ep.04 何度目かの再会とトラブルメーカーの女子生徒
Name change
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翌日、月島は、烏野高校の校内で名前の姿を見つけた。
第二体育館の前で姿を見て以来、初めてのことだ。
いや、もしかしたら、今までもすれ違うことはあったのかもしれない。
今まではただの風景の一部だった彼女は、名前を知ったことで1人の人間として認識されるようになってしまったのだろう。
昼休みも終わりかけ、同じクラスの山口と一緒に午後一の授業の為に物理実験室へ向かっているときだった。
音楽室前の少し広めのスペースにあるベンチの辺りで、騒いでいる3年生の男女グループがいた。男子生徒3人、女子生徒4人、その中の1人が名前だった。
着崩した制服に不自然に明るい髪色、彼らが醸し出す独特のオーラ。所謂スクールカーストの最上位に位置するタイプの学生達だ。
つまり、月島が一番苦手とする部類のタイプとも言える。
男子生徒が何か喋ると、どっと笑いが起きて、彼らが楽しそうに笑う。その輪の中心にいながら、名前は1人だけ笑っていなかった。
いや、実際には、笑顔を見せてはいる。名前が誰よりも明るい笑い声を上げるから、冗談を言った男子生徒が嬉しくなって調子に乗ったくらいには、笑っていた。
でも、昨日、月島が見た名前とは違っていたのだ。
ショートケーキを食べていたとき、音駒高校バレー部のことを自慢していたとき、名前はもっと嬉しそうだった。楽しそうだった。
だからなのか、月島には、名前のその笑顔が笑顔に見えなかった。偽物とまでは言わないが、無理をしている———気がする。
名前にとって、そこまでしてでも一緒にいるだけの価値が、彼らにはあるのだろうか。
昔から、教室にはそういう同級生がいつもいた。相性が良くないと自分で分かっているのに、無理してその友人を繋ぎ留めようとするのだ。苦しそうだし、ツラそうだし、どう見たって楽しそうではない。それでも、彼らは、必死に笑う。
引きつった笑顔に気づいてもくれない友人に、無理をしても笑うだけの価値は、たぶんない。少なくとも、月島にとってはそうだ。
でも、名前や彼らにとっては、違うのだろうか。
不意に、名前が、月島の方を見た。気づかれてしまった。
名前が声をかけようとしていることに気付いて、月島はすぐに目を逸らした。
さっきから、周りの同級生達や他の上級生達が、名前の噂をしている声は聞こえていた。
そういえば、上級生にすごい美人がいるという話を聞いたことがある。どこかのクラスの男子が告白をして振られたという話を聞いたのは、つい1週間程前だったような気もする。
噂の中心である名前に声をかけられたりなんかしたら、面倒くさいことになるのは分かりきっていた。
「ねぇ、ツッキー。この前言ってたコンビニの美人な店員さんが…いた!!」
外廊下を渡り切って校舎に入ってすぐに、山口が興奮気味に言った。
「…へぇ。」
月島が短くそれだけしか答えたから、話題はそれ以上膨らむことはなかった。
第二体育館の前で姿を見て以来、初めてのことだ。
いや、もしかしたら、今までもすれ違うことはあったのかもしれない。
今まではただの風景の一部だった彼女は、名前を知ったことで1人の人間として認識されるようになってしまったのだろう。
昼休みも終わりかけ、同じクラスの山口と一緒に午後一の授業の為に物理実験室へ向かっているときだった。
音楽室前の少し広めのスペースにあるベンチの辺りで、騒いでいる3年生の男女グループがいた。男子生徒3人、女子生徒4人、その中の1人が名前だった。
着崩した制服に不自然に明るい髪色、彼らが醸し出す独特のオーラ。所謂スクールカーストの最上位に位置するタイプの学生達だ。
つまり、月島が一番苦手とする部類のタイプとも言える。
男子生徒が何か喋ると、どっと笑いが起きて、彼らが楽しそうに笑う。その輪の中心にいながら、名前は1人だけ笑っていなかった。
いや、実際には、笑顔を見せてはいる。名前が誰よりも明るい笑い声を上げるから、冗談を言った男子生徒が嬉しくなって調子に乗ったくらいには、笑っていた。
でも、昨日、月島が見た名前とは違っていたのだ。
ショートケーキを食べていたとき、音駒高校バレー部のことを自慢していたとき、名前はもっと嬉しそうだった。楽しそうだった。
だからなのか、月島には、名前のその笑顔が笑顔に見えなかった。偽物とまでは言わないが、無理をしている———気がする。
名前にとって、そこまでしてでも一緒にいるだけの価値が、彼らにはあるのだろうか。
昔から、教室にはそういう同級生がいつもいた。相性が良くないと自分で分かっているのに、無理してその友人を繋ぎ留めようとするのだ。苦しそうだし、ツラそうだし、どう見たって楽しそうではない。それでも、彼らは、必死に笑う。
引きつった笑顔に気づいてもくれない友人に、無理をしても笑うだけの価値は、たぶんない。少なくとも、月島にとってはそうだ。
でも、名前や彼らにとっては、違うのだろうか。
不意に、名前が、月島の方を見た。気づかれてしまった。
名前が声をかけようとしていることに気付いて、月島はすぐに目を逸らした。
さっきから、周りの同級生達や他の上級生達が、名前の噂をしている声は聞こえていた。
そういえば、上級生にすごい美人がいるという話を聞いたことがある。どこかのクラスの男子が告白をして振られたという話を聞いたのは、つい1週間程前だったような気もする。
噂の中心である名前に声をかけられたりなんかしたら、面倒くさいことになるのは分かりきっていた。
「ねぇ、ツッキー。この前言ってたコンビニの美人な店員さんが…いた!!」
外廊下を渡り切って校舎に入ってすぐに、山口が興奮気味に言った。
「…へぇ。」
月島が短くそれだけしか答えたから、話題はそれ以上膨らむことはなかった。