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二人でお月見・穂積~番外編『満月にほえろ!』より~

2015/09/26 08:00

『翼』

 終業後、帰りかけていた私に声をかけてきたのは、室長だった。

##IMGU61##

『今日のお前の予定は?』

##IMGLU83##

『え?……と、特にありませんが』

穂積
『そうか。それなら今から俺の部屋に行って待っていろ。会議が終わったらすぐに帰る。戻ったら食事にでも行こう』


「は、はい」

 署の中でこれほど堂々と言われるのは初めてで、嬉しいというか何というか。

穂積
「鍵はいつものところにある。今日はちゃんと服を着て待ってるように」


(……ひ、人に聞かれたら、いつもはどんな格好で待っているのかと思われちゃう!……)

 そんな私の動揺をよそに、室長はさっさと会議に行ってしまった。


一足先に帰りついた室長のお部屋は、相変わらず以上の惨状。

室長は外食と言ってたけど、たまには夕食を作ってあげようと思って買い物をしてきた、その荷物を置く場所も無い散らかりようだ。

急いで片付け掃除をして、夕食を作っていると、室長が帰ってきた。

穂積
「ただいま……お前、何してるんだ?」


「お帰りなさい。あの、今日、捜査室で話していた、夏バテに効くメニューを作ってみました」

穂積
『そうか……いい心がけだな。今のうちからいろいろ慣れておけ』


「いろいろ?」

穂積
「俺は風呂に入ってくる」

 室長が浴室に消えた後、私は自分の行動と室長の言葉の意味を振り返り、それが結婚を意識したものだと気付いて…一人で真っ赤になった。


穂積
「うん、うまい」

 豚しゃぶのサラダ、薄切り肉の肉巻き、余ったえのきを明太子和えにしたもの、温めたお豆腐で作った温やっこ。

 室長はいつも美味い美味いと言いながら食べてくれるから、とても嬉しい。


「室長も夏バテしてますか?」

穂積
『夏バテは平気だが、あっちの方が少しな。お前、そう思わないか?』


「……え?…えっと、そのぅ……」

穂積
「本気で考えるな。冗談だ」


「真顔で下ネタはやめてください!」

穂積
「ヘラヘラしながらの方が余計に卑猥だろ」


「……」

穂積
「夏バテの心配はいいが、他のやつに手料理なんか作ってやるなよ。

みんなで月見、なんて言ってたようだがそれも却下だ。

どうしてみんなでやる必要がある?

お前は俺のものだ」


「あの……今日の泪さん、独占欲を隠そうともしないというか、発言が過激というか……」

穂積
『俺はいつも通りだ。そんな事を言うお前の方が興奮してるんじゃないのか?』


「そんな……」

穂積
『満月の夜には発情する男女が増えるって、どこかの偉い博士の論説がある。

もっとも、街灯がない時代、満月の明るい夜に夜這いに出た奴が多かった、というだけの話かも知れんが』


「(身も蓋もない……)」

穂積
「だがその説に従えば、満月に近い今夜、お前がいつもよりエモーショナルになったとしても俺は気にしない。

むしろ望むところだ」

 室長は私の顔を真っ直ぐに見つめてニヤリと笑う。

穂積
「今日は泊まって行くんだろう?

眠らせないから、そのつもりでいろ」

 その時、室長の背後にオオカミ男のシルエットが見えた気がした……。

*****

 夜回り最終日。

 一緒に組んで六本木の繁華街を夜回りするのが小野瀬さんと明智さんだと聞いて、私は何となく胸騒ぎがした。


「翼、小野瀬さんと明智さんと夜回りですって!?」

「いいなぁ~私と代わってよ」

「ダメよ、私が代わるの!」

「じゃあ公平にくじ引きしましょ!」


「あ、あの、ちょっと待って……」

 ……つまり、明智さんと小野瀬さんという、警視庁きってのイケメンで、女性の憧れである二人が揃ってしまったのが問題なのだ。

 おかげで、私はその後も、行く先々で婦警たちから同様の訴えを受ける羽目になった。

「翼ってばずる~い!」

「なんでそんなに平然としていられるわけ?」

「こっそり代わってくれない?」


(パトロール前からこんな騒ぎになるなんて……。

当日は無事に終わってくれればいいんだけど)

 けれども、私の不安は、見事に的中してしまうのだった。


小野瀬
「さあ明智くん、行こうか」

明智
「はい。よろしくお願いします」

当日、現場に到着してふたりが車を降りた途端、周囲の空気がざわめいたのが判った。

女性A
「これからどちらへ行かれるんですか?」

女性B
「お店を探してるならご案内しますけど?」

明智
「いや、結構」

小野瀬
「お店を探してるわけじゃないんだ。ごめんね」

六本木の大通りを歩き始めた私たち……厳密に言えば小野瀬さんと明智さん……には、道行く女性たちから次々と声がかかった。

客引きのホステスさんたちはもちろん、OLのお姉さんや、まだ若い女性。

クラブのママさん風のマダムの「いい男だからタダで飲ませてあげるわよ」というお誘い、性別不詳のおネエさんたちからの「うちの店で働かない?」という勧誘。

ありとあらゆる女性たちから声がかかる。

二人は丁寧かつ真面目にサラリとかわしてゆくけれど、女性たちは諦めない。

「お仕事でしたら終わるまで待ってます」、「後で待ち合わせをしましょ♪」、「連絡先教えてください!」

明智
「……参ったな」

小野瀬
「だけど善良な市民を邪険に扱う訳にもいかないし」

そうは言うものの、数m歩くごとに声をかけられ、後ろをぞろぞろついて来られては、時間内に予定していた地域を廻れないどころか、犯罪の防止や抑制にもならないのでは……。


「あ、あの、こちらはお二人にお任せして、私は別のルートをパトロールします!」

小野瀬
「えっ?」

明智
「おい!」

私は一目散にその場を離れた。

振り返ってみれば、明智さんと小野瀬さんは、完全に女性たちに囲まれて、身動きが取れなくなってしまっている。


(お二人とも、すみません!)

私はひそかに両手を合わせた……。


その後も結局、みんなでのお月見プランは進まなかった。

藤守
「お月見したいんやけど、なーんかタイミングが合わへんっていうか」

如月
「オレも急に仕事が増えた気がするんですよね~」

明智
「俺もしばらく出張に出ることになるらしい」


(これってもしかして……)

穂積
『みんなで月見などする必要はない。俺は翼さえいればいいのであって、他のやつらに用はなーい!』


そこに室長の暗黙のプレッシャーがあったと感じたのは私だけだっただろうか……。

*****

二人でお月見をしようと言われ、待ち合わせに指定されたのは、浦安に一番近い駅。

挨拶もそこそこにタクシーに乗せられ、着いたのは、だだっ広い、グラウンドのような空き地。

室長に手を引かれて、空き地にぽつりと建つ建物の中に入った私は、息を飲んだ。

そこはなんと、ヘリポートの待合室だった。


「ヘリコプター!?」

穂積
『そうだ。空から月を見る。どうだ、名案だろう』


「本当にヘリに乗れるんですか?!」

穂積
『ああ。夏の間、どこへも連れて行ってやれなかったからな。

たまにはこんなのもいいだろう?』


「はい!」

私は頷く。

胸の底からあふれてくる笑顔を抑えることができない。

室長はクスっと笑ってもう一度、私の手を取った。

陽が落ちて、あたりが暗闇に包まれる頃、私たちを乗せたヘリコプターはふわりと空へ舞い上がった。

穂積
「……ろ、翼!」


「何ですか?よく聞こえませーん!」

ガタガタと揺れる機内。

室長の声も聞こえないほどの轟音。

少し不安になって、しっかりと室長の手を握ったのも束の間。

上空に上がると音も遠のき、徐々に夜景が見えてくる。


「わあ!泪さん、見て!すぐ下にテーマパークが!

あっちには大きな観覧車!

見て見て!レインボーブリッジ!」

私ははしゃいで、光り輝く大きな橋を指差す。


「すごい……きれい……」

穂積
「気に入ったか?」


「はい!とても!」

満足そうに微笑む私とは裏腹に、室長はどこか落ち着かない様子だった。


(あれ?室長、どうかしたのかな?)

「泪さん?」

穂積
「あ、いや……何でもない。気にするな」


「…………」

ぽつりと漏らした言葉で、私は、室長は実は高いところがあまり得意ではないのかもしれないということを悟った。


(……それなのに私のために?)

夜景の美しさに、室長の優しさも重なって、私は本当に泣きそうになる。

穂積
「どうした?」


「何でもないです」

小さく答えて、室長の手をしっかりと握った。室長も同じくらいの力で握り返してくれる。


「……泪さん、ありがとう」

耳元に口を寄せて、その頬にそっとキスをした。

穂積
「言ったはずだ。今日は特別だと」

そうつぶやいた室長の肩越しには、見たこともないような見事な月が浮かんでいた。



穂積
「さあ、タクシーに乗れ。もう一度、都内に戻るぞ」


「え?」

ヘリコプターを降りたら、室長はまた私をタクシーに乗せる。

穂積
「夕食がまだだろう?滝の流れるイタリア料理のダイニングを予約しだ。地中海風のコースだ」

さりげなく言った室長が付け加える。

穂積
「ホテルも取ってある。こんな夜だからな」


「こんな夜って……」

穂積
「アメリカ人医師の当てにならない論説を信じるなら、今夜のエナジーは最高潮らしい」


(泪さんったら、ヘリの中ではあんなに静かだったのに……)


「忘れられない夜になりました」

穂積
「もっと忘れられなくしてやる」

ふふん、と笑った室長の肩に頬を寄せる。

そして私たちはバックミラーから隠れるようにして、そっとキスをした。


~終わり~
追記
名前:冬子
本文:
おはようございまーす。

室長ったらヘリコプター乗れたの?

それともほんとはイヤだけど、翼ちゃんのためにエンヤコラなの?

それで、その後に滝の流れるイタリア料理のダイニングに行ったのね。

具合悪くならなかった?

ホテルをとったのは正解だったわね。

室長のお部屋じゃ落ち着かないもんね。掃除洗濯が気になって。


それにしても、小野瀬さんと明智さんで夜回りって女性に対する影響力がすごいのねー。

冬子だって、後ついて行っちゃうかもしれないわー

名前:穂積泪
本文:
穂積
「俺は1stでも観覧車に乗っているし、苦手なものは「家事、特に掃除」だとプロフィールに書いてある。

だから、特別、高いところが苦手なわけではないはずだ。

だがしかし、ヘリコプターに関しては、翼の為にでもなければ、好んで乗りたい乗り物でないのは確かだ。

これはおそらく、ジジイが幼い俺にトラウマを植え付けたに違いない。

12歳の時に遊覧飛行だと騙されてスカイダイビングさせられたのが原因か、それとも……」

小野瀬
「……穂積、部屋の隅で壁に向かって、一人で何を言い訳してるの……?」

名前:ジュン
本文:
室長、こんにちは。

きのうの小野瀬さんも充分エロかったですけど、室長はその上をいきますね!

いつものこと?確かに。

室長は小型機が苦手だったと思いますけど、ヘリコプターは大丈夫なんですか?

あれって足元まで窓で怖いって聞いたことあるんですけど、機種によるのかな?

それにしても、翼ちゃんを喜ばすためにそれぞれ工夫して、捜査室のみんなは最高の恋人ですね。

名前:穂積泪
本文:
穂積
「『小野瀬の上を行くエロさ』とか失礼だろ」

小野瀬
「失礼なのはお前だよ。

穂積が乗ったヘリが気になるお嬢さんは、『浦安 遊覧ヘリ』とかで検索すればすぐ出るから調べてみてね。

それにしても、高い料金を払って苦手な乗り物に乗ってまで彼女を喜ばせるなんて、やっぱり愛してるんだねえ」

穂積
「まあ、大事なところで寝落ちしちまうお前よりはな」



小春
「こらこら、そこのイケメン二人!

Twitter部屋で取っ組み合いのケンカをするのはやめなさーい!」

名前:エミ
本文:
壁|ω´*)←くんずほぐれつの二人を眺めてご満悦♪

ハプニングでちゅーとかしちゃえばいいのに(笑)


室長と小野瀬さん、タイプは違えどエロいことに変わりはないです。

名前:澪
本文:こんばんは。

室長とのお月見はヘリからですか!贅沢。
翼ちゃんのために苦手なものも我慢しちゃう室長も、
そんな室長に素直に甘える翼ちゃんも。
かっわいい~~~(〃∇〃)
室長のこの翼ちゃんへの溺愛っぷりが愛しい!!

室長はこのリアルにありそう(で、現実には決してない)なシチュエーションや会話が良いんだよねぇと再確認。
小野瀬さんはファンタジーさが良さですけど♪(´ε` )

明智さんと小野瀬さんで夜回りとはまた豪華。
小野瀬さんは翼ちゃんに置いていかれっぱなしですね(T ^ T)
二人がどう見回りを終えたのか気になります。

けど、、それより、

壁|ω´*)ω ` *)きゃー♪カメラカメラ!

名前:穂積&小野瀬
本文:
穂積
「こらエミ!俺とこいつを『どっちもエロい』で一括りにするな!!」

小野瀬
「そうだよ。悪いけど俺、こんな愛娘溺愛キャラじゃないから!」

穂積
「俺だってこんなスカシた恋愛ファンタジスタじゃねえ!」

小野瀬
「家事能力ゼロのダメ男!」

穂積
「その通りだがお前には言われたくねえよ、半ナシゴレン男!」

小春
「ケンカはやめてくださいったら!

何ですか『半ナシゴレン男』って」

穂積
「こいつがナシゴレン炒めると、完成までに半分がフライパンから外に飛び出す」

小野瀬
「それでも、まだ、食べられる部分が半分残るだけ穂積よりましだよ」

小春
(否定しないんだ……)

小野瀬
「穂積の作るカレーなんて、コーヒー顆粒や殻のついた生のエビが入ってて、とても人間の食べ物じゃない」

穂積
「さすがの俺もあれは食えなかった」

小春
(それも否定しないんだ……)


穂積・小野瀬
「「とにかく俺はこいつほどエロくない!!」」

エミ
「はい、ツーショットいただきました」


「私も」

小春
「エミさん、澪さん……」

名前:小野瀬&穂積
本文:
小野瀬
「澪さん、こんばんは。

櫻井さんは、俺と明智くんが大勢の女性たちにまとわりつかれて立ち往生していた時、頭の中に穂積が現れて、

『あんた達、一体どういうつもり?見回りに出て何をやってるの!?』

って怒鳴られたんだって。

それで現場から逃げたって……

まあ、事情を聞けば気持ちは分かるけどね。

でも、ひどいなあ。

ああ、ひどいのは穂積だよ?

シフトを組んだ時点でああなることは分かってたはずなのに。

いよいよ困って電話をかけても、『モテる男はツラいわよねえ』で終わりだったんだよ?

なんで助けに来てくれないの?」

穂積
「明智はともかく、アンタは、女に囲まれるのなんて慣れてるでしょ」

小野瀬
「確かに慣れてるけどね。

穂積に助けに来て欲しかったんだよ」

穂積
「その状況でおカマが助けに来るってどんな色男なのよ」

小野瀬
「冷血おネエ」

穂積
「誰のせいでおネエやってると思ってんのよ、この♯▲∴$‰★◆!」

小野瀬
「俺は♯▲∴$‰★◆じゃないよ、※£●∬■▼★なのは穂積だろ!!」


小春
「だからケンカはやめなさーい!」

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