大きな声では言わないけど
番外 森田と岡崎21
9月になった。
2人とも休みの朝。ちょっと涼しくなってきたからなんとなくまったりして、目覚めてそのまま布団で森田さんとごろごろしながら雑談中。
森田さんが顔をあかくしながら、会社の先輩に「彼女でもできたか」って言われたって報告してきた。
かわいい。
「なんで?」
「最近、休み希望を、出すから…」
「あー」
「前は、出してなかったから…」
「できたって言った?彼女」
片腕を枕にして森田さんの方を向く。
かるい気持ちで聞いただけなのに、森田さんは目を見開いて思いっきり首を横にふる。
「岡崎さんは、彼女じゃない」
「んじゃ俺はなに?」
楽しくなってきて聞く。森田さんはしばらく考えた。
「俺にとって、大きくて…あたたかくて、あと…守りたくて…大事なもの…は、これは、何って言うのか…」
うまく言葉にならない、単語にできない、と言った。
別に「恋人」でいいんじゃないの、とかニマニマしながら思うんだけど。
感じたまま言葉にしようとする、そういう森田さん独特の言葉の使い方が、俺はすごく好きだ。
遠まわり。遠まわり。
「ふうん」
嬉しくなって抱きつくと、森田さんは一瞬固まる。それで、だんだん力を抜いて、それからそーっと抱き返してくれる。
あーくそ。いい休みだなー。
今日はあまり天気が良くない。
窓の外を見ようと少し体を起こすと、布団の脇にまるめたティッシュがたくさん転がってるのが目に入った。
いじめたくなって森田さんの方を振り返る。
「昨日はいっぱいしたねー」
これ以上ないくらい目を泳がせる森田さん。でも実際いっぱいしたもん。
ほんとこの人の性欲のスイッチがわかんねえよ。
「もうだめ苦しいって言ったのに、森田さんたら全然放してくれないし、だって何回したー?まあ今日休みだからいいけど」
「ひさ、ひさしぶり、だったから、か…ごめん…」
わざと腰をトントンしてみると、焦ったみたいに起き上がって優しくさすってくれる。
ほんとは別に体調は悪くない。ちょっとだるいくらい。
あー。
いい休みだ。
メガネをかけた森田さんが先に起きて洗面所へ向かう。服も持って行ったから着替えるつもりだ。
多分これから、食パン焼いたり目玉焼き作ったりしてくれる。「簡単なものだけど」って、森田さんは少し笑う。
最近、2人とも休みの日はいつもそうだ。
布団に仰向けになって耳をすます。
水の音。ばしゃばしゃ。顔を洗ってる。
それから歯磨き。
それで、ちょっと無音。
「あーっ森田さん!ちょっと!大変!来て!早く!今!」
頃合いを見計らって森田さんを全力で呼ぶ。すると慌てた森田さんがパンツ一丁でこっちに来た。
俺の勘すげえ。
「早く早く!」
そのままの姿勢で森田さんに向かって腕だけ広げる。
森田さんは「意味わかんないけど」みたいな顔で俺のそばにしゃがんだ。
「早く、抱いて」
肩に抱きついて布団に引き倒して首筋に吸いつく。
まだ。朝飯はまだ、そのあとでいいから。
「お、おお…」
「…ねえ、しよーよ」
頭を抱き込んで何度もキスしたら、森田さんが諦めて抱きしめ返してくれる。
森田さんの性欲スイッチはわからないし、俺の性欲には限りがない。
「あっ、ああ、あ、だめ、もう、立てなくなる…」
「あ…ごめん、岡崎さん…」
「んっ…あー…」
朝から一回だけかるーくとか思ってた自分がバカだった。
ごめんとか謝りながら耳に乾いた唇をすりすりされて、その荒い息を間近で聞かされると、もう明日いっぱい立てなくなってもいいような気がしてしまう。
下から見上げる景色は、少しずつ、他人の家っていう感じが薄れていってる。
知ってる天井。知ってる電気の傘。そこから紐が伸びてるけど、森田さんはそれをあんまり使わない。壁のスイッチを使う。
それから、熱に浮かされたみたいな森田さんの顔も、少しずつ少しずつ、俺になじんできた。
「…もっとして」
少し体勢を入れ替えて横向きになる。
森田さんが俺の片脚をつかんで上にあげて、奥まで入ってくる。
「あっ…!」
俺の体も、森田さんになじんで来た、かな?
背中をそらして森田さんのを感じてると、上から包むみたいに抱きかかえられた。
岡崎さん、って呼ばれて、俺の体が勝手にぎゅって中を締めつける。
そうしたら森田さんが「う」って息をつめる。
好き。
「もっと…もっとして」
気づけばあとさき考えずに森田さんを求めてるんだ。
いろんな言い方の「岡崎さん」が聴きたくて。
「カルピス飲みたい」
「…カルピス」
「あまーいやつ」
布団でゴロゴロしながら窓の外を見て、昼ごろはまだ暑くなるよなぁと思いながら腹をぽりぽりかいた。
「カルピス…無いから…買ってくる、か…」
起き上がって支度をしようとする森田さんを後ろからつかまえて、あとで一緒に行こうと甘えてみる。
森田さんはすごすごと布団に戻ってきて、優しく優しく抱きしめてくれる。
「今日はだらだら休みにしよう?」
「…岡崎さんが、いいなら」
「本読む?読みかけのやつ、俺置いてってたよね?全然進んでねーんだった。森田さんも読むのある?」
「うん」
「ぬりいけどこれでいいや」
俺の写真に供えられてるスポドリを勝手に取って開けた。
森田さんは少し不満げ。
「なにその顔。かわいんだけど」
俺のために置いてあるんでしょ?と言って一口飲んで、森田さんにもあげる。
森田さんは、「それは」とかなんとか言いながらペットボトルを受け取った。
「きっとゴリヤクがあるよ。神様に供えてたやつだから」
たまにはゴロゴロの休みもいいなぁ。
-end-
2015.10.20
9月になった。
2人とも休みの朝。ちょっと涼しくなってきたからなんとなくまったりして、目覚めてそのまま布団で森田さんとごろごろしながら雑談中。
森田さんが顔をあかくしながら、会社の先輩に「彼女でもできたか」って言われたって報告してきた。
かわいい。
「なんで?」
「最近、休み希望を、出すから…」
「あー」
「前は、出してなかったから…」
「できたって言った?彼女」
片腕を枕にして森田さんの方を向く。
かるい気持ちで聞いただけなのに、森田さんは目を見開いて思いっきり首を横にふる。
「岡崎さんは、彼女じゃない」
「んじゃ俺はなに?」
楽しくなってきて聞く。森田さんはしばらく考えた。
「俺にとって、大きくて…あたたかくて、あと…守りたくて…大事なもの…は、これは、何って言うのか…」
うまく言葉にならない、単語にできない、と言った。
別に「恋人」でいいんじゃないの、とかニマニマしながら思うんだけど。
感じたまま言葉にしようとする、そういう森田さん独特の言葉の使い方が、俺はすごく好きだ。
遠まわり。遠まわり。
「ふうん」
嬉しくなって抱きつくと、森田さんは一瞬固まる。それで、だんだん力を抜いて、それからそーっと抱き返してくれる。
あーくそ。いい休みだなー。
今日はあまり天気が良くない。
窓の外を見ようと少し体を起こすと、布団の脇にまるめたティッシュがたくさん転がってるのが目に入った。
いじめたくなって森田さんの方を振り返る。
「昨日はいっぱいしたねー」
これ以上ないくらい目を泳がせる森田さん。でも実際いっぱいしたもん。
ほんとこの人の性欲のスイッチがわかんねえよ。
「もうだめ苦しいって言ったのに、森田さんたら全然放してくれないし、だって何回したー?まあ今日休みだからいいけど」
「ひさ、ひさしぶり、だったから、か…ごめん…」
わざと腰をトントンしてみると、焦ったみたいに起き上がって優しくさすってくれる。
ほんとは別に体調は悪くない。ちょっとだるいくらい。
あー。
いい休みだ。
メガネをかけた森田さんが先に起きて洗面所へ向かう。服も持って行ったから着替えるつもりだ。
多分これから、食パン焼いたり目玉焼き作ったりしてくれる。「簡単なものだけど」って、森田さんは少し笑う。
最近、2人とも休みの日はいつもそうだ。
布団に仰向けになって耳をすます。
水の音。ばしゃばしゃ。顔を洗ってる。
それから歯磨き。
それで、ちょっと無音。
「あーっ森田さん!ちょっと!大変!来て!早く!今!」
頃合いを見計らって森田さんを全力で呼ぶ。すると慌てた森田さんがパンツ一丁でこっちに来た。
俺の勘すげえ。
「早く早く!」
そのままの姿勢で森田さんに向かって腕だけ広げる。
森田さんは「意味わかんないけど」みたいな顔で俺のそばにしゃがんだ。
「早く、抱いて」
肩に抱きついて布団に引き倒して首筋に吸いつく。
まだ。朝飯はまだ、そのあとでいいから。
「お、おお…」
「…ねえ、しよーよ」
頭を抱き込んで何度もキスしたら、森田さんが諦めて抱きしめ返してくれる。
森田さんの性欲スイッチはわからないし、俺の性欲には限りがない。
「あっ、ああ、あ、だめ、もう、立てなくなる…」
「あ…ごめん、岡崎さん…」
「んっ…あー…」
朝から一回だけかるーくとか思ってた自分がバカだった。
ごめんとか謝りながら耳に乾いた唇をすりすりされて、その荒い息を間近で聞かされると、もう明日いっぱい立てなくなってもいいような気がしてしまう。
下から見上げる景色は、少しずつ、他人の家っていう感じが薄れていってる。
知ってる天井。知ってる電気の傘。そこから紐が伸びてるけど、森田さんはそれをあんまり使わない。壁のスイッチを使う。
それから、熱に浮かされたみたいな森田さんの顔も、少しずつ少しずつ、俺になじんできた。
「…もっとして」
少し体勢を入れ替えて横向きになる。
森田さんが俺の片脚をつかんで上にあげて、奥まで入ってくる。
「あっ…!」
俺の体も、森田さんになじんで来た、かな?
背中をそらして森田さんのを感じてると、上から包むみたいに抱きかかえられた。
岡崎さん、って呼ばれて、俺の体が勝手にぎゅって中を締めつける。
そうしたら森田さんが「う」って息をつめる。
好き。
「もっと…もっとして」
気づけばあとさき考えずに森田さんを求めてるんだ。
いろんな言い方の「岡崎さん」が聴きたくて。
「カルピス飲みたい」
「…カルピス」
「あまーいやつ」
布団でゴロゴロしながら窓の外を見て、昼ごろはまだ暑くなるよなぁと思いながら腹をぽりぽりかいた。
「カルピス…無いから…買ってくる、か…」
起き上がって支度をしようとする森田さんを後ろからつかまえて、あとで一緒に行こうと甘えてみる。
森田さんはすごすごと布団に戻ってきて、優しく優しく抱きしめてくれる。
「今日はだらだら休みにしよう?」
「…岡崎さんが、いいなら」
「本読む?読みかけのやつ、俺置いてってたよね?全然進んでねーんだった。森田さんも読むのある?」
「うん」
「ぬりいけどこれでいいや」
俺の写真に供えられてるスポドリを勝手に取って開けた。
森田さんは少し不満げ。
「なにその顔。かわいんだけど」
俺のために置いてあるんでしょ?と言って一口飲んで、森田さんにもあげる。
森田さんは、「それは」とかなんとか言いながらペットボトルを受け取った。
「きっとゴリヤクがあるよ。神様に供えてたやつだから」
たまにはゴロゴロの休みもいいなぁ。
-end-
2015.10.20