##IMGU64##如月

可愛い唇だね。

##IMGLU83##翼

きゃあっ？！


その時！


##IMGU65##小野瀬

おやぁ、ベッキーちゃん。

お客様との距離が近すぎないかい？

当店はお触り禁止、そう言ったのはきみだと思うけど？

##IMGU64##如月

あ、小野瀬さん！

いや、これはその……

##IMGU65##小野瀬

きみも、困るなあ。

ベッキーちゃんを誘惑しないでもらえるかな？

##IMGLU83##翼

私、誘惑だなんて……！

##IMGU65##小野瀬

ベッキーちゃんは俺が贔屓にしている男の娘だよ。

泥棒猫のような真似をする子には、きちんとしつけをしてあげなきゃいけないよね？

##IMGLU83##翼

あっ……

##IMGU64##如月

お、小野瀬さん！

翼ちゃんをどこへ連れていくつもりですか？！

##IMGU65##小野瀬

言ったろう？

しつけをしてあげるんだよ。

じゃあね。

##IMGU64##如月

翼ちゃん！


突然現れた謎の男、小野瀬に連れられて着いたのは、明るい大通りのタクシー乗り場。

##IMGU65##小野瀬

さあ、ここまで来れば大丈夫だろう。

一人で帰れるね？

##IMGLU83##翼

はい。

あの……、ありがとうございました。

あなたはいったい、誰なのです？

どうして、助けてくださったの？

##IMGU65##小野瀬

俺は、小野瀬。

不本意だけど『この世界では知らない者がいないと言われる伝説のホストで、街全体に情報網を持っている、夜の帝王』だよ。

きみを助けたのは、ある男に頼まれていたからだ。

##IMGLU83##翼

『ある男』？

##IMGU65##小野瀬

さあ、タクシーが来た。

きみは、平和な家庭にお帰り。

世の中には、知らない方がいいこともあるんだよ。


腑に落ちないまま、翼はタクシーに乗った。

小野瀬の言う通りだ。

誠臣の待つ家に帰ろう。

そして、今まで通り、何も知らない妻として、優しい誠臣と暮らすのだ……

☆☆☆

世田谷へ向かう翼を乗せたタクシーを見送っていたのは、小野瀬だけではなかったが、翼はもちろん、それには気付かなかった……。