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名探偵コナン






行先を急に変更したことに謝る。もう何度も。

「美波のおじいちゃんおっちょこちょいで変わった人なんだね。神社に忘れ物したから拾ってきて〜なんて」

苦しい言い訳でも簡単に信じてくれた。単純で助かったけど騙されやすそうで心配になる。
地図マップが示した場所を真正面から見る。
ボロい。参拝者がいるのか、経営が難しいのか。色々心配になるけど、まず神様に挨拶しなきゃ。
鳥居をくぐる前に一礼をして石畳の上を歩く。

「え、お賽銭入れるの?」

「もちろん!神様のお家を歩き回るんだからちゃんと挨拶しといた方がいいでしょ?」

「ああ!そうだよね。挨拶しないと」

神様急にすいません。知人が賽銭箱の下に置いていったアタッシュケースを持って帰ります。賽銭箱の中身を荒らしたり入るようなことはしません。よろしくお願いします。

シャラン。

「…今鈴の音聞こえた?」

「ううん。鳴ってた?」

「いや、空耳かも」

私しか聞こえてないんだ。もしかしたら神様の返事かもしれない。それがいいものか悪いものかはわからないけど。
二手に分かれて探す。もう場所はわかってるけどミヨは見えないし事情も知らないから探すフリでもしないと。
ミヨが茂みの中探しているうちに。

隙間、ちゃんとある。奥の見えないところに手を入れたくないけど非常事態だ。我慢して手を奥へ奥へ伸ばして辺りを探る。
冷たくて硬い何かが指先に触れる。縁をなぞっていって取っ手を掴む。すぐにでも出したかったけど、パズルのピースをはめ込むみたいに隙間とケースがピッタリ。賽銭箱を傷つけないように慎重に。
やっとのことで抜け出せて、晴々とした気持ちで獲得した景品のように頭上に掲げて、何かがボタボタと落ちてきた。
箱の隙間から、黒い粘着性のある液体が出てきた。今でも落ち続けて、足元に溜まった液体からぶくぶく泡立ち始めて、そこから目玉が何個もあって手も何本もある皮膚がぶよぶよのヤツが出てきた。

「ぅぅ」

鼻につく異臭に思わず声が出るが、幸いにも気付かれなかった。それにしてもコイツはやばい。今まで見てきた中でこんなにやばいって思ったことない。
落ち続けた液体が止まった。それと同時に踵を返してミヨを呼ぶ。

「みつけたよ〜」

「ホント!?草むらでサバイバルナイフなら見つけたんだけどね…見つかってよかった!」

「いや、よく見つかったねサバイバルナイフ…あっ、ポアロでハンカチ落としたかも。ちょっと戻ってもいい?」

「美波もおっちょこちょい!もちろんいいよ」

話してる間にも、ヤツは私からケースを取り返そうとしてなのかピッタリと後を着いてくる。
私に被さる影が、何本もある手を振り上げた。
そんなに大事なものなのかこのケース!あのおじさん何隠して死んだんだよ!
震える身体をバレないように力んで抑える。そのまま神社の出口に歩く。勢いよく振り下ろされた手に掠ったスカートはカッターに切られたかのように綺麗に裂けた。

こんなもの生身で当たったら死ぬ。

「あっ、みてみて!凄い神々しくない?!一緒に写真撮ろ!」

今!?ミヨお願いだから早く逃げようよ。確かに鳥居と太陽がいい感じに被さって綺麗だけど!
なんて見えてないミヨに言えなくて、震える声でいいよ、と言う。

「あ〜!カメラ起動出来ない。ちょっと待って」

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