『非公式Twitter』

番外編から零れたふたり~JS編~

2016/02/14 09:42

2月14日。

昨夜降った大雪のせいで、止まってしまった信号機の代わりに手旗を持って交差点の車を誘導したり、手当たり次第にホテルに電話して帰宅困難者の為の宿泊先を探したり。

馴れない仕事を一晩中やり続けた私たちは、夜が明けて任務を解かれ、捜査室に戻って来る頃には、寒さと緊張で、全員がくたくたに疲れてしまっていた。

明智
「…お疲れ。ホットチョコレートを作ってきたぞ」

力尽きてそれぞれの席に突っ伏しているメンバーたちの机の上に、明智さんが、甘い香りのするマグカップを置いてくれる。

疲労困憊の冷えきった身体に糖分が行き渡っていくのを感じて、私はしみじみと深い息を吐いた。

「すみません、明智さんだって、玉突き事故の処理や検分でお疲れなのに」

「はは、大丈夫だ。動いていれば眠気も消えるしな」

「アンタたち、それ飲み終わったら、仮眠室行っていいわよ」

一人だけカフェオレを啜りながら、室長が私たちを見渡した。

「櫻井は今日、休みでしょ。悪かったわね、もう帰りなさい」

「はい」

正直、もう上下の瞼がくっつきそう。

私はお言葉に甘えて、帰宅させてもらう事にした。


靴下を替えてから捜査室を出ると、通用口に向かう途中の廊下で、明智さんと擦れ違った。

「明智さん、お先に失礼します。チョコレート、ありがとうございました」

私が頭を下げると、明智さんは笑顔で軽く首を傾げた。

「催促なんかしなくても、ほら」

(催促?)

明智さんは、提げていた紙袋からひとつ、小ぶりな箱を私にくれた。

「お前にはトリュフを作ってきた。特別だぞ」

「あ、ありがとうございます」

「気をつけて帰れよ」

なぜか首筋がチリッとするような違和感を感じながらも、明智さんの背中を見送った私は、そのまま警視庁を後にした。


*****

名前:櫻井翼
本文:
女子寮に帰りついた私は、お風呂に入ってから、ベッドで、ちょっとだけひと休み。

…のつもりが、目覚めて時計を見ると、午後どころか、既に夕方になっていた。

窓の外のオレンジ色に慌てて飛び起きれば、玄関先で、コトン、と音がする。

覗いてみると、ポストに、綺麗な洋封筒のメッセージカードが入っていた。

直接投函されたらしく、切手も貼られていないし、宛名も、封も、差出人の名前も無い。

こういうのをくれる相手に心当たりが無いわけじゃない私は、そっと、封筒を開いてみた。

『眠り姫をディナーにご招待します』

(…ディナー?)

同封されていた憧れのレストランのチケットを見たら、くう、とお腹が鳴って、思わず一人で赤面してしまった。

お昼も食べずに眠っていた事に気付いて、我ながらよほど疲れていたんだなと驚く。

とりあえず身支度を整えていると、今度はドアにノックの音がして、有名なデパートから、薔薇の花束と、ワイン、それに、イブニングドレスや靴までもが届いた。

「…」

私の小さな部屋に、魔法のように忽然と現れた、数々の素敵なプレゼント。

それは本当に魔法みたいで…

どれもとても綺麗だし、嬉しいけど…

「…」

私はしばらく考えてから、携帯を取り出して、朝からの数々の驚きの贈り主だと思われる相手のアドレスに、短いメールを入れた。

『一番欲しいものが足りません』

指先に力を込めて、送信する。

…しばらくすると、来客を告げるチャイムが鳴った。

駆け寄ってドアを開ければ、そこに、彼が立っていた。

私は駆け寄った勢いのまま、彼の胸に飛び込む。

もちろん、彼は動じない。いつものように。

「…プレゼントだけで、姿を見せないつもりだったの?」

「こんな場所では、誰かに僕らの関係を知られてしまうよ?」

「…」

私はむっとしながらも、離れる。

すると彼は、防犯カメラをちらりと見るのだ。

「誰にも見つからないよう、細工はして来たけどね」

「…ジョン」

からかわれたのだと知って、上目遣いに睨むけど、彼は動じない。これも、いつものこと。

「プレゼントは気に入ってくれた?」

「…」

尖らせた唇に、ちゅ、と彼のキスが落ちてくる。

「…ホットチョコレートが一番、嬉しかった」

あなたが明智さんに化けて届けてくれた、温かいチョコレートが、一番。

ふ、と彼の目が細められた。

満足そうな笑みを浮かべた、それは、私の一番好きな表情。

「相変わらず、欲の無いお嬢さんだ」

「そんな事ない」

私は欲張りになった。

だって、どんなに素敵な花束や靴をもらっても、もう満足出来ないんだもの。

バレンタインデーの今日、私が本当に欲しいもの、それは…

いたずら好きで意地悪で、魔法使いのような、私の、秘密の恋人。

「あなたが、欲しい。今夜は、離れないで」

「いいとも。愛しい、マ」

「違う」

私は私だよ、もう、マルガレーテじゃない。

すかさず私が訂正すると、彼は、可笑しそうに、唇の端を上げた。

背伸びしてねだると、私を抱き締めて、異国の花の蜜のように甘く、痺れるほどに官能的な口づけをくれる。

「愛してるよ。……僕の、」

私だけを映す彼の目の色は、どんな宝石よりも美しい、稀有な緑色に輝いていた。



~終わり~
追記
名前:せつな
本文:
・・・こんばんは・・・コソコソ

真夜中に失礼します~~

でもでも、素敵なアニ&JSの番外編を、堪能させて頂きました(≧▽≦)

アニ編も良かったけど←オイ、JS編の素晴らしさ!!!

ワタクシの欲求不満が吹き飛び、素敵な夢がみれそうです(*´▽`*)ハワ~~

JSの恋人としての翼ちゃんがとっても可愛くって( *´艸`)

小野瀬さんや室長との関係とはまた違った、強気な甘え方?がイイ感じwJSとお似合いです!

『カレの方が尽くしてくれるアメリカ式のバレンタイン』的なスタイルはそのままに、小春さんらしい素敵なアレンジに、ウットリしました(*´з`)

JSにはW.Dに是非海外へかっさらって頂きたいわ~~w
あ、翼ちゃんが押しかけて行くっていうのもアリか←おっと、妄想女子の悪癖が(笑)


小春さん、お忙しい中、ワタクシたち(←何気に他のお嬢様も引き込んだよ;)のおねだりを聞いてくださって、素晴らしい二人のV.Dを創作頂き、本当にありがとうございました!!

名前:エミ
本文:
安定の番外編の番外編、アニ&JS編が楽しみになってます。

小春さん、ありがとー!!

名前:ジュン
本文:
おはようございます。

JS編がupされていることに今ごろ気づき、掟やぶりの次の日書き込みになってしまいましたm(__)m

JSの前だとちょっと強気になっちゃうんですね。

なんだか新鮮な感じでした。

小春さん、ありがとうございました(*≧∀≦*)

名前:小春
本文:
皆さま、番外編紹介にお付き合いくださいましてありがとうございます。

ジュンさんも、いつもありがとうございます。翌日書き込みは掟やぶりでもなんでもないですので、バックナンバーにもどんどんツッコミ入れてくださいね。

本家番外編につきましては、全コピペというわけにはいかないので、一応、3000字以内という自主規制を設けてダイジェストにてご紹介させていただいております。

そのため、内容が分かりにくかったり、お話の良さが伝わらなかったりする部分もあるかと思いますが、私のせいです。悪しからずご了承ください。

文中のセリフは、文字数や齟齬をふまえて私が変更しているものが多々あります。オリジナルに忠実ではありませんので、これもご承知おきください。


「番外編から零れたふたり」へのご感想もありがとうございます。

皆さんに好意的に受け止めていただき、とても嬉しいです。

毎回、文字数制限(←自業自得)と難しいお題に悪戦苦闘しながらも、自分自身が楽しんで書いていますが、読んでくださる皆さんがいるからこそ頑張れます。

引き続きよろしくお願いします。

名前:澪
本文:
こんばんは。

掟破りでないなら甘えてしまいます翌日ですみません。

JS編ドキドキしました~!!

まさかの最初の明智さんが…だったんですね。

ほんと油断も隙も無い味方にほしい(⌒-⌒; )

翼ちゃんらしい芯のある対応にキュン。

そう、翼ちゃんはこれがいいんですよね*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*

小春さん、たくさんの制限を物ともせず今回も素敵な番外編をありがとうございました♪(´ε` )

名前:冬子
本文:
14日バレンタインデー当日のトリがJS。

小春さんのJS愛を感じるワタクシです。


冬子はなんでものんびりだから、バックナンバーへの書き込みもしょっちゅうです。

今回も遅いし……


小春さん、毎日長編ありがとうございました。

冬子の脳内捜査室の皆もよろこんでみてますよ。

冬子の頭の中は毎日お花畑です。ふふ

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