佐々木くんの日記

○月○日
先輩たちはなぜか出品とか売るとかの話になると消極的で、僕はどうして嫌なのか真面目トーンで聞いた。

そしたら前にパッチワーク先輩に「売れそう」って言ったときと同じ答えが4人からも帰ってきて本当にびっくりしてしまった。

要は、自分たちが作っているものに自信がないというか、「こんなの欲しい人いるかな」という気持ち。

オーマイゴッドだよ…

僕はまた力説してしまった。

パッチワーク先輩の作品を見て感動して入部したこと。
ミシン先輩の作ったスカートを、さゆが気に入っていること。
ミニチュア先輩の作っていた、小さなケーキとかマカロンがついた指輪、作り方を教えてもらって僕もキーホルダーにつけたいと思ってること。
ビーズ先輩が教えてくれたストラップを友達カップルが大事につけてくれていること。
あと、部長はなんでも作れて早いし綺麗だし本当にすごいと思っていること。教えてもらって作ったクッションカバーを母が大事に使っていること。

とか。
多分30分くらいペラペラしゃべって説得していたら、先輩たちもだんだんやる気になってくれたらしい。

佐々木くんがそこまで言うなら、みたいな感じで、ポツポツと、ストラップ作ってみるから売れそうか見て、と言われたり。

ああ!
先輩たち!
もっと自信を持って!
僕は先輩たちをこんなにすごいと思っているのに!
あああ!

試作品ができたら、みどりさんとか藤木田さんとかに見てもらって、欲しいかどうか聞いてみよう。
松谷くんにも。

あと、説得しているところを、廊下を通りかかったまゆたんに見られていた。

部活帰りに会ったから一緒に帰ったら、
「お前さっきすごい真剣に力説してなかった?」
と言われた。

職員室に行く途中で見たらしい。

だから先輩たちとのことをまゆたんに話したら、
「男でも使えそうなものも作れば」
と言われた。

なるほど!そこを開拓しないと!
僕にできること。

まゆたんだったら何がほしいか聞くと、別になんでも、と言われて考えていたら、
「ストラップでも、佐々木が作ってくれたみたいなやつなら、男でも買うんじゃないの」
と言われた。

それでその時思い付いたんだけど、カップル用に男女お揃いの、あ、待って、今違うこと思い付いたから先に書こう。

学校祭でクラスお揃いの、なんていうんだろうあれは。腰とか首とかに巻ける、スカーフ?なんだっけ?なんだっけ

今さゆに聞いたらストールらしい。

ストール!お揃いの!

みんなからいらない布を集めて細長く切って縫い合わせてストールできないかな!
首とか手首に巻いたり、男子だったらベルトのところに引っかけてぶら下げたりできるような。
ちょっとまゆたんに電話しよう。

イメージがわかないからよくわかんねえって言われた。
まゆたん、電話でもやっぱり恥ずかしそうなのが伝わってくる。

今からちょっと作ってみよう。
明日見てもらう。




○月○日
ストールを作って持って行ったら、大騒ぎになった。

まずまゆたんに見せようと思ったのに、松谷くんが
「なにそれ!奇抜!」
と言って、それを聞いた峯と斉木が来て広げたり振り回したりしたので(主に斉木が)、女子の目に止まってしまい、なにそれ合戦になった。

学校祭でクラスみんなでつけれたらいいなと思って、と言ったら、斉木が
「どうやってどこにつけんの」
と聞いてきたので、まゆたんの首に巻いてみた。

可愛すぎてびっくりした。

そこからまゆたんかわいい合戦になって
、僕はまゆたんが失神してしまわないか心配だった。

他にも、腰につけて走って、たなびかせてみたり、頭に巻いたり、みんな個性的な使い方を提案してくれた。

僕はみんなに、いらない布を持ってきてもらうように頼んだ。すると女子の何人かが作るのを手伝ってくれることになった。
楽しすぎる。

部活では、クッションカバーが1枚できた。
部屋のカバーを付け替えた。
父さん、元気かな。

パッチワーク先輩が、学校祭で売るために、リュックの試作品を作っていたんだけど!
これが!
最高だ。

あの柄、なんていう柄なんだろう。
とってもモダンでスッキリしたデザイン。
でも売れるか自信がなさそうだった。

とりあえずひとつだけ売ってみるみたい。
僕が欲しいくらいだ。

それから、ビーズ先輩とミニチュア先輩が一緒に、小物入れを作っていた。
作品ごとにテーマがあって、シンデレラとか、アリスとか、親指姫とか、童話を表現するみたい。

僕が一番ステキだと思ったのは、幸福な王子の小物入れ。
話のあらすじが切ないからか、なんだかとても綺麗な作品になりそうだと思った。

僕も男女ペアの、リングを作ってみることに。
売れるかなぁ。不安。
余裕があったらストラップも作りたい。

部活が終わってから、部活帰りのまゆたんに会って、一緒に帰った。
下らない事を話したけど、まゆたんと話すとなんだか癒される。

まゆたんは部活が結構キツかったらしくて、疲れていた。
あと、畳で擦ったとかで、ほっぺの傷があった。
かわいそうに。
思わずなでなでしてしまった。
真っ赤になっていた。

「やっめろよ」
と言っていた。

かわいい。





○月○日
教室で斉木が、一番かわいいのは誰とかいう下らない話をして女子の反感を買っていた。

僕も聞かれたので、東藤くんと答えたら、斉木が、お前マジでホモなんじゃねえの、と言っていた。

ホモとは。斉木の考える事は前衛的だ。

でも女子の中にも、東藤くんはかわいいと言っている人がいたし、本当にかわいいのだから仕方がない。
まゆたんは嫌がっていた。

松谷くんが
「あんまり言うとあの子泣くよ」と言ったら、まゆたんが
「誰が泣くか」
と言って真っ赤になっていた。

それからなぜか、女子が佐々木くんは色が白いという話をし出して、肌が綺麗とか言われた。
考えたら、あんまり外で活動しないからな。
良くないかもしれない。

女子が、私も佐々木くんみたいに肌が綺麗になりたい、ニキビが嫌だと言ったので、そんなのあっても気にならないよ、かわいいよ、と言ったら、斉木に蹴られた。

「無自覚たらしだな」
と言われたので、背負い投げを返した。

そこからなぜかプロレスごっこのようになってしまって、最終的に、僕がまゆたんに寝技をかけられてギブギブ叫んで終わった。

まゆたん、じゃなくて、東藤くん、強い。

いらない布が本当に集まりだした。
手伝ってくれる女子とどこで作るかが問題だ。家庭科室は部活があるし。
誰かの家?
うちでもいいし。
ああ。楽しみだ。かわいいストールをいっぱい作れる。




15/19ページ
スキ