いつも、お側に。

経営会議兼夕食会が終わり、幹部の方たちがお帰りになる。
僕はご主人さまと一緒にお見送りをして、ケータリングスタッフの人たちと後片付けをしてから、自室に戻られたご主人さまのご用を聞きに行った。
ノックをすると、はい、と返事が聞こえたので、ドアを開けた。
明るすぎない間接照明に照らされた広い部屋。その中央に据えられた大きなくの字型のアイボリーのソファで、僕のご主人さまはくつろいでいた。かなりお疲れのご様子。会議の後はいつもそうだった。

「お疲れ様でした。何かお飲み物をお作りしますか」
「いや。…ううん、やっぱりもらおうかな。何か薄めのお酒」
「はい」

ご主人さまは、29歳の若さで会社を経営されている。僕は2年前の15歳の頃にご主人さまに拾われ、住み込みで働く給仕係兼お世話係兼雑用係兼…とにかくご主人さまの望むことは何でもする。何でも。
今日みたいにたくさんの人が集まるときは、ホテルに料理のケータリングとスタッフの派遣をお願いするけれど、ご主人さまは基本的に自分のことは自分でするし、普段は僕だけで十分事足りる。だから、豪奢な一戸建てに、ご主人さまと僕だけで暮らしている。
部屋の隅にあるミニバーカウンターで、冷蔵庫で冷やされていたスパークリングワインを薄いグラスに注ぐ。シャンパンのような色をしたそれは、微かに発泡してシャワシャワと音をたてている。

「どうぞ」
「ありがとう」

ガラスのローテーブルにグラスを置くと、ご主人さまがこちらを見て微笑む。

「ハルも疲れただろ。今日はもういいよ」
「はい。では、おやすみなさい」

キッチンで軽く朝食の下準備をしようと踵を返しかけたその時。

「ハル」

ご主人さまが僕の腕を取って引き寄せた。僕はバランスを崩してご主人さまの隣にストンと座ってしまった。
ご主人さまは手を伸ばしてグラスを取り、中身を一気に飲み干した。

「ハル…」

ご主人さまが僕の肩を抱いて耳元で囁く。僕の体はその声だけで熱くなってしまう。
ほのかにスパークリングワインの香りが漂った。

「ご主人さま…」
「疲れたよ……ハル、癒して?」
「…はい」

僕はゆっくりと立ち上がった。



黒のジャケット、ネクタイ、グレーのワイシャツ。僕はゆっくりそれらを脱ぎながらテーブルの脇に落としていく。
ご主人さまはそんな僕をただじっと見ている。僕はその視線を感じるだけで嬉しくて顔が熱くなった。
僕が身に付けているものは全て、ご主人さまが選んで買って下さったものだ。全てがご主人さまの趣味。
なるべくゆっくり脱いで、というのが初めてこれをした時からのご命令だ。
ベルトを外して黒いスラックスを脱ぐ。下着だけになった所で、ご主人さまが言う。

「テーブルに仰向けになってから下着を脱いで」
「はい」

空になったグラスを片付けようとしたら、ご主人さまがそれを取ってよけてくれる。ご主人さまと向かい合うように立って、冷たいガラスの上に座り、ゆっくり背中を預けていく。
僕がここに来てから特注で作らせた、強化ガラスのテーブル。
はあ、と息を吐くと、ご主人さまが聞く。

「冷たい?」
「はい」
「脱いで」
「はい」

僕は少し腰を浮かせて下着に手をかけ、下へずらして足をくぐらせ、それを脱いで床へ落とした。

「かわいい、勃ってるね」

ご主人さまは微笑を浮かべて僕に言う。僕の中心は確かにもう勃ち上がって蜜まで溢していた。僕はご主人さまの視線に、いつもそれだけでイけそうなほど感じてしまう。

「たくさん出てる…指ですくって舐めて。どんな味がするか、教えて」

僕はそこへ手をやり、溢れる自分の先走りを指に絡めて、ご主人さまに見えるように舌を出して舐め取った。

「どんな味?」
「…少し、しょっぱいです」
「やらしい味がする?」
「…はい」

僕の声は掠れてしまう。

「まだ足は閉じていて。乳首触って。優しく」

僕は人差し指で乳首の先端を軽く撫でた。

「ん…」

自然に声が漏れる。
僕の薄茶色の乳首は硬く尖って、それをご主人さまに見られていると思うと、もう腰が揺れそうになる。

「ふふ、興奮してるんだね。いいよ、気持ちよくなって。でもまだ乳首だけね」

ご主人さまは楽しそうに言う。これをする時のご主人さまは、仕事のことを考えている時よりも少し、年下に見える。
僕は指先を舐めて、濡れたその指で乳首を押し潰した。そのまま上下に少し動かすと、甘い快感が生まれる。

「んっ…」

ご主人さまが僕の胸をじっと見ている。よく見えるように胸を反らす。

「あ、ん」

乳輪をなぞるようにぐりぐりと刺激し、時々先端を擦るとその度に中心から先走りが溢れた。

「乳首気持ちいい?」
「ふ、ぁ、はい」

早く。早く触ってほしい。でもずっと見られていたい。期待するような視線をご主人さまへ向けてしまう。

「ふふ、まだだよ、まだ触ってあげない。もっと乳首いじってごらん。ちゃんと見ててあげるから」

ソファに深く身を預けたまま囁く声と優しい笑顔に、僕はぶるっと震えてしまう。
胸全体を手のひらで揉みしだく。

「んっ、んん、ぅん…」

甘えるような鼻声が出て恥ずかしい。でも聞いてほしい。聞いてご主人さまの興奮が高まればいい。
見せつけるように胸全体を女の子みたいに寄せて揉み続けながら、人差し指と親指で乳首を挟む。そこをつまみ上げると、痛いほどの快感が沸き上がった。

「あぁんっ!や、やぁ、あ」
「気持ちいいの?」
「あっん、いい、気持ちいいですっ」
「…もっと痛くしてみて」

僕はつまむ指にぐっと力をこめ、思い切り引っ張る。

「あぅっ!い、あ、あんっ!」
「ハル、かわいい…もっと見たいよ」

ご主人さまが立ち上がってテーブルの脇に膝をつく。僕はご主人さまの方へ体を向けて自分の指をしゃぶった。

「下から見てあげるね」

ご主人さまはテーブルの下に横向きに寝転がり、顔だけを上に向けた。眼差しが優しくて、僕は抱き締めてほしいのを必死で我慢する。
うつ伏せになり、足を開いて勃起した中心をガラスに擦り付けた。ぐちゃぐちゃの先走りがガラスへ零れてそこを濡らしていく。冷たさとぬるぬるの感触が気持ちいい。ご主人さまにそれを全て見られている。意識して足を限界まで開いた。

「ハルはほんとに体が柔らかいね」
「んっ、んんっ、あ、ああん」
「全部見えてるよ」
「あっん、見て!ご主人さまぁ、見てぇっ」

僕はついにねだってしまった。言いながら乳首と中心をガラスに擦り付け、腰を振る。

「ああ、見てる」
「んぁっ、ごしゅじんさまぁ、あ、いい、ごしゅじんさまに見られてるっあぁん」
「あーあ、ガラスがべちゃべちゃだ。ハル、かわいい顔してほんとえっち」

僕は腰をゆっくり動かして中心を刺激しながら、肘をついて指をしゃぶった。じゅぷじゅぷと音をたてながら、ご主人さまにフェラをする時のことを考えて一生懸命舐めた。

「ハル、もっと見せて、ハルの体、もっと見たい」

ご主人さまの話し方から余裕がだんだんと無くなってきた。何でもする、ご主人さまのためなら、何でも。
僕は体を起こして膝を折り、足を開いて座る。お尻が濡れたガラスにぴたんとくっついた。

「かわいいお尻」

ご主人さまは「はぁ」と息を吐いた。僕は興奮して苦しくなる。
片手で割れ目を限界まで開く。くぷ、と口を開けたそこに、舐めしゃぶってぬるぬるになった指を埋めた。

「あっああぁん!」
「ハル、悪い子。俺の許しもなくそんなとこいじって」
「ごめんなさいぃ」
「じゃあほら、そのまま広げて中見せて」

ご主人さまの息が荒い。すごく興奮する。
僕は両手の人差し指で穴の入り口を広げてご主人さまに見てもらう。

「ご主人さまっ、見て、僕の中見てください」
「見えるよ、ひくひくしてる」
「ああっ、ご主人さまぁ、見て、もっとみてぇっああんっああっ」

睾丸をテーブルにぴたぴたとくっつけながら腰を振り、僕は完全に理性を失ってただ喘ぐ。中心に触る必要もなく絶頂を迎えそうになった時、いつの間にかテーブルの下から出ていたご主人さまが、僕を押し倒した。

「ハル、ハル、やらしいハル」
「あっごめんなさいっごしゅじんさま、あ、あ、」
「ひくひくしてる穴にぶちこんであげる。ほら、ほしい?」
「ひ、ああっごしゅじん、っさまぁ、僕にご主人さまのちんちんっくださいっ」

ご主人さまが興奮しているのは声から明らかなのに、手は優雅に動いて前をくつろげ、猛るそれを取り出す。

「あはぁんっ!はやく、ごしゅじんさまぁぁっ!」

僕はそれをみただけで腰が揺れてしまって、弾みで僕のとご主人さまのがぺちぺちと擦れてしまった。

「ああああ!やあっ!出るぅ!」
「っん、だめだよ…ハル我慢して…すごいな、感じすぎだよ」

ご主人さまはうごめく僕の腰を掴み、少しだけ挿入した。

「ああ!ああ!ああっあ!」
「かわいいハル…俺の、ハル」

薄れそうになる意識の中でも、僕はご主人さまの顔から目を逸らさない。
ご主人さまはいつも、僕の中に入るとき、すごく切なそうな顔をする。僕をたくさん、呼ぶ。
そうしながらゆっくり腰を進められて、僕は耐え難いような快感に包まれる。奥まで欲しくて、足を開けるだけ開いた。

「やあっ!あー、あぁ、はいってる、ご主人さま、んーっ」
「はぁ、ハル、愛してるよ、ハル、う、ハル」

律動はゆっくりと始まり、僕の中を広げては出ていく。耳元で聞こえるご主人さまの息遣いがだんだんと激しくなる。時々名前を呼ばれて、その度にきゅうきゅうと締め付けてしまった。

「ハル……っ、ハルの気持ちいいとこ、ここかな、ハル、」
「やあああ!だめ!ごしゅじ、っんあああぁ!」
「柔らかいから足いっぱい開くね、やらしい」
「ああん、だってぇ、ぅあっ、もっと欲しいです、うぅんっあぁ、奥、おくぅ!」
「う、…愛してる、ハル、ハルっ!」

ご主人さまの腰が激しく動き、抜ける寸前まで出ていったかと思うと、一気にぶつけられて奥まで突っ込まれた。

「やあっ!!はげしい、だめ、あ!や!ごしゅじんさまぁ!」
「ハル、…ハルだけだよ、ハルだけが俺の……」
「あ゛あ゛あぁぁぁ!まって、出る、でちゃうのぉ、や!っぅやぁぁ!」

僕はご主人さまの腰使いに追いたてられて苦しくなって、上半身を捩って凄まじい快感に耐える。

「かわいい、ハル、っあ」
「でるぅ!ん゛あ゛ぁ!」
「いいよ、出して、俺もハルの中にいっぱい精子出してあげるよ」
「んっ出してぇ!っあん!あぁっ!」
「イく顔も、ちゃんと見てるよ」

僕の体が反って、頭がぐりりとガラスに擦れる音がして、ご主人さまが僕の乳首にちゅぱと音をたててキスをした。

「あっやぁぁぁ出る、っん゛!あ゛!あぐぅ、ああぁっ!」
「あぁ、はぁっ…ハル…」

僕は激しく痙攣しながらイって、白濁を吹き出した。
ご主人さまの精液が僕の中に叩きつけられて、最後まで絞り出すようにご主人さまが腰を小刻みに揺らした。

「あっ、あー…ご主人さまの、いっぱい…」
「ん…ハルの感じ方、いっつもすごいね。激しいえっちになっちゃうね」
「ご、ごめんなさい…」

ご主人さまは笑う。それから、僕を抱き起こしてソファの上で優しく抱き締めて、たくさんキスをくれた。

「いいんだ、それもかわいい。…ハル、愛してる…俺にはハルしか味方がいないんだ。だから、ずっとここにいて。な」

ご主人さまは僕と違ってたくさんの人に囲まれているのに、ご主人さまはこれが終わるといつもそう言う。
不思議に思いながらも、僕も笑顔になる。

「はい、ずっとここにいます。ご主人さまのお側に…」
「絶対だよ。約束できるか?」
「はい、絶対です」

僕はご主人さまの胸に頬を寄せてしがみついた。抱き返してくれる腕が温かい。
ここだけが僕の世界。ご主人さまのお側だけが。離れるなんて、そんなことは絶対に。
少しの間そのまま微睡んで、はっとして起きた。

「あの、申し訳ありません、明日の朝食の下準備もまだなんでした…僕、もう」
「だめ。行くな」

ご主人さまに抱き寄せられ、僕はまた腕の中へ戻る。

「朝メシなんか無くたっていい。それより今日は朝まで一緒に寝よう。な、ハル」
「はい、もちろんです」

ご主人さまの望むことは何でもする。そう、何でも。

それが僕の世界。
ご主人さまと、僕の世界。





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