友達、だよね?

住んでる街を離れて遠くまで来た。
車で3時間。
俺の実家の車を相内と交代で運転して、目指すのは山の中にあるお宿。
客室露天風呂があってご飯がおいしいって有名で、連休はもちろん土日もなかなか予約が取れないらしいその旅館へ、大学4年で就活も終わった俺たちは堂々と平日に出かけた。
今、俺の運転で山道を登っているところ。道路の左右はわさわさした緑が広がっている。

「窓開ける?きれいな空気がおいしそうじゃねーの、ふふふ」

最高だ最高だ最高だ!
楽しくてケツがむずむずする。

「風が俺たちを祝福してるな!」
「そう?」

おかしそうに笑う相内も、いつもより少しだけテンションが高い。
嬉しい。

「湖があるんだろ、どこかな、見えないけど」
「そっち側じゃない?」
「部屋から見えるかなぁ」
「取れたの、山側じゃなかったっけ」
「だったらやっぱ見えない?景観がいい方は高かったし混んでた」

今回の予約も俺が担当した。
2人だけの旅行。
楽しみで楽しみで、宿代をちょっと奮発した分バイトもがんばった。
たくさん思い出作るぞ。そして抱く。抱きまくる。このかわいい宝物を。
ふふ、ふふふ。

「あれ、俺、鼻血出てる?」
「おい…!」

相内が助手席から鼻にティッシュを当ててくれた。

しばらく走ると、たまに泊まるようなビジネスホテルとは違う、独特な佇まいの建物がぽこっと顔を出した。なんて言っていいのかわからず呟く。

「古いな」
「まあ。そうだろうな。…でも、いいね」

相内の機嫌が良くて本当に嬉しい。




駐車場に車を停めると、物腰丁寧でなんだか全体的に丸っこい感じの仲居さんが笑顔で迎えてくれた。

「お荷物お持ちしますよ」
「いやいや!大丈夫です!」
「お持ちしますよ、お任せください」
「大丈夫!男の子なんで!力持ちなんで!」

笑う仲居さんと相内。
親戚のおばちゃんを思い出した。

チェックインのためにカウンターへ行くと、なんだかキャンセルが出たとかで景観のいい湖側の部屋を用意できたと伝えられた。

「相内さん!ラッキーですな!」
「だね」

にやっと笑った相内の手を思わず握りそうになって耐える。かわいい顔をするのも大概にしてほしいものだ。
温泉に入ってそれ以上肌つるつるになってどうする気?

危ない。勃起するところだった。ほんと危ない。

仲居さんの案内で部屋へ向かう。
建物の中はとても綺麗だった。骨董品のような壷やら花瓶やらが所々に飾られて、迂闊に走り回れないようになっている。
走り回らないけど。

部屋は3階だった。

「こちらのお部屋です」
「うわー!見て!見て相内!見ろ!おい!」
「わかったから」

窓からは、晴れ渡る空とその色を映した湖が見渡せた。遠くにボートが浮かんでいる。さっき俺たちが通ってきた道路も見えた。
深々とした緑に囲まれて、どこまでも優しい景色だ。

「こちらから客室露天風呂へ出ることができますのでね」
「おー!風呂!風呂!相内!見て!風呂!」
「わかったから」

食事や設備の説明を受け、お茶の用意を丁重にお断りして、仲居さんが笑顔で出て行くなり、我慢の限界を迎えていた俺は旅行バッグを開けようとしていた相内に飛びついた。

「おい」
「相内。早速で悪いけど抱かせて」
「は?!」

さすがに驚いたのか。

「な。いいだろ」
「よくないよ、まずお前、いろいろすることあるだろ」
「ないよ。何もないよ。相内以外には何も」

畳の上に相内を仰向けに押し倒すと、背中に受けた衝撃で相内が一瞬目を閉じた。
それだけのことでぐわっと体が熱くなる。
抵抗する体を押さえつけてキスする。

「カギ、かけないと、」
「オートロックだったろ、よく見とけよ」
「カーテン全開だし、」
「こんな山ん中の3階の窓を誰がどうやって覗くんだよ、いい加減にしなさい」

困った子だ。

「メガネどうする?取る?まだいいか」

キスしながら服の上からおっぱいを揉むと大人しくなった。
のも、つかの間。

「な、並木、ちょっとま、待って」
「ぐえええ」

喉を押された。喉を。そこは人間の急所である。

「何すんの…」

涙目で聞くと、体を起こした相内に押されて尻もちをつく。

「そ、お、おまえの、お、」
「え?どうしたって?相内大丈夫?」

壁にもたれかかった格好の俺のパンツに手をかけて、相内は言いにくそうに言い放った。

「…舐める」
「え、えっ、風呂も入ってないのに?」
「お前は風呂に入らないでやろうとしてたろ」

いいから脱いで、と言われてものすごく照れながらパンツと下着を膝までずり下ろすと、相内も少し口を尖らせながら上に乗っかってきた。

「何よ…相内ったら…照れちゃってさ…」
「お前もだろ…」
「結局相内だって…したいんだろどうせ…俺と…俺にがっつかれたいんでしょ…旅行だからって…旅行だからって…盛り上がっちゃって…」
「は…違うし…お前だって…」
「そうだよ俺は最初からエロいことしか考えてねえよ、そう言ってるだろさっきから」

顔を赤くしながら瞬間見つめ合う。
ふいに相内が俺のペニスにキスをした。

「っあ…」

ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを何度もされて、たらりと我慢汁を垂らす。
それを辿るように相内の舌がつーっとペニスを舐め上げた。
思わず身震いをする。

「ごめ、ん…あんまり、もたないかも…」

どうしよう。
このまま射精したいし、我慢して押し倒したい気もするし、ワガママ言って怒られたい気もする。

「ねえもっとしゃぶって、エロいことして」

腰を少し浮かせて相内の口元に先っぽをすりすりすると、相内が少し口を開けて咥えた。

「んー…あ……きもちい…」

俺の腰をホールドするようにしてフェラをする相内。髪がさら、さら、と動いて、眼鏡にかかっている。

「なぁ、風呂、入ろ。だめ?」

このままイくのが勿体無くなって聞くと、相内は「俺もそう言おうとしてたとこ」と真面目くさった顔で答えた。

2人してもぞもぞと、多少気まずく思いながら服を脱ぐ。だって俺のはもはやビンビンのギンギンなのだ。

「同棲したらさ」

照れくささを紛らわせたくて話しかけると、相内もこっちを見ずに「ん」と言った。

「風呂なんか一緒に入り放題じゃん。毎日相内の顔見て、体見られるんだなと思うと」
「そんな、簡単には見せないぞ」
「は?意味わかんね。見るから。盗撮するから」
「犯罪だ」
「意味わかんねえって!同棲してて盗撮するののどこが!」
「…同棲してるのに盗撮する意味は」
「だってお前が見せないとか言うから」

相内はタオルで前を隠しながらなぜかバスルームの方へ行こうとする。

「どこ行く?」
「え…風呂…?」
「いや!露天入んないの?」
「露天?いや、露天て、外だし」
「せっかくあるんだし露天入ろうよ、露天でしようよ」
「は!隣が家族連れだったらどうする」
「声をひそめるんだよ」
「…無理だ」

ニヤリと笑ってしまう。

「俺とのセックスが気持ちよすぎて声出ちゃうもんな、そう、仕方ない。大声で喘がざるを得んからな。俺のは。はっはっは」

相内はムッとした顔をして「それほどではない」と言った。

「じゃあ露天でいいじゃん」
「…は、はしたないだろ」
「声出るから?」
「違う」
「我慢とかできないわけ?まぁ仕方ない、じゃあ内風呂でいいよ」

俺の声を背中で聞きながら、相内が無言で露天風呂へと続く扉を開けた。
粘り勝ち。



隣の露天とは当たり前だが壁で仕切られている。
音は筒抜けだけれど、今は無人のようだ。

「相内って、メガネないとどのくらい見えないの?」
「今、足元が見えない」
「手繋ごう」
「お前がイケメンに見える」
「一生メガネかけんな」

並んで湯船に浸かり、うあーとかんーとかいう声が出た。温泉最高。

そして、どちらからともなくキスをした。
最初は触れるだけの。だんだん深く。

ちゃぷんと音がして、相内が俺の首に手を回した。
あらら。なんか今日は積極的。
耳たぶをムニムニされる。そういえば、相内に耳がどうとか言われたことがあったっけ。

「相内、俺の膝に乗って」
「なんで」
「なんでって…わかんないけど…乗せたいから…」

恥ずかしいから、と言うので、おっぱいすっげえよくしてあげるから、と言った。
すると無言で俺の膝へ。

「今日ちょっとかわいすぎない?」
「知らないけど」

目の前に、相内の乳首。肌が温まっていい色になってる。
指でくにっと触ると、柔らかかったそれが途端に芯を持った。たまらなくてすぐ口に含む。

「んっ……」

相内はぴくりと体を震わせ、顔を背けて耐えている。
舌先を尖らせて少し強めに嬲る。

「ふ…っ…」

ちゅっと音を立てて吸った。

「う…!」

慌てたように俺の腕を掴む相内。

「もしかして声我慢してるの」
「は…ぁ…違う…」
「エロすぎでしょ」

もっとしてあげよう。
ちゅっちゅちゅっちゅと音を立てまくって続けざまに右を吸いながら左を指でくにくにつまんで、息をするのがやっとという感じの相内を見て興奮が高まる。

「これ、青姦だよ相内」
「っ、違う…」
「違わないよ、外だよこれ。んちゅっ」
「あっ………ちが…っ」
「やらしいね」

どんどん体が温まって、どんどん血流も良くなって、ちょっともう爆発しそうなそこを、お湯の中で相内のおしりにこすりつけた。
両手でグリグリと乳首を押し上げながら。

「すげえ勃った…」
「んく…並木…」
「んー」
「い、挿れる?」
「あ、うん、挿れたい」
「…こ…声が…」
「…声が」
「抑えられそうにないから…」

ないから、と心の中で復唱すると、相内が濃厚なキスを仕掛けてきた。
首と頭を優しい手つきで抱かれ、微かに腰を押し付けてくる。

そして舌を絡める合間に言うのだ。

「口、塞いでて」

必死でキスを受けながら、自分のいきり立ったそれを片手で支えて相内を探る。
ぎゅ、と抵抗があり、その先はすんなり押し入る。

「すっげえかわいいよ相内」
「んんっ、ん」
「う、あっ、っく……」

相内のキスも挿入も気持ちよくて、自分の声の方が大きいんじゃないかと心配になったところで恐れていた事態。

「お母さん見て!お外のお風呂すごいー!」

隣から聞こえた女の子の声に相内が体を強張らせた。

「…まずい」
「声出さなきゃ大丈夫だ」

だって止まれない。

覆うように相内の唇を唇でふさぎながら、火照った体を突き上げる。

「んん!ふ、んっ」

片手は背中に回して相内を支え、もう片方の手で乳首をこねくり回した。

「う」
「んぅ」

相内も腰を回すように使っている。
やらしい。本当にやばい。

その相内の手が自分の中心へと伸び、そこをしごき始めた。

「あ、あいっ、うち、っ、でるぅ…」

中がきゅっと収縮し、もともと限界寸前だった俺の方が先に達してしまう。
最低なことにお湯の中に射精してしまった。

イきながら目の前の乳首に力一杯吸いつく。

「あっ、あんっ」

小さく喘いだ相内が、少し体を浮かせて腰をお湯から上げる。しごいていた手にぎゅっと力が入って。

「あ…んんっ」

最上級にやらしい吐息を漏らしながら、相内が俺に顔射した。

エロすぎ爆弾が破裂して呆然と相内の顔を眺めながら、汗と水滴と混ざった精液が頬を伝ってきたので舌を出して舐め取る。

相内は「ごめん」と言いながら、なんだか少し満足げに笑った。

「あれ、どうしよう、また新たな性癖が芽生える」
「暑い…もう出よう」

傍に置いてあったタオルで俺の顔を拭ってから、相内はふらりと室内へ戻って行く。
急いで追いながら、俺の恋人が最高だ、という以外の感想が浮かばない。

若干のぼせた相内のために、浴衣姿で部屋を出て自販機コーナーへ向かう。
ミネラルウォーターとスポーツドリンクと、自分用に炭酸飲料を買った。

さっきの仲居さんに会って、さっきまでしていたことを思い出してビクビクしたけれど、「もう少しでお夕飯ですからね」とにこやかに言われただけだった。
うちの母もあんな感じに優しかったらいいのに。
部屋に戻ると相内も浴衣を着て座椅子に掛けていた。胸元に指をかけてその辺にあった何かの案内で体を仰いでいる。
風呂上がりのツヤツヤの肌に、眼鏡をかけて。

「セクシーだね、うちの相内くんは」

まったくいい加減にしてくれ。体がいくつあっても足りない。

相内はお礼を言いながらミネラルウォーターを受け取り、口をつけた。
ごく、ごく、ごく、という音とともにそれは喉を通り、すべすべの胸の内側を通って。
その度に動く喉仏。

「お前って芸術的な形をしているな」

素直に褒めたのに、相内は猜疑心をあらわにする。

「変なことを考えてるんじゃないだろうな」
「変なことって?」
「今日はもう無理」
「は?何が?」
「しないからな」
「えー!無理無理無理!相内だってのりのりだったくせに!」
「うるさい。こっちが無理だ」

まあいい。飯食ったらまたお願いしよう。布団が敷かれたら我慢できる気がしない。

程なくして運ばれた夕食は、味ももちろん量もすごかった。
お刺身もお肉も最高で、あんまり得意じゃないと思っていた湯葉が意外においしくてびっくりした。

「お前って本当においしそうに飯を食うよな」

相内に言われて初めて顔を上げる。
向かいにあぐらをかいている相内は、優しげな微笑を浮かべていた。

今日は相内がたくさん笑ってくれる。

「だって幸せなんだもの」
「それは何よりだけど」
「一生ここで2人で暮らしたいね」

そう言うと、相内は小さな茶碗蒸しみたいなのを食べながら答える。

「別にここじゃなくても。同棲するんだから」
「そっか。…ん?そっか。……え?……そっか……ええっ?!」
「何だよ」
「待って!待って待って!同棲するってこういうこと?!全然ちゃんと具体的に考えたことなかったけどこういうことか?!」

やばいよ毎日こんな楽しいの?

「死んでしまう。幸せで死んでしまう」

ブツブツ呟いていたら、相内がため息をついた。

「お前、今日は旅行だから楽しいけど。同棲は生活だから。楽しいことばっかりじゃないぞ」
「どういう意味?」
「家事とかしなきゃならないし。お互い働きながら。面倒なことが多分たくさんあって、疲れたり、イライラしたり、喧嘩もあるかもしれないし」
「そんなの」
「…そんなの?」
「俺、そういうの、うん。わかる、言いたいことはわかってる。実家にいて母親にイラつくみたいなことでしょ?別に嫌いじゃないけど話したくない時があるみたいな」
「ああ。そうかもな」
「それってすごいことだ」
「すごい?何が?」

だって。

「相内と俺は血が繋がってないのに、家族になれるってことだよ。すごい」

友達から恋人で、恋人から家族になるってことだ。
すごい。すごい。

瓶ビールを小さなグラスに注いでグビッと飲んで、顔を上げたら相内が片目から涙を流していた。

「え」
「あ」
「え?」
「いや」
「だ、大丈夫?」

酔ったかも、と言ってすっと立ち上がり、相内は洗面所に行った。
追いかけて、ティッシュで涙を拭く相内の背中を抱く。

「俺、変なこと言った?」
「違う」
「どうしたの…」

鏡越しに目が合って、そしたら相内が笑った。

「俺は、お前のそういう前向きで明るいとこが好きだし、必要だと思ってるし…尊敬してるよ」

優しい声で言われた。
自分のことをそんな風に言ってもらったことがなかったから、嬉しくて、少し鼻がツンとした。

「…うれしい」

相内の浴衣に顔をゴシゴシ擦りつけた。

「したい」
「…飯、全部食ってからな」

バッと顔を上げる。

「いいの?!」
「どうせ一回で終わるわけないと思ってたし」
「わぁ…」

急いで飯を片付けて心からごちそうさまをした。
そうして急いで仲居さんを呼んで布団を敷いてもらって、急いで出て行ってもらった。

「さて」
「お前慌てすぎだから…」

確かに。仲居さんもちょっとビビってた。アラアラ、って言われた。

「相内くん、座りたまえ」

相内を座らせて、真正面からその美しい顔を眺める。

「君は本当に、俺のものになるんだろうねえ?」
「…その話し方は何」
「いや、信じられん。つきましては、拘束します。よろしくお願いします」
「お前も酔ったの?」

綺麗な手を取って甲に口付ける。

「縛るよ」

前に縛られるのがいいと言っていたのでそれを叶えるべく一言宣言すると、相内の瞳が潤んだ気がした。

自分の浴衣の紐をむしり取って、正座の相内の手を前で縛る。
酔って少し顔の赤い相内が、メガネの奥の目を細めた。

きちっと浴衣を着た相内が、手を縛られている。

「相内くん。非常に倒錯的です」
「そうか」

相内は少し微笑むと、好きにして、と言った。

一瞬意識が飛んだ。

気がつくと相内を押し倒し、縛った手を頭上に押さえつけて唇の奥に舌を突っ込んでいた。
今日の相内は本当に反則プレーだらけだ。

「相内は…縛られてどうされたいの」
「…ん…もっと…キス、したい」

大好きだ。大好きだ。

くちゅ、ちゅ、と音をたてながら相内の柔らかい舌に舌を絡める。温かくてぬるぬるして気持ちいい。

「んんっ」

浴衣の上から軽く胸を触ると、相内が鼻にかかったようなかわいい声を出す。

「ほんとおっぱい感じやすいね…どうしてそうなっちゃったの?」
「あっ…わかんない…んはっ」
「グリグリしてほしい?」
「ん…」
「グリグリしてって言ってごらん」

おじさんを楽しませてごらん、と言ったら相内が目を瞑った。

「グリグリ、して…」
「なにでグリグリしてほしい?舌?指?」
「…舌…」
「仕方ない」

いただきます。

吸っては放し、放しては吸い、それから舌でグリグリ圧し潰す。

「ああっあっ、なみき、いい…それ…」

しつこいくらいに繰り返したら、相内の腰がびくんびくんと跳ねる。

「こいつでもグリグリしてやるぜ…」

下着を下げてガンガンに勃起したものを乳首に擦り付けた。

「ああっ!」

押さえつけた腕も跳ねる。

「やらしいね相内…俺興奮でどうにかなりそう」
「並木」
「なに」
「なんか…その…」

言いにくそうだ。きっとやらしいことを言おうとしてる。
相内の顔に耳を寄せた。

「無機物で…なぶって…」

無機物。

「無機物とは」
「その辺の…どうでもいいようなもので、いじってほしい」

どうでもいいようなもの。
ちょっと何を言ってるのかわからなくて困惑しながらその辺を眺める。

「…これとか?」

テーブルの上にあったマッチを取ると、相内が「じゃあそれで」と言った。

中から一本取り出し、ザラザラしている部分で相内の尖ったそこに触れる。

「ああ、あぁ…」

相内は思い切り背をそらした。

え。すごい。すごい感じてるこの人。

「えー…すげえやらしいなお前は」

くに。くに。さわ。さわ。ちょん。

「あっ!あ、や、やめて、もう、駄目っ、ああっ」

えー。えー。

「腰がすごい動いてるよ」
「まっ、待て、駄目…でそう…」
「そんなに?」

待って。もっと他になんかないか。

ボールペンを手に取る。書くのと逆の方は丸みを帯びたデザインだ。

「これは?」
「あ、だめ、並木、だめ、俺…」

相内が目を見開いた。こんなに慌てた相内を初めて見た。

「無機物」

呟きながら乳首に押し当てる。

「いやぁっ」

相内が細い声で鳴く。

くにくに。くにくに。

「あっだめほんとやばいからっ、並木、許して…」
「かわいい…」

少し強めに、乳輪をなぞるように動かす。

「あ、待て、待ってお願い並木、あっ、や、出る…」
「ほら…相内の乳首触ってるのボールペンだよ、ボールペンで触られて気持ちいいの?」
「ああっ!気持ちいい…イく、イくぅっ」

理性が飛んだんだな、と俺はぼんやり思った。
こんなに甘えたような声で女の子みたいに喘ぐ相内を初めて見た。

「イっていいんだよ相内、すごいこれ、なんか、変態みたいだけど」
「もっと強くして…!あっ、は、それ、いいっ、あっ、んっ、」
「かわいいよ相内」

髪を振り乱してよがる相内に見惚れながらボールペンで乳首をクリクリ優しく触って、細かく動かして刺激する。

「や、やぁっ、イく、イく、並木、あっ、でる、あっ、ひっ」

がくん、がくん、と大きく腰を揺らし、相内は息を止めた。

すぐに浴衣を開き、下着をおろしてあげる。トロトロに濡れたものがまだピクピクしながら出てきた。

「あー…エロすぎる…」

思わずしゃぶりついてしまった。

「あ…なみ、き…」

優しく頭をさわさわされる。

「挿れたい」
「…いいよ」

どんな体位がいいか聞かれ、バックがいいと言ったら、自分から四つん這いになる相内。
縛った手を前で組んでお尻を突き出す格好になった。

両手で広げて顔を近づけ、ぺろぺろと舐める。

「ちょ、待って、並木お前、舐めないで」

無視して続ける。シワを伸ばすようにくにくにと舌を動かし、少しだけ中へ挿れる。

「やっ…やばい…あっ」

かわいい。もうだめだ。

「いい?ちんぽ挿れるよ?」
「ん…」
「ああー…」

相内の痴態を思うさま見せられた後なので、正直温泉の時よりやばい。

中がキュンキュン動いて俺のを絞り込んでくる。

「すっ、げえ、んだけど…」
「ああっ…並木…なんか今日、俺、おかしくて…」
「おかしくないよ、エロいけど」

かわいい。気にしてるのかな。
すると相内は振り返って言う。

「今日…中に…出してほしい…」
「よ、喜んで…」

ほんとだ。ちょっとおかしいみたい。

抜ける寸前まで引き抜き、勢いよく奥まで突き上げる。

「あっ!」
「っは、すごい…」
「はぁ、あ、んっ」

何度も何度も突き上げては引き抜く。
相内の浴衣はもう羽織っただけのような形になって、その上から腰をしっかり掴み直した。

「そろそろ…やばい」

腰の動きも勝手に速くなって、奥の方を責める。
ジュブジュブとやらしい音が響いている。

「なあ、相内、ほんとに中にだすよ」
「出してっ、ん、あっ、う、うぅ、ああっ」
「あーすげーよ、ちょー気持ちいい」

パンパンパンパンと肌がぶつかって、無意識に相内のお尻を撫で回してて俺も大概変態だ。

「あーでる、出るよ、中に出すよ相内、相内ん中に…あっ、や、やあぁんっ出る、あイく、イくぅっ、ああっ!」

ドク、と体がうねって目の前が真っ白になる。
相内の奥の奥まで届けと願いながら腰を動かして、最後の一滴まで搾り取られた。

ああ、はあ、と息を荒げながら2人で布団に倒れこんで、ぎゅうぎゅうとその体を抱いた。

「すっげえやらしかった…」
「…今日の俺のことは忘れてくれ…」
「いや無理でしょ。無機物」
「やめろ!」

やめろと言いながら俺に抱きつく相内は苦しくなるほどかわいかった。
相内の体を拭いたりお風呂に入ったりしたいと思っていたのに、俺たちはそのまま熟睡して朝を迎えた。

「並木」

相内の声で目をさますと、朝食バイキングの時間ギリギリだった。

「あー…やばいね…起きなきゃ…」

でも眠い。

「寝てもいいよ」
「えーもったいないもん。朝ごはんもおいしそうだし…」
「じゃあ起きろ」

すでに私服に着替えた相内は洗面所を使っている。

「ケツ痛くない?」
「大丈夫」
「あー…」

盛大なため息が出た。

「何?」
「朝、少し早く起きてさ、襲おうと思ってたのに。ご飯前に」

せっかくの旅行なのに2回しかできなかったことを悔いる。

「元気だなほんとに…」
「ジジイみたいなこと言うなよ」
「ジジイ…」
「温泉も1回しか入ってない。大浴場行けなかった。だって昨日あれさ、俺ら9時頃寝たんじゃない?」
「そうかもな」
「もったいねえー!」

相内が「はは」と笑っている。

「朝ごはん食べたら行けば。チェックアウトまでまだ時間あるから」
「…温泉はいいや。食べたらしよう?」
「…元気だ…」
「ねえ」

起き上がって洗面所に走る。

「ねえ相内ってば」
「支度しろって」
「しようよぅ」
「食べたらな」
「やったー!愛してる!」

朝メシはおいしいし、そのあとの相内もおいしかった。



「楽しかったね」

帰りの運転は全行程俺の予定だ。
無理をさせたという自覚くらいはある。

「また、そのうちどっか行けたらいいな」

助手席でシートベルトを締めながら、相内が言う。

「相内も結構楽しかった?」
「結構」
「良かった」
「帰ったら部屋探しだ」
「そうだった!」

探すのだ。相内と俺が家族になる家を。

「俺、料理がんばる」

そこは頼む、と相内に言われ、お料理教室にでも通おうかしら、と鼻息も荒くアクセルを踏み込んだ。







-end-
2016.3.19
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