2人

ねえ、俺のこと、好き?

…好きだよ。

どのくらい?

…ずっと…くっついてたいくらい……園田は?俺のこと好きなの

好きだよ

…どのくらい

結婚したいくらい、好き

園田が笑う。

なんだ、この甘ったるい会話は。
でも、なんか、すごく嬉しい。



ガタン、という衝撃で目を開けると、掛け布団をぎゅうぎゅう抱きしめたままベッドから落ちていた。
夢。
腹を掻きながら起き上がり時計を見ると、9時を少し過ぎた頃。
今日は日曜で学校は休みだ。
1階に下りると、ちょうど両親が揃って出かけるところだった。

「おはよう。お母さんたち映画観てくるから」
「んん」
「パンあるから」
「はいはい」
「春雨スープまた買ったから飲んでもいいよ」
「わかったわかった」

父が先に立ってドアを開けると、春先の心地よい空気がふんわりと流れ込んで来た。
玄関で1人になり、園田はまだ寝ているか、とぼんやり思う。
頭に手をやると、右後ろの方に寝癖が付いていた。
両親は外出。
恋人が寝ている。
洗面所で寝癖を直してからいそいそと階段を上り、園田が来る前は父の趣味部屋兼物置として使っていた部屋の前に立つ。
園田がうちに住むようになって1ヶ月。
付き合っていることなんか両親にはもちろん言えないから、夜は別の部屋でこうしてバラバラになる。
本当は毎日一緒に寝たい。
というか、はっきり言ってしまえば毎日セックスがしたい。
でも毎日、学校から同じ家へ帰って別の部屋で寝るとなると、意外にそのチャンスは少ないということに気づいた。
親の帰りの遅いときに急いですることはあったけど、気持ち的には落ち着かない。
1人でベッドに入るとき、恋人が隣の部屋にいるという意識は、行き場のない性欲を高まらせるだけだ。
とにかくそんな感じで日々悶々としていたので、園田の部屋に入る前に少し深呼吸をして気持ちを落ち着かせる必要があった。
その部屋の入り口だけが、ドアではなく引き戸になっている。
そっと開けても音がして、ドキドキした。
園田はベッドで布団に埋もれるようにしてすうすうと寝息を立てている。
駄目だ。
全然駄目だ。
隣に潜り込んでもう一眠りしてもいいと思っていたけれど、駄目だ。
バサバサと音を立てて布団をめくり、園田の体を強引に引き寄せる。

「…んんー?」

寝起きの声を飲み込むように、唇を重ねて舌を入れた。

「っ……ん…」
「ん…」
「…おばさんたちは…?」
「…出かけた」

園田は一瞬俺から顔を離し、照れたように「ふふ」と笑った。
また引き寄せてキスをして、舌を吸いながら下半身を擦るように押しつける。
園田はすぐに息を荒くして、それに応えるように腰を動かした。
俺のも園田のも硬くなっていて、とりあえずもうこれだけでもいいから今すぐ一回射精したいような強い衝動に駆られる。

「ぁ、ん……すげー盛ってるじゃん、どしたの…」
「…したかったから」
「俺としたいの」
「…してえよ、悪いかよ」
「俺もしたい」

むちゃくちゃに唇を重ねながらお互いのパジャマのズボンの中に手を入れて直接触れる。

「ああんっ」
「っ、く、」
「あ、あぁ…あっ、ふ、ぅ」
「はぁっ、はぁ、あ、やべえ…」
「俺も、ねえ、やばい、あっ、もっと、もっとしごいて…出したい…」
「はぁ、はぁ、」
「あんっ、あっ、あっん」

首筋に吸い付きながら手の動きを速める。園田は俺に首元を差し出すように背中を反らし、腰も動かす。

「あっ…イきそ…」
「ん…」
「あ…あ……あ、イく、イく、あっあっあっあぁ」
「っあ、俺も…」

こいつも溜まってたのかな、と思いながら、園田の手に押しつけるようにして射精した。
園田はエロい声を出しながら目を閉じてイった。イく直前、俺の肩をキュッと掴んできた。
かわいい。好きだ。
すぐにまたキスをして、抱きしめて背中を弄ると、園田は俺にしがみつきながら上に乗った。

「…ねえ…」
「なに」
「…したい…挿れて…」
「…大丈夫なの」
「待って、濡らす」

自分でジェルを塗りこみ、拡げていく行程を全部俺の上で見せつけながらする。
初めて体を繋げることができたあのホテルの日以降、園田はどんどん大胆になる。
俺がそんな園田を見て興奮するのを楽しんでいるみたいに。

「はぁ、はぁ、っん、あ、ああっ、」
「なぁ…もう入る?」
「ん、んふふ、挿れたい?我慢できなくなってきた?」

そんなことを平気で聞いてくる。

「挿れたい、ちんぽ挿れさせて」

ああぁ、とため息を吐きながら、園田は腰を浮かせて俺のものを咥え込む。

「ああっ!」
「っあ、はー、っあ、ああ…」
「かたい…気持ちいい…あっ…あっ…あっ…」

園田が腰を前後に揺らすのに合わせて下から突き上げる。

「ああ…中、いっぱい、こすれて…すごい、きもちいいっ、ああっ、は、はぁ、ああ」
「エロい」
「だって…ずっとちゃんと…してなかったから…」
「こないだ、洗面所でヤっただろ」

学校から帰って、両親がいなくて、お互い我慢ができなくて、洗面所の壁に園田を押し付けて腰を振ったことを思い出した。
俺もあんなんじゃ全然足りなかったけど、敢えて言う。

「だって…あんなの…落ち着けないじゃん」
「…ん…」
「ああ…ねえすっげー気持ちいいよ」
「でも、あの時の園田は…おばさん帰って来ちゃうって言ってる顔が、ヤバかったけど」
「うっさい」

壁に振動が伝わりすぎて、棚に置いてあった歯磨き粉やヘアスプレーが軒並み倒れたんだった。

「あれはあれで…よかったけどな」
「俺は、こっちの方が…ベッドの方がいい」

園田がいやらしく腰をくねらせて、思わず声を出してしまう。

「ああっ…」
「はぁ、あんっ」
「なぁ…もう限界」
「俺も…」

勢いをつけて体勢を逆に入れ替え、園田の体を組み敷く。
両手を握ってから、激しく腰を打ち付けた。

「ああ!あ、あ、あ、あ、あっあっんんんっ!」
「はぁ…ああ…」
「好き…ねえ…好き…」
「…ん…俺も好き…」
「やぁっ、あ、もうだめイく、あんっあ、」
「園田」
「あ!あ!はっ、はぁ、あ!あっ!あっ」
「…ああ…イく…イくっ…」
「俺も…おれも…!中に出して…全部中に出して…!ああ…」
「あっ…あ、出る…っ」
「あんっ…は…あぅ……ん…」

叩きつけるように出して、園田のイき顔を見る。
かわいい。

「…かわいい」
「はぁ、…はは、かわいいとか、ウケる」

園田は、俺がかわいいと言うと必ず照れる。ウケる、と言う時は、照れている時だ。

結局、ベッドを出たのは昼頃だった。
園田が部屋の空気を入れ替えている間に、俺はお湯を沸かして春雨スープを溶く。
パンを焼いて、チーズとハムとマーガリンを出した。
園田がちょっと遠慮しながら冷蔵庫を開け、りんごジュースのパックを出している。

「お前も飲む?」
「飲む。野菜室にりんご入ってるよ」

園田がりんごを食べるのを見るのが好きだ。
ものを食べている園田は、なんか、いい。

「食っていいやつ?」
「うん。食えば」
「むいて」
「しゃーねーなー、出しとけ」
「すまねえすまねえ」
「座ってれば」

ペティナイフを出しながら言うと、園田がイスを引きながら俺を見た。

「なんか優しい旦那さんみたいだ」
「…は?」

何を言うんだこいつは。
固まっていたら、園田が笑った。

「お前って照れると怒るよね」
「知るか」
「ほら」
「りんご、うさぎさんにしてやらねーからな」
「うさぎにしてほしいなんて頼んだことないんだけど!」

夫婦ごっこみたいで楽しいとか、思ってるけど絶対言わない。





-end-
2016.2.21
3/4ページ
スキ