ep.25 君は僕の彼女じゃない
Name change
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行きの廊下では、あんなに「懐かしい」と楽しそうに喋っていた名前も、今では口を失くしたみたいにすっかり静かになってしまっていた。
ただただ黙って並んで歩く廊下はやけに長くて、月島は、どこにあるのかもよく覚えていない中庭に早く着くことを願った。
窓の外からは休憩を終えて運動場へ向かう部活着の生徒達の姿が見える。
時計がないから分からないが、きっと、バレー部の午後の練習もそろそろ始まるはずだ。
黒尾から隠れる為に足止めを食らったせいで、時間を無駄にしてしまった。
そんなことを考えていたからか、少し先の廊下の角を曲がってきたのは、今、月島が頭に浮かべていた黒尾だった。さっきまで一緒にいたはずの夜久は隣にいない。どこかで別行動になったようだ。
思わず立ち止まりそうになって、月島はチラリと名前の方を見た。
俯き加減で飽きもせず廊下のシミを数えている名前は、目の前からずんずんと歩いてやってくる黒尾に気づいていない。
ここで、名前の手を掴んで逃げたらどうなるのだろうーーーーーほんの一瞬、そんなことを考えたけれど、すぐにその案は却下した。逃げる理由なんて、少なくとも月島にはないはずだった。
月島は、無意識に踵を返そうとしてた足を床に押し付けて、なんとか踏ん張った。
それに、もしかしたら、俯いて歩く彼女が名前だと黒尾も気づかないで通り過ぎるかもしれない。
そんな僅かな期待は、数秒で打ち砕かれる。
ほんの一瞬、射抜くような鋭い視線を向けられて目が合った後、黒尾は名前に手を伸ばした。
「月島くん、悪いけど、名前は俺に返してくんない?」
何にそんなに焦ったのかは、分からない。
ただすごく驚いて、月島はバッと勢いよく黒尾の方を見た。
でも、黒尾は月島の方なんて全く見ていなかった。
ただまっすぐに名前を見ていて、名前もまたさっきまで俯いていた顔を上げて、大きな目を見開き黒尾を見つめ返していた。
「…どうぞ。」
それだけ言って、月島は彼らを残して体育館に急いだ。
どうして、黒尾は名前がここにいることに驚いていないのか。どうして、月島といることを不思議に思っている様子もないのか。
廊下を歩きながら、今更の疑問がいくつも浮かんできた。
でも、それ以上は考えなかった。
ただただ黙って並んで歩く廊下はやけに長くて、月島は、どこにあるのかもよく覚えていない中庭に早く着くことを願った。
窓の外からは休憩を終えて運動場へ向かう部活着の生徒達の姿が見える。
時計がないから分からないが、きっと、バレー部の午後の練習もそろそろ始まるはずだ。
黒尾から隠れる為に足止めを食らったせいで、時間を無駄にしてしまった。
そんなことを考えていたからか、少し先の廊下の角を曲がってきたのは、今、月島が頭に浮かべていた黒尾だった。さっきまで一緒にいたはずの夜久は隣にいない。どこかで別行動になったようだ。
思わず立ち止まりそうになって、月島はチラリと名前の方を見た。
俯き加減で飽きもせず廊下のシミを数えている名前は、目の前からずんずんと歩いてやってくる黒尾に気づいていない。
ここで、名前の手を掴んで逃げたらどうなるのだろうーーーーーほんの一瞬、そんなことを考えたけれど、すぐにその案は却下した。逃げる理由なんて、少なくとも月島にはないはずだった。
月島は、無意識に踵を返そうとしてた足を床に押し付けて、なんとか踏ん張った。
それに、もしかしたら、俯いて歩く彼女が名前だと黒尾も気づかないで通り過ぎるかもしれない。
そんな僅かな期待は、数秒で打ち砕かれる。
ほんの一瞬、射抜くような鋭い視線を向けられて目が合った後、黒尾は名前に手を伸ばした。
「月島くん、悪いけど、名前は俺に返してくんない?」
何にそんなに焦ったのかは、分からない。
ただすごく驚いて、月島はバッと勢いよく黒尾の方を見た。
でも、黒尾は月島の方なんて全く見ていなかった。
ただまっすぐに名前を見ていて、名前もまたさっきまで俯いていた顔を上げて、大きな目を見開き黒尾を見つめ返していた。
「…どうぞ。」
それだけ言って、月島は彼らを残して体育館に急いだ。
どうして、黒尾は名前がここにいることに驚いていないのか。どうして、月島といることを不思議に思っている様子もないのか。
廊下を歩きながら、今更の疑問がいくつも浮かんできた。
でも、それ以上は考えなかった。