2人
夏休みの間、園田は両親のところへ行っていた。園田を失った俺は、丸一ヶ月、友達とだらだら野球をしたり、図書館で宿題をするふりをして涼んだり、墓参りや親の買い物に渋々付き合ったりして過ごした。
暑い、ということ以外に、特に何の感想もない日々だった。
そうして、俺を放っていた園田は、明日から学校が始まるという世界一憂鬱な日の昼過ぎに、山ほどのお土産を持ってうちに戻った。
「久しぶり」
園田は少し照れたように笑って、習字みたいな字で『ぼんぼりまんじゅう』と書かれた地味な箱を俺に差し出した。
「何これ」
「うちの親からはね、別になんか、預かってるから。お菓子とか、漬物みたいなのとか、お茶漬け海苔とか、きしめんとか」
「これは?」
「それは俺からお前に」
「は? お前から?」
ぼんぼりまんじゅうとは。
「何買っていいかわからなくてそれにした」
「……ふうん」
それにしても、ぼんぼりまんじゅうとは。
どんなものなのか気になって包装紙を破ると、薄いピンクやグリーンの縞模様になったまんじゅうが六個、入っていた。たぶんアンコが入っていて、特別まずくもないけどおいしくもない味だろうという気がした。
地味だ。どう考えてもおばあちゃんたちの食べ物だ。
「あ、かわいいまんじゅうだ」
一人得意げな園田は少しだけ日に焼けていた。と言っても、もともと色の白い園田は、赤くなったところがヒリヒリして終わるタイプの男だった。
「むこう、楽しかった?」
「全然。毎日退屈だった。することないんだもん」
「俺も」
「お前めちゃくちゃ焼けたじゃん。何してたの」
「野球とか」
「宿題終わった?」
「見せて」
「はぁ? 全然やってないの?」
「仕上げができてねえだけだ」
「なにそれ、宿題に仕上げもなんもないじゃん」
園田は笑う。
ああ。会いたかった。
また今日から一緒だと思うと、明日から学校が始まってもそれほど不幸ではない気がした。
久しぶりに両親と園田と四人で夕飯を食べた。母の気合いで、ちょっといい肉のすき焼きだった。
交代で風呂に入ったあと、俺たちは二階に上がった。宿題を確認するつもりだったのに、階段を上がる園田の後ろ姿を見ていたら我慢ができなくなって、園田の部屋に入った途端ベッドに押し倒してしまった。
「ちょっと、だめだって、おばさんたちいるんだから」
「ん」
「や、……ん」
久しぶりのキスはひどく甘くて頭が少しクラクラした。我慢できずに下半身を押しつけるようにすると、園田は俺の後頭部の髪をゆるく掴んで深く息を吐いた。
「……舐めてあげる」
そう言うと、俺の下から這い出て、ベッドに起き上がった俺の向かいに膝をつき、部屋着のズボンの外から俺の股間を撫でた。
「すっごい……勃ってる」
うっすら笑って、園田は俺の下着の中へ手を入れる。日に焼けて少し赤くなった鼻を見ていたら、興奮が一気に高まった。
「声出すなよ」
「うっ」
ぱくっと咥えられ、口の中の熱さや濡れた感覚に早くも声が出てしまった。園田は俺のを口に含んだまま、目だけで『仕方ないやつ』と俺をからかう。
「やばい……もうっ、出そう……」
久しぶりだからだ。我慢がきかない。かわいい。園田。かわいい。かわいい。俺の、そんなところ、舐めて。エロい。
「あっ、出る、その、だ、あっ……!」
「んっ……」
ビュ、ビュル、と勢いよく精液が飛び出していくのを感じて、勝手に腰が前へ出てしまう。園田は少し情けないような顔をして、それでも俺のを咥えたまま離さない。
やがて、ごくり、と喉が動いて、飲み込んだのがわかった。わかってから俺は慌てた。
「おま、え、飲んだのか?!」
「んー……」
ちゅぷ、と音を立てて俺のをやっと離し、なんとも言えないような表情を浮かべた園田の頬を、俺はそっとさすった。
「だ、大丈夫なの……」
「んん……まっず……」
「……すまん」
「一回してみたかっただけだし」
園田はそう言うと立ち上がり、こちらに背を向けて旅行用のバッグを片付け始めた。
「え、待って……お前は」
「何」
「なにって」
「なに」
何。なにと言われれば。
振り返って、言葉に詰まった俺を見つめた園田は、ゆっくり口を開いた。
「俺は向こうで、お前のこと思い出して抜いてたから、溜まってない」
顔が熱くなる。うれしくて照れくさくて、それから少し不満にも思う。
「でもお前、実際俺に久しぶりに会ったら、違うだろ、それとこれとは別だろ、俺だって園田で抜いてたし」
「抜いてたのかよ」
口が滑った。
「明日学校から帰ったら、おばさん達帰ってくるまで、ヤろ」
さすがに今は無理でしょ。
そう言って片付けを再開した園田の耳が、少し赤い。
「前じゃなくて、後ろでしたいってこと?」
「っ、うるさいし。黙れ」
「園田」
「うるさ! はやく部屋帰れば」
「宿題は」
「知るか」
結局ノートを貸してもらって、にやけ顔のまま一人、部屋に戻ることになった。
夏休みは終わるけれど、園田と俺の夏は、ぼんぼりまんじゅうとともに今日から始まった。
-end-
2019.8.24
暑い、ということ以外に、特に何の感想もない日々だった。
そうして、俺を放っていた園田は、明日から学校が始まるという世界一憂鬱な日の昼過ぎに、山ほどのお土産を持ってうちに戻った。
「久しぶり」
園田は少し照れたように笑って、習字みたいな字で『ぼんぼりまんじゅう』と書かれた地味な箱を俺に差し出した。
「何これ」
「うちの親からはね、別になんか、預かってるから。お菓子とか、漬物みたいなのとか、お茶漬け海苔とか、きしめんとか」
「これは?」
「それは俺からお前に」
「は? お前から?」
ぼんぼりまんじゅうとは。
「何買っていいかわからなくてそれにした」
「……ふうん」
それにしても、ぼんぼりまんじゅうとは。
どんなものなのか気になって包装紙を破ると、薄いピンクやグリーンの縞模様になったまんじゅうが六個、入っていた。たぶんアンコが入っていて、特別まずくもないけどおいしくもない味だろうという気がした。
地味だ。どう考えてもおばあちゃんたちの食べ物だ。
「あ、かわいいまんじゅうだ」
一人得意げな園田は少しだけ日に焼けていた。と言っても、もともと色の白い園田は、赤くなったところがヒリヒリして終わるタイプの男だった。
「むこう、楽しかった?」
「全然。毎日退屈だった。することないんだもん」
「俺も」
「お前めちゃくちゃ焼けたじゃん。何してたの」
「野球とか」
「宿題終わった?」
「見せて」
「はぁ? 全然やってないの?」
「仕上げができてねえだけだ」
「なにそれ、宿題に仕上げもなんもないじゃん」
園田は笑う。
ああ。会いたかった。
また今日から一緒だと思うと、明日から学校が始まってもそれほど不幸ではない気がした。
久しぶりに両親と園田と四人で夕飯を食べた。母の気合いで、ちょっといい肉のすき焼きだった。
交代で風呂に入ったあと、俺たちは二階に上がった。宿題を確認するつもりだったのに、階段を上がる園田の後ろ姿を見ていたら我慢ができなくなって、園田の部屋に入った途端ベッドに押し倒してしまった。
「ちょっと、だめだって、おばさんたちいるんだから」
「ん」
「や、……ん」
久しぶりのキスはひどく甘くて頭が少しクラクラした。我慢できずに下半身を押しつけるようにすると、園田は俺の後頭部の髪をゆるく掴んで深く息を吐いた。
「……舐めてあげる」
そう言うと、俺の下から這い出て、ベッドに起き上がった俺の向かいに膝をつき、部屋着のズボンの外から俺の股間を撫でた。
「すっごい……勃ってる」
うっすら笑って、園田は俺の下着の中へ手を入れる。日に焼けて少し赤くなった鼻を見ていたら、興奮が一気に高まった。
「声出すなよ」
「うっ」
ぱくっと咥えられ、口の中の熱さや濡れた感覚に早くも声が出てしまった。園田は俺のを口に含んだまま、目だけで『仕方ないやつ』と俺をからかう。
「やばい……もうっ、出そう……」
久しぶりだからだ。我慢がきかない。かわいい。園田。かわいい。かわいい。俺の、そんなところ、舐めて。エロい。
「あっ、出る、その、だ、あっ……!」
「んっ……」
ビュ、ビュル、と勢いよく精液が飛び出していくのを感じて、勝手に腰が前へ出てしまう。園田は少し情けないような顔をして、それでも俺のを咥えたまま離さない。
やがて、ごくり、と喉が動いて、飲み込んだのがわかった。わかってから俺は慌てた。
「おま、え、飲んだのか?!」
「んー……」
ちゅぷ、と音を立てて俺のをやっと離し、なんとも言えないような表情を浮かべた園田の頬を、俺はそっとさすった。
「だ、大丈夫なの……」
「んん……まっず……」
「……すまん」
「一回してみたかっただけだし」
園田はそう言うと立ち上がり、こちらに背を向けて旅行用のバッグを片付け始めた。
「え、待って……お前は」
「何」
「なにって」
「なに」
何。なにと言われれば。
振り返って、言葉に詰まった俺を見つめた園田は、ゆっくり口を開いた。
「俺は向こうで、お前のこと思い出して抜いてたから、溜まってない」
顔が熱くなる。うれしくて照れくさくて、それから少し不満にも思う。
「でもお前、実際俺に久しぶりに会ったら、違うだろ、それとこれとは別だろ、俺だって園田で抜いてたし」
「抜いてたのかよ」
口が滑った。
「明日学校から帰ったら、おばさん達帰ってくるまで、ヤろ」
さすがに今は無理でしょ。
そう言って片付けを再開した園田の耳が、少し赤い。
「前じゃなくて、後ろでしたいってこと?」
「っ、うるさいし。黙れ」
「園田」
「うるさ! はやく部屋帰れば」
「宿題は」
「知るか」
結局ノートを貸してもらって、にやけ顔のまま一人、部屋に戻ることになった。
夏休みは終わるけれど、園田と俺の夏は、ぼんぼりまんじゅうとともに今日から始まった。
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2019.8.24
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