大きな声では言わないけど
番外Ⅱ 彰人の兄の話
今日何回目かわからないけど、鏡を覗いて自分の外見をチェックする。
「よし。大丈夫だよね。ピンクのドット柄とか着てないし、髪型もモサってないし、ニキビもないっと。今日はおとなしくしてなきゃ!」
だって!だってね!なんとね!
今日はあっくんのお兄さまと会うんだ。
「ダテ眼鏡とかいるかな?」
悩んでいたらチャイムが鳴った。
「何その服。は?眼鏡?どうした頭のほうがついにアレか」
「あっくんおはよ!これ、眼鏡した方がいいかなぁ」
「いいって。普段通りで」
「だって、あっくんのご家族に会うんだよ?真面目に付き合ってますって言わなきゃだよ?」
「お前それ似合わない。いつもの方が俺は好き」
はい却下。さらば地味ニット。
「じゃあやっぱりピンクのドットのシャツにしよう」
ちょっと緊張するなぁ。
どんな人だろう、あっくんのお兄さま。
「兄貴、来たよ」
「こんにちはぁ、お邪魔しますぅ」
小綺麗なマンションの一室に上がると奥から、おう入れ、と低く太い声が聞こえた。
段ボール箱だらけの部屋にいたのは、あっくんとは全然似ていない男の人。
ただひとつ共通点があるとすれば。
「超絶イケメンですねお兄さま!」
考える前に言葉が飛び出した。
あっくんがスッキリ系イケメンだとすればお兄さまはワイルド系。
品種は違うけどどちらも素晴らしい仕上がりだ。
「ジーザス!超ファンタスティックです!」
胸の前で手を組んで祈る。
あっくんのお父さま、お母さま。
あなた方のお陰で世の中のイケメン度数が上がりました。
本当にありがとう。感謝します。
「彰の友達か?」
「そう。広樹」
あっくんは俺を無視してお兄さまとお話ししている。
「広樹くん、悪いね。彰の兄の忠人(ただひと)だよ。お礼はちゃんとするから。よろしくな」
「がんばりますね!」
お兄様はイケメンの上、低く張ったイケボの持ち主でもあった。
あっくんより背が高い。
てゆーか。
「あっくんたら。何が友達なの?ちゃんと紹介してよぅ」
「あ、あとで…」
「ダメぇ、いまぁ」
「忙しいからあとで。兄貴、まず何すればいい?」
ちっ。はぐらかされた。
今日はお兄さまの引っ越しの日で、俺たちはそれを手伝いに来たのだ。
「彰はテーブル分解して。脚外れるはずだから。広くんはそうだなぁ…」
「広樹はもの壊すから俺と一緒に動いてもらうわ」
「そうか」
失礼だな。
その時、玄関のドアが開閉する音がした。
部屋に姿を現した人を見た俺は5秒くらい固まった。
ものすごい美人さん。
女の人だ。さらさら系の髪の毛を後ろで束ねていて、後れ毛がほやほやしててなんともすてき。お兄さまより少し背が低くて、儚げな感じ。
年も多分お兄さまより少し下くらいだろう。
女の人にしては背が高いけど。いやいや。いやいや。
「あ、こんにちは」
男だった。声が男だし喉仏もある。でも美人。キャー!
「美咲(みさき)ちゃん、これ、弟の彰人」
「初めまして。兄がお世話になってます。彰人です」
「いえ、こちらこそ。美咲です」
美咲ちゃんはほんわりと笑った。
美しい。酷い。神様なんかいるもんか。不公平。
「こっちは友達の広樹くんだって」
「こんにちは、広樹くん」
「こんにちは!ってかお兄さまあのね、僕ぅ、あっくんの友達じゃないんでぐうぅぅ」
「その話はあとって言ったろ?『僕』ってなんだろうな?気持ち悪いな広樹くん」
「んぐ…うえ…」
あっくん怖い…手のひらで鼻と口を同時に押さえられて死ぬ……死…ぬ……
「ふふ、仲良しなんだね。かわいい。広樹くん」
「えぇ?そうですかぁ?」
美咲ちゃんはとっても美しく笑いながら俺の頭を撫でた。
「美咲ちゃんの方がかわいいです!ってか超きれい!」
「だろ?俺も患者として初めて会った時びっくりしたんだから」
「患者さん?」
「美咲ちゃんは歯医者さんなんだよ」
「ええぇ!すごい!でも似合う!いいなぁかっこいいしきれい!」
そんな、恥ずかしい、とか言いながら美咲ちゃんが少し赤くなった。
こんな歯医者さんだったらモテモテなんだろうなぁ。
「手がきれい!指が」
「だろ」
なぜだか美咲ちゃんより得意げなお兄さま。
「ほら。もう作業しないと。兄貴、夜仕事だろ」
「おう」
わいわい話してたのをあっくんがぶったぎって俺の手を引いて行く。
「あっくんどうしたの?」
「……別に」
「あっくん?怒ったの?ねえあっくん」
「いいからほら。手伝え」
「うん…」
テーブルの解体をてきぱきと終え、あっくんはお兄さまに指示されたガムテープを買い足しに行く、と見せかけて俺の手を引いて洗面所に入った。
とっても広い。
「あっくんどうしたの?」
「お前があんまり…あの人に…」
「なぁに?」
「いや。いいから」
あっくんは俺を抱き寄せておでこにちゅうをする。
「あぁん…勃った…」
「知るか」
「うそ…ねえ、どうしたの?あっくんも俺とにゃんにゃんしたいんでしょ?にゃーん」
「…こっち」
さらに奥のお風呂場へ。電気を消したままだから薄暗いけど、きれいに磨き上げられているのがわかる。
壁に背中をくっつけてあっくんと向かい合って、だんだん顔が近づいて…。
「忠人さん、だめだよ、弟さんたち帰って来ちゃう…」
お風呂場の外から美咲ちゃんの戸惑った声が聞こえてきて、俺たちはぴしりと固まった。
「いいだろ…ちょっとだけ…」
「んんっ…だめ…あ…」
これは…。
すぐ外の洗面所で事がおっぱじまろうとしている。ちゅちゅちゅとキスをする音が聞こえて、恥ずかしくなってあっくんの服の袖をぎゅっと握った。
お兄さまと美咲ちゃんはそういう関係だったんだ。
「…だめ…もう…」
「どうして…」
「だって…」
「美咲ちゃん…」
「あ、ん…」
「…勃ってる…」
「そんなとこ触るから…」
「俺も…触って」
「あぁ…すごい…硬い…」
ええええ。どうしよう。
あっくんを見上げると、実兄のこんな濡れ場聞かされるなんて何ていう地獄ですかと顔に書いてあった。
でしょうね。
「でもだめ、ほんとに…」
「すぐ終わるから…」
「いや…」
「美咲ちゃん」
「あぁっ」
美咲ちゃんの吐息に重なって、服が床に落ちる音がする。脱いでる。どうしよう。
「ほら…」
「だめだってば、忠人さん」
「逃げないで。な、すごいだろ…」
「…うん…」
「したい…」
「もう…してるくせに…」
くすっと笑いあってまたキスの音がする。
「美咲ちゃん…ほら…もう入っちゃうよ」
「…うん…」
「ああ…」
「…ん…っ、あ…」
「すごい…」
「あ…あぁ…」
今どうなってます?入りました?
美咲ちゃんの声がすごいえっち。かわいい。どんな顔で抱かれてるんだろう。
「きもちいい…」
「んっ、美咲ちゃん」
「ああ…忠人さん…」
「硬い…」
「忠人さんの中…すごい…」
うん?
「美咲ちゃん…もっと奥まで…あっ…来て…来てくれ…」
「もう…届かないよ…ここまでしか…んんっ」
「ああっそこ、そこいい…」
抱いている…美しい顔の美咲ちゃんがワイルド系お兄様を抱いている…。
「時間ないから…美咲ちゃん…動いて」
「恥ずかしい…」
「頼むよ…好きだ…美咲ちゃん」
「……ずるい…」
美咲ちゃんのその声はすごく切なげだった。
そうしてぱんぱんと激しく肌のぶつかる音がし始めた。
「ああっ!美咲ちゃん、いい、いいよ」
「忠人さん…ああ…っ」
「は、はぁ、ああっ、あ、あ、はげし、あ、あー、やばい潮ふきそう」
「だめ、がまんして…今日は…」
「だってこれ…バックでこんな…っ、激しくされたら…」
「だめだよ、がまんだよ、おちんちん押さえて…」
美咲ちゃんは切羽詰まった声で言う。忠人さんのはあはあっていう息遣いも聞こえる。
「ああ…あ…すごい…」
「あぁ、忠人さん…でそう…イきそうだよ…」
「美咲ちゃん…」
「どうしよ…中出ししていいの?」
「ああ…中に出してくれ…」
「…っ、はぁ…ただ、ひとさん…あっ…あ、ほんと…でる…」
ぱんぱんぱんぱん。
「美咲ちゃん…俺も…いきそ…」
すごい。美咲ちゃんの華奢な感じから想像もつかないくらい激しい音。ギャップえげつない。
「ああっ、出る、忠人さん、出るよ、ああ」
「出して…!はあ、あ、俺も出る、出る…」
「あぁ、忠人さん、僕の子ども孕ませたい…っあ」
「美咲ちゃん…!」
「あ、っ…!」
孕ませたいとは…美咲ちゃん…やる…。…すごい…。
それからちょっとの間キスの音がして、またくすっと笑いあって、手早く服を直して2人は洗面所を出たようだ。
すごい体験をした…。
「あっくん」
「完全に萎えた」
「ええ?!無理!俺ビンビンだもん!」
「つか具合悪い。吐きそうだし腹も下しそう。不眠症になりそうだしめちゃくちゃストレス食いしそうだしその後吐いて痩せそう」
「やばそう」
お風呂場から出たあっくんの顔は本当に蒼白で、俺が一人でお兄様のところへ行って事情を話し、帰らせてもらうことに。
「え、大丈夫なのか彰。ちょっと様子を」
「だめです、今お兄様の顔見たら多分倒れる」
「なんで?」
「えっと、そういう日みたいですね、なんか」
えへへ、と笑ってさよならをする。
隣で美咲ちゃんが心配そうな顔をしている。
儚げな美人。だが彼氏を孕ませることを想像しながら中出ししちゃう中々な人だ。
なかなかだ。
個性的なお知り合いがまたちょっと増えた。
ちなみに後でわかったんだけど、忠人さんは27歳で、美咲ちゃんはなんと32歳だった。
若い男の養分を吸って若さを保っているに違いない。
-end-
2017.4.3
今日何回目かわからないけど、鏡を覗いて自分の外見をチェックする。
「よし。大丈夫だよね。ピンクのドット柄とか着てないし、髪型もモサってないし、ニキビもないっと。今日はおとなしくしてなきゃ!」
だって!だってね!なんとね!
今日はあっくんのお兄さまと会うんだ。
「ダテ眼鏡とかいるかな?」
悩んでいたらチャイムが鳴った。
「何その服。は?眼鏡?どうした頭のほうがついにアレか」
「あっくんおはよ!これ、眼鏡した方がいいかなぁ」
「いいって。普段通りで」
「だって、あっくんのご家族に会うんだよ?真面目に付き合ってますって言わなきゃだよ?」
「お前それ似合わない。いつもの方が俺は好き」
はい却下。さらば地味ニット。
「じゃあやっぱりピンクのドットのシャツにしよう」
ちょっと緊張するなぁ。
どんな人だろう、あっくんのお兄さま。
「兄貴、来たよ」
「こんにちはぁ、お邪魔しますぅ」
小綺麗なマンションの一室に上がると奥から、おう入れ、と低く太い声が聞こえた。
段ボール箱だらけの部屋にいたのは、あっくんとは全然似ていない男の人。
ただひとつ共通点があるとすれば。
「超絶イケメンですねお兄さま!」
考える前に言葉が飛び出した。
あっくんがスッキリ系イケメンだとすればお兄さまはワイルド系。
品種は違うけどどちらも素晴らしい仕上がりだ。
「ジーザス!超ファンタスティックです!」
胸の前で手を組んで祈る。
あっくんのお父さま、お母さま。
あなた方のお陰で世の中のイケメン度数が上がりました。
本当にありがとう。感謝します。
「彰の友達か?」
「そう。広樹」
あっくんは俺を無視してお兄さまとお話ししている。
「広樹くん、悪いね。彰の兄の忠人(ただひと)だよ。お礼はちゃんとするから。よろしくな」
「がんばりますね!」
お兄様はイケメンの上、低く張ったイケボの持ち主でもあった。
あっくんより背が高い。
てゆーか。
「あっくんたら。何が友達なの?ちゃんと紹介してよぅ」
「あ、あとで…」
「ダメぇ、いまぁ」
「忙しいからあとで。兄貴、まず何すればいい?」
ちっ。はぐらかされた。
今日はお兄さまの引っ越しの日で、俺たちはそれを手伝いに来たのだ。
「彰はテーブル分解して。脚外れるはずだから。広くんはそうだなぁ…」
「広樹はもの壊すから俺と一緒に動いてもらうわ」
「そうか」
失礼だな。
その時、玄関のドアが開閉する音がした。
部屋に姿を現した人を見た俺は5秒くらい固まった。
ものすごい美人さん。
女の人だ。さらさら系の髪の毛を後ろで束ねていて、後れ毛がほやほやしててなんともすてき。お兄さまより少し背が低くて、儚げな感じ。
年も多分お兄さまより少し下くらいだろう。
女の人にしては背が高いけど。いやいや。いやいや。
「あ、こんにちは」
男だった。声が男だし喉仏もある。でも美人。キャー!
「美咲(みさき)ちゃん、これ、弟の彰人」
「初めまして。兄がお世話になってます。彰人です」
「いえ、こちらこそ。美咲です」
美咲ちゃんはほんわりと笑った。
美しい。酷い。神様なんかいるもんか。不公平。
「こっちは友達の広樹くんだって」
「こんにちは、広樹くん」
「こんにちは!ってかお兄さまあのね、僕ぅ、あっくんの友達じゃないんでぐうぅぅ」
「その話はあとって言ったろ?『僕』ってなんだろうな?気持ち悪いな広樹くん」
「んぐ…うえ…」
あっくん怖い…手のひらで鼻と口を同時に押さえられて死ぬ……死…ぬ……
「ふふ、仲良しなんだね。かわいい。広樹くん」
「えぇ?そうですかぁ?」
美咲ちゃんはとっても美しく笑いながら俺の頭を撫でた。
「美咲ちゃんの方がかわいいです!ってか超きれい!」
「だろ?俺も患者として初めて会った時びっくりしたんだから」
「患者さん?」
「美咲ちゃんは歯医者さんなんだよ」
「ええぇ!すごい!でも似合う!いいなぁかっこいいしきれい!」
そんな、恥ずかしい、とか言いながら美咲ちゃんが少し赤くなった。
こんな歯医者さんだったらモテモテなんだろうなぁ。
「手がきれい!指が」
「だろ」
なぜだか美咲ちゃんより得意げなお兄さま。
「ほら。もう作業しないと。兄貴、夜仕事だろ」
「おう」
わいわい話してたのをあっくんがぶったぎって俺の手を引いて行く。
「あっくんどうしたの?」
「……別に」
「あっくん?怒ったの?ねえあっくん」
「いいからほら。手伝え」
「うん…」
テーブルの解体をてきぱきと終え、あっくんはお兄さまに指示されたガムテープを買い足しに行く、と見せかけて俺の手を引いて洗面所に入った。
とっても広い。
「あっくんどうしたの?」
「お前があんまり…あの人に…」
「なぁに?」
「いや。いいから」
あっくんは俺を抱き寄せておでこにちゅうをする。
「あぁん…勃った…」
「知るか」
「うそ…ねえ、どうしたの?あっくんも俺とにゃんにゃんしたいんでしょ?にゃーん」
「…こっち」
さらに奥のお風呂場へ。電気を消したままだから薄暗いけど、きれいに磨き上げられているのがわかる。
壁に背中をくっつけてあっくんと向かい合って、だんだん顔が近づいて…。
「忠人さん、だめだよ、弟さんたち帰って来ちゃう…」
お風呂場の外から美咲ちゃんの戸惑った声が聞こえてきて、俺たちはぴしりと固まった。
「いいだろ…ちょっとだけ…」
「んんっ…だめ…あ…」
これは…。
すぐ外の洗面所で事がおっぱじまろうとしている。ちゅちゅちゅとキスをする音が聞こえて、恥ずかしくなってあっくんの服の袖をぎゅっと握った。
お兄さまと美咲ちゃんはそういう関係だったんだ。
「…だめ…もう…」
「どうして…」
「だって…」
「美咲ちゃん…」
「あ、ん…」
「…勃ってる…」
「そんなとこ触るから…」
「俺も…触って」
「あぁ…すごい…硬い…」
ええええ。どうしよう。
あっくんを見上げると、実兄のこんな濡れ場聞かされるなんて何ていう地獄ですかと顔に書いてあった。
でしょうね。
「でもだめ、ほんとに…」
「すぐ終わるから…」
「いや…」
「美咲ちゃん」
「あぁっ」
美咲ちゃんの吐息に重なって、服が床に落ちる音がする。脱いでる。どうしよう。
「ほら…」
「だめだってば、忠人さん」
「逃げないで。な、すごいだろ…」
「…うん…」
「したい…」
「もう…してるくせに…」
くすっと笑いあってまたキスの音がする。
「美咲ちゃん…ほら…もう入っちゃうよ」
「…うん…」
「ああ…」
「…ん…っ、あ…」
「すごい…」
「あ…あぁ…」
今どうなってます?入りました?
美咲ちゃんの声がすごいえっち。かわいい。どんな顔で抱かれてるんだろう。
「きもちいい…」
「んっ、美咲ちゃん」
「ああ…忠人さん…」
「硬い…」
「忠人さんの中…すごい…」
うん?
「美咲ちゃん…もっと奥まで…あっ…来て…来てくれ…」
「もう…届かないよ…ここまでしか…んんっ」
「ああっそこ、そこいい…」
抱いている…美しい顔の美咲ちゃんがワイルド系お兄様を抱いている…。
「時間ないから…美咲ちゃん…動いて」
「恥ずかしい…」
「頼むよ…好きだ…美咲ちゃん」
「……ずるい…」
美咲ちゃんのその声はすごく切なげだった。
そうしてぱんぱんと激しく肌のぶつかる音がし始めた。
「ああっ!美咲ちゃん、いい、いいよ」
「忠人さん…ああ…っ」
「は、はぁ、ああっ、あ、あ、はげし、あ、あー、やばい潮ふきそう」
「だめ、がまんして…今日は…」
「だってこれ…バックでこんな…っ、激しくされたら…」
「だめだよ、がまんだよ、おちんちん押さえて…」
美咲ちゃんは切羽詰まった声で言う。忠人さんのはあはあっていう息遣いも聞こえる。
「ああ…あ…すごい…」
「あぁ、忠人さん…でそう…イきそうだよ…」
「美咲ちゃん…」
「どうしよ…中出ししていいの?」
「ああ…中に出してくれ…」
「…っ、はぁ…ただ、ひとさん…あっ…あ、ほんと…でる…」
ぱんぱんぱんぱん。
「美咲ちゃん…俺も…いきそ…」
すごい。美咲ちゃんの華奢な感じから想像もつかないくらい激しい音。ギャップえげつない。
「ああっ、出る、忠人さん、出るよ、ああ」
「出して…!はあ、あ、俺も出る、出る…」
「あぁ、忠人さん、僕の子ども孕ませたい…っあ」
「美咲ちゃん…!」
「あ、っ…!」
孕ませたいとは…美咲ちゃん…やる…。…すごい…。
それからちょっとの間キスの音がして、またくすっと笑いあって、手早く服を直して2人は洗面所を出たようだ。
すごい体験をした…。
「あっくん」
「完全に萎えた」
「ええ?!無理!俺ビンビンだもん!」
「つか具合悪い。吐きそうだし腹も下しそう。不眠症になりそうだしめちゃくちゃストレス食いしそうだしその後吐いて痩せそう」
「やばそう」
お風呂場から出たあっくんの顔は本当に蒼白で、俺が一人でお兄様のところへ行って事情を話し、帰らせてもらうことに。
「え、大丈夫なのか彰。ちょっと様子を」
「だめです、今お兄様の顔見たら多分倒れる」
「なんで?」
「えっと、そういう日みたいですね、なんか」
えへへ、と笑ってさよならをする。
隣で美咲ちゃんが心配そうな顔をしている。
儚げな美人。だが彼氏を孕ませることを想像しながら中出ししちゃう中々な人だ。
なかなかだ。
個性的なお知り合いがまたちょっと増えた。
ちなみに後でわかったんだけど、忠人さんは27歳で、美咲ちゃんはなんと32歳だった。
若い男の養分を吸って若さを保っているに違いない。
-end-
2017.4.3