チョコの行方

  • バレンタインが苦手だったアキト。
    しかし、イチヤから贈られたチョコは例外のようで……。

  • イチヤ

    おい。
    せっかくやったのに食わねえのかよ。

  • アキト

    いや、もったいなくて。
    これだよ、これ!

  • アキト
  • イチヤ

    おれはまったく手をつけてないけどな。

  • チョコも手作りではないし、包装もしていないと言いたいイチヤ。

  • アキト

    そんなことはわかってるけど、
    イチヤさんがくれたって思うと感動しちゃって。

  • イチヤ

    お前って、割りと感情表現が豊かだよな。
    そんな感じ全然しないのに。

  • イチヤはアキトの片頬を指でつまむ。
    やわらかく笑うイチヤを前に、アキトはムラムラしてくる。

  • アキト

    イチヤさん……。
    キスしよっか。

  • イチヤ

    何でそうなる?

  • アキト

    イチヤさんが無防備に笑うから。
    そんな優しく笑うなんて反則だよ。

  • イチヤ

    どこが優しいんだよ。
    意味わかんねえ。
    つうか、チョコ食わねえなら、おれが食うから

  • アキト

    そ、それだけは、やめてください。
    お願いします。

  • イチヤ

    じゃ、今日中に食えよな。

  • アキト

    う、うう。

  • イチヤ

    返事ははっきり。

  • アキト

    は、はい。

  • イチヤはため息を吐いた。
    まさか、こんなにも自分があげたチョコを大事にするとは。
    呆れながらもまあまあ照れていた。

  • イチヤ

    ……また来年、買ってやるから。
    今度は、高めのやつ。

  • イチヤは小さい声で、ぼそっと呟く。
    落胆のなかにいるアキトには、まったく届いていなかった。

  • アキト

    う、うう。
    もったいなくて食べれないよ~。

  • イチヤ

    アホめ。

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