佐々木くんの日記

○月○日
初部活だった。

特にみんなでなにかをするという決まりはないらしくて、何か作りたいものがあるか聞かれた。

パッチワークを教えてもらおうと思ったけど、先輩の1人がビーズのストラップを作っているのを見て、僕も入部した記念にまずはそれを作ってみようと思った。

ビーズ細工は初めてなので、その先輩の隣でいろいろ教えてもらいながら作り始めた。

部にある材料はピンク系が多くて、会計担当の先輩(パッチワークの先輩)が、今度男の子でも使えそうなものを買い足しておくと言ってくれた。

たまたまあったシルバーと黒をかき集めて使うことにした。
そんなに難しくないデザインの写真を見せてもらって、今日で多分半分くらいできた。

ビーズの先輩は指が細くてすごく器用だった。テグスにするするとビーズが吸い込まれていった。

「すごく上手ですね」
と言ったら、
「佐々木くんも男の子なのに器用だね」
と言われた。

僕は、男子は器用じゃないというイメージと戦う!

クラスでは、男子も女子も仲の良いグループができつつある。孤立してる人は居なそうだし、このまま平和にいけばいいな。

東藤くんはまだ部活を決め兼ねているらしい。






○月○日
数学がおもしろい。先生の教え方がうまい。

あの先生の口癖は「要するには」だ。
正確には「要するにはぁあ~」だ。

全体的にやたら語尾が伸びてそこにアクセントが来る。
英語のアクセント記号を付けたいくらいだ。

今日も東藤くんが当てられて、真っ赤になって黒板に答えを書いていた。

放課後、部活に行こうとしたら、東藤くんに
「手芸部楽しい?」
と聞かれたので、すごく楽しいことをまた熱く語ってしまった。

今ストラップを作っていることを言ったら
「今度見せて」
と言われた。

東藤くんは僕のこと苦手なんだと思うけど、普通に話しかけてくれた。
でも顔は赤かったから、多分がんばってるんだろう。

慣れようとして無理をしてるんじゃなきゃいいけど。

ストラップが完成した。感動してすぐ携帯に付けてしまった。
すごくかわいい。
かわいいー!






○月○日
英語の先生は最初とても怖かった。無表情だし抑揚がないし。

みんなしーんとしていたけど、よく聞いているとぼそっとダジャレを言う。

僕は途中で我慢できなくなって笑ってしまった。
そしたらみんなも緊張が解けたみたいだったし、先生が一瞬嬉しそうな顔をしたのを見てしまった。

あの先生はきっといい先生だ。
人見知りなのかも。
先生で人見知りも大変そうだ。しかも英語ってコミュニケーションの大事な科目なのに…

おもしろい。

斉木が僕のストラップに気付いて誉めてくれた。

「よくそんなちまちましたもん作れるな」
と言われたので
「斉木にも作ってやろうか」
と言ったら
「いらん」
と言われた。

あいつはいいやつだ。






○月○日
放課後、学年のクラス委員会があって、4組の大野くんと話した。

4組にはちょっと目立つ感じの女子がなぜか集まっていて、その子たちがクラスの中心になっているらしくて、まとめるのが大変だと言っていた。

うちのクラスの女子はおとなしめな気がするけど、実情は外からではよくわからない。

夏前に宿泊学習があるので、とりあえずそこが最初の大きな山場だろう。

部活ではパッチワーク先輩が休みだったので、ミシンで洋服を作っている先輩の作業を見学していた。

「見られてると緊張する」
と言いながらかなり速いペースで縫っていた。
すごくミシンに慣れてる感じだった。

夏用にスカートを作っているらしい。

スカートはズボンよりずっと作るのが楽そうだ。
いいな、女子はスカートが履けて。

でも、思っていたより手芸部の実力はすごい。
楽しい。
5人しかいないけど、何気にすごい先輩ばかりな気がする。

ビーズ先輩はアンティークっぽい材料で指輪を作り始めた。

あとの2人のことは書いてなかったけど、1人はミニチュアとかドールハウス作りが好きみたいだ。

もう1人は気分によってなんでもやるらしいけど、今は飼い犬の服を作っている。
でも大型犬らしくて結構でかい。
この人が部長だということを今日知った。

「パッチワークで何が作りたいの」
と聞かれて、ベッドカバーだと答えたら、先輩たちはみんないいねいいねと言ってくれた。

でもまずは何か小さいものがいい気がするし、今度パッチワーク先輩に相談しよう。






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