いつもより少し規模の大きい交通安全講習が行われた、徒歩での帰り道。

##IMGU64##

「疲れましたねー！」

##IMGU60##

「お前座ってただけだろ」

##IMGU63##

「俺の方が疲れた」

##IMGU62##

「小笠原、あの世代のママ受けええんやな」

##IMGU65##

「俺より人気だったね」

##IMGLU83##

「小野瀬さんもお疲れ様でした」

##IMGU62##

「みんなお疲れや。ルイルイに飲みに連れて行ってもらわんと」

せんな冗談を言いながら捜査室に戻った私たちを待ち受けていたのは…

鬼の形相の室長。

##IMGU61##

「ようやく帰ってきたわね」

##IMGU65##

「ほ、穂積？どうしたんだ？」

##IMGU61##

「藤守！如月！書類の提出期限！」

室長の怒号に、指名された二人が凍りつく。

##IMGU65##

「ああ、そっか。年度末だもんな」

つられて固まっていた私に、小野瀬さんと明智さんが説明してくれる。

##IMGU60##

「年末の経費精算とはまた別に、年度末は、事件で作成した書類をまとめる作業があるんだ」

##IMGLU83##

「なるほど」

##IMGU65##

「年度内の書類を全部月ごとに分類して整理しなければならないからね。まだ未提出なんて、言語道断だよ」

そうか、だから、室長は殺気だっているんだ。

藤守さんと如月さんが半泣きで机の上の書類に向き合う。

とても飲み会どころじゃなさそう。

##IMGU65##

「ご愁傷さま」

##IMGU61##

「小野瀬、鑑識の課長も走り回ってたわよ。手伝ってあげなさいよ」

小野瀬さんは疲れが出たのか、肩を竦めただけでソファーにどさりと座ってしまった。

##IMGU65##

「今日の俺は捜査室のお手伝いー」

##IMGU61##

「じゃあ書類整理する？」

##IMGU65##

「遠慮するー」

##IMGU61##

「ちっ」

小野瀬さんを横目に、室長が舌打ちをした…。
　
＊＊＊＊＊

翼
「あ、えっと、疲れてやる気が出ない時は、『これが終わったら休める』とか、『ここまで出来たら好きな食べ物』とか！」

明智
「確かに、目の前にエサがあるとやる気になるよな」

空気を変えようとした私に、明智さんが話を合わせてくれた。

翼
「疲れた時なら、甘いもの……ですかね。チョコとか」

穂積
「私は食べないわよー」

如月
「室長、チョコ嫌いですもんね」

翼
「そうですね。この前も私が渡そうとしたけど、拒否されちゃったし」

藤守
「え！？櫻井のチョコ！？何それ俺も欲しい！」

如月
「オレも欲しい！翼ちゃん、ちょうだい」

翼
「え？」

明智
「お前たち、櫻井が困ってるじゃないか」

小野瀬
「そんなこと言ってる明智くんが、一番欲しそうな顔してるけど？」

何だか変な流れになってきちゃった。

翼
「えっと、じゃあ……、まだ食べてない板チョコがあるので、皆で分けましょうか？」

私はそう言って、チョコを割りながら配って回った。

藤守
「やったー！」

如月
「ありがと、翼ちゃん！」

小笠原
「……疲れてる時に、欠けたブドウ糖を補充するのは理にかなっているんだよね……どうも」

小野瀬
「うーん、今日は仕事したくなかったんだけど、これもらったから頑張ろうかな」

翼
「室長は……いりませんよね」

穂積
「どうせ寄越すなら、チョコじゃなくて酒にしなさい」

翼
「そ、それはまた打ち上げの時にでも」

明智
「櫻井、お前の食べる分がなくなるじゃないか」

翼
「いいんです。まだ、別の友チョコがありますから」

配り終わると、室長の声が捜査室に気合いを入れた。

穂積
「さあ、櫻井からの差し入れもあったんだし、仕事に集中しなさい！」

明智
「さっさと終わらせて、さっさと帰ろう」

小笠原
「俺は早く帰りたい」

小野瀬
「小笠原くんはもうちょっと頑張るように。さて、俺も鑑識室に戻るとするか」

藤守
「デスクワークは苦手だけど、まあいっちょやりますか！」

如月
「翼ちゃんからもらったチョコ食べれるっていうエサもあるしね」

みんなの頑張りに、私もやる気になってデスクへ向かった。


＊＊＊＊＊


自分の仕事がひと段落ついたところで、私は署を出た。

締め切りはまだ先だし、今日は、彼の家へ行く約束がある。

翼
（途中のスーパーで買い物して……）

久しぶりの彼の家。

だからかな、妙にドキドキしてしまう。

ついつい余計なことまで想像しては、ニヤけてしまう頬を両手で押さえた。

翼
（今日は、美味しいご飯作ってあげよっと）

気合いを入れて買い物を済ませると、私は彼の家へ急いだ……。


＊＊＊＊＊


本家ホワイトデー番外編です。


ちなみに明智さんに心配された翼ちゃんが「自分にはまだ友達からもらったチョコがある」と言っていたのは、有名な高級チョコ。

「もったいなくてなかなか食べられずにいる」。

分かるー(´∇｀∩)
　

そして、「ついつい余計なことまで想像しては、ニヤけて」しまった、全翼ちゃん(笑)すみません。続きはまた後日……