ep.01 バレーボールと鈍臭い女子生徒
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暖冬だと騒がれた今年、宮城も桜の開花が早かった。
そのせいか、4月の初旬頃には桜は散り始め、昨日の大雨ですっかり散り終えてしまった。
ここ、宮城県立烏野高校でも、散り終えた桜の花びらがまたひとつ、学生達の靴底の下でその色を黒く変えていく。
数日前に入学式も終え、晴れて烏野高校の生徒となった月島蛍は、靴箱から取り出したスニーカーに黒ずんだ桜の花びらが一枚はりついていることに気付き、眉を顰めた。
今朝、登校中にもたくさんの桜の花びらを踏み潰してきた。そのうちの一枚が、知らないうちに張り付いてしまったのだろう。
月島は、長い指で花びらを摘まみ上げると、適当に地面に投げ捨てた。
そして、スニーカーを履き校舎を出て、校門とは反対の方へと歩き始める。
「あれ?ツッキー、帰らないの?」
後ろから声をかけられて振り返る。
月島に声をかけてきたのは、小学校からの友人である山口忠だった。
同じ進学クラスの1年4組で、人間関係を築くのが苦手な月島にとって、貴重な友人の1人だ。
「先生に呼ばれてる。先に帰ってて。」
「え、そうなの?じゃあ、待ってるよ。」
「いい。いつ終わるか分かんないし。」
「そっか…、わかった。じゃあな!」
山口が校門へ向かったのを確認して、月島はすぐに校舎裏へと向かう。
足を進める度に、放課後の自由時間に心躍らせている学生たちの声は遠ざかり、代わりに運動部の熱のある掛け声が聞こえ始めてくる。
「いち、に!いち、に!」
月島のすぐそばを野球部員達が列を成して走り抜けていった。独特の圧を感じて、思わず端に避けた月島の隣を簡易ゴールネットを運ぶ数名のサッカー部員達が通り過ぎていく。
テニス部員達は、テニスラケットを片手に、談笑しながらのんびりとテニスコートへ向かっている。
運動部の生徒達の流れに逆らってさらに少し歩けば、第二体育館がある。第二体育館は、烏野高校バレー部専用の練習場になっている。そここそが、月島の目的の場所だった。
さっき、山口に嘘を吐いた。先生から呼ばれたから行くわけではない。
1年生は、部活希望の用紙を今日配られたばかりだった。小学生の頃からバレーを続けてきた月島は、高校に入ってからもバレー部に入部するつもりだ。
だから、入部前にバレー部の雰囲気を見に行くのだ。
いや、それだけなら、同じようにバレー部への入部を希望している山口と一緒に来ても良かった。
それでも、彼に嘘を吐いてまでひとりで来たのは、それだけじゃなかったからだ。
兄がバレーに心底打ち込んで、そして、心折られた場所を見ておきたかった。
そのせいか、4月の初旬頃には桜は散り始め、昨日の大雨ですっかり散り終えてしまった。
ここ、宮城県立烏野高校でも、散り終えた桜の花びらがまたひとつ、学生達の靴底の下でその色を黒く変えていく。
数日前に入学式も終え、晴れて烏野高校の生徒となった月島蛍は、靴箱から取り出したスニーカーに黒ずんだ桜の花びらが一枚はりついていることに気付き、眉を顰めた。
今朝、登校中にもたくさんの桜の花びらを踏み潰してきた。そのうちの一枚が、知らないうちに張り付いてしまったのだろう。
月島は、長い指で花びらを摘まみ上げると、適当に地面に投げ捨てた。
そして、スニーカーを履き校舎を出て、校門とは反対の方へと歩き始める。
「あれ?ツッキー、帰らないの?」
後ろから声をかけられて振り返る。
月島に声をかけてきたのは、小学校からの友人である山口忠だった。
同じ進学クラスの1年4組で、人間関係を築くのが苦手な月島にとって、貴重な友人の1人だ。
「先生に呼ばれてる。先に帰ってて。」
「え、そうなの?じゃあ、待ってるよ。」
「いい。いつ終わるか分かんないし。」
「そっか…、わかった。じゃあな!」
山口が校門へ向かったのを確認して、月島はすぐに校舎裏へと向かう。
足を進める度に、放課後の自由時間に心躍らせている学生たちの声は遠ざかり、代わりに運動部の熱のある掛け声が聞こえ始めてくる。
「いち、に!いち、に!」
月島のすぐそばを野球部員達が列を成して走り抜けていった。独特の圧を感じて、思わず端に避けた月島の隣を簡易ゴールネットを運ぶ数名のサッカー部員達が通り過ぎていく。
テニス部員達は、テニスラケットを片手に、談笑しながらのんびりとテニスコートへ向かっている。
運動部の生徒達の流れに逆らってさらに少し歩けば、第二体育館がある。第二体育館は、烏野高校バレー部専用の練習場になっている。そここそが、月島の目的の場所だった。
さっき、山口に嘘を吐いた。先生から呼ばれたから行くわけではない。
1年生は、部活希望の用紙を今日配られたばかりだった。小学生の頃からバレーを続けてきた月島は、高校に入ってからもバレー部に入部するつもりだ。
だから、入部前にバレー部の雰囲気を見に行くのだ。
いや、それだけなら、同じようにバレー部への入部を希望している山口と一緒に来ても良かった。
それでも、彼に嘘を吐いてまでひとりで来たのは、それだけじゃなかったからだ。
兄がバレーに心底打ち込んで、そして、心折られた場所を見ておきたかった。