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冬の楽しみといえば。

2014/11/21 22:02
##IMGU75##

俺の冬の楽しみは、実家に帰っての正月だ。


俺、藤守慶史は、この国の正義を守るため、一年中昼夜を問わず身を粉にして働いている。

毎日が真実を追い求める戦いの日々である俺にとって、年末は一年間の戦いの集大成であり、巨大な通過点でもあるのだ。

驚異的で卓越した能力によって仕事納めまでに全ての案件の処理を終えると、俺はようやく公僕の身を離れて大阪行きの新幹線に飛び乗り、実家に帰る。

だが、藤守家の長男たるもの、いかに疲労困憊であろうと、どれほど困難であろうと、逃げる事は許されない。

「ただいま」の「ま」まで言わないうちに繰り出される、速射砲のような母親の「お兄ちゃん頼むわ」攻撃。

神棚の掃除や仏壇の掃除や電球の交換に始まり、模様替えやら買い出しやら暮れの挨拶まわりやら。

それが終わると今度は神棚へのお供えやら仏壇へのお供えやら正月飾りやらお御節料理の準備やら新年の挨拶まわりやら。

我が母ながら目の回るような人使いの荒さだが、年末年始の主婦に逆らってはならない。

そして隙あらば逃げようとする父親からも目を離してはならない。

ようやく年越しソバを食べ紅白とゆく年くる年を観る頃になって、愚弟がのんきに「ただいまやでー」なんて帰って来やがるからぶん殴ってやろうかと思うがぐっと堪え。

でかい身体でコタツに割り込んで来るから追い出してやろうかと思うが、愚弟のまとう外の空気と身体の冷たさに「阿呆は阿呆なりにコイツも大変なのだな」などとつい仏心を出してしまい。

窮屈だろうとそっと横にずれてやったりしていると年が明けて、母親がお屠蘇など用意してくる。

「明けましておめでとう」「今年もよろしく」と家族でもこの時ばかりは殊勝な挨拶を交わしていると、愚弟が必ず「アニキお年玉くれや」などと言い出して、毎年毎年正月早々から兄弟喧嘩をするはめになるのだ。


だが、正月にコタツでミカンを食いながら、つけっぱなしのテレビや年賀状など眺める時のあの平穏さは何にもかえがたい。

全ての国民がこの平穏を享受出来るようにと祈りつつ、俺は、隣で寝てしまった愚弟に綿入れ半纏をかけてやったりするのだ。


今年も年末がやって来るな。
追記
名前:ジュン
本文:慶史さん、こんばんは。

私はここ数年、子供は実家のジジババのところで旦那は仕事。正月は一人で過ごすものです(涙)

だから賢史くんについて藤守家で過ごせるなんて幸せです。
年末の準備お手伝いしますね。
うたた寝しちゃった賢史くんに半纏をかける役目は是非私に!

名前:藤守慶史
本文:
ジュンは正月一人なのか。

そういう過ごし方もあるが、涙を流すぐらいなら愚弟と一緒に大阪に来て、藤守家で年を越せ。

賑やかな方がうちの両親も喜ぶからな。

俺も歓迎するし、もちろん愚弟もだろう。


半纏でも布団でも頭から熱湯でも、好きなだけかけてやってくれ。

名前:泉
本文:え、アニこっち来るんですか?
来ても良いですけど、うちの愛犬に襲われても助けませんからねー。

名前:藤守慶史
本文:
愛犬は繋いどけや!

名前:泉
本文:室内犬をどこに繋げと⁉︎

名前:藤守慶史
本文:
泉は止めるどころか犬をけしかけそうで怖い。

名前:泉
本文:え、当然じゃないですかー。

安心してください、私も襲われるんで。

名前:藤守慶史
本文:
あーなるほど、

そら助けられんわなー、って、オイ!


だから繋いどけや!

名前:泉
本文:大丈夫大丈夫。
相手は体重1.5Kgのポメラニアンですから。
乗っかられても余裕で退かせます。

名前:藤守慶史
本文:
あー、なるほど。

1.5㎏なら乗っかられてもすぐどかせるわな……じゃない!

……

…………

………………俺は、正月ぐらいお前と二人きりで寛ぎたいのだ!

分かってるくせに茶化しやがって。

しかも、俺とした事が、そんなお前が可愛くて仕方ないのだ。


もう末期だな。

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