『非公式Twitter』

~番外編「ホワイトバレンタイン」より~小笠原編~

2016/02/10 10:08

名前を呼ばれて振り向くと、小笠原さんが、メガネを押し上げているところだった。

##IMGU63##

「お疲れ。…ねえ、これから家に来ない?」

「えっ」

小笠原さんは最近、ずっと1課の手伝いだった。

隣を歩く小笠原さんの横顔はくたくたに疲れていて、その辛さを物語っている。

「俺、きみと一緒にいると落ち着くんだ。疲れが消えて、明日も頑張ろうって気になる」

「私がいる事で諒くんが元気になれるなら、傍にいるよ。ご飯も作ってあげるね」

「うん」

それから小笠原さんのお家に行って食事を終え、二人並んでソファーに座ると、彼が甘えてきた。

いつもクールな小笠原さんの、これは私しか知らない姿。

「ねえ」

小笠原さんは少しだけ身体を離すと、おでこをくっつけてきた。

目の前にある彼の不安げな顔に、胸の奥がトクン、と高鳴る。

「今夜は泊まっていきなよ……。いや、泊まっていって下さい」

いきなりの丁寧な懇願に、思わず噴き出してしまった。

「はい。ぜひ、泊まらせて下さい」

私の返事に、小笠原さんは嬉しそうに頷いた。

「うん、喜んで」

指を絡ませて両手を握り、何度もキスを交わしながら押し倒される。

「好きだよ……」

「私も……諒くんが好き……」

ところが、なぜか、そこで小笠原さんの動きが止まった。

(…?…)

ゆっくりと目を開けると、小笠原さんの視線は、つきっぱなしだったテレビに映る、美術館のCMに釘付けになっていた。

「……諒くん、14日に約束してるデート、あの美術館に行こうか?」

「えっ?でも……きみが楽しくないだろ?」

「ううん、そんなことない。諒くんが楽しんでくれるのが、1番だから」

「……ありがとう」

小笠原さんは優しげな微笑みを浮かべ、何度目かのキスをくれた。


*****


13日の夜、私は寮ではなく、なぜか外にいた。

大雪のため、鉄道警察からの要請で、帰宅困難になった人たちの誘導をしているのだ。

笛を吹いて誘導していると、ふいに肩を叩かれた。

振り返ると、寒そうに身体を震わせる小野瀬さんがいるではないか。

「この近くでちょっとした事件があってね。鑑識作業に呼び出されたんだ。それで、穂積には俺から言うから、きみに現場の交通整理を頼みたい」

「はい」

「ありがとう。助かるよ。このお礼は何が良いかな?」

「お礼なんていいですよ。仕事なんですから」

「そんなこと言わないで。そうだ、今度ヒマな時にでも、ランチを一緒に……」

笑顔の小野瀬さんが、ズイッと迫ってきた時。

バシャッ!

私たちの横を車が走り去った瞬間、勢いで道路の雪を跳ねた。

「うわっ!」

スローモーションのように、雪は小野瀬さんの頭上へ直撃。

私はギリギリ、その被害に遭わずに済んだ。

「小野瀬さん、大丈夫ですか?!」

「……全然、大丈夫じゃない」

小刻みに震える小野瀬さん。

何と言えば良いか戸惑っていると、小野瀬さんは満面の笑みを浮かべた。

「水も滴る良い男ってところかな」

「……寒くないんですか?」

「そりゃ、もちろん……」

笑顔は、一転。

「寒いよ! うわ! 服の下にも雪が入った!」

小野瀬さんは蒼ざめた顔で、頭の雪を払った。

明け方になってやっと仕事が終わると、私は小笠原さんの運転する車へ乗り込んだ。

けれど、車は駐車場へ置いたまま。暖房だけをつけた車内に、小笠原さんのため息が響く。

「諒くん大丈夫?少し休んで、良くなってから帰ろうか。あんなに寒かったし、人は大勢いたしね」

「うん……」

前に比べたら良くなってるとは言っても、小笠原さんはまだ人ごみに弱い。

「帰ったら寝て」

「大丈夫、約束通り、美術館に行こう」

きみといれば元気になる、なんて言いながら、小笠原さんはデートを決行。

着替えて美術館に着くと、具合が悪いのなんて吹き飛んだみたいで、美術品を見つめる小笠原さんの目は輝いていた。

その横顔を見ているだけで、私も嬉しくなる。

分からない作品も、小笠原さんが解説してくれるから良い勉強になる。

「私の彼氏は、すごく優しいね」

「僕の彼女が、優しいからだ」

楽しく美術鑑賞をした後は、小笠原さんの部屋へ。

「今日は、きみの為に用意したものがあるんだ」

「何?」

「見てのお楽しみ」

私をソファに座らせて、キッチンへ向かう小笠原さん。

(一体何だろう?)

戻ってきた小笠原さんの手には、小さなフォンデュ鍋。

「すごい、チョコフォンデュだ!」

さっそくイチゴをフォークに刺し、チョコをつけて一口。

「ちょうど良い甘さだから、何個でも食べれちゃいそう」

「きみのために用意したんだから、何個でも食べて良いよ。もし太ったら……僕とダイエットしようか」

「諒くんと一緒なら、続きそうだな」

「パイナップルも美味しいよ。はい、あーん」

バレンタインなのに、私の方が幸せ。

「良かった。きみの、可愛い表情がいっぱい見られて」

口元についたチョコレートを舐め取られ、そのままゆっくりと、身体がソファへと押し倒されていく。

「笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も、食べてる顔も嬉しそうな顔も全部好き」

ひとつずつ好きって言いながら、おでこに、ほっぺに、キスが落ちてきた。

「ご飯食べてる時や、テレビ見てる時だって、表情が違ってて好き」

「そんな時も見てたんだ?」

「きみのことなら、いつでも見てるよ」

「私、たくさん愛されてるんだね」

「そうだよ。だから……」

最後に唇を塞がれると、そのまま何度もキスを交わした。

小笠原さんの唇が触れる度に身体は嬉しいって声を上げ、火照っていく。

「可愛いよ……もっと、たくさんの君を見せて?……もっと、もっと見ていたい」

「うん……いいよ……」

小笠原さんの唇が触れる瞬間は、いつでも胸が高鳴る。

小笠原さんの唇が、小笠原さんの手が、新しい私を作っていく。

「大好きだよ」

抱き合ったまま深く唇を重ねると、互いの温もりが混ざり合っていった。


~終わり~
追記
名前:祝日のせつな
本文:
今回の小笠原さんは、『可愛い小野瀬さん』って感じかな~(はーと)

室長秘伝の『男の勤め』を踏襲してるから、もしかして一番無敵なのかも( *´艸`)

ラブラブな聖V.Dをお過ごし下さいませ♪


で、雪でずぶ濡れになっちゃった小野瀬さんは、ワタクシがじっくりたっぷり温めてさしあげます(≧◇≦)!!←結局ソコか(笑)

名前:ジュン
本文:
こんにちは。

小笠原さんが人混みのなかでお仕事なんて、頑張りましたね(;>_<;)

なのにちゃんとデートもしてくれて、チョコフォンデュまで用意してくれるなんて!

優しい彼氏代表ですね。

名前:冬子
本文:
おがさーらさん!

(ただいま、おがさーらさん呼びがブームなのです)

冬子は美術館デートOK!ですよ。

マナーもばっちり心得ています。

はしゃがない、ぺちゃくちゃお喋りしない、拾い食いしない! ←アレ?

帰りには今日の記念にミュージアムショップに行ってお買い物もしましょう。

ポストカードとか買わずに、ついつい実用的なボールペンとかクリアファイルを買ってしまうんですけど。

だってー、職場で使えたほうがいいじゃない?


チョコフォンデュだって、きっとカカオのいいチョコだから、あんまり太らないに違いない!

なによりダイエットならおがさーらさんにおまかせよ!


ところで、小野瀬さんに雪をかぶせた車のドライバーは男性に違いない。

女性ならタオルを持って車から飛び降りてきて、クリーニング代払います~とかいって連絡先を聞いてくるに決まっている。

どうだ!冬子の名推理!

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