安達さん、シット。

久しぶりのお休みで、僕はベッドでウトウトしていました。
部屋の中は静かで、暖かくて、おまけに今日は、安達さんがシチューを作ってくれるというので、幸せなお昼寝です。

「ちょっとみっちゃん、君、犯されたいということでいいの」
「なんですと!」

飛び起きると、僕の目の前には安達さんが立っていました。

「今私はチキンブイヨンをとるのに鷄を絞めなければならないから忙しいのだけど、まあ、みっちゃんが誘惑するのならそれに乗るのは容易いよ」
「安達さん、生きた鷄から…」

僕は怖くなってしまいました。それから、ツッコミたくもなりましたし、誘惑とはと聞きたくもありましたし、また僕の家に勝手にと文句を言いたくもなりましたし、とにかく一気に忙しくなりました。

「僕はただ眠っていただけですよ」
「君、それは、ただ柔らかそうな唇を少し開けてかわいらしい寝息をたてて安達さん犯してくださいませんかと言いたげに眠っていた、の間違いだよ」
「知りませんよ!」
「私が言うのだから間違いはありませんよ、さあさあ、布団をめくりなさい」

言うなり安達さんは服を脱ぎ始めました。

「安達さん、待って」
「待ちたくないね」
「相変わらず傍若無人ですね、待って、安達さん、あっ」
「なんだみっちゃん、そんないやらしい声をあげて。やっぱり欲しかったんだろう、私が」

布団の中で安達さんとの力比べになりましたが、こういう時の安達さんはうつくしいその顔に似合わず怪力なので、すぐに組み敷かれてしまいました。

「さあみっちゃん。脚を開きなさい、ハアハア」
「やっ、やらしいことを、言わないで下さいよ…」
「いいから服を脱いで、ほら、ほら、ストリップだと思って」
「無茶を言わないでください、よっ、うっ」
「ああ、君を見ていると、本気の勃起とはこういうことかと実感するね。今までそうだと思っていたのはただの充血だ」
「あ、っもう、許してください…」
「みっちゃん。ああ。気持ちいいね、ほら」

安達さんは僕の上に乗って、股間と股間をこすり合わせてきました。

「あぁ、安達さん……」
「なに。みっちゃん」
「どいてくださいよぅ…」
「脚を、開きなさい、みっちゃん」
「…はい……」

僕はまた、こうして安達さんに流されるのでした。



「せっかくのお休みを、性行為とそれに伴う睡眠で潰してしまった……!」

僕は枕に顔を埋めて呟きました。
もう、夜です。僕の絶望は誰にもわからないと思います。一度イかされて、それからすぐに眠ってしまったので、僕はお休みをほとんどベッドで過ごしてしまいました。
したいことはたくさんあったのに。洗濯とか、掃除とか、安達さんが引きちぎってしまったシャツのボタンつけとか。
そうだ。安達さんはどこにいるのでしょう。少なくとも僕の部屋にはもういないようです。

「そうだ!シチュー!というか鶏の運命やいかに!」

僕は叫んで、安達さんの部屋へ向かいました。

「こんばんは、安達さん」

隣の部屋の玄関を開けると、ギャー、という、鶏の悲鳴とも取れるような声が聞こえました。

「安達さん!いけません、早まっては!というかもう夜なのにこれからブイヨンを!シチュー完成はいつになるやら!」

僕は靴を脱いで、急いで安達さんの部屋に上がりました。

「やあ、みっちゃん。珍しいね、君から私の部屋を訪ねてくれるとは」
「安達さん、鶏は?コケコッコは?」

ゆったりとソファに座った安達さんを後目に部屋を見回しますが、血まみれの鶏など見当たりません。

「鶏?いないよ、そんなもの」
「え、だって安達さん、ブイヨンを取るとかなんだとか」
「ああ。あれは君が止めたんじゃないか」
「止めた?」
「そうだよ。まさに私が君の中に入って腰を前後に動かしているさなかに、安達さんどうか鶏を絞めるのだけはやめてくださいと涙目で訴えるんで、止む無く固形ブイヨンで代用したわけだが」
「全然記憶にありません……」
「みっちゃんの涙目は本当にそそるんだよ、僕はその顔で射精に至ってしまったのだからね。全くみっちゃんにはかなわないよ、ふふ」

安達さんは爽やかに笑います。

「でもさっき、鶏の悲鳴のようなものが」
「あれは私の発声練習だ」
「発声練習?」
「みっちゃんを犯しながら存分に喘ぐための」
「安達さん」
「みっちゃん、おいで」

安達さんは、ソファの上で両腕を広げました。

「でも僕、家に帰ってすることがたくさんあるので」
「そんなものは明日で良い。さあ、愛しい君を抱き締めさせてはくれないのかい」

安達さんはうつくしい顔で微笑みかけてきます。

「そうしたらシチューを食べさせてあげるけど」
「ひゃー!早く!シチュー!」

僕は安達さんの胸に飛び込みました。

「みっちゃん。愛しているよ」

安達さんは、僕の頭に頬擦りしながら優しく言います。
僕は、そんな安達さんに、いつもうっとりとしてしまうのです。

「今日はこんがり焼いたフランスパンをひたして食べようね」
「おいしそうですね」
「みっちゃんの精液にはかなわないけれどね」
「変態!」

僕のクリスマスは、あたたかいシチューと安達さんで充たされたのでした。






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2013.12.24
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