大きな声では言わないけど

23 イケメン探し 始まりの日



「創ちゃん、いたぁ?」
「全然いねえ」
「俺も。はぁ、今日は諦める?イケメンってか男子学生多いって聞いてこの大学にしたのに、女子と半々くらいじゃない?」
「男子多いのがいいなら理系行けよ」
「無理だもん!数学も物理も無理だもん!創ちゃんだってここにしたくせにぃ」
「俺は文系男子を狙ったんだ」
「ふぅん」

顔も声もそっくりな双子が並んでぶうぶう言っている。
服装や髪型は好みが違うらしく、正反対の様相。

入学したての大学の学食で、あまりおいしくなさそうにパンやおにぎりをかじりながら、キョロキョロと辺りを見回している。

「あ」
「あぁっ!みっけ!」

2人同時に一点を見つめて声を上げた。
その視線の先には。












「隣、いい?」
「どうぞ。あ、さっきの必修ゼミにいた?」
「おう」
「よろしくね。混んでるね、学食」

席をつめて迎えた方は、茶色がかった長めの髪に、柔らかい笑顔を浮かべた色白の男子学生。

悪い、と言いながら後から掛けた方は、短めの黒髪にシンプルな服装でも十分目立つくらいの男前。

2人も新入生の模様。

「名前は?」
「なつめ」
「名字?」
「ううん、名前。ひらがなで」
「へえ。綺麗な名前」
「そうかな。ありがとう」

なつめが照れたように笑った。

「あなたは?」
「彰人」
「名前?」
「名前」

2人が笑いあっているところへ近づく双子。
眼光は獲物を狙う肉食獣のよう。

真っ直ぐに2人のところへは行かず、その向かいの席に座っていた上級生と思われる3人組に、双子のうちの茶髪の方が話しかける。

「あのぅ、この席ってもう空きますかぁ?」

混み合う昼時、今食べ始めたばかりの3人は顔を見合わせる。

「空きますぅ?」

構わず上目遣いで3人のうちの1人を見る双子の茶髪。

「あ、いや俺たち今食べ始めて」
「空きませんかぁ……?」
「……空きます」
「おい!」
「わぁい!ありがと!」

揉めながらも席を立った3人と入れ替わるように双子が席につく。

向かいに座る彰人となつめをチラ見しながら、双子は鞄から書類を取り出した。

「あぁん創樹、俺ペン忘れちゃった」
「広樹、頭痛薬持ってねえ?お前がキモすぎて頭いてえわ」

彰人となつめは向かいに座ったそっくりな双子、広樹と創樹を珍しそうに見ている。

「どうしよーう!今日までに教務課に出さなきゃいけないのに!ペンがないよう!」
「頭いてえっつってんだろ、騒ぐなようるっせえな」

見兼ねた彰人は鞄からペンケースを取り出し、ケースごと広樹に差し出した。

「えぇ?!貸してくれるの?」
「どうぞ」
「ありがとう!優しいね!ねえねえ1年生?」

彰人が頷くと広樹は目を輝かせた。

「一緒だぁ!学部は?」
「経済」
「あぁん!同じー!えへへ」

「頭痛ひどい?薬あるけど、いる?」

なつめが控えめに申し出ると、創樹はこめかみを押さえながら僅かに頷いた。

「お水持ってくるね」

なつめは食べかけのラーメンを置いたまま立ち上がった。

「双子?」

彰人が広樹に聞く。

「そうなの。似てる?」
「似てる。でも全然違う感じ」
「どっちが好き?」
「え?」
「うふー、なんでもないよ」

なつめが水を持って戻ってきた。

「はいこれ。良くなるといいけど……」

心配そうに水と薬を差し出したなつめを、創樹がじっと見つめる。

「……ん?どうしたの?」
「名前は?」
「なつめ」
「なつめ、ちょっと付き合って。午後の講義あんの?」
「うん、1講だけ」
「休める?」
「あ、えっと」
「ちょっとだけ。もっと美味いラーメン奢ってやるから。なつめ」
「う、あ、うん、じゃあ彰人くんまたね」

名乗った側から呼び捨てにされ、強引に連れ去られるなつめ。

唖然とする彰人の向かいで、広樹が楽しそうに笑う。

「珍しい。創ちゃんが積極的」
「どっちが兄貴?」
「俺だよ」
「仲いいの?」
「うぅん、仲いいってわけでもないかも。男の趣味も違うし」
「女の趣味な」
「違うよ?男の趣味。うふふ」
「……え?」
「気持ち悪い?」

広樹が念を込めて上目遣いを炸裂させる。

「い、いや、気持ち悪くはないけど……」

なぜか目を逸らしてしまい、自分の咄嗟の行動に首を傾げる彰人。

肘をつき、瞳をキラキラさせてそんな彰人を見つめる広樹。

「お名前、なんていうの?」
「彰人。お前は?」
「広樹だよ、ふふ」

広樹は首を傾げて微笑んだ。

「あきひとくんかぁ。ねぇ、」

再度の上目遣い。

「今日これから、うちに来ない?」
「え、家に?」
「そう。せっかく友達になったんだから、ね、行こうよ。あっくん」
「………」

あっくん、というのが自分を指していると気づくのに少し時間がかかった。それに、その言い方に妙な色気があった気がして、彰人は少し震えた。



こうして、ノンケ2人はあっという間に悪魔の双子の餌食となったのだった。






 *






双子が住んでいるのは実家の一軒家。
それぞれ獲物を持ち帰り、2人はキッチンで鉢合わせた。

「お前、今日食うの?」
「うん!ちょーイケメンだよもうびっくり!ヤバい!創ちゃんも食っちゃう予定?」
「さあな」
「なつめくんだったよね。なつめなつめ。なっつ」
「ノンケ?」
「見るからに。そっちは?」
「こっちも」
「珍しいねぇ、創ちゃんが乗り気だなんて」
「別に乗り気じゃねえ。……アイス使お」
「あ、俺も使う!」

同じ目的で冷凍庫からアイスを2本ずつ取り出す2人。

「チョコ味でトロトロにしてもらおっと」
「バニラの方がエロい」

怪しげな会話を繰り広げながら、双子はそれぞれの獲物が待つ部屋に戻った。






 *






「アイス食え」
「あ、うん。ありがとう」

創樹が差し出したアイスを微笑んで受け取るなつめ。

「お前今、女いる?」
「女…彼女?いないよ」
「どんな女が好き」
「え、っと……優しい子、かな」
「ふん。つまんねえ男だな」

突然の毒舌に言葉が出ないなつめに、創樹がにじり寄る。

「お前さあ、」

なつめの白い耳に寄せられる創樹の赤い唇。

「マゾだろ」
「………え…?」

創樹はアイスで冷やされた舌をなつめの耳に突っ込んだ。

「ひっ」
「服従して、好きなように命令されて、その通り動いて相手を満足させて喜ぶタイプだろ」

なつめは忙しなく視線を逸らす。それを見た創樹の予想は確信に変わった。

「でもさ、女ってマゾが多いだろ。お前と同じ」
「そっ、そ、そうかな」
「俺ならその性癖、満足させてやらんでもないけど?」
「ちょっ、と、あの、」
「脱げよ」
「は?」
「脱げ。下」
「し、た?」

混乱して固まるなつめに焦れた創樹は、その首筋に噛みつきながらパンツを脱がせにかかる。

「あっ痛いっ待って、何するの、こんな、あっあ、あ、だ、だめっ、」

口では拒否しつつも、かわいらしい顔からは想像もつかないほど傍若無人な振る舞いをする新しい友人に、なぜかなつめは興奮を覚えてしまった。

「何が」
「どっ、ど、ど、どこをさわって、るの、そんな、」
「ふん、慌てすぎじゃね。たかがちんこくらいで」

抵抗も虚しくパンツの中に手を突っ込まれてなつめは後ずさろうとした。

「逃げんな」
「っ、て、言われても、ちょっ待って、ね、落ち着こう、創樹くん」
「命令だ」
「え?」
「命令。逃げんな。俺から」

至近距離でじっとなつめを睨み付けたまま、創樹は手を動かした。

「……いっ……」
「おら。勃ってきたじゃん」
「え、」
「すげえな。俺にはわかんねえ。変態の気持ちは」

知り合ってすぐに強引に連れて来られた家で男に触られて勃起し、それをその元凶の男に罵られているという状況に、なつめは息を荒くしてしまった。

「変態……僕が……?」
「どう見てもそうだろ」
「そっ…そんな……」
「なあ、なつめ?」

同性に性器を弄られながら至近距離で顔を覗き込まれ、それでも微妙に甘く変化した口調で名前を呼ばれて、なつめは息を止めた。

「気持ちいいこと、してやるから」

気持ちいいこと、とうわ言のように繰り返したなつめに、創樹は大きな目を細めて笑い返す。

「ちょっと、抱き締めてて」
「こ、こう?」
「ん」

創樹はおずおずと手を伸ばして触れてくるなつめに、いい感じの体、とほくそ笑んだ。

向かい合ってなつめに跨がり、なつめの体をまさぐりながら自分の後ろに手を回した創樹が何をしているのか、なつめは全くわかっていなかった。
ただ、少しの間黙ってそうしていた創樹が突然、溶けかかったバニラアイスを一口食べてからなつめのペニスをくわえたので、驚いて飛び上がりそうになった。

「ちょっ冷たっ!てかなに、なにして、あ、あっ創樹くん、あ、あ、あああ」

男の子が男の僕にこんな、こんなことして、ど、どうしよう、すっごい気持ちいい、じゃなくて、え、そんなとこも舐めちゃうの、上手、とかじゃなくて、ええっ、と、どうしようもう、こんな、こんな、ああっ、困ったな、興奮する!

混乱するなつめの目の前で、ちゅぷんと音をたてて口を離した創樹は、薄くバニラアイスの色がついたペニスをじっと見てからなつめの顔を見上げた。
目が合ったなつめは、自分のそこがイヤらしく白く濡れて痛いくらい勃っている様を呆然と眺めてから、また大きな目を見た。
よく見ると本当にかわいい顔立ちだ。

「気持ちいい?」
「う、うん」
「男相手なのに?」

自分でしておいてひどい、ひどいけどなんか嬉しい、となつめがぼんやりしていると、創樹が向かい合ったままぎゅっと抱きついてきた。

「もっと」
「……もっ、と?」
「もっと、気持ちいいこと」

耳元で囁かれて鳥肌が立ったところで、ペニスがきゅんと何かに飲み込まれた。

「っ、え?あ、あっ」

創樹は何も言わず、ただぎゅっと抱きついたまま。顔も見えない。

なつめは創樹を抱き締めていた手を片方、自分のものに恐る恐る伸ばした。

あーっ!あーっ!あーっ!

「も、もしかして」

創樹くんのお尻に。

「ちょっと、入った」
「えっ、えっ、あ、えっ、」
「黙れ。これ以上動揺したら殺す」

なつめはすぐに口をつぐみ、またそっと手を伸ばし、今度は創樹のすべすべした尻を撫でた。
少しずつ飲み込まれるのを感じながら、なつめは努めてじっとしていた。













「お待たせ。あっくん、アイス食べる?」
「おう。さんきゅ」

ベッドに座った彰人の隣に、広樹も腰を下ろした。

近い、やけに近い、と思い横を見ると、大きな潤んだ瞳がこちらをガン見していて慌てて目を逸らす。

ん?なんで逸らす必要がある?わからんけどなんか、居心地悪い。

彰人は思い、少し離れてみる。
すると広樹はすかさず同じだけ間を詰めてきた。
彰人がまた少し離れる。
広樹が詰める。

繰り返してとうとう壁際まで追い詰められた彰人は、そこでやっと口を開いた。

「何」
「んふ。アイス食べさせてあげる」
「いやいやいいって」
「いいからぁ。あぁーんってして……あぁーん」
「いっ、」
「あぁ、うふん、おくちについてるよ?」
「…え」

差し出されたアイスを咄嗟に避けようとした彰人の唇の端。
チョコレート色のそれを広樹は人差し指でぬぐい、その指先をぺろりと舐めた。

舐めたよコイツ

彰人が唖然としていると、広樹がぼたっとアイスを落とした。
それは黒地にピンクの花柄のシャツで、ちょうどピンクの花の部分に茶色のアイスが溶け出してしまっている。

「あぁん、こぼれちゃったぁ…脱がなきゃ…」

そう言うなり彰人のすぐ横でシャツを脱ぎ出す広樹。
上半身の白い素肌を晒して、なぜか女子のように交差した両手で胸を隠した。

そして上目遣いで彰人を見つめ、言う。

「あっくん、見ちゃダメ、恥ずかしいよぉ」
「え」

じゃあここで脱ぐなと言いたかったが言葉が出ない。

「俺、乳首がピンクなの…それが恥ずかしいから…」

悩ましげにまつげを伏せる広樹に、彰人は思う。

欲情してたまるか。
…え?欲情?なんで?こいつ男だし。胸隠してるけど男だし。なんか様子が変だけど男だし。欲情とかするわけない。そうだろ俺!しっかりしろ俺!

「ねえあっくん、おとこの子なのに、乳首がピンクとかって、変だよね……?」

心なしか潤んだように見える広樹の瞳に吸い込まれる寸前で、なんとか踏みとどまった。

「い、いや、変じゃねえよ、別に」
「ほんと?」
「そんなの、個人差あんじゃねえの」
「そっか……じゃあね、見てくれる?」
「はい?」
「見て、俺の、乳首」
「なんですか?」
「変じゃないか、見てくれない?」
「いやちょっと意味がよく」
「膝に座っていい?」
「いやいやほんとなんかあれだからそういうのはちょっとまた次の機会に」

広樹は慌てる彰人を見て、ふふ、と笑った。

「大丈夫だよあっくん。すぐ慣れるよ」

何に。
彰人は震えそうになるのを堪えた。

「俺、上手なんだよ?いろいろ」

固まる彰人の膝に向かい合わせにさっと跨がり、広樹は彰人の目を見ながらゆっくりと、両手を下ろした。

かわいらしくピンク色に輝く2つの尖りを視界にとらえた次の瞬間、彰人の体は勝手に動いた。

「あぁっ、やぁんっ」

広樹をベッドに組み敷いてから血の気が引く。
俺は何を!

「あ、悪い、俺もう帰るわ」
「や!」

組み敷かれた広樹が彰人の腰に脚を絡めてがっちりホールドした。

「お前今ちっさい声で逃がすかって言わなかった?」
「言ってないぃ、そらみみぃ」
「怖い、怖いんですけど」
「やっぱり…俺の乳首がピンクだから……?」
「あっ待て」

広樹が今にも泣きそうな顔をしたので、焦った彰人は慰めの言葉をかけようと広樹の胸に目をやった。

あれ、なぜだかぺったんこの胸がすごくエロく見える気がする、困った、俺は今この乳に欲情しているような気がする、そんなに溜まってたっけ?怖い!怖い!

「あっくん……」

下半身に伸びてきた手を、彰人は払いのけられなかった。

「あ、やだ…おっきくなってる……えっちぃ」

照れたように笑い、上目遣いで見上げる広樹の胸に、彰人は唇を押し当てた。

「あぁっ!や、だめぇ……あっくん……あっ」
「お前が誘ったんだろ」
「はい来た!」

広樹は嬉々として自分の履いていたパンツを脱ぎ、彰人の前を寛げて中に手を突っ込んだ。

彰人はまた我に返る。

何させてんだ俺!

「いやごめんちょっと間違ったやっぱ帰る」
「大丈夫。ちゃんと気持ちよくしてあげられるんだよ?ほら、ここ、女の子のアソコよりいっぱい、キュンキュンってして、経験したらハマっちゃう人多いって。ここ、うふふん」

体を反転させて尻を上に向けた広樹に彰人の喉仏が上下した。

「いや、よくない、そんな背徳的なことよくない」
「誰にも言わないから!ね、ほんと、ちょっと試してみたら?後悔はさせないよ?」

少し必死さが滲み始めた広樹の顔を見て、彰人は欲望に逆らうことを諦めた。

「どこ」
「ん、ここ。これで濡らして、拡げて…?」

ローションを渡され、見せつけるように広げられた足の付け根を凝視する彰人。

まじか。マジでか。俺が。男と。

「早くぅ」

自分の指でそこを押し開いて見せる広樹に、彰人は完全にペースや常識や理性を破壊された。
ローションで濡らした指でそこに触れる。

「あぁん!あっ」
「うわ、すげ、ヒクヒクしてる」
「やぁん、恥ずかしいから、言っちゃイヤだぁ……」

照れたように身をよじる広樹をかわいいと感じ始めていることに、彰人は驚く。

「お前、男が好きなの?」
「うん、てへへ」
「こういうこと、よくすんの?」
「しないの」

広樹が彰人のシャツの胸のあたりをきゅっと掴んですがるような顔をした。

「あっくんに、一目惚れしちゃったから、早く近づきたくて……」
「一目惚れ…」

男が、俺に。
戸惑いながらも広樹の頭を撫でると、広樹は嬉しそうにわらった。

なんだこれ。かわいい。

「突っ込んでいい?」
「きゃあ!やらしい!してしてぇ、はやくぅ」
「コンドームとか、しねえの?」
「しなくていいよ、……中出し、しても、いいし…」

あー、これ、だめだわ俺、もう無理。我慢できる気がしねえ。

「いいやもう。とりあえず入れて出してから考えるわ」
「やぁぁん!えっち!あっくんえっちぃあああっ!きてるぅ、入ってる!あっくんのちんちんんんっ!」

こいつ、男にモテるんだろうな、と、腰を突き上げながら彰人は思った。






 *






「あ、あの、創樹くん?大丈夫?」

行為が終わってからベッドに横たわったまま動かなくなった創樹に、なつめはオロオロしながら声をかける。

「どこか、っていうかあの、お尻、痛い?」
「…平気。疲れただけ」
「なんか、ごめんね」
「許さねえ」
「えっ」

固まるなつめに、創樹は冷たい視線を投げる。

「大学生活の間、俺の世話係をやれ」
「世話係?」
「常に隣にいて、俺に優しくしろ。そしたら、またしてやる。気持ちいいこと」

ああ、なんだか、それって、

「恋人みたいだね」

なぜか照れてしまい、笑うなつめ。

「お前、やっぱりちょっと変だな。ズレてる」

創樹が言うと、なつめは心外だったのか少し首を傾げた。






 *






「はぁん…すてき……あっくん」

間近でうっとりと自分を見つめる広樹の目を見られない。

「なんか、まじ、ごめん」
「なんで謝るのぉ?うふふふ。嬉しい、あっくんがぁ、俺をぉ、愛してくれて。くふふふ」

愛してくれて?

「中出し、気持ちよかった?」
「あ、お、おう」

やってしまった。どうしよう。

「これからも毎日しようね、あっくん」
「え、毎日?」
「だってもう、恋人だよね、俺たち」
「恋人?!」
「ひぃっ、ひどい!えっちしたのに!」

涙を浮かべる広樹に、もうどうにでもなれ、かわいいし、男だけど、と半ば諦めた彰人は、広樹の手を握ってやった。

「あー…そうだよな、ごめん、責任とるから、ちゃんと」
「ほんとぅ?えへへ、うれしい」

あらら、意外と簡単だった。
広樹はにこっと笑い、彰人に抱きついた。






 *






彰人が部屋を出ると、ちょうど隣の部屋からなつめが出てくるところだった。

2人は無言で広樹たちの家を出ると、なんとなく顔を見合わせた。

「なつめ」
「ん?」
「自分探しの旅って、やっぱインドだと思うか」
「彰人くん、だ、大丈夫?」
「わからん」
「これからご飯でもどう?僕も人生の迷路に迷い込んだ気分」
「おう。行こうぜ」

2人はその後、その日出会ったとは思えないほど仲良くなるのだった。








-end-
2013.7.22
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