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番外編『ステキなお返し』より~穂積編~

2016/03/13 22:11

室長の家で夕飯の準備をしていると、ドアの開く音がした。

「お帰りなさい!」

##IMGU61##

「ただいま。ちゃんと来てたな」

「もちろん。お夕飯、泪さんの好きなもの作ったよ。いつも忙しいから、好きなもの、たくさん食べてほしくって」

「忙しい、か。お前には、寂しい思いをさせてるかな」

「ううん、そんなことない!私は、仕事を頑張る泪さんも好きだから」

私は、強く首を振った。

「お前は強いな」

「…それ、泪さんが弱いって事?まさか」

「男には、そういう時もあるんだ。…今お前、『俺が弱いとか想像出来ない』と思っただろ」

「えっ!どうして分かったの?」

「…本当に思ってたのか」

室長は呆れたような顔をした。

「次の休みにはバレンタインのお返しをしてやるつもりだったが、そういう失礼な奴には、プレゼントなしだな」

「ま、待って!いります!欲しいです!」

よし、と頭を撫でられ、安堵して息を吐き出す私に、室長は苦笑い。

「からかっただけだ。だが、プレゼントは本当だぞ」

ご飯を食べ終わり、片付けも済むと、室長は私の腰に手を回した。

「だから休みまでは、しっかり働けよ」

「うん。仕事に手は抜かないよ。泪さんの部下だからね」

「そうだ。仕事も恋も、両方手に入れてみせろ」

「うん」

私も室長の背中に腕を回すと、そのまま唇を重ね合わせる。

「お前、最近キス上手くなったな」

「泪さんがたくさんキスするからだよ」

「俺のせい?違うだろ。お前が俺を求めてきてるせいだ」

「それは……」

「違うのか?」

濃厚なキスを繰り返しながら、室長の手が私の身体をなぞる。

その感触に身体を震わせながら、熱い息を吐き出した。


***


それから数日後。

「……一枚足りない」

提出するべき重要な書類が一枚、どうしても見つからないという室長の言葉を受けて、メンバー一丸となった大捜索が始まった。

私は藤守さんとペアを組んで、書庫の捜索に向かう。

「室長の為や、何としてでも見つけだすぞ!」

「はい!」

「…しかし、かなりごちゃごちゃしてるな。かなりの本や資料があるから、見逃さんようにな」

「はい」

ふたりで手分けして探すけど、一向に書類は出てこない。

その間に、捜査室にはない、データ室もない、と次々に報告が入る。

「ええい! こうなったらやけだ!」

藤守さんは座っていた場所にある本を投げ、奥の方まで探し出した。

「ふ、藤守さん!? 落ち着いて下さい」

「俺は何としても探し出す!」

「待って下さい。そんな乱暴に探してたら、棚が……」

言いかけた時、棚がグラついたのが目に入る。

「藤守さん、危ない!」

「やば……っ!」

藤守さんは慌てて棚を押さえたけど、その衝撃で中の本が勢いよく落ちてきた。

ドサドサドサ!

「大丈夫ですか?!」

藤守さんは本と、舞い上がったホコリに埋もれてしまった。

彼を本の中から助け出した時、1番上にある本に目がいった。

(あれ? この本、前に泪さんのデスクにあったような…)

何となく手に取って、中を開いてみたら…。

「あった…」

そこには探し求めていた書類が、折れて挟まっていた。

***

書類大捜索の翌日、私は室長と高原に来ていた。

「迂闊だった。自分のミスなのが許せない」

(泪さんはマジメだなあ)

私は無事に書類が見つかり、こうしてデート出来ただけで嬉しいと思ってるのに。

「…そうだな、楽しむか」

「うん」

私たちは手をつなぎ、高原の中を歩いていく。

室長がソフトクリームをひとつ、買ってくれた。

甘いものが苦手な彼は、私が一口食べた後で、自分も一口だけ食べ、舌で自分の口端を拭った。

間接キスだけど、こういうのが当たり前なのって心を許してるみたいで嬉しい。

芝生で横になると、室長が腕枕してくれるのも、嬉しい。

横向きになった室長は、私の腕を引き寄せて自分の上へ置く。

(人目があるけど…)

抱き合うようにして目を閉じると、私は室長に擦り寄って、眠りに落ちた。


夕暮れ、高原を後にして、室長はさらに車を走らせた。

室長が私を連れてきたのは、クルージング船。

「え、この船を、貸し切り?」

「下の方の階には、他の客もいるけどな。このデッキと、中のキャビンと、ベッドルームと…少し早いが、これが俺からの、ホワイトデーのプレゼントだ」

「こんなにステキなプレゼントなんて…もったいないよ。すごすぎて…おつりがいるくらい」

「なら、おつりは、後で払ってもらう」

「え?」

船が出港し、デッキで二人きりのディナーを楽しんでいると、船がストップした。

食事もある程度終わったところで、室長は私をデッキの手前へ誘ってくれる。

「わあ……!」

そこには、目を見張るような夜景が広がっていた。

「すごくきれい!」

「この景色が、俺からの最後のお返しだ」

「泪さん、本当にありがとう!」

「礼を言うことじゃない。これは、俺からの礼なんだからな」

ため息をつくほど幻想的な景色に夢中になっていると、室長が腰に手を回した。

「…それにしても、あまり景色ばかり見るなよ」

「この夜景をプレゼントしたのは、泪さんだよ」

「そりゃそうだけど」

「妬いてる?」

「うるさい」

引き寄せられ、そのままキスを交わす。

「もう、欲しいものは無いか?」

指先で唇を撫でながら、時折深く口付ける。

「あるだろ、欲しいもの」

「…泪さん…」

私が求めると、室長は更に強く抱き寄せキスを落とした。

「おつりも払ってもらわないとな」

「でも、私、何も持ってない」

「お前の全部を寄越せば、ちょうどおつりになるんじゃないか?」

室長は笑って、私の胸のあたりを指で突いた。

とろけるような口付けに、私の頭がぼんやりしてくる。

「ここでもいいが、ベッドに行くか」

「うん……」

「キスくらいでそんな顔をするな」

「だって、泪さんのキスは……すごいから……」

「当然だ」

私の弱い部分に触れながら、室長はイタズラっぽく笑った。

「もう俺なしじゃ、満足なんて出来ないだろ?」

首筋にキスを落とし、耳元で囁く。

(確かに私、もう泪さんなしじゃ満足出来ないかも)

心も身体も、すべて彼のもの。

改めて実感する私を、室長はベッドルームへと連れていった。



~終わり~
追記
名前:穂積&小野瀬&アニ
本文:
小野瀬
「穂積のキスはすごいよね。知ってる」

アニ
「は?なぜ小野瀬が知っているのだ?」

穂積
「……」

名前:ジュン
本文:
おはようございます。

室長がうっかりミスなんて意外ですね。

でも、見つかって良かった。賢史くんのナイスプレー!?

ホワイトデーにクルージングなんて贅沢ですね。

しかも、貸切り!

そして室長のすごいキス……これ以上の贅沢はないですね。

名前:澪
本文:
こんにちは。

なんだか室長、可愛い(((o(*゚▽゚*)o)))

からかったりしながらも、翼ちゃんになら素直に色んな感情を見せてるところがいいですね。

翼ちゃんもそれをごく自然に受け止めててほっこり。

高原でのんびりからのナイトクルージングなんて素敵!

室長のすごいキスをいっぱい受けて、室長なしじゃ満足できなくなっちゃうんですね(* ´ ω ` *)

甘~い(≧∇≦)♪

名前:冬子
本文:
高原のあと船!

素敵だけど、湖とかかしら?

高原と海って近場にあるかな?

地理、苦手だからなあ。伊豆高原…とか?

海だと冬子、船酔いが~~

ご飯食べるどころじゃないかもー

湖希望でお願いします。


色気のないこと言うな?

そんなこと言うんなら、どーして小野瀬さんが室長のキスがすごいの知ってるのか、アニさんに追求させちゃいますよ。

何しろ検事だからね、追及は本職ですよ~(・∀・)ニヤニヤ

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