友達、だよね?

「うっそ!こないだまでお前ら彼女いたじゃん!」
「別れた」
「俺も」
「まじで?なんだよー、じゃあ今みんなフリーかぁ」
「合コンやろうぜ」
「うーん、なんかしばらく女いいかも」
「ははは、そんな痛い別れ方したの?」
「ほっとけよ」

金曜日。駅に近く、全席半個室になっている居酒屋は混雑していて、俺たちの騒ぎ声も掻き消されていく。

俺たち4人は高校の同級生で、卒業後の進路は皆バラバラだったのに付き合いは続いている。
何ヵ月かに一度、こうやって集まって飲んだり、夏だったら海に行ったりしている。

「でも相内いっつもすぐ彼女できるからなー」
「いや、今回は本当ちょっと疲れたわ」

相内は理学系の大学生。多分俺たちの中で1番モテる。縁なし眼鏡、細身の体型、色白の肌。いかにも理系の風貌だ。

「えーもったいねぇ、お前モテんのに」
「相内ってなんでモテんの?」

俺は単純な疑問を口にした。

「あんまり笑わない感じとか無口っぽくて愛想ない感じがいいらしいよ」
「それ俺褒められてないんだけど」

柿崎の言葉に相内が苦笑する。
柿崎はおしゃべりで明るい。物凄いイケメンなわけではないが、盛り上げ上手なところが合コンでもウける。

「眼鏡もいいのかな。ただ目悪いだけなのにズルいよな」

呟いた俺に柿崎の憐れみの目が向けられる。

「並木は?次候補いないの?」
「いない。俺モテねぇし」
「なんだよ!卑屈んなって。よしよし、傷ついたのか?」

柿崎がふざけて別れたばかりの俺を抱き締めた。

「柿崎ー!もう俺自信ねぇー!」
「大丈夫大丈夫、並木は優しくて素直でよく笑うし安心感あるって、俺の元カノが言ってたよ?」
「ほんと?俺大丈夫?」
「はは、固定の彼女作るからそんなことになるんだろ。一回さらっと遊べば?」
「出たよ、最低発言」

俺と柿崎は野村に軽蔑の目を向ける。

野村ははっきり言って軽い。固定の彼女を作らずに、いつも違う女の子と遊んでいる。見た目がチャラくないところがズルいと俺は思っている。適度にお洒落で女の子の扱い方がうまくて、口癖は「真剣になったら負け」だ。

みんなそれなりにモテるのだ。俺だって全然モテないわけではないけど、でもみんなよりモテない…そう…俺はダメだ…だって…

「ちょっとさ、相談していい?マジな話」

俺が真剣な顔で言うと、3人とも笑いを引っ込めて耳を傾けてくれる。

「もう俺…女の子とエッチできないかも」
「なんで?なんか言われたのか?」

柿崎が横から顔を覗き込んでくる。

「…『体の相性かもしんないけど並木くんのエッチあんまり気持ちよくなかった』って、別れ際に…」

誰かが息を飲むのが聞こえた。

「今日、おごるわ」
「俺明日女の子紹介してあげる」

柿崎と野村がテーブル越しに手を握ってくる。

「ね、酷いよね?俺悪くないよね?悪い?やっぱダメ?そんな下手なのかな?わかんねぇよ自分じゃさー!」
「並木、辛かったな!」
「それは人数経験するしかねぇわ!」
「それは嫌」

相内は何も言わないけど、さりげなく俺のお酒を注文してくれた。

やっぱり話してよかった。みんなが怒ったり笑ったりしてくれて、もやもやが少しずつ晴れていく。

「でも俺ほんと、次彼女できてもさ、勃つかなぁ…」
「大丈夫だって!考えすぎが1番よくねぇよ!」
「一緒に風俗行こうぜ」
「それも嫌」

柿崎と野村が励ましてくれて、相内が話を聞いてくれるうちに、どんどん酒が進んでしまった。



「おれやっぱらめー、自信ないもん。もうエッチれきないれー、死ぬのー」
「並木大丈夫か?呂律怪しいぞ」
「いいんらー、もうおれ1人れ生きるんら」
「ら、じゃねぇよ」
「よしわかった!」

野村がテーブルをぽん、と叩いた。

「相内!お前黙ってないで揉んでやれ」
「は?」

相内が無表情で野村を見る。俺も柿崎も意味がわからず2人を交互に見た。

「だから、ちょっと手伸ばして並木の揉んでやれよ。ちゃんと勃つか」
「俺が?並木のを?なんで?」
「ぶっ」

相内があまりにもとぼけた顔をしているので、俺は吹き出してしまった。

「あはは、あいうちウケるー。いいよーもう」
「お前のために言ってんだぞ?」
「ありがとーのむらー、おまえやさしーなー」
「柿崎!お前でもいいから揉め!」

「はぁ?野村も酔ってんの?」
「違うって。こういうのは実践が全てなんだよ。いくら励ましたって勃たなかったら意味ねぇんだから」
「えーやら、おれたたないのやら」
「だろ?わかった。俺が揉む。」

なんだかわからないうちに、俺は野村に股間を揉まれていた。

「ちょ、あは、のむらーくすぐったいからー」
「大丈夫大丈夫」
「野村、男ともヤったことあんの?」
「ねぇわ!ただ並木が気の毒すぎてさぁ」

言いながらも野村の手は止まらなくて、ちょっとなんか変な気持ちになりそうでヤバい。

「ちょ、っとまっても、う、いい、いいっのむら」
「あ、勃ってきた」
「まじで?よかったなぁ並木!」

野村は手を離した。ちょっと息が荒くなってしまったのが恥ずかしくてテーブルに頬を付けたら、視線の先にいた相内と目が合った。

「あいうちー、みるなよーはずかしいらろー」
「相内も揉んでやれば?」

柿崎の笑いを含んだ声が聞こえて、相内が柿崎の方を向いた。

「え」
「野村と並木見てて興奮したんじゃねぇの?」
「そんなわけねぇだろ」

相内は相変わらず無表情だ。

テーブルの冷たさが酔った頬を冷やして気持ちがよかった。だんだん眠くなってくる。

「あいうちはー…おんなのこにーモテていいなー…」
「並木?大丈夫か?」
「あいうちはーえっちうまいのー…?」

俺の意識はそこで途絶えた。



 *



気付いたら、俺は店から1人暮らしをしている家までの道を、相内に支えられ、水を飲ませてもらいながら歩いていた。

「あれ、のむらとかきざきはー?」
「何回目だよ、もう2時だからってさっき解散したろ?」
「そうだっけ?」

外気と水のおかげか、いくらか意識がはっきりしてくる。

「あー。ごめん。なんか今日すげぇ迷惑かけた?」
「いや。別に」
「でも聞いてもらってよかった!ありがとな」
「うん」

2人で夜道を歩く。相内の家も同じ方向だ。月が見える。気持ちが良かった。

「相内は?なんで別れたの?」

ぽつりと聞くと、相内はため息をついた。

「さあ。女ってわかんないな」
「だよなー!本当にわけわかんねぇよ」

俺がまた愚痴ってしまい、相内が聞き役に回ってくれる。散々言ってしまってから情けなくなった。

「あーごめん、また愚痴った」
「うん」
「なんかしゃべったら腹減ったなー。ラーメン食いたくね?」

確かに小腹は減っていた。でもそれよりも、今1人になったら色々考えて落ち込む気がしたのだ。

「うち寄ってかない?インスタントだけど、いろいろ迷惑かけたからさ、作るよ」
「うん。じゃあ」

アパートに着き、鍵を開けて相内を中に通す。

ローテーブルで相内を待たせて、インスタントの正油ラーメンを2つ作って運んだ。冷蔵庫に1個だけ残っていた卵を相内のラーメンに入れてかきたまにしてやった。

「はい、どうぞ」
「いただきます」

2人とも無言で一口目をすする。
ふと相内を見ると、眼鏡が湯気で曇っていた。

「っはは、眼鏡」
「うん」

相内は箸を置き、眼鏡を外した。
切れ長の目が現れて、見慣れない裸眼が妙に艶めいて見えた。

「…何?」

俺の視線に気付いて、眼鏡をかけ直しながら相内が聞く。

「あ、いや…でも、」
「ん?」
「お前みたいなかっこよくていいヤツが別れるんだから、俺はフラれて当然か、と思って」

相内は少し首を傾げた。

「並木、今日やっぱり卑屈」
「仕方ないだろー。別れたばっかだし、嫌なこと、…言われたし」

相内は眉を潜める。

「気にしすぎるな。柿崎も言ってただろ──」
「なぁ」

俺はきっとまだ少し酔っている。

「相内も、俺のが勃つか試してくれる?」
「え」

相内の顔からは感情が読めなかった。
引いたかな。引くよな。
俺は我に返って焦った。

「冗談だって!さっきの野村のもまじビビったわー」

笑いながら箸の先をどんぶりに突っ込む。
でも相内は笑わなかった。箸を持つことなく、無表情のまま答えた。

「俺はいいよ」
「は?」
「触っても」

相内が少し近づく。俺はその分後ずさった。

「あ、相内?」
「まずは、キス?」

俺はその唇をガン見してしまう。色が白いからか、赤く色づいて見えた。
キス?俺と相内が?

「いや、あ、勃つかどうかって話で──」
「じゃあ、ここ?」

相内が俺の顔を見たまま股間に手を伸ばした。でもそれが俺に触れる前に、俺は相内の唇を塞いでいた。



なんで。なんで相内とキス…

頭のどこかではそう思いながらも、俺は相内の唇や舌を深く貪った。
薄目を開けたら眼鏡の奥で瞼が閉じられていて、なぜだか少し興奮した。
相内の舌の動きは控えめで、俺が焦るように押し込んだ舌をゆっくり受け止める。

「ん…」

相内から声が漏れたのを合図にしたように、俺たちは一度唇を離した。
2人とも息が上がっている。

「ヤバい…相内の…キス」
「何が」
「きもちい。うまい」

俺の言葉に、相内は俺から目を逸らした。

「そ、れは、よかったな」
「もしかして照れてる?」

図星だったのか、僅かに顔が引きつった。

「相内ってかわいいな」
「は?」
「もう一回。キスの仕方、おしえて」

相内までの距離が近くて、囁き声になってしまった。相内の視線が俺に戻ると同時に、俺はまた相内にキスをした。

ちゅ、ちゅ、と何度か触れると、相内が伏せた目で俺の唇を見つめながら少しだけ口を開いて舌を覗かせた。俺は我慢ができなくなって、そこへ舌を伸ばす。
今度はさっきみたいに焦らずに、相内の舌の動きに合わせてゆっくり、舌と舌を絡める。相内の舌の凹凸が細部までわかってしまいそうな感覚に夢中になった。
知らないうちに口の端から唾液が溢れていた。相内は俺から唇を離し、俺の顎から唇までをゆっくりと舐め上げてそれを飲み込んだ。

「っ、相内、エロい」
「そう?」
「ちょっと試しに押し倒してみていい?」
「…いいよ」

我ながら意味不明だ。でももう俺には冷静さなんか残っていなかった。ただ、相内のエロい顔をもっと見てみたくなったのだ。

肩を掴んで少し押すと相内はラグマットの上に静かに倒れた。足の間に膝をつき、上から相内の顔を見下ろす。

「お前、きれいな二重だな」
「俺は並木の耳の形がきれいだって思ってた」
「え?耳?考えたことなかった」

少し照れて目を逸らすと、相内の腕が伸びてきた。それは俺の首と背中に廻され、体ごと引き寄せられる。耳元に相内の呼吸を感じてぞわぞわした。目の前に相内の首筋がある。白い。

「きれいだよ」

相内が囁いて俺の耳たぶにキスをした。相内は何を思ってそんなことをするのだろう。彼女になりきってくれたのだろうか。そんなことをゆっくり考える暇もなく、そこに舌を這わされて思わず声が出た。

「あっ」
「感じる?耳」
「ちょ、待って、っ」

相内の舌がゆっくり耳の中に入り、次に耳たぶを軽く噛まれた。

「ああっ」
「ふ、耳弱いんだな」
「待っ、…耳元で笑うなよ」

肘をついて体を離し、また見下ろした相内の顔が、瞬時に俺の欲を突き動かした。
俺は息をするのも惜しいくらい相内の唇を吸って舐めて塞いだ。
だって。だってそんなヤらしい顔で見上げられたら。友達だって変な気持ちになる。
あれ、そうだ。友達、友達…だよね?

「んっ……ふ、ぅ…」

俺の下で俺のキスに微かに喘いでる。友達なのに。で、俺はそれにすごく煽られてる。
俺の手は躊躇もせずに相内の高そうなポロシャツを捲り上げ、脇腹を触る。

「ぁ…」

塞いでいた口から小さな声が漏れて、俺は角度を変えてまた塞ぎ直す。手は少しずつ上にずれ、人差し指が相内の胸の突起を掠めた途端、相内の体がびくんと激しく跳ねた。

「うあぁっ」
「感度よすぎじゃね?」
「…うるさいな」
「相内くんは乳首弱いのー?」

くすくす笑いながらふざけてまたそこを摘まんだ。ふざけたつもりだったのに。

「あんっ」

相内から零れた声は少し鼻にかかって甘すぎて。

「何その声…」

笑おうとしたのに、掠れて余裕の無さがバレるような声しか出なかった。
俺はポロシャツを捲り直して乳首に吸い付いた。

「あっやめろ、なみ、き、ぁ」

弱々しい声音。
どうすればいいの?どんどん冗談じゃ通じなくなってきた。

「ん…っう、あぁ…っ」

だって。いいのか悪いのか、完全に勃っちゃった。

舌先で乳首を転がしながら、無意識にそこを相内に擦りつけていたらしい。相内の手がそっとジーンズの上から俺の中心に触れた。

「あ、並木、っん、勃ってる」
「う」
「っ!」

返事をする代わりに乳首を噛んだら、相内が腹筋を震わせた。

「相内、声出して」
「は、嫌だよ」
「いいじゃん…もうなんでもありじゃん」
「やだっう、ん…」

相内が、嫌だと言いながらも行為自体を強く拒否しないのをいいことに、俺は再度その胸に顔を埋めた。
唇で触れるか触れないかのキスを突起に繰り返すと、相内が身を捩り始めた。そこは小さく固く尖り始めて、白い肌に浮き上がっていた。

「…焦らし、すぎ」

相内がため息と共に囁いた。

「だめ?これはよくない?」
「ん………いい…」

少し不安になって聞いたけど、相内が俺から顔を背けながら言うのを聞いて、今度は唇全体でそこを覆った。

「っあ」

歯で周りを押さえながら小さな粒だけを吸い、浮き上がったそこを舌先で強めになぶる。

「や、だ、それ、なみきっ」

相内が俺の腕を掴んで引くけど、全然力が入っていない。
今度は唇を離して、舌全体で周りの皮膚ごと舐め上げた。

「う…」

もうなんだかよくわからない。ただ相内の反応が嬉しかった。

反対側の乳首に吸い付きながら、唾液で濡れた方を指で押し潰す。滑って逃げるそこを何度も指先で責めながら、反対側をじゅっと吸った。

「ああっ!」

今までは抑えられていた声が、激しく跳ねた。視線を顔に向けると、相内は目を閉じて口元を手で塞ぐところだった。

「あいうち、きもちい?」
「……」

返事はない。荒い呼吸で胸が上下している。
もう一度乳首に吸い付いて、今度はちゅくちゅくと音をたてながら吸ったり離したりを繰り返した。

「は…あぁ……う…」

いつも飄々としている相内だと思えなかった。

「なんで、抵抗しないの」

手を止めて思わず聞くと、我に返ったように相内が目を開けた。

「わかんない、はぁ…もうやめよ──」

いやだ。やめたくない。
俺は最後まで言わせず、また唇を奪った。相内は一度顔を逸らしたけれど、追いかけて塞ぎ直すともう抵抗しなかった。

なんでやめたくないんだろう。友達、なのに。

俺は相内のポロシャツを首まで捲り上げて唇を離し、力ずくで脱がして放り投げた。思いがけず勢いのついたそれは壁側にあるスチールラックに引っ掛かった。

「あ、投げることないのに」
「ぷっ、そこかよ」

不満顔の相内を見下ろす。首から下は蛍光灯に照らされて更に白く見えた。

「ちょっと裏返って」
「え」

肩に手をかけてうつ伏せにする。相内は手をマットについて上半身を起こそうとした。その動きで肩甲骨がきれいに浮き上がる。
俺は覆い被さってそこに舌を這わせた。

「は、あ、」

起き上がるのを阻止された相内は、顔を横に向けて頬を床に預けた。俺は片手でそっと眼鏡を外してやった。

「投げるなよ?」
「はは、さすがに」

丁寧にたたんでテーブルに置く。

「並木は」

背中を撫でようとした俺に相内が聞く。

「なんで俺にこんなことしてんの」

そう。なんでだろう。

「俺もさっきから考えてるんだけどさ」

わかんねぇよ。

なんで、別に小さくも女顔でもない相内がこんなにかわいく見えるのか。
なんで男相手にこんなに完璧に欲情してるのか。

答えられないでいる俺を、相内はうつ伏せのまま首を捻って見上げた。

「…したいなら、続けていいよ」

急激に不安になった。俺は友達としての相内を失いたくない。柿崎や野村の顔も浮かぶ。

「お前は?相内はどうなの?仕方ないから我慢して付き合ってくれてる?」

相内は脱力してまた顔を床につけた。そして、指先で唇を撫でながら小さな声で言った。

「嫌だったら、あんなに感じないだろ」
「っ、だから、なんでそんなかわいいんだよ、キャラ違うだろ!」

俺は相内の腰を持ち上げて中心をまさぐった。

「あ、ちょっとやめろ、」

相内のそこも勃ち上がってジーンズを押し上げていた。

「相内も、勃ってる、ね…」

俺は後ろから相内のベルトをカチャカチャと外し、ジッパーを下ろして下着ごと膝まで一気に脱がした。

「あっ待て!後ろ、は、ああっ」

露になった相内の中心を後ろから握り込んで扱く。
興奮して息が弾む。

「大丈夫、挿入とか、しないからっ」

でもこのまま相内だけイかせて自分は我慢できるような余裕は全くない。
俺は自分のズボンを少し下ろして張り詰めたものを取り出した。

「ねえ、ここ、使っていい?」

俺は相内の白い尻のすぐ下に先端を押し付けて、そのまま腰を進めた。太ももの付け根を押し開きながら進んだ俺の先端が、相内の中心の根元を擦る。

「ああ、あ!」
「相内の肌、すべすべ」

気持ちよくて、よすぎて、片手で相内の腰を支えて何度も腰をぶつけた。
一緒に相内の中心も扱いてやる。

「あっ、ああっ…なみ、き」
「ん」
「お前、っ、うまいよ…」

俺は衝撃を受けた。目先の快楽に溺れて忘れてたけど、そう言えば気持ちよくなかったって言われて落ち込んでたんだった。相内はそれを覚えてて、気遣ってくれてる。
俺はなおさら激しく腰を打ち付けた。

「どうしよう、相内、うれしい…」
「ん…うん。ぁ、あぁ…」
「あい、うち、きもちい?」
「ん、気持ちいい…」

もう少しももちそうにない。

前へ腕を回して相内の背中を抱く。肩甲骨の間に顔を埋めて夢中で吸い付いた。赤く色づいたそこを見ながら相内を握る手の動きを激しくしていく。

「相内のここにぶっかけていい?」
「ぁ、や、いいわけ、ないだろ」

腰を打つ度にクチュクチュと音がして、2人の体液が絡まる。
扱いてるのと反対の手で乳首を押し潰した。

「ん!…あ、あ、っん」
「は、やべ、イく」
「あ…は、まっ、はなせ、あ、出る」

相内が少し焦ったように俺の手を掴む。でも放してやらなかった。

「っあ!あぁ、あ」
「あぁっ…!」

相内は床に白濁を吐き出した。
俺は相内のお尻に…

「はは…、かかっちゃった」
「はぁ…お前…」

ティッシュでそこを拭いてやってから、相内の横に寝転がる。

最後まで、してしまった。

呼吸を整えた相内はむくっと起き上がって眼鏡をかけた。それからジーンズを履き直し、立ち上がった。

「ラーメン、せっかく作ってもらったのに伸びたな」

引っ掛かっているポロシャツを取って着ながら相内が言う。

「もう帰る?」

なんとなく寂しくなって言うと、相内が吹き出した。

「それ、飽きられて来た頃の愛人のセリフだ」

「だってさぁ…」

そして今更ながら、罪悪感が押し寄せる。俺は友達になんてことを。
俺は起き上がってあぐらをかいた。

「……なんか、悪かったな。忘れて、今日のこと」

相内が一呼吸置いてから言う。

「並木も早く忘れろ。言われた嫌なこと」

眼鏡の奥からまっすぐに見つめられて、俺は心からありがとうを言う。心の中で。

「俺、相内の優しさにまじで惚れそう」
「あ、でも」

玄関に向かいながら相内が言う。

「俺のにだけ卵入れてくれた優しさは忘れない。彼女なんかまたすぐできる。じゃあな」

相内は軽く手を上げて出て行った。



彼女。ね。
作れるかな。

いろんな意味で。



 *



並木の家のドアを何食わぬ顔で閉めた相内は、全力を振り絞って数歩歩き、アパートの壁にもたれてしゃがみこんだ。

平静を装ってはみたが、並木に見抜かれていない自信はなかった。

いや、大丈夫だ。相手は並木だ。おっとりしてどこか抜けているあの並木だ。
でもまさか。あんなことをしたりされたりするとは。
友達…なのに。

開きそうな未知の世界の扉を、相内は全力で押さえつけた。

この力はいつまでもつだろう。
一抹の不安を覚えて、相内は自分を抱き締めた。




-end-
1/15ページ
スキ