ep.05 2人は、初恋の人が今もヒトリでいることを願ってる
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名前の視界に映るのは、交互に踏み出す自分の左右の足と、どこにいっても現れる廊下のシミだけだった。
ちゃんとまっすぐ歩けているか自信がないけれど、隣にいる月島から指摘はされないから大丈夫なのだろう。
運動部の学生達の声が、窓の向こうから漏れ聞こえてくる。そろそろ彼らも午後の練習が始まるらしい。
きっと月島も早く体育館に戻りたいと考えているのだろう。
でも、足が重くて、早く歩けないのだ。
『もう先に行きますね。』
そう言って、早足で立ち去ってもいいのに、隣を歩いてくれる月島の優しさに胸が苦しくなる。
月島が塞いでくれた耳が、今もまだ痛い。
(あ…、やばい。泣きそう。)
瞳の上に張った幕が、涙になってとうとうこぼれ落ちそうだった。その時だった。
自分の足と廊下のシミしか見えなかった視界に、大きな足が入った。
あ、と思った時にはもう、目の前に現れた誰かの大きな手に手首を掴まれていた。
「月島くん、悪いけど、名前は俺に返してくんない?」
黒尾の声だった。
幻聴だーーーーそんなことを思う余裕すらなかった。
宇宙一力強い引力に惹き寄せられるように視線が上がる。
そこにいたのは、自分をじっと見据える黒尾だった。
頭が真っ白になる。そして、呼吸の仕方を忘れた。
涙が出そうだったし、この瞳に映し続けていたかったし、瞬きは出来なかった。
ただじっと、黒尾を見つめ返した。
気づいた時にはもう、隣にいたはずの月島はいなくなっていた。
ちゃんとまっすぐ歩けているか自信がないけれど、隣にいる月島から指摘はされないから大丈夫なのだろう。
運動部の学生達の声が、窓の向こうから漏れ聞こえてくる。そろそろ彼らも午後の練習が始まるらしい。
きっと月島も早く体育館に戻りたいと考えているのだろう。
でも、足が重くて、早く歩けないのだ。
『もう先に行きますね。』
そう言って、早足で立ち去ってもいいのに、隣を歩いてくれる月島の優しさに胸が苦しくなる。
月島が塞いでくれた耳が、今もまだ痛い。
(あ…、やばい。泣きそう。)
瞳の上に張った幕が、涙になってとうとうこぼれ落ちそうだった。その時だった。
自分の足と廊下のシミしか見えなかった視界に、大きな足が入った。
あ、と思った時にはもう、目の前に現れた誰かの大きな手に手首を掴まれていた。
「月島くん、悪いけど、名前は俺に返してくんない?」
黒尾の声だった。
幻聴だーーーーそんなことを思う余裕すらなかった。
宇宙一力強い引力に惹き寄せられるように視線が上がる。
そこにいたのは、自分をじっと見据える黒尾だった。
頭が真っ白になる。そして、呼吸の仕方を忘れた。
涙が出そうだったし、この瞳に映し続けていたかったし、瞬きは出来なかった。
ただじっと、黒尾を見つめ返した。
気づいた時にはもう、隣にいたはずの月島はいなくなっていた。