佐々木くんの日記

○月○日
今日、電車の中で思いついた。

藤木田さんには携帯のストラップを作ろうと思うけど、松谷くんにもおそろいのを作っちゃおう。

まゆたんは僕があげたストラップをまだつけてくれている。

テスト期間中は部活が休みだから、それまでに2つ。

テスト前の部活があと5回。
多分大丈夫だとは思うけど。
急ごう。藤木田さんのためにも。

松谷くんは藤木田さんと帰るのが恒例になりつつある。

タぺストリーはもうできそうだけど、一旦休んで藤木田さんの方優先。

ストラップはビーズ先輩に相談しよう。

父さんの生地を使うのはずっと後になりそうだ。




○月○日
今日は土曜日で図書館に行ってきた。

子どもとかも来ていて結構賑わっていた。
いや、図書館は賑わうって言わないか。

混んでいた。

今日の目標分をやり終わってから少し本を探したら、倫理や哲学関係の面白そうな本があったので借りてきてしまった。

明日は1日本を読もう。

それから帰りに本屋に寄ったら、キルティングの雑誌があって思わず手に取った。

すばらしい。すばらしい人ってたくさんいる。

僕もパッチワーク早く上達したい。

タぺストリーは完成間近だけど、まぁ初めてにしては…という出来だ。せっかく貴重な着物の生地を使わせてもらったのに…

僕もパッチワーク先輩みたいに、これならお金を出して買いたいと人に思ってもらえるようなものを作れるようになりたい。





○月○日
本がおもしろかった。
哲学は2年の科目だけど早く勉強したくなった。

今日はこれから勉強する。





○月○日
斉木に、今度の土日勉強を教えてほしいと言われた。

いいけどスパイク袋の話は、と言ったら、苦い顔で
「それって交換条件?」
と聞かれたので、違うと言った。

斉木がいつか諦めますように。

それにしても今度の土日ってテスト一週間前だけど大丈夫なんだろうか。

とりあえず土曜日斉木と峯がうちに来ることになった。

ストラップのことをビーズ先輩に相談したら、ペアにするならこういうのがかわいいとかで本や写真を見せてくれた。

すごく難しそうに見えたけど、友達のために作りたいと言ったら先輩がつきっきりで教えると言ってくれたので安心した。

やっぱり先輩たちみんな優しいな。
もっと後輩が居るべきだ。
僕だけで独占なんてもったいない。

ビーズ先輩は細くてヒョロっとしている。手首なんか折れそうだ。指は細くて長くて、小さなビーズもついついと摘まむ。

僕も男にしては華奢な手と言われるけど、やっぱり僕は男なんだなと思う。

今日はメインになるパーツをテグスで台に留めるところまでできた。
2つ分。
1つはピンク系、1つはグリーン系。

かわいい。これは絶対にかわいい!
僕も欲しくなってきた。
とりあえず今は我慢。

隣ではミニチュア先輩がマカロンの指輪を作っていた。
本物みたいですごくかわいい。

そしてそして!
ミシン先輩がさゆの服を使ってロングスカートを作ってくれていた!

「あとの生地は部で使わせてもらうとして、お礼に渡しておいて」
と言われた。

見せてもらうと、腰回りはゴムで、ちゃんと薄手の裏地までついていた。

スカートは裏地があったほうが透けないし履きやすいんだそうだ。

縦に縞模様のように違う生地をつぎはぎしていて、きれいな模様になっている。

あれはすごい。ミシン先輩本当にすごい。器用だし発想がなんだか独特。

お礼を言ってもらって帰ってきた。

夜、さゆに渡すとすごくビックリしていて、すぐに履いて母さんに見せていた。

「これならお金くれなくても許す」
と偉そうに言うので、先輩が一生懸命作ってくれたんだと言ったら、
「そうだね、ありがとうございましたたくさん履きますって言っといて」
と言われた。

よかった。
今日は話が通じた。





○月○日
先生たちから学年委員会に、宿泊学習の日程が大枠で下りて来た。

1日目は焼き物作り。
河原でカレー作り。
次の日登山。
雨天時は室内で球技大会。
次の日美術館と記念館見学で終了。

夜のレクの内容を考えなければ。

4組の大野くんと久し振りに話したけど、現国は難しいし漢字や慣用句など配点の低い問題以外は勉強しづらいという意見が完全に一致した。

大野くんはすごく自分を持っている感じがする。マイペースっぽくて、あまり言葉は多くないけれど考え方がしっかりしていて、話していておもしろい。

まゆたんに、
「最近部活で何作ってんの」
と聞かれて、またストラップを作っていると言ったら、
「本当に手芸好きなんだね」
と言われた。

斉木にスパイク袋作りを断られたけど僕はまだ諦めてないとまゆたんに言っていたら、斉木がそれを聞いていて
「いや諦めろ。絶対いらねえ」
と言ってきた。

僕がしゅんとしていたら、まゆたんが
「そんなに斉木に作りたいの」
と聞いてきたので、あのくらいの大きさのトートか巾着みたいな形状のものが作りたいだけで別に斉木でなくてもいいと言った。

まあボロボロなのは気になるけど別に斉木じゃなくても全然いい。

今思いついた。
まゆたんだって空手部でいろいろ使うんじゃないだろうか。
袋とかバッグとか。

ペンケースも作らないとだし。本人には言ってないけど。

よし。勉強しよう。





○月○日
ペアのストラップができてきた。
明日には出来上がると思う。
藤木田さん、喜んでくれるといいな。

ちなみにビーズ細工では、丸カンをニッパーでくるんと丸めるところが一番好き。

松谷くんから渡してもらった方がよくないか。
そうしよう。
僕が作ったことは言ってもらってもいいけど、僕があげると余計なことを言ったりやったりして松谷くんの努力が水の泡になりそうだから。

うん。そうしよう。

今日の帰りも、まゆたんの空手部がまだ活動をしていて、僕はまたこっそりのぞいた。
本当にかっこいいと思うのに、多分まゆたんは見られるのをすごく嫌がると思うから、30秒くらいうろうろしてから帰った。

空手ってすごいな。
日本人という感じがする。

松谷くんも華道をしていて日本人だし、僕も着物の生地が好きで日本人だ。

現国は苦手だけど。
だめだ。もっと本を読まないと。

数学はあんなに楽しいのに。





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