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二人でお月見・小野瀬~番外編「満月にほえろ!」より~

2015/09/25 08:05
捜査室を出てエレベーターを待っていた私に、声をかけてきたのは小野瀬さんだった。


##IMGU65##

「一緒に帰ろうか」

 まだ定時を過ぎたばかりなのに、小野瀬さんに誘われて、一緒に帰れるなんて、奇跡のよう。

小野瀬
『そんな顔しないで欲しいな。下で待ってて?』

 もう一度、くすっと笑って小野瀬さんは鑑識室へと歩いて行く。

 何となくまだ信じられなくて、呆然としながらエレベーターの前に立った。

##IMGLU83##

(あ、ボタン……/////)

 なかなか開かない扉に気づいて、私は慌ててボタンを押した。


小野瀬
『こんなに早く帰れるのは久しぶりだからね。部屋で一緒に映画でも見て、のんびりしよう』

 という小野瀬さんの提案で、おうちデートをすることになった。


 二人でレンタルショップに寄ってDVDを借り、スーパーに寄って、食材を選ぶ。


「何か食べたいものありますか?」

小野瀬
「きみが作ってくれるものなら何でもいいよ」


「そんなぁ~。何か考えて下さい」

小野瀬
「じゃあ翼」


「もう、真面目に聞いてるのに!」

小野瀬
「ねえ、こうしてると俺たち、新婚夫婦みたいに見えるかな?」

 そんなたわいない会話がたまらなく楽しい。

 赤面させられながら買い物を済ませ、小野瀬さんの部屋に帰って、作ったお料理をテーブルに並べた。

 スティック野菜をガーリックソースで食べるバーニャカウダ、生春巻き、お魚のフリッター、サイコロステーキ。


『映画を見ながら食べやすいようにフィンガーフードにしてみたんですけど』

小野瀬
『本当だ。全部片手で食べられそうだね。もう片方の手はずっと翼を抱きしめていられる』


「え?」

 聞き直した私の声は聞こえないふりで、小野瀬さんがにっこりと笑った。

 小野瀬さんが借りてきたDVDは、まず狼男。

 それから、満月の夜に主人公たちがみんな発情して大変身するロマンチックコメディ。

小野瀬
「月の満ち引きは人体に大きく影響するからね。

女性なら判ると思うけど……。

心身に変調を来して、発情したり、殺人を犯したり。

その様子を昔の人は『狼に変身する』って例えたのかもしれない。

神秘的だよね。

……ねえ……満月の夜は、ふたりで月を見ようよ。

もしかしたら、俺も、狼になっちゃうかもしれないけど」

 冗談めかして言った小野瀬さんが、最後のDVDを手に取った。

 ティファニーで朝食を。

 古典的なラブストーリーだ。

小野瀬
『翼、もっとこっちにおいでよ』

 肩を抱かれて、ぎゅっと引き寄せられる。

 そのまま小野瀬さんの肩にもたれた。

 くしゃくしゃと髪を撫でられる。

 頭の上でやわらかく微笑む気配がした。

小野瀬
『こうやってきみといると、俺……満月の夜まで待てないかも』

 言葉と共に、小野瀬さんの指先が顎に触れた。

 そっと目を閉じるとやわらかく唇をふさがれて、身体ごと抱きしめられた。

 ヘプバーンが歌うムーン・リヴァー。

 囁くような歌声を聴きながら、私たちは何度もキスをした。

 小野瀬さんの優しい腕に抱かれたまま、夜がゆっくりと更けて行った……。
 
*****

捜査室での夜回り当日。

私は室長と如月さんと一緒に、渋谷駅周辺を回ることになった。

穂積
『如月!さっきの報告書、まるでなってなかったわよ!

今から書き直して見回りに間に合うのッ!?』

 ……出発前の捜査室から、不穏な空気は流れ始めていた。


「(室長、何であんなに機嫌が悪いんだろう……どうか見回りが無事に終わりますように……)」


 如月さんが運転する車が渋谷に到着し、車を降りた途端、室長の眉間には深々と皺が寄った。


「やっぱり未成年が多いですね」

夏はとっくに終わったというのに、夜の渋谷には今なお制服姿の高校生たちがゾロゾロと歩いているのだ。

穂積
「櫻井、今何時?」


「え……と、20時10分です」

穂積
「あのガキども、22時過ぎたら、見てらっしゃい。

忘れられない思い出を作ってあげるわ」

 キリキリと眉を寄せた室長は般若の形相だ。


(こ……恐いよぅ……)

 私は室長の神経を逆なでしないようシャキッと背筋を伸ばし、細心の注意を払って大通りを歩く。

 それなのに……。

如月
『あ!ここ、雑誌に出てたお店だ!』

如月
『翼ちゃん知ってる?ここっておいしいって評判で、よく雑誌やネットで取り上げられてるんだよね!』


(……如月さん……!)

如月
『それに、あそこの店もすっごい人気でさ。なかなか予約が取れないんだって!』

 シャボン玉のような緊張感を、如月さんは見事なくらいに粉砕してゆく。

穂積
『うるさい!如月っ!いい加減にしなさいっ!』

 どかーんッ!!

 ついに、室長のイライラが爆発した。

穂積
『何なのアンタは!余計なことばっかり喋ってんじゃないわよッ!』

 声を上げた室長を、如月さんはキョトンとした表情で見つめている。

如月
『そういえば室長……喉、渇いてません?

何か買ってきましょうか?』

穂積
『そういう問題じゃないの!

同僚を名前のちゃんづけで呼ぶんじゃないっ!

大体アンタはそういうところから自覚が足りないのよっ!』

 如月さんを怒鳴りつけた室長はキッとして私に向き直った。

穂積
『櫻井っ!』


「はっはいっ!」

穂積
『アンタもそこでボーッと見てるんじゃないわよっ!

……まったくどいつもこいつもいい加減にしてよねっ!』

 室長がツカツカと歩き出す。

如月
『翼ちゃん……今日の室長、何かおかしくない?』

 荒れ狂う室長の様子に、ようやく、如月さんが、私にそっと耳打ちしてきた。

 地獄耳の室長が振り返る。

穂積
『うるさいわねっ!どうもしないわよ。ちょっと親知らずが痛いだけよ!』


(……え?親知らず?)

如月
『歯……ですか?』

穂積
『そうよ。歯よ!歯が痛いのよ』

如月
『ああ、だからそんなに……』

穂積
「そんなに?そんなにどうしたっていうの?歯が痛いくらいで私は変わらないわよ!」


(本人はこれで変わってないつもりなんだ……)


「でもどう見ても……」

穂積
「どう見ても、何?!」

 手がつけられない。

 私と如月さんは果てしない緊張感に包まれたまま、不機嫌MAXな室長との夜回りを終えたのだった……

*****


約束の、満月の夜。


「本当によかったんですか?」

改めて訊ねると、小野瀬さんは疲れた顔をしながらも、ふんわりと笑ってくれる。

小野瀬
「もちろんだよ、約束だからね」

小野瀬さんと待ち合わせをしたのは、桜田門からほど近く、呼ばれたらすぐに戻れる、日比谷公園。

前回の逢瀬の後、急激に事件が増加して、小野瀬さんはずっと連勤が続いていた。

雑木林を透かして見える夜空には黄金色の月が浮かんでいて、ここが都会の真ん中だということを忘れてしまう。

ふと、闇に慣れてきた目であたりを見回すと、周りにも何組かカップルがいるのが判った。

小野瀬
「みんな満月に誘われて来たのかな?」


「あの、でも小野瀬さん、あれ……」

そこには、キス以上に進んでしまいそうなカップルが。


「……軽犯罪法違反になるんじゃ……」

言いかけた私の頬を、小野瀬さんが両手で挟む。

小野瀬
「今夜くらいは目をつぶろう。俺だけを見て」

小野瀬さんの顔がそっと近づいて来て、優しくキスされた。

そのまま胸に抱き寄せられる。

私たちは芝生に腰を下ろした。

ふたりで空を見上げ、ぽつりぽつりと言葉を交わす。

小野瀬
「寝そべって月を見るなら、膝枕してあげようか?」


「え、そ、そんな」

小野瀬
「じゃあ、きみがしてくれる?」


「はい。

……小野瀬さん、髪が伸びましたね」

小野瀬
「きみの指、気持ちいいな。そうされると……何だか眠くなってくる」

目を閉じたままの小野瀬さんが、口元だけで薄く微笑んだ。

小野瀬
「翼、もう少しそのままでいて」


「……はい」

短く返事をすると、小野瀬さんは私の膝の上で気持ちよさそうに寝返りを打った。

小野瀬
「……翼、キスしようよ」

心もち顎を上げた小野瀬さんに、かがみ込んでそっとキスをした。

小野瀬
「…………ん」

下からの伸びてきた手が、私の首をぐっと引き寄せる。

小野瀬
「翼、もっと」


「あ……あの……」

小野瀬
「……いいから」

口づけの合間に囁かれて、何度もキスをくり返した。

私の首を引き寄せる小野瀬さんの手のひらから愛しさと温もりを感じる。

小野瀬
「狼男になりたいけど……今夜はやっぱりなれそうにないな」


「……え?」

私の首に回されていた腕からふっと力が抜け、ぱさりと芝生の上に落ちた。


(小野瀬さん……?)

小野瀬
「月齢に由来するバイオリズムは……現実的な欲求には負ける、らしい……」

何かを伝えようとしているのかもしれないけれど、小野瀬さんの意識はもうまどろみの中にあった。

小野瀬
「自然周期による生殖行動……だが食欲と睡眠欲は……」

言葉が途切れ途切れになって、やがてかすかな寝息が聞こえてくる。


(小野瀬さん、やっぱり疲れてたんだ……

それなのに、ふたりで過ごす時間を作ってくれたなんて……)

あと少し、時間が許してくれる限り、このまま小野瀬さんを寝かせてあげよう。

小野瀬さんの手が、無意識に私を探す。

私はその手のひらに手を滑り込ませて、そっと握った。

安らかな寝息を立てている小野瀬さんの横顔を、月の光が優しく照らしていた……。



~終わり~
追記
名前:澪
本文:こんにちは。

やっぱり小野瀬さん素敵(〃∇〃) ♪

エレベーターのボタンを押し忘れてしまうほどびっくりする翼ちゃんも可愛いし、
スーパーでの会話も聞いてるこっちまで幸せすぎるし、
激務の間を縫って約束を守る小野瀬さんにも、
そんな小野瀬さんが安らげる存在の翼ちゃんにも、
もうたくさん幸せをもらいすぎてニヤニヤが…(笑)

寝ている時の手が…っていいですよね。
本当に無意識だと思うし、嬉しくなっちゃう。
そして膝枕からのキス…似合いすぎます(〃∇〃)

親知らずが痛くて不機嫌な室長と、空気をなぜか読んでくれない?如月さんと組むなんて翼ちゃんも、
連勤続きの小野瀬さんも大変ですけど、
素敵なお月見ができてよかったですねえ。

小春さん、ありがとうございました♪(´ε` )

名前:小野瀬葵&穂積&小春&翼
本文:
小野瀬
「澪さん、こんにちは。

読んでくれてありがとう。

きみを幸せに出来たなら嬉しいよ」

穂積
「文字数いっぱいまでエピソードを詰め込んだ甲斐があったわね、小春」

小春
「明日の室長も詰め込みますよ」


「室長、その前に歯医者さんに行ってくださいね……」

名前:せつな
本文:小野瀬さんだわ(≧▽≦)ノシ こんにちは♪

澪さん、モチロン、ワタクシも楽しみにしてましたとも!!ウフフフ
こーちゃん、ごめんなさいねー(*´ω`*)


どんなデートになるのかなーwってワクワクしてたら、小野瀬さんはお忙しくって疲れてて寝ちゃうパターンだったのね(´・ω・`)アララ

ワタクシが、唯ニ持ってる番外編『GW』と同じ=3
どんなオオカミさんになってくれるのかと楽しみにしてたのになー(ノД`)・゜・。


・・・でも、おかげで?改めて気付きました!!
小野瀬さんの番外編の魅力って、
会話の端々に、色気を含んだセリフがいっぱい出てきて、さりげなく大人のスキンシップをやってくださる所なんですよ( *´艸`)

だって、いちいちエロいんですもの(*ノωノ)イヤン←結局小野瀬さんならおkらしい


しかーーし!!

翼ちゃんが、『映画を見ながら食べやすいようにフィンガーフードにしてみたんですけど』
って言ったあとの小野瀬さんのお返事で、

『本当だ。全部片手で食べられそうだね。もう片方の手はずっと小春を抱きしめていられる』

小春師匠、ズルーーイ!!ヽ(#`Д´)ノ ムキー!!

なんで、どうして、ワタクシじゃないの???←いや、そうじゃなく

単に間違いwなんでしょうが、ハッΣ(゚Д゚)もしかして、小春さんの室長FANはポーズ??
是非、アオイスト仲間に(。-`ω-)カミングアウトお待ちしてます!


PS.親知らずの痛みには負けちゃう室長が、可愛かったわ(≧▽≦)b

名前:ジュン
本文:
小野瀬さん、こんにちは。

いや~、もう小野瀬さんはエロいですね!

お家デート、公園デートなのに色気がたっぷり。

「俺だけを見て」が最高でした。

小野瀬さんの声で囁かれたら腰砕けになっちゃう。

しかし、無敵の室長がまさかの歯が痛いだなんて。

室長も人の子だったんですねぇ。

名前:小春&穂積&明智&JS&小野瀬
本文:
小春
「あら、さっき気付いて隠し……直したはずだったのに、すでにせつなチェックが入っていたとは(笑)」

穂積
「小春、お前隠れアオイストだったのか」

明智
「聞き捨てならないな」

JS
「詳しくご説明願いましょうか」

小野瀬
「きみたち、小春さんを責めるのは筋違いだよ」

小春
「いやーんモテモテ」

穂積
「調子に乗るな」

小春
「せつなさん、番外編の楽しみ方が分かってきました?

ほとんど金太郎飴ですけど、使い回しのバリエーションとか、本編には無い設定とか、二次書き的には結構オイシイですよね。

明日はまた小野瀬さんと夜回り、そして、お相手は室長でーす」

名前:小野瀬葵
本文:
ジュンさん、こんにちは。

俺、番外編ではお色気担当だからね。

穂積の歯痛も、可愛いでしょ。

あいつ虫歯なんか無さそうで、歯医者なんて無縁そうなんだけどね。

さすがに親知らずには勝てないか。

でも、生えてしまったらもうケロリとしていたよ。

名前:澪
本文:せつなさん、そうなんですよねー(((o(>▽<)o)))

小野瀬さんってただ歩いてるだけでも、いえ、もはやそこにいるだけでフェロモン撒き散らしてますから。
オオカミさんにならなくても、たっぷり色気にやられてしまって結局大満足(〃∇〃) (小野瀬さんなら何でもやられるアオイストあるある)

そして、そこ、突っ込んじゃいましたか(笑)
続く翼ちゃんの言葉が「え?」だったので、実は一瞬小野瀬さんが間違えて違う女の子の名前を呼んで修羅場が…って展開が頭を過ぎりました、すみません(笑)
そんなわけないですね( ̄∇ ̄*)ゞわかってますよ。

室長は予算の許可が出ず怒り、親知らずが痛くて怒り、と怒り続きですけど、室長編ではどうなるんでしょうか?
小野瀬さんとの夜回り含め、小春さん、明日も楽しみにしてまーすv(^_^v)♪

名前:小春&翼&小野瀬
本文:
小春
「ああ、澪さんにもチェックされていたなんて。

さすがアオイスト。

そして、うっかり翼ちゃんとの三角関係に発展するところだったなんて私としたことが」


「小春ちゃん、ニヤニヤしない」

小野瀬
「せつなさん、澪さん、俺と小春さんは掲示板以外では何にもないから安心して」


小春
「掲示板といえば、雑談スレッドに澪さんがネズミーシーの報告をUPしてくれましたよ。

アオイスト&帝王ファン必見です!

澪さんありがとう♪」

名前:冬子
本文:
こんばんは~

にやにやしながら読んじゃった。

ムーン・リヴァー ですか。さすがかっこいいですねー

We’re after the same rainbow’s end

小野瀬さんと同じ虹の終わりに行ったら、そこにはなにがあるのでしょうね。


そしてこーちゃん。爆笑

本当はこーちゃんこそ怖いものなんてないんじゃないでしょうか。


小野瀬さ~ん、健康第一ですよ。

翼ちゃんのためにも、ゆっくり眠ってくださいねー

名前:小野瀬&如月
本文:小野瀬
「冬子さん、こんばんは。

虹の根元にあるのは、金の壺だという言い伝えが昔から……ああいや、失礼。

きっと、きみと一緒に虹の端まで行けたら、その先には二人の未来が続いているんだよ、うん」

如月
「冬子ちゃん、室長との見回りの件だけど、俺、悪くないよね?!」

小野瀬
「如月くん、しー。

悪魔に聞こえるよ……」

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