大きな声では言わないけど
5 宅飲み
「あっくんてさぁ、お酒飲んだらどうなる?」
「別に変わらねぇよ」
「エロくなったり」
「しない」
「甘えんぼさんに」
「ならない」
「急にシたく」
「なんねぇよボケが」
「あーっでも本当楽しみー!ねぇお菓子何買おうね?うふふ」
俺が1人暮らししているアパートの近くには小さなスーパーがあり、俺と広樹は創樹となつめをその店内で待っている。
宅飲みの買い出しも兼ねて。
「あ、なっつからメール。もうすぐ着きますだって」
「酒どのくらい飲むかな」
「わかんないね。とりあえず俺と創樹は500の6缶パック2つずつあれば足りるかな?ビールは」
「ケース買いだな。あと焼酎とか?お前ら強えんだな」
「うん!ああ、楽しみすぎて漏らしそうだ!」
「根元縛ってやろうか?」
「やん…あっくんのいじわるぅ…」
どMは冗談が通じなくて怖い。何を言ってもすぐ目が潤む。
カートにビールのケースと焼酎とジュースを次々に乗せていく。
「あ!なっつ!創樹!こっち!」
「ああ、ごめんね遅れて」
「彰人まじ今日こそ隙見て俺とヤって」
「創樹!隙って何の!」
「創樹くん!」
「双子揃って死ね」
「え?あっくん俺も?なんで?」
「俺の顔をよく見ろよ彰人、ほら、広樹とたいして変わんねぇだろ?大丈夫大丈夫絶対ヤれるって」
「創樹くんお願いだからやめて…ほら、おつまみ選ぼう?ね?創樹くんの好きなじゃがりこんがあるよほら買おうね」
「チーズとサラダと、あ、限定のも買う」
「なつめさすがだな、保育士みてぇ」
「誰がガキだ。でもその設定もらった。なつめ、今度保育士に」
「わかった!わかったからそれ以上言わないで!」
「創樹、設定って何?」
「広樹、2人にもきっといろいろあんだよ、そっとしといてやれ」
「彰人も試す?ショタプレイ」
「いらね」
つまみも適当に買い込んで店を出た。
ビールのケースを抱えた俺に広樹がしがみついてきて、一瞬殺意が湧く。
「んふ、あっくんまじ力持ち」
「重いし暑いから消え去れ」
「なんかもう少しで傷つきそう」
「たまには傷つけよ」
古くも新しくもないアパートの1階。
決して広くはない部屋の、大きくない冷蔵庫に詰められるだけ酒を詰めてから、各々好きなものに手を伸ばす。
「彰人くんち、綺麗だね」
「すげぇストイックに掃除しそうだもんな」
「でもあっくんてね、俺がポテチこぼしても怒らないんだよ?」
「お前はこぼさずにものを食べられないかわいそうなやつだから諦めてるだけだ」
「もう。あっくん優しい」
「なつめは缶チューハイ?」
「うん、お酒強くないから……」
「俺もなつめと飲むの初めてだな」
「そだね」
「お前酔うとどうなんの?」
「あんまり変わらないと思うよ」
「エロくなったり」
「しないよ」
「ヤりたくなったり」
「しないって!」
「やっぱ双子だな、発想が同じ」
「なっつが一番変わらなそうだね」
「広樹ちょっとじゃがりこん取って」
「そういえばこないだの経済学史でさぁ」
くだらない話をしながら、酒が進んでいった。
*
なんか、あっくんの様子が少し変だ。
さっきからチラチラ、横にいる俺を見て落ち着かない感じだ。どうしたんだろう、珍しいな。しかしまったくイケメンすぎる。
「あっくん、ちょっと酔ったんじゃない?大丈夫?お水飲む?」
「いらない……」
「本当だ。彰人くん、顔も赤いしぼーっとしてる?少し寝たら?」
「彰人、寝込み襲っていい?」
「もうダメだ……広樹に触りたい」
「は?」
3人の声が重なる。
あっくん。待って。そんな熱い目で見られたら俺簡単に勃つんだけど。
「広樹、いい?」
「う?うん、触る?どこに?」
「どこでも」
「えっと……手繋ぐ?」
「繋ぐ」
おずおずと差し出した手をあっくんが両手で包んで、俺を見て微笑んだ。
ひあああああ!あっくんが笑ったぁ!かっこいい!かっこいい!かっこいいよ!あー!したい!したいよー!
「広樹、いつも冷たくしてごめんな……俺、ちゃんとお前のこと好きだからな」
うわあ。何の拷問?これ何の拷問なの?もう勢い余って出ちゃいそう。
「あっくん……!嬉しすぎて三途の川見えそう」
「やめろよ、お前が死んだら俺生きる意味ない。死ね死ね言ってごめん。本当は思ったことない。誓う」
「やぁん!俺もうだめ!少しだけ、3分でいいから犯して!今ならその間に3回イける!」
「はは、ダメだろ、2人になったらな」
創樹たち邪魔くせえ!
*
広樹とイケメンが目の前でイチャついててなんかイライラする。
「彰人ってこんな風に酔うんだな…めんどくせ」
「ギャップがすごいね」
「なつめは飲んでも変わらなくてよかったわー」
「……」
「どうした?」
「創樹くん、なんか僕勃っちゃった」
「は?」
「ねぇ触って?」
「酔ってんの?」
「じゃあ襲ってもいい?」
「いや、じゃあの意味がわかんねぇ」
「人に見られながらするのってどうなのかなぁ」
「すげぇ!なつめがなんか変態発揮してる!」
「今度コスプレとかしない?」
「してもいい」
「本当?絶対怒られると思ってた。とりあえず今日は見られながらしようよ」
「俺はいいけどお前は明日になったら何か失ってんじゃねえの」
「いいよ、失うよそんなもの」
「こいつキャラを捨てたよ…」
「ね、しよ…創樹くん、いつもみたいに誘ってよ」
「なつめ、ヤる?」
「う…もう…っ創樹くん」
*
俺があっくんにナデナデとかぎゅーとかされて脳みそ沸騰してる間に、なんか目の前の弟カップルが酷いことになっていた。
弟のディープキスとか、一生見たくなかったよ!
なっつの手がなんかエロいし!
「ねぇあっくん…なんかあれだね、ちょっと居づらいね…」
「そうか?俺は広樹がいてくれれば何でもいいけど」
「んもぅ!うふん、あっくんのばかぁ、じゃあもういっそのことこっちもしようよぅ」
「いいけど…」
「いいの?!」
「いいけど、他のやつにヤってる広樹の顔とかあんまり見せたくないっていうか…」
独占欲。ありがとうございました!
「あっくん今すぐラブホに行こう!」
「いいよ、広樹の行きたいとこ行こうな」
「ダメだよ」
不意に声がして振り返ると、不敵に笑うなっつと目が合った。
「ちゃんと見ててよ、僕たちがここでする意味がなくなるじゃん」
言いながら創樹の服の下をまさぐる手は止まらないっていう。
「…創樹、なっつはどうなってこうなったの…」
「っん、知らね、酔ったみたいだけど、っあぁ…なつめ…んっ」
「創樹くん、もっと声出してよ」
「えー…どうしようあっくん」
「彰人と広樹もそっちでヤれば?」
「そうだよ、彰人くん、かわいい恋人の喘ぎ顔見せ合いっこしようよ」
「なっつ!キャラをどこに落としてきたの?」
「…俺は、広樹がしたいならする」
ちょっとちょっとちょっと!
俺は弟の喘ぎ顔とか声をできれば知りたくないよ!なっつはなんか怖いしここにいても全然いいことない!
「俺は彰人の攻め顔が見たい」
「僕はえっち見られたいし広樹くんたちのえっちが見たい」
「俺は広樹のこと、大事にしたい」
なんなんだこの人たち!
「つか、ごめん広樹、やっぱダメだ。我慢の限界。触らせて?」
……もういいや、ふふふ。
とにかく今のこの砂糖にハチミツぶっかけたみたいに甘いあっくんに優しくいろんなあらゆるいけないことをされたい。
「もぅ、あっくんたらぁ…早くぅ、犯してぇ?」
お酒の神様ありがとう。
「んっ…あぁ、あ…はぁっあぁ、なつめ…」
「創樹くん…もう…いれたい…」
「ああっ…待て、もう少し…」
「っん、意地悪………あ、創樹くん、見て見て」
「はぁ…何……あ。」
「乳首攻められてるね、広樹くん。すっごいエロい」
「いやそっちはどうでもいいっつかあんま見たくないけど乳首舐めてる彰人がやばい」
「広樹くんは乳首が弱いんだね」
「知らねえよ」
「…わぁー…僕、彰人くんになら抱かれてもいいかも」
「嘘つけよ、バリタチのくせに」
「間違った。彰人くん抱けるかも。僕に攻められる彰人くんってそそる?」
「勃つ」
「広樹くんは余裕で抱けるなぁ」
「お前って本当酒癖悪いのな」
「でも抱かないよ?僕には創樹くんがいるし…挿れさせてくれないけど」
「挿れたい?」
「うん…限界。…ねぇ、あの2人の邪魔になるくらい声出して」
「それはお前のテク次第じゃねぇの」
「ふふ」
*
「あ、あん、だめぇ、あっくん、…だめ」
「なんで?お前乳首好きだろ?」
「ん、好きだ、けど、っあ、なんか今日だめ、もぅイきそ、」
「イっていいよ」
「やだぁ、いっしょ、がいぃっああん、」
「たくさんイってたくさんかわいい顔見せろよ」
「や、やだ、乳首でイくのいやぁ、っはあん、だめ、」
「広樹、好き…」
「あぁっ、ずるいぃ」
「あ゛ぁっ!なつめ、あ、んんっ!」
「はぁ、創樹くん、中あっつい」
「あぁ、も、動けよ、っはぁ」
「ああ…すごい」
「う゛、弟の声が…!あっくん助けて…」
「どした」
「あっち見たくないの…」
「見る余裕なんか無くしてやるよ」
「あっくん…」
「下も脱ごうな」
「やだぁ、恥ずかしい、から」
「今さら?」
「ちが、あの2人に…見られるの、やっぱり…」
「んー…じゃあ風呂行く?」
「お風呂?」
「おいで。……鍵かけちゃおうな」
「電気つけないの?」
「このまま、…大丈夫…」
「あ!まって、あっくん舐めちゃいやぁ、う゛、ん!」
「声出せ」
「だめぇ…ね、あっ、ん!舌入れないでぇ!」
「あいつらに聞かせてやれよ、広樹のやらしい声」
「やぁ!あっくん、んぅ、あ、あ、いやん!あぁぁだめ、おかしくなっちゃうぅ!」
「おかしくなって…広樹…」
「ん、んっ、あっく…もっと、もっと奥にほしいよぉ」
「俺もパンツ濡れてすげぇ。痛え」
「やだ、えっち」
「さわって広樹」
「あん…これほしぃ…」
「…広樹…」
*
「っ創樹くん」
「あ、あっ、んぅっ、」
「バック、きもちいね、っ」
「はぁっなつめ、いああっ」
「はぁ…あ、広樹くんたちどっか行っちゃった」
「…風呂だな」
「見たかったのに」
「う、聞きたくもねぇ声が」
「広樹くんの声ほんっとエロいね」
「くそ、彰人そんなに上手いのか」
「何されたらこんな声出る?」
「俺からはあんな声は出ねぇ」
「声質は一緒なのにね」
「広樹とヤってみれば?」
「無理矢理は本意じゃないから。彰人くんなにげに一途だから後が怖いし」
「お前は俺に振り回されて焦らされてやっと突っ込ませてもらって腰振るのが好きなんだろ」
「うん…創樹くん…ほんと好き」
「ん…もっと奥」
「あぁ…出ちゃいそう」
「今イったらぶったぎる」
「やめて、興奮する」
「この変態野郎」
「っもう、」
「んあ゛ぁぁ!!」
「っは、締まる、ほんと」
「やめ、ああっ!んふ、う、っあぅぅ」
「腋に締まるスイッチがあるみたい」
「だめ、あぁ、ああ!」
「創樹くん、はぁ、きもちい?」
「すげぇ、いい、っなつめ、」
「ここ?」
「ああっ!はぁっああん、あ、そこ、そこっああぁ!」
「そ、きくんっ、」
「あっ、あぁっ、お前の…最高…っ」
「もっと使って…僕ので、もっとよくなって」
「やべ、イく、なつ、イくっ、」
「あっ、そんな締めない、で、あ、」
「あぅうっあ、ああっ!あ!あーっ、あー…」
「ん、んぅ」
「…あ、お前…中で…」
「あ!ごめん!」
「締める」
「いや!痛い痛い痛い!」
*
「や、やぁん!抜いてぇ、指たくさん入って、あん、太いよぅ」
「好きなくせに、太いの」
「やだ、あっくんの、あっくんの挿れて、あっくんの太いの挿れてぇ!」
「はぁ、広樹、かわいい」
「もぅ、今日のあっくん変、優しい、んうぅ」
「優しいの嫌い?」
「嫌いなわけない、っけど、冷たいあっくんも好き、ん、あん」
「虐められたい?」
「うん、あっくんのイジワルすきぃ」
「変態だな、広樹は」
「うん…あ、まって、でもやっぱり…今日は…」
「はは、いいよ、優しくしてやる…こっち向いて」
「ん…」
「広樹、キスして」
「ん、んぅん、んちゅっ」
「んふ、足上げろ」
「んぐぅ、あぁん!」
「はぁ」
「あ゛!ぁあ!あっくん!あっくんの入ってるぅ、」
「ああっ広樹」
「あ、やん、やあぁ、きもちぃ、もっと擦ってぇ」
「俺にもっと体重かけろ」
「ああああっ!!!ふ、深い!すごいよぉ!」
「かわいい…俺の広樹…」
「やぁぁん!あ゛ぁぁ!ああん!だめ、もぅ、イくぅ!」
「ふ、早」
「だって!あ!あっ!あっ!あぁっ!だめ、ほんとあんっ、イく、イく!あっく、の、おっき、くて、きもちぃ、あぅぅ!」
「っお前、ばか」
「いやぁっ、出るぅ、あーっんあぁぁんっ!」
「も、少し」
「や!やだぁ!あぁっ!」
「っひろ、き」
「あっくん!あっくん、すきぃ…!」
「っう…あ…出た…っ」
「…ああ…はぁん……」
「…広樹」
「ん?」
「好きだよ」
「っう゛、うう」
「どうした、泣くなよ」
「うわああん!」
「待て待て待て何だ」
「だっで!あっぐんが!ずぎどが!いづも゛は!言わないがらぁうううう、死ねばっがりだしっま゛ぁ死ねも嬉しいんだげどぅっ」
「ごめんな。俺の死ねは好きと同義だと思っていい」
「ほんと?」
「信じろ」
「あっくぅん!大好き!かっこいい!イケメン!とにかくイケメン顔も中身も!愛してるぅ!」
*
ズキンと頭が痛んだ気がして目を開けると、自分の家の脱衣所で、なぜか全裸にバスタオルを被って横になっていた。
「ん…なんで…」
目の前には、俺の腕を枕にスヤスヤ眠る広樹。
なんだ、この満ち足りたみたいな顔は。
とにかく頭が痛い。昨日は4人で飲んで。途中からの記憶がまったくなかった。
「なんでここで寝た…?つかヤったのか?」
「んん、あっくん起きてたの…おはよ」
「昨日どうしたっけ?」
「覚えてないんだね…ふふっ…ふふふ…ふふふ」
「キモい」
「うんうん、キモい死ねってことだよね。じゃあかわいい好きって意味ね、ふふふ」
「喉乾いた」
「待って、俺も起きる」
とりあえずバスタオルを腹に巻いた格好で部屋に入って俺は目を疑った。
「何これ」
「創樹となっつだよ」
「わかるわ!なんで俺のベッドの上で全裸で絡み合って熟睡してるのかって聞いてんだ!」
「だってこっちはこっちでああなってたじゃん。床は痛いから寝る時移動したのかな?」
「おい、起きろ」
「ん?…ん…え……ええ!…ん?どこで…なんだっけ…?」
「なっつしっかり!」
「うるさい…」
「創樹も起きろ」
「うぐ」
「あっくんそれ創樹がまた深い眠りに入っちゃうから!」
「なっつも全然覚えてないの?」
「……うん……」
「お前はとにかく酷かったぞ」
「創樹くんがそんな言い方するってよっぽど…僕、生きてて平気…?」
「俺は?」
「あっくんは最高だったよ!」
「彰人キモかった」
「何したんだ俺」
「僕は?広樹くん僕はどうだった?」
「えー、なっつは最低だったよ」
「……死にたい……」
「俺はお前の酒癖最高だと思ったけど?人間として酷かったけどな」
「誰も慰めてくれない…」
「広樹、また4人で飲もうぜ」
「えー、あっくんと2人でなら1日おきに飲みたいけど、なっつの変態発動が」
「なんか本当にすみません!」
「いや、俺は4人で飲みたい。そしたらいつか流れで彰人とヤれる気がする」
「キイィ!バカ創樹!させるか!」
「彰人くん、本当ごめんね、なんかよくわかんないんだけど…迷惑かけて…」
「いや、俺もよくわかんねぇから…そんな気にすんな、また来いよ」
俺は覚えてないけど、いくら酔ったからってこんなに落ち着いてるなつめが創樹や広樹より変態だったり人として最低だったりする訳がない。
「あっくん今度2人で居酒屋とか行こうよ!」
「居酒屋?」
「うん!友達バイトしてるとこなら安くしてもらえるし」
「いいけど…昨日わかったと思うけど俺あんま強くないから、お前とペース違いすぎてつまんないんじゃねぇの」
「つまるよ!つまってつまって死んじゃうとこだったんだから!」
「そうなの?じゃあいいけど」
「んふふ、いろいろ思い出しちゃった…あっくんて本当最高だ」
「俺らも今度飲みに行こうな」
「…大丈夫かな…」
「だってなつめが彰人を攻めてるとこ見せてくれるんだろ」
「ちょっと待って!何の話なの!」
-end-
「あっくんてさぁ、お酒飲んだらどうなる?」
「別に変わらねぇよ」
「エロくなったり」
「しない」
「甘えんぼさんに」
「ならない」
「急にシたく」
「なんねぇよボケが」
「あーっでも本当楽しみー!ねぇお菓子何買おうね?うふふ」
俺が1人暮らししているアパートの近くには小さなスーパーがあり、俺と広樹は創樹となつめをその店内で待っている。
宅飲みの買い出しも兼ねて。
「あ、なっつからメール。もうすぐ着きますだって」
「酒どのくらい飲むかな」
「わかんないね。とりあえず俺と創樹は500の6缶パック2つずつあれば足りるかな?ビールは」
「ケース買いだな。あと焼酎とか?お前ら強えんだな」
「うん!ああ、楽しみすぎて漏らしそうだ!」
「根元縛ってやろうか?」
「やん…あっくんのいじわるぅ…」
どMは冗談が通じなくて怖い。何を言ってもすぐ目が潤む。
カートにビールのケースと焼酎とジュースを次々に乗せていく。
「あ!なっつ!創樹!こっち!」
「ああ、ごめんね遅れて」
「彰人まじ今日こそ隙見て俺とヤって」
「創樹!隙って何の!」
「創樹くん!」
「双子揃って死ね」
「え?あっくん俺も?なんで?」
「俺の顔をよく見ろよ彰人、ほら、広樹とたいして変わんねぇだろ?大丈夫大丈夫絶対ヤれるって」
「創樹くんお願いだからやめて…ほら、おつまみ選ぼう?ね?創樹くんの好きなじゃがりこんがあるよほら買おうね」
「チーズとサラダと、あ、限定のも買う」
「なつめさすがだな、保育士みてぇ」
「誰がガキだ。でもその設定もらった。なつめ、今度保育士に」
「わかった!わかったからそれ以上言わないで!」
「創樹、設定って何?」
「広樹、2人にもきっといろいろあんだよ、そっとしといてやれ」
「彰人も試す?ショタプレイ」
「いらね」
つまみも適当に買い込んで店を出た。
ビールのケースを抱えた俺に広樹がしがみついてきて、一瞬殺意が湧く。
「んふ、あっくんまじ力持ち」
「重いし暑いから消え去れ」
「なんかもう少しで傷つきそう」
「たまには傷つけよ」
古くも新しくもないアパートの1階。
決して広くはない部屋の、大きくない冷蔵庫に詰められるだけ酒を詰めてから、各々好きなものに手を伸ばす。
「彰人くんち、綺麗だね」
「すげぇストイックに掃除しそうだもんな」
「でもあっくんてね、俺がポテチこぼしても怒らないんだよ?」
「お前はこぼさずにものを食べられないかわいそうなやつだから諦めてるだけだ」
「もう。あっくん優しい」
「なつめは缶チューハイ?」
「うん、お酒強くないから……」
「俺もなつめと飲むの初めてだな」
「そだね」
「お前酔うとどうなんの?」
「あんまり変わらないと思うよ」
「エロくなったり」
「しないよ」
「ヤりたくなったり」
「しないって!」
「やっぱ双子だな、発想が同じ」
「なっつが一番変わらなそうだね」
「広樹ちょっとじゃがりこん取って」
「そういえばこないだの経済学史でさぁ」
くだらない話をしながら、酒が進んでいった。
*
なんか、あっくんの様子が少し変だ。
さっきからチラチラ、横にいる俺を見て落ち着かない感じだ。どうしたんだろう、珍しいな。しかしまったくイケメンすぎる。
「あっくん、ちょっと酔ったんじゃない?大丈夫?お水飲む?」
「いらない……」
「本当だ。彰人くん、顔も赤いしぼーっとしてる?少し寝たら?」
「彰人、寝込み襲っていい?」
「もうダメだ……広樹に触りたい」
「は?」
3人の声が重なる。
あっくん。待って。そんな熱い目で見られたら俺簡単に勃つんだけど。
「広樹、いい?」
「う?うん、触る?どこに?」
「どこでも」
「えっと……手繋ぐ?」
「繋ぐ」
おずおずと差し出した手をあっくんが両手で包んで、俺を見て微笑んだ。
ひあああああ!あっくんが笑ったぁ!かっこいい!かっこいい!かっこいいよ!あー!したい!したいよー!
「広樹、いつも冷たくしてごめんな……俺、ちゃんとお前のこと好きだからな」
うわあ。何の拷問?これ何の拷問なの?もう勢い余って出ちゃいそう。
「あっくん……!嬉しすぎて三途の川見えそう」
「やめろよ、お前が死んだら俺生きる意味ない。死ね死ね言ってごめん。本当は思ったことない。誓う」
「やぁん!俺もうだめ!少しだけ、3分でいいから犯して!今ならその間に3回イける!」
「はは、ダメだろ、2人になったらな」
創樹たち邪魔くせえ!
*
広樹とイケメンが目の前でイチャついててなんかイライラする。
「彰人ってこんな風に酔うんだな…めんどくせ」
「ギャップがすごいね」
「なつめは飲んでも変わらなくてよかったわー」
「……」
「どうした?」
「創樹くん、なんか僕勃っちゃった」
「は?」
「ねぇ触って?」
「酔ってんの?」
「じゃあ襲ってもいい?」
「いや、じゃあの意味がわかんねぇ」
「人に見られながらするのってどうなのかなぁ」
「すげぇ!なつめがなんか変態発揮してる!」
「今度コスプレとかしない?」
「してもいい」
「本当?絶対怒られると思ってた。とりあえず今日は見られながらしようよ」
「俺はいいけどお前は明日になったら何か失ってんじゃねえの」
「いいよ、失うよそんなもの」
「こいつキャラを捨てたよ…」
「ね、しよ…創樹くん、いつもみたいに誘ってよ」
「なつめ、ヤる?」
「う…もう…っ創樹くん」
*
俺があっくんにナデナデとかぎゅーとかされて脳みそ沸騰してる間に、なんか目の前の弟カップルが酷いことになっていた。
弟のディープキスとか、一生見たくなかったよ!
なっつの手がなんかエロいし!
「ねぇあっくん…なんかあれだね、ちょっと居づらいね…」
「そうか?俺は広樹がいてくれれば何でもいいけど」
「んもぅ!うふん、あっくんのばかぁ、じゃあもういっそのことこっちもしようよぅ」
「いいけど…」
「いいの?!」
「いいけど、他のやつにヤってる広樹の顔とかあんまり見せたくないっていうか…」
独占欲。ありがとうございました!
「あっくん今すぐラブホに行こう!」
「いいよ、広樹の行きたいとこ行こうな」
「ダメだよ」
不意に声がして振り返ると、不敵に笑うなっつと目が合った。
「ちゃんと見ててよ、僕たちがここでする意味がなくなるじゃん」
言いながら創樹の服の下をまさぐる手は止まらないっていう。
「…創樹、なっつはどうなってこうなったの…」
「っん、知らね、酔ったみたいだけど、っあぁ…なつめ…んっ」
「創樹くん、もっと声出してよ」
「えー…どうしようあっくん」
「彰人と広樹もそっちでヤれば?」
「そうだよ、彰人くん、かわいい恋人の喘ぎ顔見せ合いっこしようよ」
「なっつ!キャラをどこに落としてきたの?」
「…俺は、広樹がしたいならする」
ちょっとちょっとちょっと!
俺は弟の喘ぎ顔とか声をできれば知りたくないよ!なっつはなんか怖いしここにいても全然いいことない!
「俺は彰人の攻め顔が見たい」
「僕はえっち見られたいし広樹くんたちのえっちが見たい」
「俺は広樹のこと、大事にしたい」
なんなんだこの人たち!
「つか、ごめん広樹、やっぱダメだ。我慢の限界。触らせて?」
……もういいや、ふふふ。
とにかく今のこの砂糖にハチミツぶっかけたみたいに甘いあっくんに優しくいろんなあらゆるいけないことをされたい。
「もぅ、あっくんたらぁ…早くぅ、犯してぇ?」
お酒の神様ありがとう。
「んっ…あぁ、あ…はぁっあぁ、なつめ…」
「創樹くん…もう…いれたい…」
「ああっ…待て、もう少し…」
「っん、意地悪………あ、創樹くん、見て見て」
「はぁ…何……あ。」
「乳首攻められてるね、広樹くん。すっごいエロい」
「いやそっちはどうでもいいっつかあんま見たくないけど乳首舐めてる彰人がやばい」
「広樹くんは乳首が弱いんだね」
「知らねえよ」
「…わぁー…僕、彰人くんになら抱かれてもいいかも」
「嘘つけよ、バリタチのくせに」
「間違った。彰人くん抱けるかも。僕に攻められる彰人くんってそそる?」
「勃つ」
「広樹くんは余裕で抱けるなぁ」
「お前って本当酒癖悪いのな」
「でも抱かないよ?僕には創樹くんがいるし…挿れさせてくれないけど」
「挿れたい?」
「うん…限界。…ねぇ、あの2人の邪魔になるくらい声出して」
「それはお前のテク次第じゃねぇの」
「ふふ」
*
「あ、あん、だめぇ、あっくん、…だめ」
「なんで?お前乳首好きだろ?」
「ん、好きだ、けど、っあ、なんか今日だめ、もぅイきそ、」
「イっていいよ」
「やだぁ、いっしょ、がいぃっああん、」
「たくさんイってたくさんかわいい顔見せろよ」
「や、やだ、乳首でイくのいやぁ、っはあん、だめ、」
「広樹、好き…」
「あぁっ、ずるいぃ」
「あ゛ぁっ!なつめ、あ、んんっ!」
「はぁ、創樹くん、中あっつい」
「あぁ、も、動けよ、っはぁ」
「ああ…すごい」
「う゛、弟の声が…!あっくん助けて…」
「どした」
「あっち見たくないの…」
「見る余裕なんか無くしてやるよ」
「あっくん…」
「下も脱ごうな」
「やだぁ、恥ずかしい、から」
「今さら?」
「ちが、あの2人に…見られるの、やっぱり…」
「んー…じゃあ風呂行く?」
「お風呂?」
「おいで。……鍵かけちゃおうな」
「電気つけないの?」
「このまま、…大丈夫…」
「あ!まって、あっくん舐めちゃいやぁ、う゛、ん!」
「声出せ」
「だめぇ…ね、あっ、ん!舌入れないでぇ!」
「あいつらに聞かせてやれよ、広樹のやらしい声」
「やぁ!あっくん、んぅ、あ、あ、いやん!あぁぁだめ、おかしくなっちゃうぅ!」
「おかしくなって…広樹…」
「ん、んっ、あっく…もっと、もっと奥にほしいよぉ」
「俺もパンツ濡れてすげぇ。痛え」
「やだ、えっち」
「さわって広樹」
「あん…これほしぃ…」
「…広樹…」
*
「っ創樹くん」
「あ、あっ、んぅっ、」
「バック、きもちいね、っ」
「はぁっなつめ、いああっ」
「はぁ…あ、広樹くんたちどっか行っちゃった」
「…風呂だな」
「見たかったのに」
「う、聞きたくもねぇ声が」
「広樹くんの声ほんっとエロいね」
「くそ、彰人そんなに上手いのか」
「何されたらこんな声出る?」
「俺からはあんな声は出ねぇ」
「声質は一緒なのにね」
「広樹とヤってみれば?」
「無理矢理は本意じゃないから。彰人くんなにげに一途だから後が怖いし」
「お前は俺に振り回されて焦らされてやっと突っ込ませてもらって腰振るのが好きなんだろ」
「うん…創樹くん…ほんと好き」
「ん…もっと奥」
「あぁ…出ちゃいそう」
「今イったらぶったぎる」
「やめて、興奮する」
「この変態野郎」
「っもう、」
「んあ゛ぁぁ!!」
「っは、締まる、ほんと」
「やめ、ああっ!んふ、う、っあぅぅ」
「腋に締まるスイッチがあるみたい」
「だめ、あぁ、ああ!」
「創樹くん、はぁ、きもちい?」
「すげぇ、いい、っなつめ、」
「ここ?」
「ああっ!はぁっああん、あ、そこ、そこっああぁ!」
「そ、きくんっ、」
「あっ、あぁっ、お前の…最高…っ」
「もっと使って…僕ので、もっとよくなって」
「やべ、イく、なつ、イくっ、」
「あっ、そんな締めない、で、あ、」
「あぅうっあ、ああっ!あ!あーっ、あー…」
「ん、んぅ」
「…あ、お前…中で…」
「あ!ごめん!」
「締める」
「いや!痛い痛い痛い!」
*
「や、やぁん!抜いてぇ、指たくさん入って、あん、太いよぅ」
「好きなくせに、太いの」
「やだ、あっくんの、あっくんの挿れて、あっくんの太いの挿れてぇ!」
「はぁ、広樹、かわいい」
「もぅ、今日のあっくん変、優しい、んうぅ」
「優しいの嫌い?」
「嫌いなわけない、っけど、冷たいあっくんも好き、ん、あん」
「虐められたい?」
「うん、あっくんのイジワルすきぃ」
「変態だな、広樹は」
「うん…あ、まって、でもやっぱり…今日は…」
「はは、いいよ、優しくしてやる…こっち向いて」
「ん…」
「広樹、キスして」
「ん、んぅん、んちゅっ」
「んふ、足上げろ」
「んぐぅ、あぁん!」
「はぁ」
「あ゛!ぁあ!あっくん!あっくんの入ってるぅ、」
「ああっ広樹」
「あ、やん、やあぁ、きもちぃ、もっと擦ってぇ」
「俺にもっと体重かけろ」
「ああああっ!!!ふ、深い!すごいよぉ!」
「かわいい…俺の広樹…」
「やぁぁん!あ゛ぁぁ!ああん!だめ、もぅ、イくぅ!」
「ふ、早」
「だって!あ!あっ!あっ!あぁっ!だめ、ほんとあんっ、イく、イく!あっく、の、おっき、くて、きもちぃ、あぅぅ!」
「っお前、ばか」
「いやぁっ、出るぅ、あーっんあぁぁんっ!」
「も、少し」
「や!やだぁ!あぁっ!」
「っひろ、き」
「あっくん!あっくん、すきぃ…!」
「っう…あ…出た…っ」
「…ああ…はぁん……」
「…広樹」
「ん?」
「好きだよ」
「っう゛、うう」
「どうした、泣くなよ」
「うわああん!」
「待て待て待て何だ」
「だっで!あっぐんが!ずぎどが!いづも゛は!言わないがらぁうううう、死ねばっがりだしっま゛ぁ死ねも嬉しいんだげどぅっ」
「ごめんな。俺の死ねは好きと同義だと思っていい」
「ほんと?」
「信じろ」
「あっくぅん!大好き!かっこいい!イケメン!とにかくイケメン顔も中身も!愛してるぅ!」
*
ズキンと頭が痛んだ気がして目を開けると、自分の家の脱衣所で、なぜか全裸にバスタオルを被って横になっていた。
「ん…なんで…」
目の前には、俺の腕を枕にスヤスヤ眠る広樹。
なんだ、この満ち足りたみたいな顔は。
とにかく頭が痛い。昨日は4人で飲んで。途中からの記憶がまったくなかった。
「なんでここで寝た…?つかヤったのか?」
「んん、あっくん起きてたの…おはよ」
「昨日どうしたっけ?」
「覚えてないんだね…ふふっ…ふふふ…ふふふ」
「キモい」
「うんうん、キモい死ねってことだよね。じゃあかわいい好きって意味ね、ふふふ」
「喉乾いた」
「待って、俺も起きる」
とりあえずバスタオルを腹に巻いた格好で部屋に入って俺は目を疑った。
「何これ」
「創樹となっつだよ」
「わかるわ!なんで俺のベッドの上で全裸で絡み合って熟睡してるのかって聞いてんだ!」
「だってこっちはこっちでああなってたじゃん。床は痛いから寝る時移動したのかな?」
「おい、起きろ」
「ん?…ん…え……ええ!…ん?どこで…なんだっけ…?」
「なっつしっかり!」
「うるさい…」
「創樹も起きろ」
「うぐ」
「あっくんそれ創樹がまた深い眠りに入っちゃうから!」
「なっつも全然覚えてないの?」
「……うん……」
「お前はとにかく酷かったぞ」
「創樹くんがそんな言い方するってよっぽど…僕、生きてて平気…?」
「俺は?」
「あっくんは最高だったよ!」
「彰人キモかった」
「何したんだ俺」
「僕は?広樹くん僕はどうだった?」
「えー、なっつは最低だったよ」
「……死にたい……」
「俺はお前の酒癖最高だと思ったけど?人間として酷かったけどな」
「誰も慰めてくれない…」
「広樹、また4人で飲もうぜ」
「えー、あっくんと2人でなら1日おきに飲みたいけど、なっつの変態発動が」
「なんか本当にすみません!」
「いや、俺は4人で飲みたい。そしたらいつか流れで彰人とヤれる気がする」
「キイィ!バカ創樹!させるか!」
「彰人くん、本当ごめんね、なんかよくわかんないんだけど…迷惑かけて…」
「いや、俺もよくわかんねぇから…そんな気にすんな、また来いよ」
俺は覚えてないけど、いくら酔ったからってこんなに落ち着いてるなつめが創樹や広樹より変態だったり人として最低だったりする訳がない。
「あっくん今度2人で居酒屋とか行こうよ!」
「居酒屋?」
「うん!友達バイトしてるとこなら安くしてもらえるし」
「いいけど…昨日わかったと思うけど俺あんま強くないから、お前とペース違いすぎてつまんないんじゃねぇの」
「つまるよ!つまってつまって死んじゃうとこだったんだから!」
「そうなの?じゃあいいけど」
「んふふ、いろいろ思い出しちゃった…あっくんて本当最高だ」
「俺らも今度飲みに行こうな」
「…大丈夫かな…」
「だってなつめが彰人を攻めてるとこ見せてくれるんだろ」
「ちょっと待って!何の話なの!」
-end-