ep.06 君に彼氏はいなくて、猫が好き
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月曜日、今頃、青葉城西高校と白鳥沢学園高校のバレー部は決勝戦を争っている。
窓際の席の月島は、なんとなく外を眺める。
真剣に授業を受ける気にもなれず、教師の言葉は右から左へと流れた。
ただなんとなく時間だけが過ぎて、終わりを知らせるチャイムが鳴り、授業が終わる。
月島は席を立つと、すぐに教室を出た。
理由があるわけでもないし、あてがあるわけでもない。
ただ、じっと座っていたら、余計なことを考えてしまいそうだった。
クラスメイトや同級生達は、いつも通りの休み時間を過ごしている。
けれど、どうせ負けると分かっていたはずなのに、月島の心はざわついていた。
「日曜の青城のやつからさ~。」
廊下を歩いていた月島の耳に聞こえてきたのは、あまりにもタイムリーな学校名だった。
思わず声のした方を見ると、前に見た3年の陽キャ集団だ。今は女子生徒だけの4人でこちらに向かって歩いてくる。その真ん中に、今日も名前がいた。
「今日の放課後に遊ぼうって連絡来たんだけど。」
「え!あのめっちゃイケメンも来る!?」
「連れてくるって~。」
「やったー!」
「名前も来るよね?」
「あー、私はバイトだからいけないや~。残念だぁ。」
すれ違い様、盛り上がる女子生徒達の真ん中で、名前がまた下手くそな困り顔をしているのが見えた。
(あ~…アレか。)
アレが、名前がわざわざ放課後にバイトを入れている理由なのだろう。
平日しかシフトを入れていないと言っていたから、週末には彼女達の"狩り"に付き合わされているのかもしれない。
「いいじゃん、サボっちゃいなよ。」
「できないよ~。私がいなかったら、他の人達が困るし。」
「いい子ちゃんぶんなって。」
「えー、ぶってるんじゃなくて、私はいい子ちゃんなのー。」
「はいはい、いいから。授業中寝てるいい子ちゃんいないから。」
「名前を連れて来いって言われてんだよ~。
友達の為だと思って!ね!」
立ち止まった月島は振り返ると、すれ違って離れていく彼女達を視線で追いかけた。
彼女を取り囲む女子生徒達は、みんな両手を合わせてお願いポーズをしている。でも、他人から見ても『断るのは許さない』という強いプレッシャーを感じた。
「名字先輩!」
月島は少しだけ声を張り上げて、名前を呼んだ。
3年の陽キャ女子集団が立ち止まり、振り返る。
その真ん中にいる名前は、月島を見ると驚いた顔をした。
「さっき、3年の先生が探してました。
小テストのことで話があるって。すごく怒ってましたよ。」
「え!?」
名前は、もっと驚いた顔をした。
でも、少し考えるように視線を斜め上に向けた後、何かに気付いたようだった。
「ありがとう、後輩くん!
みんな、ごめんね!たぶん、今日の小テストも5点だったからだ!
ちょっと行ってくる!」
名前は早口でそう言うと、猛ダッシュで逃げるように去っていった。
相変わらず、逃げ足だけは速い人だ。今日は、一瞬躓きかけただけだった。
教室に戻って、授業が始まる頃、ミラクルヘッドショットからメッセージが届いた。
————————
ありがとう!
————————
月島の意図は、ちゃんと伝わっていたようだ。
鈍くさい名前だから、本気で信じて先生の所に行ってしまわないか心配だったが、問題なかったらしい。
————————
アドレスの名前、5点に改名しました。
————————
意地悪な返信をすれば、すぐに返事が返ってくる。
きっと、彼女は真剣に授業を受けていない。
————————
え!やだ、やめてよ!せめて7点にして!
————————
——5点と何が違うんだろう。
違いがよく分からなくて、月島は、誰にも分からないように小さく笑った。
窓際の席の月島は、なんとなく外を眺める。
真剣に授業を受ける気にもなれず、教師の言葉は右から左へと流れた。
ただなんとなく時間だけが過ぎて、終わりを知らせるチャイムが鳴り、授業が終わる。
月島は席を立つと、すぐに教室を出た。
理由があるわけでもないし、あてがあるわけでもない。
ただ、じっと座っていたら、余計なことを考えてしまいそうだった。
クラスメイトや同級生達は、いつも通りの休み時間を過ごしている。
けれど、どうせ負けると分かっていたはずなのに、月島の心はざわついていた。
「日曜の青城のやつからさ~。」
廊下を歩いていた月島の耳に聞こえてきたのは、あまりにもタイムリーな学校名だった。
思わず声のした方を見ると、前に見た3年の陽キャ集団だ。今は女子生徒だけの4人でこちらに向かって歩いてくる。その真ん中に、今日も名前がいた。
「今日の放課後に遊ぼうって連絡来たんだけど。」
「え!あのめっちゃイケメンも来る!?」
「連れてくるって~。」
「やったー!」
「名前も来るよね?」
「あー、私はバイトだからいけないや~。残念だぁ。」
すれ違い様、盛り上がる女子生徒達の真ん中で、名前がまた下手くそな困り顔をしているのが見えた。
(あ~…アレか。)
アレが、名前がわざわざ放課後にバイトを入れている理由なのだろう。
平日しかシフトを入れていないと言っていたから、週末には彼女達の"狩り"に付き合わされているのかもしれない。
「いいじゃん、サボっちゃいなよ。」
「できないよ~。私がいなかったら、他の人達が困るし。」
「いい子ちゃんぶんなって。」
「えー、ぶってるんじゃなくて、私はいい子ちゃんなのー。」
「はいはい、いいから。授業中寝てるいい子ちゃんいないから。」
「名前を連れて来いって言われてんだよ~。
友達の為だと思って!ね!」
立ち止まった月島は振り返ると、すれ違って離れていく彼女達を視線で追いかけた。
彼女を取り囲む女子生徒達は、みんな両手を合わせてお願いポーズをしている。でも、他人から見ても『断るのは許さない』という強いプレッシャーを感じた。
「名字先輩!」
月島は少しだけ声を張り上げて、名前を呼んだ。
3年の陽キャ女子集団が立ち止まり、振り返る。
その真ん中にいる名前は、月島を見ると驚いた顔をした。
「さっき、3年の先生が探してました。
小テストのことで話があるって。すごく怒ってましたよ。」
「え!?」
名前は、もっと驚いた顔をした。
でも、少し考えるように視線を斜め上に向けた後、何かに気付いたようだった。
「ありがとう、後輩くん!
みんな、ごめんね!たぶん、今日の小テストも5点だったからだ!
ちょっと行ってくる!」
名前は早口でそう言うと、猛ダッシュで逃げるように去っていった。
相変わらず、逃げ足だけは速い人だ。今日は、一瞬躓きかけただけだった。
教室に戻って、授業が始まる頃、ミラクルヘッドショットからメッセージが届いた。
————————
ありがとう!
————————
月島の意図は、ちゃんと伝わっていたようだ。
鈍くさい名前だから、本気で信じて先生の所に行ってしまわないか心配だったが、問題なかったらしい。
————————
アドレスの名前、5点に改名しました。
————————
意地悪な返信をすれば、すぐに返事が返ってくる。
きっと、彼女は真剣に授業を受けていない。
————————
え!やだ、やめてよ!せめて7点にして!
————————
——5点と何が違うんだろう。
違いがよく分からなくて、月島は、誰にも分からないように小さく笑った。