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二人でお月見・藤守~番外編『満月にほえろ!』より~

2015/09/23 08:14
捜査室でお月見の話が出た日の終業後。

声をかけてきたのは、藤守さんだった……。



藤守さんが連れて行ってくれたのは、オフィス街の地下にある、隠れ家のようなイタリアンレストラン。

ネクタイ着用などのドレスコードは無いそうだけど、仕事着ではちょっと気後れするような雰囲気だった。

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『夏の間、どこへも連れてってやれへんかったし。

だってほら、ボーナスもろてもどこも行かんかったら使いようがないやん?』

 藤守さんは冗談めかして言うけれど、平日の仕事帰りにこんな贅沢をしてしまっていいのかと不安になる。

##IMGU62##

『ええねん。

俺はお前の喜ぶ顔が見たいんやもん。

いいから食べよ』

 ハーフボトルのシャンパン、薔薇のような生ハム。

 オマールに子羊肉のグリル……。

 ためらいながらもひと通り食事を終え、ドルチェとエスプレッソを待つ間、藤守さんはおもむろにカバンから何かを取り出した。

 差し出されたのは、ブルーの小箱に白いリボンがかかった細長い包みだった。

 包装紙を見ただけで判る、独特のブルー。

##IMGU62##

『開けてみて』

 言われて、そっとリボンをほどくと、入っていたのはシルバーのオープンハートにピンクサファイアらしい小さな宝石が施されたネックレスだった。

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『これは……どうして?』

 突然のことに首を傾げて訊ねる。

 すると藤守さんは照れくさそうに口を開いた。

##IMGU62##

「俺らの仕事って、日曜も連休も無いやん。

俺は好きな仕事やからええけど、こんな男と付き合うてるせいで、お前が、同じ年頃の他の女の子と同じような楽しみを味わえないんが申し訳なくてな。

……まあ、そんなプレゼントひとつで、お前の夏が戻って来るわけないけど」

##IMGLU83##

「藤守さんたら……私も同じ仕事をしてるんだから、藤守さんの立場も気持ちも分かるし、それを不満に思った事なんてないですよ」

##IMGU62##

「ホンマはな、俺だってお前とお出掛けしたいねん。二人でいたいねん。お前だけいてくれたらそれでええねん」

##IMGLU83##

「藤守さん……」

##IMGU62##

「お月見の話だって、本当はお前とふたりきりがええねん。

なっ、そうしよ。

十五夜いうても、実際は満月やないねん。

みんなとの月見の話になったら、それで押し通して逃げ切ろうや」

##IMGLU83##

「はい」

##IMGU62##

「よっしゃ。

俺、とびっきりのスペシャルコース考えとくから!」

 そう言って差し出された藤守さんの小指に、私は小指を絡ませた……

*****

捜査室メンバーでの夜回り当日。

私は明智さん、小笠原さんとペアを組んで、台東区と墨田区をまたぐ地域一帯を回ることになった。

浅草寺や花やしき、国技館などがある下町だ。

ところが、いざ現場に到着したものの、(例によって)小笠原さんが車から降りたがらない。

どうしよう。

私は困ってしまったけれど、さすがに明智さんは慣れている。

無駄な説得はしない。

明智
「小笠原、パソコン持って来ているな?」

これには小笠原さんの方が驚いたよう。

小笠原
「はい」

小笠原さんはナナコを膝に乗せた。

明智
『それならお前はここで、事件の発生率を調べろ』

小笠原
「……」

明智
『つまり、事件が起きそうもないところをパトロールしても意味はない。

そこで過去の事例から、特に危険地域だと特定できる場所を重点的にパトロールする』

 小笠原さんの指が、明智さんの言葉を受けて高速で動いた。

小笠原
『……出ました。隅田川の河川敷です』

 (小笠原さんが緊張して敬語になってるのが可笑しい)

明智
『隅田川の?』

小笠原
『はい。過去に何件ものトラブルが報告されています。他の地域と比べても比較になりません』

 小笠原さんは他にもいくつかポイントを挙げ、明智さんは頷いた。

明智
「よし、櫻井、行こう」


「はい」

 ところが、張り切って出発したにも関わらず、小笠原さんの指示した辺りの河川敷は、街灯と周囲のビルからの明かりで、暗いというよりうっすら明るい。

 しかも、夜九時過ぎなのにジョギングする人たちが行き交い、犬の散歩をする人もいる。

塾帰りらしい子供たちの姿さえあるし、そもそも、水上バス乗り場や屋形船の船着き場などがあって、なかなか賑やかなのだ。

明智
「……」


「……」

明智
「……か、河川敷といっても広いからな。

もう少し別のところに行ってみよう」


「……そうですね」

 続いて明智さんが向かったのは、少し下がった場所にある公園。

 確かに街灯の光が届かず、そちこちに薄暗がりが出来ている。

明智
『いかにも何か起きそうな雰囲気だな』

 顔をしかめた明智さんとともに、公園に足を踏み入れる。

 そこにぼんやりと浮かんだのは、二つの影が寄り添う姿だった。

明智
『ん?これは……』


「もしかして、カップル……」

 一組ではない。

 気づけば周囲は寄り添うカップルだらけ。

 ほとんど取り囲まれていると言ってもいい状況だった。

明智
『こ……これは軽犯罪法違反にならないのか!?』


『明智さん、声が大きいです……』

 愛を確かめ合う方々のまん中で声を上げてしまった明智さんに、一斉に視線が突き刺さった……気がした。


明智
『小笠原!お前が調べたデータは本当に正しいのか!?』

 車に戻った明智さんの怒号と共に、その夜の見回りは終わったのだった……。

*****
藤守
「夏の間、どこにも連れてってやれへんかったしな。

せめて、都内のホテルでゆっくりすんのもええかなって」

 そういう藤守さんが連れてきてくれたのは、新宿公園近くの超高層ホテル。


「だけどこんな超一流の……」

 言いかけた私を遮って、藤守さんがにこりと笑う。

藤守
『こないだもいうたやろ?俺はお前が喜んでくれるのが嬉しいねん。

気に入ってくれるとええねんけどな』

全52階建のホテルで、藤守さんがチェックインしたのは最上階にほど近い50階の部屋だった。

藤守
『下の階にはプールやジャグジーもあるみたいや。後で一緒に行こか?

せっかくやからサウナとか……あ!エステルームもあるって。ほなお前、行ってきたらええやん』

備え付けのカタログを見ながら藤守さんがあれこれ勧めてくれるけれど、ここは日本で最高ランクという噂のホテルだ。

宿泊代がどれほどするかを考えると、私は、藤守さんが私のために無理をしてくれているのではないかと心配になる。


「ねえ藤守さん、

ルームサービスを頼みませんか?

その方が、豪華なグリルよりものんびりできるし、ここからだって充分、お月様は見えますよ」

 ほら、と窓から外を見れば、さっき見上げたはずの都庁舎が輝きながら目の前にたたずんでいて、満月がほとんど真正面に見える。

 その景色は、予想以上に圧巻だった。

 言葉を失ったまま立ち尽くす私の肩を、藤守さんが後ろから抱き締めてくれる。

 私はその腕にそっと頬を寄せた。


『……私、賢史くんが気にしてること、ぜんぜん気にしてませんから。

どこへも行かなくたって、賢史くんと一緒にいられるならそれでいいんです』

藤守
『……ほな、今夜はずっとここにいよ』

 居心地のいい部屋。くつろげる食事。

 目の前には藤守さんがいて、その向こうには信じられないほど綺麗な夜景が広がっている。

 周りにあるものすべてが心地よかった。


(ここにいるのは藤守さんと私だけ……)

 天空に浮かんだカプセルのような部屋で、私たちは光の渦に包まれる。

 そんな私の胸元では、銀色のオープンハートが夜景にも負けない輝きを放っていた。


~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
賢史くん、賢史くん、賢史くーん。ガバッ←抱きついた

賢史くんはやっぱり彼女を大事にしてくれるよね。

なんでもないときのプレゼントとか憧れちゃう。

でも、賢史くんとなら賢史くんの部屋で手料理つくって二人で過ごすのも充分幸せだと思うな。

ところで、やっぱり小笠原さんは車から出ないのね(^^;

名前:藤守&明智
本文:
藤守
「ジューン!」ぎゅうううっ(←抱き締めた)

「お前も翼も平凡でいい、無理しないでいい言うてくれるけどなー。

好きな相手には常に何かしらしてやりたいし、自分の力で喜ばせて、相手の笑顔を見たいねん。

金を使って物を買う事ばかりが正しいとは思うてへんけど、俺なんか、毎日不安で仕方ないねん」


「お気持ちは嬉しいんですけど……

そのあたりは、男女で感覚が違うのかも知れませんね」

明智
「小笠原はブレないよな……」

名前:澪
本文:こんばんは。

小春さん、今回の番外編も本当にありがとうございます!
とっても楽しく読ませていただきました。
全員のお話を楽しみにしています(^∇^)

藤守さん優しいですねえ。
男女とも好きな相手といられたらそれだけで嬉しいはずだと思いますし、不安なんて感じることなくお付き合いできたらベストなのかもしれませんけど…

でも、自分といない時間にまで自分のことを考えて、時間を割いてくれたっていうのは本当に嬉しいですよね(((o(*゚▽゚*)o)))

それにしても、隅田川の河川敷は一体(笑)
小笠原さんの情報が間違うなんてことはなさそうですし、、翼ちゃんも明智さんもお疲れ様でした(笑)

名前:藤守&翼&小春
本文:小春
「澪さん、応援ありがとうございます。

幸いまだどこからもお叱りが来ないので、引き続きこっそりご紹介していきたいと思っております」


「澪さん、こんばんは。

藤守さんは、本当に心根が優しいですよね。

澪さんがおっしゃる通りです。

離れていても自分の事を考えてくれているの、嬉しいですよね。

でも、女は、本当に好きな相手にはお金を使わせたくないのに。

男の人は逆みたいですね」

藤守
「……ん?(意味を考えている)……」


明智
「それにしても、少し位置がズレただけで河川敷の状況があんなに違うとは……そして、夜の公園があんな事になっているとは……」

名前:せつな
本文:こんばんは♪

男の子は、見栄はってみたいし、女の子にかっこつけてみたいのよねw

賢史君の頑張りがカワイイと思ってしまうワタクシ・・・イカン母みたいorz

翼cが、かえってハラハラしちゃってるのが、またカワイイ(∩´∀`)∩

賢史君は、得意のバイクとかでカッコイイとこ見せればいいと思うよー!

でも、ここで、小野瀬さんっぽいシュチュエーション使っちゃって、お月見小野瀬さん√はどんな展開になるんでしょう?

楽しみです(≧▽≦)


明智さんが、小笠原さんに『小笠原!お前が調べたデータは本当に正しいのか!?』って怒号を浴びせるシーンがツボりましたb

名前:如月公平
本文:
如月
「せつなさん、順番でいうと次は俺でごめんね……」

藤守
「き、如月!

元気出せや、お前にも需要あるから!なっ!」

如月
「いいんです藤守さん。

俺だって分かってるんです。

番外編の小野瀬さんはもれなくエロいけどどうせ俺なんて」

藤守
「(……まあ、エロくはないわな……)」

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