漣タケ

 自分から出た体液の量に苦笑しながらゴムを結ぶ。ゴミ箱に放って、横たわったチビの、汗に濡れた背中をなぞった。
「くすぐったいからやめろ」
「くはは」
 肩で息をしながら枕に顔を押しつけている。しばらくこのまま動けないだろう。横に寝ころびながら、チビの真っ赤な耳を摘まんだ。
「……なんだ」
「真っ赤」
 振り払うように寝返りをうつ。潤んだ瞳で睨まれても艶めかしいと思うだけだ。息が整ったのか、チビの焦点が合う。
「激しすぎだ」
「チビだって感じてただろうが」
「うるさい」
 チビの太もものあわいに手を這わせる。抵抗する力も弱々しい。汗でしっとりと濡れたそこを数度撫でながら、ふと思っていたことを口にした。
「チビ、ここにホクロあんな」
「え、どこだ」
「足の付け根んとこ」
「……自分じゃ見えないから、気付かなかった」
 左足の、内側の付け根の部分。チビからじゃ確認できない、普段なら下着の中にある場所だ。こんなところ見るのはオレ様だけだろう。足を開かないと見えないのだから。なんとなく沸き上がった優越感に浸った。チビは何かを逡巡し、自分の足の方を見る。
「ホクロって、前世でキスされた場所って言われてるらしいぞ」
「はぁ?」
「だから、そんなところにつけるなんて……ちょっ、」
 チビの話を遮って、大きく足を掴み上げた。ホクロのある場所に吸い付いて、赤い跡をつける。ビク、と揺れた肌をひと舐めし、ゼンセってやつを憎んだ。オレ様以外がチビのこんな所にキスをするだなんて耐えられない。込み上がる怒りに顔をしかめた。
「跡つけるなって言ってるのに……!」
「こんなとこ誰も見ねーだろ」
「そうだけど」
「それとも見せる相手でもいんのかよ、ゼンセみてーに」
 チビを睨むと、少しむっとした顔をされた。そのあと目線を少し泳がせ、ぼそりと呟く。
「こんなとこ、前世でもオマエくらいしか見ないって、言おうとしたんだ」
 枕を抱きしめ直すチビは照れているのか、顔がまた赤くなっていた。オレ様は言われた言葉の意味を二、三度考え、その意味に気付いた時には釣られて顔が赤くなるのを感じた。
 つまりチビは、ゼンセでもオレ様とこういう関係だったんじゃないかと言いたいわけだ。
「……ばーか」
「バカってなんだ」
「チビのこんなとこ見んの、オレ様しかいねーもんな」
「だから、そうだって言ってるだろ」
 喜びと同時に、熱が下腹部に集まっていく。開いた足の内側を撫で、さきほど付けたばかりの跡をなぞった。
「消えたら、また付けてやる」
「……ホクロがあるんだから、もういいだろ。ていうか」
 オマエ、また勃ってんのか。チビはぎょっとしたように目を見開く。オレ様はチビが抱えている枕をはぎ取り、そのまま覆いかぶさった。
「ライセのチビが驚くくらい、ホクロまみれにしてやるぜ」
「……跡はつけるなって」
 まずは唇に、たっぷりと。チビの足を持ち上げながら、深いキスをする。今この世界のチビを存分に味わってやろう。チビの手が背中に回されるのと同時に、コンドームの箱を手探りで探し当てた。
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