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番外編『ステキなお返し』より~藤守編~

2016/03/11 22:16
夕飯後、藤守さんの好意に甘えてお風呂を借りた。

「賢史くん、お風呂上がったよ」

浴室から出て、貸してくれた藤守さんのシャツに袖を通し、タオルで髪を拭きながらリビングへ行くけれど、姿が見えない。

首を傾げながら寝室を覗くと、藤守さんはケータイで誰かと話していた。

私に気付いて手招きしてくれたので、呼ばれるままに傍へ行き、ベッドの縁へ腰を下ろした。

しばらく関西弁で言い合っていたけど、藤守さんは強引に通話を切り上げた。

##IMGU62##

「世話がやける兄貴や」

「賢史くんと話したいんだね」

「今夜の俺は、兄貴よりお前の方がいい」

藤守さんは腕を伸ばし、横からそっと抱きしめる。

「いい匂い」

「お風呂上がりだからね」

「風呂上がりって、なんかいいよな…俺のシャツ着てるのも…エロい」

藤守さんの手がいろんなところを撫でるから、その度に反応してしまう。

「あーもう、本当に可愛い!我慢出来ん!」

強い力で抱きしめられた腕の強さに、ぬくもりに、私の胸の奥が嬉しいって鼓動を打つ。

キスを交わしながら、藤守さんの手が私の身体を撫で上げる。

「次の休みは、もっとたくさんお前を感じたい」

何度目かのキスの後、藤守さんが上に覆いかぶさった。

「実は、ずっと前からお前を連れて行きたいと思ってた場所が…おっと、まだ、内緒や。俺からのサプライズ、楽しみにしといて」

耳元でそっと囁くと、藤守さんはまたキスをくれた。

今度はとても深く、甘いキス……。


***


夕焼けに染まる街を、明智さんと聞き込みに向かう。

##IMGU60##

「盗難事件、か。時間がかかりそうだな」

複雑な顔で明智さんが見上げた先は、ホビーショップ。

店内に入り、明智さんは店長に質問を始めた。

「それで、どの商品が盗まれたんですか?」

店長
「外のガラスケースに置いてあった、はぴなびの愛ちゃんのフィギュアです」

「は?」

店長
「大人気のアニメキャラですよ」

「アニメ?」

「ストーリーは、4人の女の子のゆるい日常を…」

「それより、フィギュアが置いてあった場所を教えて下さい」

店長と明智さんはどこまでも噛み合わない。

それを手帳に書きつけていると、妙な違和感を感じた。

振り向くと、なぜか全員リュックサックを背負っている数人の若い男性が、じっと私を見ていた。

(この人たち、何だろう?)

「おおお!」

「愛ちゃんの婦警コスキター!」

(え?)

何か分からないけど盛り上がる男性たちに、私はうろたえてしまう。

「…刑事さん…すごく…愛ちゃん似ですぞ」

「愛ちゃんって……もしかして、盗まれたフィギュアの子ですか?」

「そう!愛タン!」

「愛タン可愛いよ、愛タン」

明智
「こら、お前たち、警察官をからかうと公務執行妨害で逮捕するぞ」

私を庇って間に入ってくれた明智さんにホッとしたのも束の間。

「逮捕、つまり手錠ですか?」

「拙者、本物の手錠は見たことありませんぞ!」

「お主もか!だが俺はぜひ拳銃が見たい!」

「お主ら落ち着け、まずは警察手帳が先であろう」

「おおー」

男性たちはどんどん増え、私の時よりも大人数で明智さんを囲んでしまった。

***

次の日、藤守さんに連れて行かれた先は、隣の県にある大きな水族館だった。

「わあ、キレイな魚!まさか賢史くんが、水族館に連れてきてくれると思わなかったよ」

「そうか?」

「うん。やっぱり賢史くんって言ったら、電車だから…これが、サプライズだね?」

「まだまだ、こんなもんやないぞ。まずはイルカショー見ようや」

藤守さんの大きな手が、包み込むように私の手を掴む。

すぐに、イルカの水槽が見えてきた。

「おお!飛んだ!イルカは頭がいいって言うけど、ホントだな」

「わ!今の見た!?みんなで一斉に飛んでる!手も振るんだね。ふふっ、可愛いなあ!」

「……」

いつの間にか私ひとりがはしゃいでいて、藤守さんの視線は私に向かっていた。

なんだか、はしゃいでる自分が子どもっぽいみたい。

熱くなる顔をそらそうとしたら、藤守さんの手がそれを阻止した。

「恥ずかしがらなくていい、俺は、お前のそういう姿も好きや」

「…本当に?」

「本当。俺だって、電車を前にしたらガキみたいにはしゃぐしな。楽しい時は、年なんか関係ない!」

「うん、そうだね」

一緒にはしゃげる相手がいるということが、私の胸を安心させた。

それからもイルカと握手したり、写真を撮ったり。

「これ、俺のケータイの待ち受けにしようかな。俺の可愛い彼女!って自慢するんや」

笑い合いながら水族館の中へ戻ってくると、藤守さんはなぜか、出口とは逆方向に歩き出した。

「とっておきの場所がある、って言ったやろ」

連れていってくれた先で、水族館の係員さんが待っていた。

「藤守様でございますね。お待ちしておりました」

ドアを開けてもらって、入ったそこは…。

「わあ…!床以外、全部ガラスになってる」

「すっごいやろ」

「ここ、何?」

「完全予約制の個室水族館」

係員さんは案内が終わると、部屋を出てカギを締めた。

部屋の中央にあるソファへ腰かけ、準備されていたハワイアンドリンクを飲む。

「ここ、1年以上の予約待ちがあるくらい人気なんや」

「もしかして、ずっと前から予約取ってたの…?」

「大掛かりなサプライズやろ」

「うん、本当にすごい!」

「バレンタインのお返しなんてたくさんあるけど、どれもありきたりやろ。指輪、ネックレス、時計に花束。俺は、お前にありきたりなものをプレゼントしたくなかった」

「どうして?」

「おもしろくない」

「…おもしろさ重視なんだ」

周りは全て水槽で、まるで自分も魚になって、海の中にいる気分。

見ているだけで、心が癒される。

「大人っぽい顔になったな。さっきのはしゃいだ顔とはまた違う。今度は、色気のある顔、見せて」

言い終わるより早く、藤守さんの唇が口を塞いだ。

「まさか、ここで……?」

深く、とろけるような口付けに、頭の芯がボーッとしてくる。

「魚以外は、誰も見てへんよ。それに、こういうところでする方が興奮する」

藤守さんの手が、唇が、私の身体を火照らせる。

「お前の身体も、いいって言ってるみたいだな」

「賢史くん……っ」

「ほら、また違う顔した」

「もう、これ以上はダメ……」

「そのダメ、そっくり返す。今は俺が我慢出来ない」

ソファの上に押し倒すと、藤守さんは強引に唇を奪った。


~終わり~
追記
名前:穂積&小野瀬&アニ
本文:
穂積
「どいつもこいつも!!」

アニ
「羨ましくなんかないぞ」

小野瀬
「アニ、心の声漏れてる」

名前:ジュン
本文:
賢史くん、賢史くん、賢史くーん。ぎゅっ←抱きついた

1年待ちの個人水族館なんてスゴい!

面白さ重視なのも賢史くんっぽいね。

でも、1年以上前から考えててくれるなんてすごく嬉しい。

それにしても賢史くんは水族館でなんて……ホワイトデーは皆、大胆なのね。

名前:澪
本文:
こんばんは。

水族館デート素敵ですね(^∇^)

しかも個室水族館なんて贅沢!!

でもそこは魚の視線が気になりそうです(°_°)

トイレの個室が水族館みたいになってるとこあるじゃないですか、あれ並みに落ち着かなさそう…(笑)

一年前から考えてくれていたなんて嬉しいですよね。愛だなぁってキュンとします。

明智さんは無事脱出できたんでしょうか…(笑)

名前:冬子
本文:
明智さん……アワアワしちゃったかな?(*´艸`)

それにしても個室水族館なんてよく思いつきましたね。

一年待っても彼女に…なんてその気持ちが嬉しい。

一年後も彼女と一緒にいるってことですよね。ふふ。

いやー、アニさんが聞いたらなんと言うか、見てみたいもんですわね。

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