むかーしむかし、あるところに、##IMGU61##酒呑童子泪(しゅてんどうじるい)という若者がいました。

酒呑童子泪は、誰もが惚れ惚れとするような美男子で、毎日毎日、彼に想いを寄せる女性たちから手紙の束が届くのでした。

好きです、結婚して下さい。

どの手紙にも同じような求婚の言葉ばかり書いてあるので、酒呑童子泪はもう手紙を開けようともしません。

届いた手紙はとりあえず大きな箱に入れ、そのまま放置しておりました。

そのうち箱がいっぱいになってしまったので、酒呑童子泪は、思い切って燃やしてしまおうと手紙に火をつけました。

その途端、白い煙が上がって、酒呑童子泪を包み込んだのです。

それは、手紙に込められた、女の人たちの思いが煙になったものでした。

煙に包まれているうちに酒呑童子泪の頭からは角が生え、まるで鬼のような姿に変わってしまいました。

##IMGU61##酒呑童子泪

うーむ、やっぱり女は面倒臭いなあ。

仕方ない、本物の鬼たちが棲んでいる大江山へでも行くか……。


そう言って酒呑童子泪は人里を離れ、大江山に着くと、あっという間に鬼たちの大将になったのです。

姿だけでなく中身もすっかり鬼になった酒呑童子泪は、京の都に出かけて酒や食べ物を盗むようになり、手下の鬼たちも今まで以上に悪行を重ねるようになりました。

それを知った帝は、##IMGU60##明智の綱(つな)という強い侍に酒呑童子泪の退治を命じました。

明智の綱が都の門へ行くと、酒呑童子泪が現れ、怪力で明智の綱をつかみあげました。

##IMGU61##酒呑童子泪

俺を退治に来るとは生意気な。

##IMGU60##明智の綱

とう！


鬼になった酒呑童子泪の怪力にもがきながらも、明智の綱は、泪の右腕を刀で切り落としました。

##IMGU61##酒呑童子泪

おのれ明智の綱……！


酒呑童子泪は、切られた腕を残して、大江山へと消えていきました。

明智の綱は切り落とした腕を屋敷へ持ち帰ると、石の箱に隠しました。


しかし数日後、明智の綱の屋敷に、片腕のおばあさんに化けた酒呑童子泪がやって来ました。

そして、優しい明智の綱を言葉巧みに騙すと、鬼の右腕を石の箱から取り出させたのです。

次の瞬間、その腕を素早く奪った酒呑童子泪は、本性を現して、切られた腕を元通り自分にくっつけてしまいました。


##IMGU61##酒呑童子泪

はっはっはっ、腕は返してもらったぞ！


腕を取り戻した酒呑童子泪はそう言い残すと、飛ぶ様にして大江山へ帰って行きました。

報告を聞いた帝は、次に、##IMGU60##明智の綱と四人の強者##IMGU62####IMGU63####IMGU64####IMGU65##を呼んで、大江山の鬼退治を命じました。

五人の侍は策略をめぐらし、不思議なお酒を使って鬼たちの身体を痺れさせ、酒呑童子泪の首を切り落とす事に成功したのでした。

ところが酒呑童子泪の首は空中を飛んで、くるっと向きを変えたかと思うと、明智の綱たちに叫んだのです。

##IMGU61##酒呑童子泪

今回は俺の負けだが、いつか必ず仕返しをしてやるぞ！


そして酒呑童子泪の首は、空高くに消えていきました。


その後、明智の綱たちは大江山に残っていた鬼たちを退治して、京の都に平和をもたらしたのです。

こうして、酒呑童子泪は無事に逃げおおせ、このお話はめでたしめでたしと終わるのでした。

##IMGU60##明智の綱

まさかの鬼サイド。