳をしてるなァ、天人のひとりがそう呟くのを最後に、ユキの意識も完全に途絶えてしまった。
* * *
一方で、二日酔いの吐き気が腹の不調へと変わりトイレから出られなくなってしまった銀時。微妙に少なめのトイレットペーパーを見てちょっとコレ足りるかな、なんて考えているとトントンと個室の戸を叩かれる。
「ハイ、入ってますけど」
「いつものちょうだい」
「え?」
「早く!いつもちょうだいってば!」
「い、いつものって言われても、いつものより水っぽいんですけど」
「何しらばっくれてんのよ。金のない私はもうお払い箱ってワケ?」
「あ?あのさっきから言ってることがよく分かんねぇんだけど…」
トイレに座りながら、意味不明な会話に不信感を抱く銀時。いったいなんだコイツは…とトイレットペーパーを手に取りケツを拭きながら適当にあしらおうと会話を続けると、今度はまた別の人物の声が聞こえてくる。
「誰に話しかけてんだボケが。もうテメーに用はねェよブタ女ァ!!」
ドガシャンッという派手な音、明らかな暴力の雰囲気に銀時は咄嗟にトイレの個室を飛び出し木刀を構えた。
すると足下には見覚えのある家出娘が転がっており、銀時の目の前には物騒な物を持っている見知らぬ天人が複数人。
「オイ、男は男でもお前、エラいのに引っかかってたみたいだな」
とりあえずハム子を肩に担いだ銀時は向かい側にいる天人へ向かって一直線に木刀を振り上げた。そしてトイレを出ようと扉を蹴破ってさっさと退散しようと考えていたのだが、行く先は既に天人により囲まれていたようで、これは面倒なことになったな…と銀時頭を抱えた。
とにかく目の前のコイツらをどうにかするしかないと銀時は木刀を握り直す。
不意に、斬り倒した天人の後ろ、銀時の視界に想定外の光景が飛び込んでくる。
天人たちに抱えられているのは新八、神楽、ユキ。3人は既に意識を失っているようで、今まさに天人によって連れ去られようとしているその光景に銀時は釘付けになった。
「新八、神楽、ユキ!?おいどうしたんだ!テメーら何しやがった!!!」
油断した。連れ去られる3人に気を取られた銀時は目の前の敵の攻撃を避け損なった。体制を崩したまま、壁側へ追い詰められた銀時は天人に左肩を一突き、高いビルの中へいた銀時は、そのまま崩れた壁と共に数メートル下の地面へと落下した。
⋆つづく⋆