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初めてのクリスマス*番外編『幸福のジングルベル』より~小野瀬編~

2015/12/11 14:30

##IMGLU83##
「失礼します…」

ノックをして鑑識室へ入ると、そこには小野瀬さんひとり。

何かを調べているらしく、顕微鏡の中を覗き込んでは、ノートに書き込んでいた。


「(相変わらず忙しそう。年末だしね……)

真剣な顔の作業に声を掛けあぐねて入り口で立ち尽くしていると、やがて、小野瀬さんが顔を上げた。

##IMGU65##
「声を掛けてくれればいいのに」


「お邪魔しちゃいけないと思って」

おいで、と手招きされ、私は小野瀬さんの傍へ寄った。

小野瀬
「もう少し待っててくれる? これが終わったら、夕飯食べよう」


「うん」

小野瀬
「きみは、大和撫子だね」


「大和撫子?」

小野瀬
「日本女性のあるべき姿。おしとやかで、落ち着いていて……自分よりも相手を優先させる」


「私は、そんな出来た女性じゃないよ」

小野瀬
「俺にはそう見えるよ。だから、あの捜査室メンバーもきみには気を許してるんじゃないかな」


「そうかな?」

小野瀬
「そうだよ。小笠原くんが、他人と会話出来るようになった。穂積だって、少しは優しくなった」


「……あれで?」

小野瀬
「あれで」

小野瀬さんが笑うので、私もつい笑ってしまう。

小野瀬
「俺も、きみに会って変わったな。すごく、小さい男になった」


「え? それってダメじゃない?」

小野瀬
「うん、ダメな男になったよ。きみの事が好きすぎて。小さなことで嫉妬したり、君の言動ひとつで感情が左右される。こうして離れてる間なんて、不安で仕方ないんだよ」

小野瀬さんは顔を上げると、私の腰に手を回し、そっと引き寄せてきた。

小野瀬
「いっその事、俺という鳥かごに、きみを閉じ込めてしまいたいよ」


「あ、あの……冗談、だよね?」

小野瀬
「冗談だと思うの?」


「あっ……」

小野瀬さんはそのまま、私の唇を塞いだ。

身体がとろけてしまいそうな熱いキスに、頭がぼんやりしてくる。

小野瀬
「ほら、今も。我慢しようと思ってたんだよ。だけど……」

口端に笑みを浮かべながら、私の唇を舌で舐めあげた。

小野瀬
「きみが可愛いから、イタズラしたくなるよ」

唇が、ゆっくりと首筋に滑り落ちてくる。

その感触で身体が震え、甘い痺れに包み込まれた。

ドキドキが加速していく。

……どうしよう……気持ちいい……

小野瀬
「…でも、この続きは俺の部屋で、にしよう。こんなムードの無い所じゃ悪いし、お腹も空いたでしょ」

そう言うと小野瀬さんは笑って、私を離してくれた。

小野瀬
「今年は、二人で過ごす初めてのクリスマスだね」


「クリスマス、一緒にいられるの?」

小野瀬
「うーん。一緒にいたいけど……」


「仕事なんでしょ、仕方ないよ」

小野瀬さんは申し訳なさそうに目を伏せて、頬にキスをくれた。

小野瀬
「でも、少しだけなら、抜け出すことも出来るかも。せっかくのクリスマスなんだ、俺だってきみに会いたい」


「私も、葵に会いたい」

小野瀬
「じゃあ、クリスマスの日は予定空けておいて。絶対に他の予定を入れちゃダメだよ」


*****

クリスマスイブの朝、私は遅い時間に起きて、部屋の中でぼんやりしていた。


(小野瀬さん、やっぱり忙しいんだろうな……)

会いたくて胸が張り裂けそうな私の耳に、ケータイの着信音が聞こえてきた。


(小野瀬さん!)

慌ててケータイを掴み、通話ボタンを押す。

小野瀬
『今、平気かな?少し時間が取れそうなんだ。だから、会えないかなと思って』


「はい!すぐ行きます」

小野瀬さんが待ち合わせに指定したのは、大きなクリスマスツリーの前。

小野瀬
「お待たせ。さ、行こうか」


「え?どこへですか?だって、小野瀬さん、お仕事抜けて来てくれたのに…」

小野瀬
「大丈夫」

不思議に思いながらも手を引かれるままに付いていくと、小野瀬さんが連れてきてくれたのは…。


「プラネタリウム…」

小野瀬
「来たかったんだよね?きみの言葉は、一言一句すべて覚えてるよ。ここが季節限定で、今しか見れないこともね」


「葵……」

小野瀬
「ほら、行こう」

まさか、プラネタリウムでのんびり出来るなんて。

夢のような時間を過ごして外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

時間を使わせてしまった事を謝ると、小野瀬さんは、少しばつの悪そうな顔をする。

小野瀬
「あー……うん。そうだね、そろそろ種明かしをしようか」


「?」

小野瀬
「実は俺、今日休みなんだよ」


「……え?」

小野瀬
「約束しておいて、急にダメになったなんて嫌でしょ?だから、ギリギリまで仕事をこなして、今日は休んで、どうやら呼び出しも無さそうだと思ったから、きみを呼び出した」


「そうだったんだ…じゃあ、ずっと一緒なんだね…!」

小野瀬
「ああ。今日はずっときみの傍にいるよ」

その時だった。

クリスマスツリーの前で見つめ合う私たちの前に、何かが落ちてきた。


「え……?」

小野瀬
「これ……雪だよ」


「ホワイトクリスマスだね」

小野瀬
「サンタなら、もうここにいるよ。ほら」

小野瀬さんの指先に落ちた雪が次の瞬間には、小さな一輪の花になって……。

最後は、綺麗な靴になった。

小野瀬
「きみへの、クリスマスプレゼント」


「こんなに素敵なもの、もらっていいんですか?」

小野瀬
「ああ。サイズも合うと思うよ」

一体いつ調べたんだろう。そんな疑問が消し飛ぶくらい、すごく嬉しい。

小野瀬
「あとで靴を履き替えようね。俺が手伝ってあげるよ」


「え? そ、そんな」

小野瀬
「いいんだよ。俺が、その靴を履いたきみを見たいだけだからね。いっそ、今すぐここで履き替える?」

言いながらしゃがみこむ小野瀬さんを、慌てて立ち上がらせる。


「い、今はいいですから」

小野瀬
「そう。なら、後でじっくりと……ね」


「うう、恥ずかしいよ」

小野瀬
「恥ずかしい? 違うでしょ。今から、気持ちいいことするんだからね」

小野瀬さんは私の髪を払いながら、そっと耳元で囁いた。


「え!?」

小野瀬
「けどその前に、夕飯」


「もう……」

小野瀬
「さあ、行こう」


「うん」

私たちは手を握り、雪の降る道を、歩いていった。

~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
小野瀬さん、こんにちは。

小野瀬さんはマジシャンみたいですね。

行きたかったところに連れていってくれて、雪をプレゼントに変えてくれて。

すごく素敵です。

実はお休みだったっていうのも嬉しいですよね。

小野瀬さんとのクリスマスはとってもロマンティックですね。

名前:冬子
本文:
こんばんは~

昨日は『むひょひょ』

今日は『うっはー』な

冬子です

何が『うっはー』なのかって?

もーう桃色な気配にニヤニヤな感じです。

世界中のみんなが素敵なクリスマスを過ごせたらいいな……

と、思った冬子ですが、世界中が桃色ピンクになってしまったら嬉しいような困るような……

名前:澪
本文:こんばんは。

もう素敵すぎて言葉になりません(* ´ д ` *)

小野瀬さんが自分の気持ちをストレートに言葉にしてくれて、

がっかりさせないように頑張って仕事を調整してくれて、

行きたいと言ってたプラネタリウムに連れてってくれて、

忙しいなか素敵な靴まで用意してくれてるなんて…

小野瀬さんと一緒なら特別何もなくても幸せでしょうけど

こんなクリスマス幸せすぎて溜息しか出ません(* ´ д ` *)

名前:Twitterこたつ部屋
本文:
穂積
「小野瀬、もしかしてこの後、裸ハイヒールプレ(ピーーー!)」

冬子
「室長、ジュンさんと澪さんはロマンティックデートの余韻に浸ってるんですから!」

ジュン
「確かにそういう流れなのは否定しませんけど……」


「小野瀬さんとならそれでもいいです」

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