ストーカーにおびえるピー

ストーカーにおびえるピー


その人はとても美しい人で、初めて目にした時はこの世の者とは思えなかった。その人はきれいに手入れされた金色の髪をゆるくたばね、バイク屋の開店準備をしていた。丁寧に店のガラス戸を拭き、バイクを大事に扱う手つきはまるでキラキラした宝石を触るようだった。彼の人形のように整った小さな顔は表情がない時冷たく見えるが、店主のサノさんに向ける笑顔は無邪気で子どものようだった。そして、俺みたいな路傍の石のような人間にさえその人は気軽に笑顔をくれた。商品を渡すとありがとなと笑ってくれた。暑い日には顔赤いけど大丈夫か?水飲めよと俺の頭をぽんぽんとしてくれた。俺は仕事にかこつけていつもいつも彼を眺め、いつしか彼に恋をしていた。毎日毎日、手紙で思いを伝えた。あの人は美しくてやさしいから俺のこの思いは伝わるはずだと思った。伝わらなかったら伝わらなかった時だ。無理矢理にでも彼を眠らせて自分の部屋に連れて帰れば良いのだ。眠らせて力づくで俺のものにしてしまえばいい。どんな顔をするだろうか?あの綺麗な顔はどんな表情を浮かべる?あの人を抱けたならば死んだっていい。幸い体格は俺の方が大きい。

街中で彼を見かけた。自分も休みで、そうだ今日は彼の勤めるバイク屋も定休日だ。彼はいつも人の多いコーヒーショップから出て来た。この人の多さでも彼の美しさはひときわ目立つ。通りすがりの若い女が彼を見てビックリした表情をし、うっとりと見つめている。彼はそのような視線慣れっこなのか気にせず嬉しそうに両手に飲み物を持って店から出て来たのだ。片手にアイスコーヒー、片手に胸焼けしそうな生クリームがたっぷりと乗ったフローズンドリンクを持っている。確か毎年この時期このコーヒーショップではいちごのフローズンドリンクが発売されるもんな。彼はいちごが好きだ。俺は知っている。コンビニにいちご味の商品があるとチェックして購入していることも。ご近所から差し入れをもらう時それがいちごだった時店主のサノさんはいつも半分に分けるのに、いちご全部持って帰りなと分けずに彼に渡しているのも知っている。だって俺はずっと彼のことを見ているのだから。
彼はドリンクを持ったまま流れるように道路脇のパーキングに停めてある車に近づいた。それはメタリックブルーのポルシェで、俺が何年一生懸命働こうが到底買えない車だ。失礼だがバイク屋の店員である彼だって買えないような値段の車だが……。彼は運転席に近づくと窓からアイスコーヒーを手渡した。運転席に乗っていたのはサングラスをかけたどう見てもサラリーマンには見えないチャラついた男で、スマホで通話をしながら当たり前のようにアイスコーヒーを彼から受け取った。そして、彼は定位置なのか助手席にしっくりおさまるとご機嫌にいちごのフローズンドリンクを飲み始めた。おいしいらしくニコニコしていてかわいかった。メタリックブルーのポルシェも運転席の男のチャラついてるが似合っているアシンメトリーの髪型も何もかも気に入らないのに、ドリンクを飲む彼がひたすらかわいく時を忘れてずっと見つめていた。運転席のチャラ男は仕事の電話なのかなかなか通話が終わらない。彼は自分が飲む合間合間に、フローズンドリンクにかかった生クリームをプラスチックのスプーンですくってかいがいしくチャラ男の口元に運んでやっている。チャラ男はやっぱり当たり前のように彼が口元に運んだ生クリームを食べるのだった。彼はそんなチャラ男を見て幸せそうに笑う。それは俺にも。大好きであろう店主のサノさんにさえも。誰にも向けない笑顔だった。ようやく通話が終わったらしいチャラ男は彼に何か話しかけ、彼も何か答えている。彼はチャラ男のサングラスをはずして、そのあっさりと整った顔をいとしげに撫でるとあろうことかキスをした。チャラ男は少々驚いた顔をしたがすぐに破顔し仕返しのようにやや乱暴なキスを彼に返し、彼の手からサングラスを取りもどすと車を発進させた。もうダメだ。青宗は俺のなのに。俺は青宗をどこか閉じ込めて無理矢理俺のものにしなきゃならない。俺はその光景を見てそう決めた。チャラ男になんか渡さない。青宗は俺のなのだから。




2
乾は最近珍しく悩んでいた。思い悩むより行動にうつす乾にしては珍しいことだった。どうも自分はストーカー被害にあっているらしいのだ。自分のツラが多少良いのは自覚していて、自衛としてめんどくさい恋愛関係のいざこざはなるべく避けてきたが、時として避けようもない痴漢だとかストーカーだとかに遭遇することはあった。でも乾はかよわい乙女でもないしましてやバリバリのヤンキーだったから返り討ちにしてきたし、怖いと思うことはあまりなかった。でも、今回のストーカーはどうもねっとりとしているというのか、話が通じなさそうな雰囲気がして不気味だった。毎朝乾は店主の真一郎よりもはやく店に来て開店準備をするのだが、店のポストにDMや真一郎がとっているスポーツ新聞にまぎれてストーカーからの手紙もあるのだ。毎日毎日。長文で。なんの変哲もない紙に印刷された文字が並ぶ一見普通の手紙だが中身はとても気持ちが悪い。乾がコンビニで買って食べたもの。真一郎とかわした何気ない会話の詳細な内容。今牛に差し入れでもらったものが何であるのか。バイクのパーツの何をどれだけ発注したのか。ありとあらゆることが詳細に書いてある。こんなことどうやって調べるのか。掃除ついでに店のいろんなところを確かめたが盗聴器だとかそういったものも見つからなかった。幸いなことに手紙には家での様子は全く書かれていないから、ストーカーは乾の家まではたどり着いてないのだろう。乾の家には恋人の九井だって住んでいるのだからバレるのは非常に困る。自宅がわからないのだとしたら、ストーカーはこの店のまわりの人か。出入りの業者か。乾はこの店も街も大好きだから、そのあたりにストーカーがいるということがひどく悲しかった。毎日届く手紙は気持ちが悪いのでシュレッダーにかけて捨てるが、万が一警察に届けるような事態になったら困るだろうとスマホで文面を撮影している。今日も乾はストーカーからの手紙をスマホで撮りシュレッダーにかけた。真一郎にも今牛にも…そして特に九井には絶対バレないようにしなければ。心配をかけてしまう。さぁ今日も元気に頑張ろうか。乾が気持ちを切り替えて開店準備の続きにとりかかろうとした時、乾は後ろから何者かにおそわれた。なんらかの薬をかがされ意識を失う。意識を失う前かすかに見えた暴漢の顔を認識した乾は腹が立つより悲しかった。お前だったのかと。




3
九井のスマホに佐野真一郎から電話があったのは昼前のことだった。佐野は滅多なことではこちらに電話などよこさない。それこそ乾が怪我をしただとか、そういったことでもなければ。嫌な予感がする。

佐野の電話の内容は、乾が開店準備を途中やめにしたままどこを探してもいないという九井にとって絶望的なものだった。乾は九井にとって人生のすべてと言ってもいい。電話を受けた尋常でない様子の九井を見た稀咲が指示を出し、部下のサナダが車で乾の職場まで九井を運ぶ。後部座席で頭を抱えたまま微動だにしない九井を見て、こんなに取り乱す九井は乾が職場で怪我して以来だなとサナダも心が痛かった。

九井が店に到着すると、青い顔をした佐野真一郎と額に青筋をたててイライラしている今牛若狭がいた。佐野の話では、乾が開店準備を放りだしてどこかへ行くことは絶対に考えられないこと、また、私生活では不精な乾だが仕事上でイレギュラーがあればすぐに佐野に報告をきっちりするから客からの急用が入ったとも考えにくい。その肝心の報告をするためのツールである乾のスマホは事務所の床に落ちていたという。そして、嫌なことに事務所は書類があちこちに落ちてゴミ箱も倒れ乾が誰かと揉み合った形跡があったらしかった。
「すぐに警察に届けたんだけど、成人男性ですからねってあんまり真面目にとりあってくれなくて……。」
佐野が意気消沈した様子で言う。
「成人男性だからなんだよ!!青宗になんかあったらどうしてくれんだよ!!」
今牛がそこらへんにあった段ボールを蹴飛ばした。
自分よりだいぶ大人なふたりが大混乱している様子を見て、九井は少し冷静になり落ちていたという乾のスマホを確認する。乾のスマホのパスワードは九井の誕生日と乾の誕生日をつなげたものだからすぐに開いた。乾のメッセージアプリの最後のやりとりは、ココよる何が食べたい?という問いにはやく帰れそうだから久しぶりに回転寿司行く?と自分が返したのに乾が嬉しがっている犬のスタンプをよこしたという平和なもので、九井は泣きそうになる。お願いだから俺のイヌピーを返してくれよ。写真はどうだろうか。写真のフォルダを開くと、手紙と題名をつけられたフォルダが通常のフォルダとはひとつだけ別にしてある。あまりマメでない乾が何の写真フォルダを作成したというのか。九井がそのフォルダを開いてあらわれたのは、おびただしいストーカーからと思われる手紙を撮影したものだった。
「これ……なんだよこれ……。気持ち悪りぃ……。」
そうつぶやいて九井が凝視しているスマホの画面を佐野真一郎と今牛若狭も見る。
「これストーカーじゃねぇか。」
「この写真警察にもっかい見せたら今度こそ捜査してくれるか!?連れ去りだろこれ!?」
ふたりはそう言うが、九井はそれでは間に合わないと思った。この大量の手紙、やけに乾がコンビニで購入し昼に食べたものが詳細に出てくる。犯人はコンビニ店員か?いや。違う。あなたは美しいから煙草は吸いませんよね。と手紙にはある。違う。乾は煙草を吸うのだ。近しい人間しか知らないだけで彼は喫煙者だ。1日に1本だけ。乾はこの店では引火がこわいから絶対に煙草は吸わない。尊敬する佐野の吸い殻にも目を光らせているくらいだ。そして、幼い頃実家が火事になったことからボヤを怖がって自宅でも吸わない。ではどこかと言うと。コンビニなのだ。昼休憩、コンビニで買い物ついでに煙草を1本だけ吸う。だから犯人はコンビニ店員でもない。ましてこのルーティーンは乾のダチや近所の商店街の人たちなら全員知っているからダチも近所の人も除外。では誰だ。考えろよ俺。この手紙、その他に何のパーツを何箱発注したかものすごく詳細にしつこく書いているように思える。乾のことを知るのがよっぽど嬉しかったとみえる。
「佐野さん。パーツとか発注した数がわかるのって業者だけですか?」
「パーツ…そうだな…この手紙パーツのことすごく書いてる。俺も気になって。」
佐野が考えこむ。
「おい。アイツじゃねぇのか。アイツだろ!!宅配業者の!!アイツ昼にパーツ届けに来て夕方集荷に来て!!ぜってぇ1日2回ここに来るじゃねぇか!!」
今牛が叫ぶ。
「だから…だから…イヌピーが昼に何を食べているのか、佐野さんと何をしゃべってるのか、だいたい夕方に差し入れを持ってくる若狭さんの持ってくるものが何かを知ってたんだ…もちろんパーツの発注数だってわかる。自分が朝夕運んでたんだから。」
そこからは簡単だった。九井は宅配業者の本社に電話し自分の名前を出した上で犯人の住所を聞き出した。普通なら警察でもない人間が確定事項でもないことを理由に個人情報なんて教えてもらえないだろう。でも九井の築き上げてきた現在の地位で少し揺さぶりをかけたらそんなの造作もないことだった。乾のためなら九井はなりふりかまわずなんだってするのだ。ご丁寧に犯人は昨日づけで退職していた。今日イヌピーを誘拐するのは前々から計画していたことなのだろう。




4
乾が目を覚ますとそこはまったく知らない場所だった。薬品をかがされたからか頭がしっかりしてくれない。しっかりせねばならないのに。声を出せないから口に粘着テープかなにかをはられている。手も足も自由が効かない。おそらくしばられている。まわりを見ると、犯人の部屋らしくあまり物がないがらんとした部屋に自分は転がされているようだ。状況は把握できたがどうしようもできなさそうだ。乾は知らずため息をついた。
「目が覚めましたか?」
声をかけられそちらを見ると、信じたくなかったがいつも店に宅配と集荷をしてくれる男がいた。あまりしゃべらないが、真面目な仕事ぶりで乾はその男が嫌いではなかったのに。高校を卒業したばかりで一生懸命仕事してたじゃないかおまえ。なんでこんな馬鹿なことを。乾は悔しくてポロポロ涙が流れた。
「こわいですか?」
男が聞いてくる。そりゃこわいよ。でも俺はそれ以上に悲しいよ。
男が乾にのしかかりズボンに手をかける。Tシャツも乱暴にめくられ身体中をまさぐられなめられる。男の手はガサガサしていて力仕事をしている人間の手だと思った。こんな立派な手なのにこんな間違いを犯して。乾は九井以外と性的な接触をした経験がない。九井以外の人間に触られたりなめられたりすることに改めてものすごく恐怖を感じた。きっと男は九井のように優しくは扱ってくれない。きっと自分の思い通りにしかしないだろうから乾の尊厳も踏み躙られるだろう。だってこれは愛なんてないただの性暴力なのだから。乾は全てを諦めできるだけ心が傷つかないよう無になろうと目を閉じ身体の力を抜いた。

「イヌピー!!!!」
突如として聞き慣れたクソでかい声が聞こえ、たぶん玄関のドアか何かが破壊されるものすごい音がした。
「イヌピー!!クソてめぇイヌピー触ってんじゃねぇぶっ殺す!!」
男は九井に回し蹴りされて吹っ飛んでいった。
「イヌピー!!」
九井に抱きしめられ、嗅ぎ慣れた九井の香水と汗のにおいがして乾は心底安堵した。世界でいちばん好きなにおいだ。俺のカッコいい王子様が来たなぁと乾はうれしく思い、そして再び気を失った。





犯人を特定し、警察に通報したが間に合わねぇ!とサナダをどやしつけ法定速度ギリギリちょっとこえちゃったみたいな運転で、乾を助けるべく男の住まいに到着した九井は必死だった。火事場の馬鹿力とはこのこと。小柄ながら腕力に覚えのありすぎる今牛若狭と協力して男のアパートの玄関ドアを破壊した。間一髪だったと思う。男は乾にのしかかり乾を撫で回していたのだから。九井はあれほど血圧が上がったことなんて人生で一度もないと後に語る。上なんか200近かったんでは。死にそう。そして怒りにまかせヤンキー時代もかくやという回し蹴りで男をふっ飛ばした。乾は口を粘着テープでふさがれ手足を縛られて九井が丹精こめて手入れしている金髪はぐちゃぐちゃになっていたが、とにもかくにも無事だった。Tシャツはめくられしっちゃかめっちゃかだが最後の砦であるパンツははいたままだし貞操も無事であるらしい。なんというか、ぼろぼろにされた乾を目にするのは九井にとってとてつもない精神的苦痛だった。しかし、良かった…良かった…九井は助けが来て安心し再び気絶した乾を抱きしめたまま号泣した。無駄に声量のある九井のその号泣ぶりは1キロ先にもとどろくくらいのうるささで、一緒に来た佐野真一郎も今牛若狭もサナダもドン引きするレベルであった。そして、遅れてやって来た場慣れしている警察官たちでさえドン引きするレベルのすごい鳴き声であった。泣き声ではない。鳴き声。

犯人の男は20歳になる前で、逮捕はされたものの未成年ではないが特定少年扱いとなりきっと社会復帰できるのではないかということだった。九井はあんなヤツ死ねぇぇい!!と思っていたが、乾は更生してほしいと願っているので一件落着というところだろうか。
ストーカーに拉致られるという割とシリアスな局面に立たされた乾だったので、トラウマとか大丈夫だろうかと真一郎はじめまわりはものすごく心配したが、乾はあいかわらずマイペースに生きていた。乾よりもむしろ九井の心の傷のほうが深刻で一時期はあまり眠れず、夜中飛び起きて隣に乾がいないと過呼吸になり(乾はトイレに行っていただけ)メンタルクリニックに通うほどだったが徐々に回復してきている。昼間も頻繁に連絡がきて乾のほうが九井を案ずる状態だったが、キッズGPSを持たされることにより解決した。四角い小さな青色のそれはいかにも子ども子どもして恥ずかしいが、アプリで常に位置が把握できるしこれで九井の心が安定するのならと乾はバイクのキーにつけていつも持ち歩くようにしている。また、前にもまして九井のSNSに出るように要求されるのだが、それもSNSに乾が出ることによって九井が世の中に牽制しているらしいのでめんどうだけどなるべく言う通りにしている。まぁこんだけめんど……こわいカレシがいるって周知されてたらストーカーも逃げてくかもなと乾は思う。確かに九井はめんどくさい。でも、いつもはクールにキメてるのに必死に助けに来て回し蹴りしたココめちゃくちゃカッコよかったなと乾は少しニヤニヤしてしまうのだった。





九井は乾拉致事件以来不眠気味だったが、3ヶ月経ちようやくショックから立ち直ってきた。今日も乾にココ、暑いし苦しいと言われながらも全部無視して乾を抱きしめて眠った。
夜中、下半身がスースーするので九井は目が覚める。
「イヌ!!イヌ!!イヌピー!?」
何を思ったか、寝ている九井に乗っかった乾が九井の息子をいざ自分の尻穴に入れんとしているところであった。
「何!?何してるのイヌピー!?」
「だって。ココ。俺がストーカーに襲われそうになったから気をつかって抱かねぇだろ?俺はそんなヤワじゃねぇから。俺まだるっこしいのは嫌いだからな。寝込みを襲うことにした。」
「イヌピー……だって、男の人に触られたりしたらまだ怖いんじゃないかと思ってたから……」
「だからな。俺はそんなヤワな男じゃねぇ。」
「イヌピー!!ちょっ…そんな!!いきなり挿れたらおまえが痛いんだから!!」
乾はおかまいなしに九井のペニスの上にストンと腰をおろし飲み込んだ。
「大丈夫。自分で準備したから。あぁ…やっと俺の中にココが入った。待ちくたびれた。」
そう言って気持ち良さそうに乾が自分の腹をさするので、もはや九井は我慢などできそうにないのである。九井と乾は実に3ヶ月ぶりにセックスをした。仲の良いふたりにしては異例の長期空白期間であった。

「青宗今日ご機嫌だな〜」
気づかなかったが乾は鼻歌を歌いながら仕事をしていたらしい。真一郎に指摘され初めて気づいた。
「ふふ。昨日久しぶりにココとしたからかな。」
珍しくご機嫌に口を滑らす乾に真一郎は飲んでいたコーラをふき出した。
「それ……ゴホ……ワカとベンケイには絶対言うなよ……気絶するから。」
「わかった。ごめんね真一郎君。3ヶ月ぶりでうれしくてつい。」
「3ヶ月ぶり!?九井あの件から3ヶ月も我慢したってこと!?あの九井が!?」
「そんなココのことケダモノみたいに。意外とやさしいよココって。」
「アイツがやさしいのなんて青宗にだけだと思うぞ。」
真一郎はあの九井が乾を3ヶ月も気をつかって抱かなかったことに驚き、彼のことをだいぶ見直したのだった。
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