大きな声では言わないけど

番外 森田と岡崎22



布団に寝かせた森田さんの手首を両方まとめてヒモでぐるぐる巻きにして、頭の上にあったプラスチックの衣装ケースのはじっこにくくりつける。

アイマスクで目隠しをされた森田さんは、体いっぱいで不安を表現しててすごく新鮮。

「岡崎さん…」

俺が何もしないし言わないからか、森田さんが俺を呼ぶ。かわいい。

「はい」

いるよ。ちゃんと。

キスをすると、ぴくりと震える唇が俺を追って微かに寄ってくる。
唐突に離れる。
少し開いたままの唇が、閉じる。

何回かそれを繰り返していたら、森田さんが腰を少し動かした。

「ねー。興奮する?」
「いや…」

森田さんは仕事着のままだ。帰ってきてすぐ襲ったから。

今日は俺が休みで森田さんが仕事の日だったから、広樹と彰人くんと昼飯を食って、それから夜まで森田さんちで1人もんもんとしてたんだ。
気晴らしに酒でも飲むかなーと思ってビールを2缶空けて、そしたらもっとムラムラしてきて大変だった。

そういうことをするなら先にシャワーを浴びて着替えると言って譲らなかった森田さんも、少し拗ねたふりをすれば簡単だ。

「俺、森田さんのこのかっこう好きなのよ。働く男じゃん。しかも、」

首すじに鼻をうめると、かすかに汗の匂いがして興奮する。
森田さんは逃げようとする。

「働いたあとの匂いがするー」

わざと言う。森田さんは本当に嫌そうにしてる。

「岡崎さん、ちょっと、酔ってる、ね…や、やめた方が…」
「はいはい。いい子いい子。脱ぎ脱ぎしようね」

ジャケットのファスナーを下げて、中の白いシャツのボタンも外す。

その間も何回か、森田さんは俺を呼んだ。
無視して続ける。

上をはだけさせたとこでやめて、いよいよベルト。
ファスナー。

「岡崎さん…」

森田さんが腰を浮かせて大きく逃げる。

「なに」
「やめ、やっ、やめた方が…いいから…」
「なんで」
「き、綺麗じゃないし…岡崎さんに、見てもらえるような、ものじゃ…」
「ちょっとー。俺の大好きな人の体悪く言うのやめてね」

森田さんはその感じの言い回しに弱い。すぐに黙る。
しかも森田さんの体はもう何回も見てる。
森田さんは、何回見てもこうやって抵抗しようとする。
何回見ても、いい。

「じゃあさ、こういうふうに考えて」

こめかみやおでこやほっぺや唇にキスしながら言い聞かせる。
いちいちヒクヒクする森田さん。

「俺、今から、森田さんの体を好きにしちゃうんだよ。森田さん、岡崎さんに好きにされちゃうんだよ。ね?興奮しない?どう?」

森田さんはもじもじと腰を動かして、答える。

「…そ、…それは…すごく、嬉しい」




オナホの中にローションをしこんで、溢れて手についたのを森田さんのちんぽにこすりつけた。
森田さんは「あ」って言いながら顔を横に向ける。
手首をつないだ衣装ケースがぎしっと音をたてた。

「これ、俺のあそこだと思ってみて」

オナホをあてがうと体がピクッと動いた。
一気に奥まで突っ込む。

「うっ」

森田さんは呻きながら背中を丸めた。

ああどうしよう。すごい。すごいエロい。ゲイビで見たことあるやつだ。
『監禁したノンケの体を無理矢理熱くさせてガン掘りしてもらう』みたいなやつ。

ゆっくり上下させながら、森田さんの表情観察。
口が少しだけ開いてる。はあ、はあ、って、息をしてる。

たまんねえ。

「ねえ、すげーエロい。気持ちいい?」
「岡崎さんの…おしりの、穴の方が、気持ちいい、です」

目隠しされた彼氏がオナホでちんぽ扱かれながらそんなことを言う。
なんだこれほんとやべえ。

「待って、ねえ、俺すげー興奮してる…やらしいことしたい…森田さんのやらしいとこいっぱい見たい」

されてる森田さんより俺の方が息が荒くてやばい。

「ねえ、っ、俺の中の方が気持ちいいの?」
「…うん」
「でもオナホも気持ちいい?」
「…っ、少し」
「すげーぐちゅぐちゅいってるよ、ねえ、これ、こん中でイく?精子いっぱい出していいよ、ね、俺のケツだと思って出して、いっぱい飲ませて、森田さんっ、ああっ」

見てるだけでやばくて、オナホ動かす手がどんどん早くなる。
森田さんがまた背中を丸めて抵抗する。

「あっ、あっ、あっ、あっ、ね、出して、森田さん、出して…!」
「う、ダメ、岡崎さん、岡崎さんお願い、待って、岡崎さんに、挿れたい、ほんとに…お願い…っ、しよう、岡崎さん…」

目隠しで、縛られて、オナホでちんぽ扱かれて、そんなエロい姿の森田さんが言うから、オナホをぶんなげて急いで下を脱ぐ。
またがったところから見る森田さんが激しくエロくて一瞬イきかける。

「ああっ!あぁんっ、やば、あ、かたい…おっきい…おっきいよ…」
「っう、あ、ああっ…!」

つっこんでちょっと慣らす。くそ、相変わらずデカくておかしくなりそう。

大丈夫そうだからすぐ腰を振る。ぐちゅ、じゅば、じゅぷ、ってすごい音が出た。

「やば…だめだすぐイきそ…あっん、んん…」
「岡崎さん…岡崎、さん」

森田さんもいつもよりやばいみたい。その証拠に、「ナマだ」とか「中に出ちゃう」とか小さいけど声に出てる。
すげーかわいくて頭おかしくなる。

そんなこと言いながら下からガンガン突き上げてきて、パンパンって音が聞こえた。

「中に出して…!あっ、あんっ、あんっ、森田、さん、あっ、出して、お願い出して、いっぱい注いで、精子いっぱい出してぇ、あっあっあっあっあっ」

俺も俺でなんか甘ったるい声が出てキモい。

「あ…岡崎さん…出る…出そう…」
「いいよ、お願い、出して!出して!ああん俺も、出る…ちんこ触ってないのに…っ、ケツだけで、やばい…う、ぁっ!」
「んっ、…!あ、おか、ざきさ…あっ、ああっ…!」
「あ、出てる…すげ…中で…ちんぽびくびくして、る…ああ…」

やばい。気持ちよすぎておもらしをやらかすとこだった。
出すのは白い方だけで大丈夫。

「…折れた…?」

目隠しのまま森田さんが聞くので何のことかと思ったら、森田さんの手を縛ってあったプラスチックのケースの柱がばっきり折れてた。

「うん…折れてる…はは」

ごめん。

はあはあと息をしながら森田さんから降りると、森田さんは縛られた手を胸のとこまで下ろして、「岡崎さん」とまた俺を呼んだ。
アイマスクを取ってあげたら、中から出てきた森田さんの目はかたく閉じられていて、思わずまぶたにキスを落とす。

「ん」
「…岡崎さん」
「はぁいー」

縛られた腕で口元をかくして、目をそらして、森田さんはごにょごにょと何か言った。

「なんですって?」

森田さんの顔に顔を近づける。
そのままくっつけて、森田さんの口が俺のほっぺたに触れた。

「ちょっとーキスは無いですよーもりもりちゃん」
「っ、いや、俺のせいですか…もりもりちゃんて…誰だ…」

なんてからかい甲斐のある人なんだろう。

「なんて言ったの?」
「…かわいい…かわいいって、言ったんだ…悪いですか…」

顔そむけてすねてる。
かわいいのはお前だと言いたい。

「悪くない!」

こんな、こんな男の、どこがかわいいんだろう。って思うけど、ラッキー。

森田さんの、縛られた腕。
その中に自分の体をねじ込む。向かい合うと困った顔と目が合った。

「こうやって寝よう」
「…岡崎さんが、いいなら」

いい。とても、いい。

次の日、無理な体勢で寝た森田さんは背中を負傷して、かわいそうだったのでマッサージをしてあげた。







ある日のことだ。
深夜に帰宅した岡崎は、首をグリグリと回した。

「肩凝ってるんだって、俺」

なんでも、常連の男が岡崎の肩を揉んで「凝ってる」と言ったそうだ。
キリッと胸が痛んだ。

「若いのに、とか言われて、そのまま
ちょっと揉まれた」

キリ。
また。
胸が。

「…何歳くらいの」
「その人?えー40代くらいじゃない?おっさん。いっつも会社の飲み会の二次会的な感じで同僚の人と何人かで来るんだ。普通のサラリーマンぽい感じの」
「…岡崎さん、よく、話すんですか」
「まあ。なんか気さくな人だからねー」

話すのはいい。けど。

「よかったら、俺も、揉むけど…」
「え?いいよいいよ、森田さんだって疲れてるでしょ」

軽く断られて落ち込む。

マッサージは下手にするとかえって逆効果だとも聞く。素人が手を出していいものか。
その、客に揉ませるのだって、悪い結果を生むかもしれない。

「岡崎さん、あの」

風呂に入ろうと半裸になった岡崎を呼び止める。

「客だからって、みんなの我儘を、聞く必要は、ないから、その…あんまり、マッサージとか…岡崎さんは、ちょっと、客に、みんなに、優しくするから、…マッサージは…」

自分で話しながら、まとまりが無くて混乱してくる。

「本当に辛いなら、うちの部長がよく、整体に行くから…紹介して、もらうことも、できるし…」

部長の関わるのは正直気が進まないが、岡崎の体のためならなんという事はない。

それにしても、言いたいことはこんなことだっただろうか。

岡崎はいつものように、辛抱強く聞いてくれている。少し笑って。少し伸びた髪の毛を弄りながら。

「素人がすると、良くないとか、も、聞くし…マッサージは…」

突然抱きつかれて息が止まる。
岡崎の肩が震えているのに気づいて驚いて固まり、恐る恐る顔を覗き込もうとしたところで、満面の笑みが向けられた。

「なにー?ヤキモチやいたの?んー?俺が客に触られんのがイヤなんだな?」

そう、そうかもしれない。
ああ。結局そんな、自分勝手を押し付けて。
傷んだ髪の毛に、形の良い頭に腕を回す。

「…ごめん…」
「なんで謝るの」

だって、岡崎は、岡崎だから。

俺は岡崎のものだけれど、岡崎は。
人に好かれるこの人は、皆の中心に居られるから。
俺のものでいてくれる時があれば十分なのに。

「俺、森田さんの束縛、快感でしかない」

そんなことを言って、頬にキスをする。

「髪切ろっかなー。美容師にも触られちゃう俺だけどどうする?」

どんどん俺を引き込んで、どんどん俺の気持ちを強くして、岡崎はどうするつもりだろう。

「風呂入ってくるからそのあと抱いて」

そう言って俺の腕から出て行く岡崎は、俺の中心に居る。
24時間。





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2015.12.7
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