ep.21 君の後輩のひとりごと(谷地ver)
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谷地は、てきぱきと働く名前を前にして、呆然としていた。
最初の説明を全く聞いていなかったけれど、その後のお喋りや部員達との会話から、彼女がバイトの休みの日だけマネージャーのお手伝いをしているのだということを知った。
もう何度も何度もお手伝いをしているのだろう。彼女の働きっぷりはもうベテランの域だ。
今まで、清水に教えてもらいつつも、谷地があたふたしながらしていた仕事を、名前は慣れたてつきでこなすし、部員や鵜養が困っているのに気づくと率先して動いて彼らを手助けしている。
でも、名前が一番、部員達に頼られているのは、そこではないようだった。
「名前さん!悪い、とれちまった!」
ほら、また来た———。
走ってやって来たのは、西谷だ。見てくれとばかりに突き出した右手は、テーピングが緩んで外れている。
「頑張ってる証拠!いいね!」
名前が笑顔で受け入れる。
彼女は東京の高校からの転校生なのだと、日向がこっそり教えてくれた。
思わず納得してしまったのは、彼女の雰囲気のせいだ。綺麗に整えられた眉も髪も、爪の先までも、すごく洗練されていて、都会的だなと思わせる。
しかも、すっごい美人だ。近寄りがたい雰囲気をヒシヒシと感じる。
でも、名前本人は、いつも柔らかい笑顔で微笑んでいて、明るくて、すごく親しみやすい。
だから、部員達は彼女に声をかけやすいのだと思う。
「はい、出来た!バッチリ!」
「おし!サンキューな!」
名前の笑顔に、西谷が親指を立てて笑う。
それからも、部員達は、テーピングが外れたとき、指や手首に痛みを感じたときなんかに彼女に声をかけていた。
しばらくして、試合形式の練習が始まった。
スコアは部員がやるということで、マネージャー任務の3人は束の間の休憩に入る。
体育館の端に3人並んで座って、試合の観戦だ。
体育の授業でのバレーしか見たことがなかった谷地にとって、迫力のある彼らのバレーはまさに『勝負』だった。
力強くて、それでいて丁寧で繊細で、思わず見入ってしまう。
試合も中盤に差し掛かった頃、谷地は、名前の膝の上に置かれているポーチに気が付いた。
所謂、普通のベージュのポーチだ。
派手な容姿だから、持っているものも派手なイメージだったから、すごく意外だった。
けれど、ワンポイントについている黒猫のイラストがとても可愛らしい。
「黒猫が好きなんですか?」
谷地が訊ねると、名前は一瞬、何のことかと不思議に思ったような顔をした。
でもすぐに、自分の膝の上のポーチに気付いたようだった。
「あぁ…!
——うん、すごく。すごく好きだったの。」
名前が、ポーチを手に持って言う。
その横顔がどこか悲しそうで、泣き出しそうで、でも、何故かすごく綺麗だと思った。
「今はもう好きじゃないの?」
そう訊ねたのは、清水だった。
谷地との会話が聞こえていたらしい。
「嫌いだよ。大好きすぎて、大っ嫌いなの。」
名前は困ったように笑っていた。
とても不思議な答えだった。
最初の説明を全く聞いていなかったけれど、その後のお喋りや部員達との会話から、彼女がバイトの休みの日だけマネージャーのお手伝いをしているのだということを知った。
もう何度も何度もお手伝いをしているのだろう。彼女の働きっぷりはもうベテランの域だ。
今まで、清水に教えてもらいつつも、谷地があたふたしながらしていた仕事を、名前は慣れたてつきでこなすし、部員や鵜養が困っているのに気づくと率先して動いて彼らを手助けしている。
でも、名前が一番、部員達に頼られているのは、そこではないようだった。
「名前さん!悪い、とれちまった!」
ほら、また来た———。
走ってやって来たのは、西谷だ。見てくれとばかりに突き出した右手は、テーピングが緩んで外れている。
「頑張ってる証拠!いいね!」
名前が笑顔で受け入れる。
彼女は東京の高校からの転校生なのだと、日向がこっそり教えてくれた。
思わず納得してしまったのは、彼女の雰囲気のせいだ。綺麗に整えられた眉も髪も、爪の先までも、すごく洗練されていて、都会的だなと思わせる。
しかも、すっごい美人だ。近寄りがたい雰囲気をヒシヒシと感じる。
でも、名前本人は、いつも柔らかい笑顔で微笑んでいて、明るくて、すごく親しみやすい。
だから、部員達は彼女に声をかけやすいのだと思う。
「はい、出来た!バッチリ!」
「おし!サンキューな!」
名前の笑顔に、西谷が親指を立てて笑う。
それからも、部員達は、テーピングが外れたとき、指や手首に痛みを感じたときなんかに彼女に声をかけていた。
しばらくして、試合形式の練習が始まった。
スコアは部員がやるということで、マネージャー任務の3人は束の間の休憩に入る。
体育館の端に3人並んで座って、試合の観戦だ。
体育の授業でのバレーしか見たことがなかった谷地にとって、迫力のある彼らのバレーはまさに『勝負』だった。
力強くて、それでいて丁寧で繊細で、思わず見入ってしまう。
試合も中盤に差し掛かった頃、谷地は、名前の膝の上に置かれているポーチに気が付いた。
所謂、普通のベージュのポーチだ。
派手な容姿だから、持っているものも派手なイメージだったから、すごく意外だった。
けれど、ワンポイントについている黒猫のイラストがとても可愛らしい。
「黒猫が好きなんですか?」
谷地が訊ねると、名前は一瞬、何のことかと不思議に思ったような顔をした。
でもすぐに、自分の膝の上のポーチに気付いたようだった。
「あぁ…!
——うん、すごく。すごく好きだったの。」
名前が、ポーチを手に持って言う。
その横顔がどこか悲しそうで、泣き出しそうで、でも、何故かすごく綺麗だと思った。
「今はもう好きじゃないの?」
そう訊ねたのは、清水だった。
谷地との会話が聞こえていたらしい。
「嫌いだよ。大好きすぎて、大っ嫌いなの。」
名前は困ったように笑っていた。
とても不思議な答えだった。