大きな声では言わないけど
8 彰人の焦燥
あっくんと2人で居酒屋に来ている。
友達がバイトしててクーポンをくれたし、飲み放題にこっそりビールを入れてくれるって言うし、何より俺はあの奇跡の宅飲みの日以来、またあっくんと飲みたくてうずうずしてむらむらして大変なのだ。
「あっくんなに食べる?」
「豚串と」
「俺も」
「レバーと」
「俺も」
「若鶏の唐揚げネギソースと」
「あーんっいいねっ!半分こして?」
「チーズオムレツと」
「キャア!一緒に食べる!」
「チゲ鍋」
「あっくんがふうふうして食べさせてね?」
「あとたこわさ」
「じゃあたこわさは俺があっくんに食べさせてあぐえっ」
「喉って人の弱点らしいけどどうよ」
「間違いなさそう」
あっくんたら場所を選ばず攻撃してきちゃうんだから。勃っちゃうんだから。
「注文しよっ。ビールも頼むー」
「まだフード注文してないのに2杯目かよ」
「あっくんも飲んでね?いっぱい飲んでね?」
「失礼しまーっす!」
掘り炬燵の個室までとっといてくれた友達が注文を取りに来た。
見た目のチャラさに磨きがかかってる。ピアスも増えてる。こんなんでよくバイトできるな、と感心してしまう。
「あ、正浩!今日ありがとね!あっくん、高校の同級生の正浩だよ」
「ども」
「どうも!広樹もうグラス空じゃん。ビール?」
「うん!あとフードがぁ」
さっきのあっくんの注文を繰り返す。
「りょーかい。少々お待ちください」
「ねぇねぇ正浩、発泡酒の飲み放題にビールとか入れてもらって大丈夫なの?」
「おー。知り合い来たらやっていいことになってんだ」
「へぇー、すごいねあっくん」
「たまには俺とも遊べよ」
正浩が俺の頭を撫でる。撫でながらチラチラあっくんを見てる。
「えぇーいいけどー。でも俺はあっくんが最優先だからっ」
あれ?なんか正浩の顔がひきつった気が。
「え、…あっくんて、えっと」
「彰人くんていうの。すごいイケメンでしょ?俺の超愛して止まない恋人!ねぇあっくん、そうだよね?ね?」
あっくん、目つきがやばい怖い。なんか2人とも空気重いー。つまんないー。
「そ、うなんだ」
「正浩?どしたの?」
「いや、別に。じゃ、ちょっと待ってて」
正浩は個室を出て行った。
「変なの。いつもはもっとノリいいんだよ?ごめんねあっくん」
「あ、いや……あいつって」
「なぁに?」
「お前と…友達?」
「そうだよ」
「ただの友達?なんもねぇの?」
「ないよ?…あーなになにぃ、気になる?ねぇ気になるの?」
「別に」
「嘘ばっかり!『くそっ、あいつ俺の広樹の何なんだよ』みたいな?」
「違う!バカか!」
「あっくん…ねぇ…」
「なに」
「掘り炬燵の個室ってエロくない?」
「は?」
「あっくんの隣に座る」
「やめろ!個室で向かい合わないで隣に座ってるやつなんか見たことねぇよ!」
「やだやだやだやだ!座るもん!」
俺は無理矢理あっくんの膝に向かい合うように座った。
「それは隣って言わねえんだよ!」
「ああそうだよね、上だよね、あっくんの上だよね」
「開き直んなよ!」
「ねぇいいでしょ?」
「わかった、待て、頼んだの全部来たら構ってやるからとりあえず膝から降りろ」
「はぁい。あっくんはなんでもいいから早くお酒飲んでね?」
「なんで」
「失礼します、ビールお持ちしま」
入ってきた正浩が、あっくんの膝に座る俺を見て固まった。
「広樹…お前ほんとに…」
「あれ?知ってるよね?俺がゲイなの」
「いや、そう、じゃなくて……くそっ」
正浩はビールを置くとさっさと出て行ってしまった。
「ぜーったい変!なんか機嫌悪いみたいっうわっあっくん?」
あっくんが突然ビールを一気に飲み干した。
「だ、大丈夫なの?空きっ腹だし、具合悪くなっちゃうよ」
「平気」
「そ、そう?」
どうしたんだよみんな。大丈夫か。
俺はあっくんの膝を降りて横に座り、ぴったりと寄り添った。
次々に料理が運ばれてきたけど、あれ以来正浩が来てくれない。忙しいのかな、混んでるみたいだし。
あっくんのお酒のペースは俺の半分くらいだけど、宅飲みの時みたいになんかいい感じに黙ってきたし、俺の方チラチラ見てる。いいね!
「あっくん、大丈夫?」
俺は上目遣いであっくんを見る。あっくんはこれに弱い。ウフフ、知ってるんだから。
「っ、広樹」
「なぁに、あっくん」
「なぁ…抱き締めていい?」
その時が来たようだ。
「ん、いいよ」
「広樹…どこにも行くなよ」
なにこれ。まじでやばい。
「行かないよ、何言ってるの」
「お前は俺だけ見てろよ」
やばい、勃っちゃった。
耳元でそれはやばい。だって俺あっくんの声大好きだから。
「お待たせしましたチゲな」
久しぶりに正浩が来てまた固まった。
「…べ…です…」
「もう!なんなんだよ正浩!なんで怒ってるの?」
「怒ってない」
「嘘!なんか怖いもん!」
「ごゆっくりどうぞ!」
正浩は怖い顔であっくんの顔を見て出て行った。ピシャッと個室の引き戸が閉まる。
「なんなのあいつ。もう知らない!」
「あいつ…」
「え?うわ!あっくん!」
「広樹」
「やぁん…」
あっくんに押し倒されて、俺は仰向けに転がった。
「んっ、あ…んん…」
「お前、本当にあいつと何もねぇだろうな?」
「んっあん!やだぁ…いきなりそんなとこ触っちゃ、んっ」
「どうなんだよ」
「ないっないよぉ、俺あっくんだけなんだからぁっ」
「くそ」
「あっくん、どしたのっあふっいや、や!やだってばぁ!」
「俺の知らない広樹のこと、あいつは知ってんだろ」
「待ってぇ!まだだめ、入んないよぉ、あっく、はぁっ、」
「広樹…」
あっくんがペニスの先っちょを俺のアナの入口に押し当てたまま、俺の胸におでこを押し当てた。
「あっくん?」
「…ごめん広樹」
「待って!やだ!やめないで…」
「いや、こんなのだめだ。無理矢理みたいなの」
「やだよ!あっくん抱いて、ねぇお願い。俺あっくんにしか抱かれたくないんだから!他の人なんか目にも入ってないから!ちゃんと抱いて確かめてよ!」
「でも」
「あっくんだけのものにしてよぉ…ここに、っん、入れて、中出ししてぇ、」
「…わかった。でも」
「でも…?」
「ちゃんと慣らしてから」
優しさ万歳。
掘り炬燵に座ったあっくんのその膝に俺が背中向けて膝折って跨がって、下からガンガン攻められている。
「あっ、あぅ、ん!ぁん!あ、いいっ!あっくんっ、いいよぉ!」
「そんなに、俺が、いいかよ」
「いい、あっくんがいいの!」
「ほんとか?誰でも、さっきのあいつでも、いいんじゃねぇの」
「あっくんしかっあんっ嫌だもん!あっくんが好きぃ、やっあっはぁん!」
「…もっと、言え」
「え?」
「もっと言えよ。俺のこと好きって。俺じゃなきゃだめだって言え」
後ろから首筋を思いっきり吸われた。突き上げも荒くなる。
「あっく、あ゛ぁっ!激し、あっんっん!」
「おら言えよ」
「あっくんっ大好き、大好きだよ」
「広樹、こっち向いて」
あっくんと向かい合ってキスをする。
「…好き、大好き。あっくんじゃなきゃ嫌だ。俺、今幸せすぎるもん」
「もっとキスして」
「んっんぅ…」
「広樹ん中にマーキングしていい?」
「なにそれえっち!ケダモノ!あっくん最高!」
向かい合ってあっくんが俺の腰を支えながら突き上げる。それに合わせて俺も腰を振った。
「あっあっあんっあっあっ」
「俺のどこが好き」
「優、しい、とこ、あん」
「あとは」
「んっ、いじわる、するとこ」
「あと」
「いっぱい、甘やかして、くれるとこ」
「それから」
「言葉遣い悪い、とこもっ、勉強、まじめに、するとこも、声も、話し方もっんっあ!きもちい!そこもっと!そこぉっ!」
「まだある?」
「顔」
「はは」
「体」
「ふ」
「全部、ぜんぶっ、あっくんの全部、好き、んっ、」
「広樹に出会えてよかった」
なにそれちょっともう急に危ないなイくとこだったんですけど
「んあっん!」
「中に、出すよ」
「出して!あっくんの、精液っひろきの中にあっ、出して!」
「お前はっ、俺のだ」
俺の方が若干先に出ちゃった。
「やぁあーっ!」
「うっ、イく」
「イって!おれに、マーキングしてっ!」
びくびく痙攣が止まらない。目を閉じてるあっくんがセクシーすぎて殺されそう。
絶対誰にもあげない。
「チゲ鍋冷めたな」
「ぬるくて食べやすいかも」
「んー」
「あっくん、あっくんこそ浮気しないでよ?」
「しねぇよ」
「イケメンだから超心配なんだから!創樹でもだめだからね!」
「はっ絶対ねぇよ」
*
「っくしゅん」
創樹くんのくしゃみ。心臓が止まるほどかわいい。
「大丈夫?寒い?」
「いや」
「何か噂されてるんじゃない?」
「彰人が俺とヤりてぇって言ってんのかもな」
「ないよ絶対ないよ」
「で、お前はいつ彰人を攻めんの?」
「その失言いい加減忘れてよ…」
「考えたんだけどさ、サンドイッチできるよなー、お前が彰人羽交い締めにしながら突っ込んで、その隙に俺が乗っかって突っ込んでもらう」
「手のあいてる広樹くんに殺されて終わるよね」
「問題はそこだけだな。あいつ本当邪魔」
*
「ちーん」
「広樹のくしゃみ引くほど変だよな」
「生理現象に引かないでよ!……ちょっとトイレ行ってくるね」
「1人で掻き出せる?」
「大丈夫。俺が何回受けやってると思ってるの、ふふ」
トイレに行く途中、ドリンク運んでた正浩に首筋見られた気がする。赤くなってるのかなぁ。あっくんたら。そんなことしなくても俺はあっくんだけのものなのに。
でも今日はあっくんあんまりベタ甘にならなかったな。なんで?
また近々飲まないと!
*
広樹がトイレに行って間もなく、あの軽そうな広樹の友達が入ってきた。
「…本当に、広樹と付き合ってるんすか」
「まあ」
「ゲイ、なんすか」
なんなんだこいつ。ケンカ売ってんのか。
「さあ。俺は広樹がいいだけなんで」
「本当に、本当にそんなにあいつがいいですか」
こいつが広樹のことを好きなのには最初に気付いた。あいつは俺んだ。
「いいっすね。最高っすね」
「くっ…」
今まで勇気を出せなかったお前の負けだ。
「俺…っ俺……ひと目惚れで…俺…」
なんだよ。下向いて震えてんじゃねぇ。さっさと去れ。
その時、ガラッと音がして引き戸が開き、広樹が帰ってきた。
「たっだいまあー、あっくーん」
「俺じゃだめですか!」
そう言った広樹の友人は俺の目を見ている。
空気が固まった。
「は?」
「え?」
「あ!ひ、広樹…」
「何?何この展開!あっくん!だから言ったでしょ!浮気だめ!」
「いや俺?悪いの俺じゃねぇだろ」
「正浩ー!おまえぇ!」
「広樹お前いつの間にこんなイケメン捕まえたんだよ!」
「うっさいうっさいうっさい関係ない正浩には一切関係ない!」
「彰人くん、こんなヒステリーやめません?こいつめんどくさくない?俺、尽くすよー」
「黙れ!俺だって尽くしてんだよお!」
「お前そんなタイプだったっけ?」
「もお!友達だと思ってたのにぃ!」
なんだかよくわからないがいつもこんなことになる。あぁ、俺は落ち着いて暮らしたい。
「はぁ、ゆっくり旅行でも行きてぇな」
思わず呟くと、二人が静かになった。
「あっくんごめんねうるさくして…俺もあっくんと二人で温泉とか行きたい」
「いや俺は一人で……」
「彰人くん、どうせならみんなで行きません?TDKとか。京都とかもいいっすよね」
「正浩は絶対だめ!」
「どうせ創樹も男いんだろ?みんなで行こうぜ」
「待て、俺は静かに一人で……」
「いやだ正浩どっか行って!ねっあっくん俺と2人がいいでしょ?どこ行く?俺全部手配するから!」
どうしてこうなる。
「久しぶりに創樹に連絡してみよ」
「やめてよ!周りから攻めないで!創樹だって彼氏いるのにあっくんのこと狙ってるんだから!」
「そうなの?なんだ、目的一緒なら話早いな」
「あ」
はは。なんだかわからないが広樹が墓穴を掘った。
俺の気持ちなんか誰もがどうでもいいらしい。
いいよ。俺は優しいなつめと二人でどっかに行こう。癒されよう。
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あっくんと2人で居酒屋に来ている。
友達がバイトしててクーポンをくれたし、飲み放題にこっそりビールを入れてくれるって言うし、何より俺はあの奇跡の宅飲みの日以来、またあっくんと飲みたくてうずうずしてむらむらして大変なのだ。
「あっくんなに食べる?」
「豚串と」
「俺も」
「レバーと」
「俺も」
「若鶏の唐揚げネギソースと」
「あーんっいいねっ!半分こして?」
「チーズオムレツと」
「キャア!一緒に食べる!」
「チゲ鍋」
「あっくんがふうふうして食べさせてね?」
「あとたこわさ」
「じゃあたこわさは俺があっくんに食べさせてあぐえっ」
「喉って人の弱点らしいけどどうよ」
「間違いなさそう」
あっくんたら場所を選ばず攻撃してきちゃうんだから。勃っちゃうんだから。
「注文しよっ。ビールも頼むー」
「まだフード注文してないのに2杯目かよ」
「あっくんも飲んでね?いっぱい飲んでね?」
「失礼しまーっす!」
掘り炬燵の個室までとっといてくれた友達が注文を取りに来た。
見た目のチャラさに磨きがかかってる。ピアスも増えてる。こんなんでよくバイトできるな、と感心してしまう。
「あ、正浩!今日ありがとね!あっくん、高校の同級生の正浩だよ」
「ども」
「どうも!広樹もうグラス空じゃん。ビール?」
「うん!あとフードがぁ」
さっきのあっくんの注文を繰り返す。
「りょーかい。少々お待ちください」
「ねぇねぇ正浩、発泡酒の飲み放題にビールとか入れてもらって大丈夫なの?」
「おー。知り合い来たらやっていいことになってんだ」
「へぇー、すごいねあっくん」
「たまには俺とも遊べよ」
正浩が俺の頭を撫でる。撫でながらチラチラあっくんを見てる。
「えぇーいいけどー。でも俺はあっくんが最優先だからっ」
あれ?なんか正浩の顔がひきつった気が。
「え、…あっくんて、えっと」
「彰人くんていうの。すごいイケメンでしょ?俺の超愛して止まない恋人!ねぇあっくん、そうだよね?ね?」
あっくん、目つきがやばい怖い。なんか2人とも空気重いー。つまんないー。
「そ、うなんだ」
「正浩?どしたの?」
「いや、別に。じゃ、ちょっと待ってて」
正浩は個室を出て行った。
「変なの。いつもはもっとノリいいんだよ?ごめんねあっくん」
「あ、いや……あいつって」
「なぁに?」
「お前と…友達?」
「そうだよ」
「ただの友達?なんもねぇの?」
「ないよ?…あーなになにぃ、気になる?ねぇ気になるの?」
「別に」
「嘘ばっかり!『くそっ、あいつ俺の広樹の何なんだよ』みたいな?」
「違う!バカか!」
「あっくん…ねぇ…」
「なに」
「掘り炬燵の個室ってエロくない?」
「は?」
「あっくんの隣に座る」
「やめろ!個室で向かい合わないで隣に座ってるやつなんか見たことねぇよ!」
「やだやだやだやだ!座るもん!」
俺は無理矢理あっくんの膝に向かい合うように座った。
「それは隣って言わねえんだよ!」
「ああそうだよね、上だよね、あっくんの上だよね」
「開き直んなよ!」
「ねぇいいでしょ?」
「わかった、待て、頼んだの全部来たら構ってやるからとりあえず膝から降りろ」
「はぁい。あっくんはなんでもいいから早くお酒飲んでね?」
「なんで」
「失礼します、ビールお持ちしま」
入ってきた正浩が、あっくんの膝に座る俺を見て固まった。
「広樹…お前ほんとに…」
「あれ?知ってるよね?俺がゲイなの」
「いや、そう、じゃなくて……くそっ」
正浩はビールを置くとさっさと出て行ってしまった。
「ぜーったい変!なんか機嫌悪いみたいっうわっあっくん?」
あっくんが突然ビールを一気に飲み干した。
「だ、大丈夫なの?空きっ腹だし、具合悪くなっちゃうよ」
「平気」
「そ、そう?」
どうしたんだよみんな。大丈夫か。
俺はあっくんの膝を降りて横に座り、ぴったりと寄り添った。
次々に料理が運ばれてきたけど、あれ以来正浩が来てくれない。忙しいのかな、混んでるみたいだし。
あっくんのお酒のペースは俺の半分くらいだけど、宅飲みの時みたいになんかいい感じに黙ってきたし、俺の方チラチラ見てる。いいね!
「あっくん、大丈夫?」
俺は上目遣いであっくんを見る。あっくんはこれに弱い。ウフフ、知ってるんだから。
「っ、広樹」
「なぁに、あっくん」
「なぁ…抱き締めていい?」
その時が来たようだ。
「ん、いいよ」
「広樹…どこにも行くなよ」
なにこれ。まじでやばい。
「行かないよ、何言ってるの」
「お前は俺だけ見てろよ」
やばい、勃っちゃった。
耳元でそれはやばい。だって俺あっくんの声大好きだから。
「お待たせしましたチゲな」
久しぶりに正浩が来てまた固まった。
「…べ…です…」
「もう!なんなんだよ正浩!なんで怒ってるの?」
「怒ってない」
「嘘!なんか怖いもん!」
「ごゆっくりどうぞ!」
正浩は怖い顔であっくんの顔を見て出て行った。ピシャッと個室の引き戸が閉まる。
「なんなのあいつ。もう知らない!」
「あいつ…」
「え?うわ!あっくん!」
「広樹」
「やぁん…」
あっくんに押し倒されて、俺は仰向けに転がった。
「んっ、あ…んん…」
「お前、本当にあいつと何もねぇだろうな?」
「んっあん!やだぁ…いきなりそんなとこ触っちゃ、んっ」
「どうなんだよ」
「ないっないよぉ、俺あっくんだけなんだからぁっ」
「くそ」
「あっくん、どしたのっあふっいや、や!やだってばぁ!」
「俺の知らない広樹のこと、あいつは知ってんだろ」
「待ってぇ!まだだめ、入んないよぉ、あっく、はぁっ、」
「広樹…」
あっくんがペニスの先っちょを俺のアナの入口に押し当てたまま、俺の胸におでこを押し当てた。
「あっくん?」
「…ごめん広樹」
「待って!やだ!やめないで…」
「いや、こんなのだめだ。無理矢理みたいなの」
「やだよ!あっくん抱いて、ねぇお願い。俺あっくんにしか抱かれたくないんだから!他の人なんか目にも入ってないから!ちゃんと抱いて確かめてよ!」
「でも」
「あっくんだけのものにしてよぉ…ここに、っん、入れて、中出ししてぇ、」
「…わかった。でも」
「でも…?」
「ちゃんと慣らしてから」
優しさ万歳。
掘り炬燵に座ったあっくんのその膝に俺が背中向けて膝折って跨がって、下からガンガン攻められている。
「あっ、あぅ、ん!ぁん!あ、いいっ!あっくんっ、いいよぉ!」
「そんなに、俺が、いいかよ」
「いい、あっくんがいいの!」
「ほんとか?誰でも、さっきのあいつでも、いいんじゃねぇの」
「あっくんしかっあんっ嫌だもん!あっくんが好きぃ、やっあっはぁん!」
「…もっと、言え」
「え?」
「もっと言えよ。俺のこと好きって。俺じゃなきゃだめだって言え」
後ろから首筋を思いっきり吸われた。突き上げも荒くなる。
「あっく、あ゛ぁっ!激し、あっんっん!」
「おら言えよ」
「あっくんっ大好き、大好きだよ」
「広樹、こっち向いて」
あっくんと向かい合ってキスをする。
「…好き、大好き。あっくんじゃなきゃ嫌だ。俺、今幸せすぎるもん」
「もっとキスして」
「んっんぅ…」
「広樹ん中にマーキングしていい?」
「なにそれえっち!ケダモノ!あっくん最高!」
向かい合ってあっくんが俺の腰を支えながら突き上げる。それに合わせて俺も腰を振った。
「あっあっあんっあっあっ」
「俺のどこが好き」
「優、しい、とこ、あん」
「あとは」
「んっ、いじわる、するとこ」
「あと」
「いっぱい、甘やかして、くれるとこ」
「それから」
「言葉遣い悪い、とこもっ、勉強、まじめに、するとこも、声も、話し方もっんっあ!きもちい!そこもっと!そこぉっ!」
「まだある?」
「顔」
「はは」
「体」
「ふ」
「全部、ぜんぶっ、あっくんの全部、好き、んっ、」
「広樹に出会えてよかった」
なにそれちょっともう急に危ないなイくとこだったんですけど
「んあっん!」
「中に、出すよ」
「出して!あっくんの、精液っひろきの中にあっ、出して!」
「お前はっ、俺のだ」
俺の方が若干先に出ちゃった。
「やぁあーっ!」
「うっ、イく」
「イって!おれに、マーキングしてっ!」
びくびく痙攣が止まらない。目を閉じてるあっくんがセクシーすぎて殺されそう。
絶対誰にもあげない。
「チゲ鍋冷めたな」
「ぬるくて食べやすいかも」
「んー」
「あっくん、あっくんこそ浮気しないでよ?」
「しねぇよ」
「イケメンだから超心配なんだから!創樹でもだめだからね!」
「はっ絶対ねぇよ」
*
「っくしゅん」
創樹くんのくしゃみ。心臓が止まるほどかわいい。
「大丈夫?寒い?」
「いや」
「何か噂されてるんじゃない?」
「彰人が俺とヤりてぇって言ってんのかもな」
「ないよ絶対ないよ」
「で、お前はいつ彰人を攻めんの?」
「その失言いい加減忘れてよ…」
「考えたんだけどさ、サンドイッチできるよなー、お前が彰人羽交い締めにしながら突っ込んで、その隙に俺が乗っかって突っ込んでもらう」
「手のあいてる広樹くんに殺されて終わるよね」
「問題はそこだけだな。あいつ本当邪魔」
*
「ちーん」
「広樹のくしゃみ引くほど変だよな」
「生理現象に引かないでよ!……ちょっとトイレ行ってくるね」
「1人で掻き出せる?」
「大丈夫。俺が何回受けやってると思ってるの、ふふ」
トイレに行く途中、ドリンク運んでた正浩に首筋見られた気がする。赤くなってるのかなぁ。あっくんたら。そんなことしなくても俺はあっくんだけのものなのに。
でも今日はあっくんあんまりベタ甘にならなかったな。なんで?
また近々飲まないと!
*
広樹がトイレに行って間もなく、あの軽そうな広樹の友達が入ってきた。
「…本当に、広樹と付き合ってるんすか」
「まあ」
「ゲイ、なんすか」
なんなんだこいつ。ケンカ売ってんのか。
「さあ。俺は広樹がいいだけなんで」
「本当に、本当にそんなにあいつがいいですか」
こいつが広樹のことを好きなのには最初に気付いた。あいつは俺んだ。
「いいっすね。最高っすね」
「くっ…」
今まで勇気を出せなかったお前の負けだ。
「俺…っ俺……ひと目惚れで…俺…」
なんだよ。下向いて震えてんじゃねぇ。さっさと去れ。
その時、ガラッと音がして引き戸が開き、広樹が帰ってきた。
「たっだいまあー、あっくーん」
「俺じゃだめですか!」
そう言った広樹の友人は俺の目を見ている。
空気が固まった。
「は?」
「え?」
「あ!ひ、広樹…」
「何?何この展開!あっくん!だから言ったでしょ!浮気だめ!」
「いや俺?悪いの俺じゃねぇだろ」
「正浩ー!おまえぇ!」
「広樹お前いつの間にこんなイケメン捕まえたんだよ!」
「うっさいうっさいうっさい関係ない正浩には一切関係ない!」
「彰人くん、こんなヒステリーやめません?こいつめんどくさくない?俺、尽くすよー」
「黙れ!俺だって尽くしてんだよお!」
「お前そんなタイプだったっけ?」
「もお!友達だと思ってたのにぃ!」
なんだかよくわからないがいつもこんなことになる。あぁ、俺は落ち着いて暮らしたい。
「はぁ、ゆっくり旅行でも行きてぇな」
思わず呟くと、二人が静かになった。
「あっくんごめんねうるさくして…俺もあっくんと二人で温泉とか行きたい」
「いや俺は一人で……」
「彰人くん、どうせならみんなで行きません?TDKとか。京都とかもいいっすよね」
「正浩は絶対だめ!」
「どうせ創樹も男いんだろ?みんなで行こうぜ」
「待て、俺は静かに一人で……」
「いやだ正浩どっか行って!ねっあっくん俺と2人がいいでしょ?どこ行く?俺全部手配するから!」
どうしてこうなる。
「久しぶりに創樹に連絡してみよ」
「やめてよ!周りから攻めないで!創樹だって彼氏いるのにあっくんのこと狙ってるんだから!」
「そうなの?なんだ、目的一緒なら話早いな」
「あ」
はは。なんだかわからないが広樹が墓穴を掘った。
俺の気持ちなんか誰もがどうでもいいらしい。
いいよ。俺は優しいなつめと二人でどっかに行こう。癒されよう。
-end-